解夏
東京の小学校教員の隆之(大沢たかお)は体の異常を感じ、検査を受ける。視力を徐々に失うベーチェット病と診断された彼は、婚約者・陽子(石田ゆり子)の負担になりたくないと別れることを決意し、ひとりで長崎に帰郷する。
視力を失っていく病に冒された青年の夏の物語です。 主人公を演じるのは大沢たかおさん。 爽やかさを兼ね備えつつ、うちに秘めた悲しみの演技がいいです。 本作を観るにあたり、彼が冒されている病、ベーチェット病について少し調べました。 視力以外にも非常に多くの症状の出る、指定難病とのことです。 少しずつ視力が失われていくのは恐怖でしょう。 私自身も骨のガンで片足を膝下から失っています。 しかし、私の場合は「その日」がいつか事前に知らされていました。 タイトルの「解夏」は仏教用語。 作中に説明が出てきます。 長い恐怖を過ごし、やがて完全に失明する日「解夏」。 私の「解夏」もまた、そこへ至る日々は悲しみと怒りを含んでいました。 主人公・隆之も慟哭するシーンがあります。 ひたすら泣かせる展開ではなく、あくまで爽やかなストーリーなのがいいです。 隆之を支える周囲の人々の姿も現実的なラインで描かれています。 終盤にかけてのBGMがやや感情的にすぎるのが残念。 情景自体で十分感情が伝わってきますので、このあたりの過剰なBGMは不要かと思います。 長崎の美しい風景。そしてそれを見れなくなってしまうまでの静かな物語でした。
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