キューバ危機を題材に、息詰まる政治サスペンスドラマに仕立てた作品
2024年2月22日 23時04分
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総合評価:
4.0
キューバ危機は、一歩間違えば、人類の歴史を大きく変えたかもしれない、20世紀の大事件だ。
この映画「13デイズ」は、事実のみが持つ説得力を生かし、この題材を息詰まる政治サスペンスドラマに仕立てた作品だ。
1962年、キューバでソ連製の核ミサイルが発見され、当時のジョン・F・ケネディ大統領が、海上封鎖で対抗し、撤去を迫ったのだった--------。
この危機が回避されるまでの13日間を、ケビン・コスナー演じる、大統領特別補佐官の立場でたどるのだ。
映画は、二重の対立構造を描き、緊張を高めていく。
一つは、事件の本筋である米ソの駆け引き。
米側がつかんだソ連軍の動きは描写しても、モスクワの思惑は見せぬまま、物語が進行する。
こうした展開により、疑心暗鬼を生む冷戦の危うさを訴えかけるのだ。
そして、もう一つの緊張関係が、外交努力で核戦争の危機を避けたい大統領らと、キューバ侵攻や空爆など強行策を主張する、軍幹部の対立。
やや誇張もある気がするが、軍部を"悪者"扱いしたため、物語がより面白くなったと思う。
大統領が決断をためらえば、弟の司法長官ロバート・ケネディは、勇み足を踏むなど、美化されがちなケネディ兄弟を人間臭く描いているところもいい。
ケビン・コスナーも、ヒーローとして出しゃばらず、ケネディ兄弟を支える役に徹して、映画を引き締めている。
一方、硬い話になりがちな題材に、家族を登場させた事で、この映画に膨らみが出たと思う。
この状況で、家族を守るには、武力衝突を避ける以外にないとの主人公の思いは、素直に頷ける。
家族愛が、そのまま武器を取る事に結びつくアメリカ映画が多いだけに、妙に新鮮な印象を残す作品になったと思う。