格差と怒り
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月13日 12時10分
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総合評価:
5.0
ポン・ジュノ監督は「グエルム 漢江の怪物」では、’97年の通貨危機後の構造改革や様々な自由化により、格差が拡大した韓国の状況を、怪物から娘を取り戻そうと戦う家族で比喩的に描きましたが、本作では富裕層に直接攻撃性が向く映画になっています。
途中まではリッチなIT社長に寄生しようとする貧しい家族が、あれこれコメディタッチに奮闘する様が描かれます。
しかしながら、今回の家族は、一見紳士的でも貧しい人を嫌悪して寄せ付けないIT社長に対して、直接的な怒りと攻撃性を向ける展開になります。今回は、怪物ではなく実際にいる富裕層に対する怒りを描いた映画になっていました。日本ではリッチになろうという映画や、リッチさに憧れる映画は多いですが、この映画のようにリッチな人に対して直接、怒りや攻撃性を向ける映画はあまりないのではないでしょうか。
格差の度合いの違いもあるのでしょうが、映画のテーマの選び方の違いの大きさを感じさせる映画になっています。
日本はそれなりに豊かだった時代がこれまでにある程度あったので、なかなかこのような怒りや攻撃性を表現する映画を作るまでには、時間が掛かるのかもしれません。