パルプ・フィクション
強盗の計画を立てているカップルを導入部に、盗まれたトランクを取り戻そうとする二人組のギャング、ビンセントとジュールス。ボスの情婦と一晩のデートをするハメになるビンセント。ボクシングの八百長試合で金を受け取るボクサーのブッチ。誤って人を殺し血塗れになった車の処理に右往左往するビンセントとジュールス。ギャングのボス、マーセルスを軸としたこれらの物語がラストに向けて収束していく。
映画のセリフというのは脚本家が長い時間をかけて練り上げてソフィスティケートし、ここぞという場面で印象的なセリフを放り込む…というのが優れた映画脚本である。 と、かつては考えられていた。 1994年に「パルプ・フィクション」がカンヌのパルムドールを獲るまでは。 冒頭のファミレスにおけるチンピラカップルの会話。 タイトルの後、車内の殺し屋二人の「パリのマクドナルド」についての会話。 ストーリーの流れが明らかにおかしくなる程のボリュームで、映画に無駄話が入り込んでくる。 この無駄話の続く時間が、例えるならステーキの脂身の部分なのだが、しかし脂身こそが美味しいのだ。 タランティーノの生まれつきの感覚なのだろう、このセリフの洪水は1994年当時に誰も見た事が無かった「映画の新しい快楽」だった。 その後「パルプ・フィクション風」を狙ったような裏社会の住人達が喋りまくる犯罪映画が多数出現したが、まぁ元祖を超えるのは無理だろう。 タランティーノほどの熱量で「洗練された無駄話」を生成できる人物など、他にいる筈も無いのだ。
このレビューにはネタバレが含まれています
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