決してエンターテインメントでは終わらない作品。
2021年2月19日 23時37分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト・トリロジー」の世界観を継承した、スピンオフ的な位置づけでトッド・フィリップス監督が作成した作品で、急逝したヒース・レジャーが全身全霊で、伝説的ジョーカー役を見事に演じきった素晴らしい怪作です。
ストーリー全体を漂うのは社会派の悲劇的人間像で、どこまでも突き進む救いようのない自由資本主義が招く格差と貧困と心の荒廃に歯止めがきかない米国NYの近未来を象徴するかのようなゴッサム・シティの空虚感が半端ないです。そして、そのことが、ゴッサム・シティで生きるジョーカーの狂気に満ちた不気味をより一層際立たせている感じがしました。
認知症の母親を介護しながら極貧生活を強いられている最下層市民の大道芸人アーサーは、ショウビジネスへの憧れや人生の目標を完全に見失って、自らの存在さえも否定するようになるが、低所得階級の人達を食い物にしている階層社会に幻滅し、いわゆる資本家などの社会的エリート達、政治家達への不信感や、それにともなう怒りがついに頂点に達し、彼は銃を手にすることで暴力や破壊による魅力に取り付かれ、やがて暴走していきます、その過程がとても刹那的であり、また滑稽にされ感じられました。
きっとそれは、ヒース・レジャーの徹底した怪演によるものが大きいと思います。こんなにも人間の心の闇を表情はもとより、全身で表現できる役者はいないのではないかと思いました、本当に稀有な俳優なのに、急逝されたことが悔やまれます。
この作品を見て感じたことは、ジョーカーの常軌を逸した邪悪に満ちた悪が、本人が単純に自分の意思として勝手に一人で作り上げたものではなく、環境が彼をそうさせた、いや、ゴッサム・シティんお様な人の血の気を失い荒廃した社会こそ、ジョーカーのような人間を生み出してしまうのである、そんなメーセージが秘められているのではないかと、とてもかん考えさせられました。
とらえ方は人によって違うとは思いますが、決してエンターテインメント的な位置づけ終わらせてはいけない作品だと思います。
イメージワード
- ・悲しい
- ・不気味
- ・恐怖
- ・絶望的
- ・知的
- ・切ない