今、観るべき映画
2023年9月21日 00時35分
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総合評価:
4.0
関東大震災、および福田村事件からちょうど100年。
朝鮮人虐殺に対する都知事や内閣の発言、そして一部の歴史修正主義者がはびこる昨今、日本人が今観るべき映画であると感じた。
同じ過ちを繰り返さないために、しっかり負の歴史に目を向けて、後世に伝えることが重要であるはず。
映画を観て、日本人(どの人種も当てはまる)は100年前とほとんど変わってないなと感じる。
村社会、民族差別、デマの流布、同調圧力、集団心理による暴走…全て現代にも当てはまる。
というか、人類がいる限り未来永劫続く普遍的問題なのかもしれない。
また、自分がもし「あの場」にいたらどうしていただろう…とやはり考えてしまう。
もちろん止める自信などないし、加害者に加わっていた可能性だってある。
普段は良識のある「普通の人(自分を含め)」だって、何かをきっかけにして暴走してしまうということを肝に銘じなくてはならない。
映画は群像劇で、主要キャストの演技は概ね素晴らしかったと思う。
個人的に、在郷軍人会の分会長・長谷川を演じた水道橋博士の狂気を帯びた演技がとても印象に残った。
ただ、映画的に傑作かと言われたら、そうは思わなかった。
とくにこの作品のテーマになる部分の説明的なセリフが多く、そのへんはもう少し物語にうまく溶け込ませてくれないと観てて冷めるし、説教臭く感じてしまう。
また、新聞社や平澤計七のエピソードなども、ストーリーにうまく絡んでるとは思えなかった。
事件の背景の説明として入れたいのはわかるが、入れるならここももう少し自然な形にしてほしかった。
個人的にはノイズに感じてしまった。
そして、虐殺シーンもグロくする必要はないが、もう少し「痛み」を感じる演出をしてほしかった。
自分がホラー映画の見過ぎなのかもしれないが、殺される怖さが少し足りないと感じてしまった。
他にも、女性の性的な描き方、扇子のあまりにもベタな演出など、気になった部分はそこそこあった。
あと、重いテーマなだけに、コメディ部分をもう少し足したらいいのにと思った。
このへんは、映画「新聞記者」を観たときにも感じたけど、ハリウッド作品とかなら、マジメなテーマでもうまくコメディ要素入れて笑わせてくれるんじゃないかな…。
まぁいろいろと否の部分を書き連ねてしまったけど、とても意義のある、見どころ満載の映画であることには間違いない。
情熱を持って、この重いテーマを作品に仕上げてくれた森達也監督には感服する。
劇映画二作目も期待したい。