ベラの成長は、観ている観客をも追い抜いていく!
このレビューにはネタバレが含まれています
2024年2月21日 19時50分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
おとぎ話のような独特で美しい世界観のわりに、セックスシーン(丸出し)多めだし、グロい描写もあるので、好き嫌いが分かれそうだけど、自分にとっては大好きな映画のひとつになった。
まず、誰がどう見ても衣装含めた映画美術が素晴らしすぎる!
色彩豊かで、レトロな雰囲気であり、SF的でもあり、幻想的で壮大な世界観が観てて楽しい。
これだけでも観る価値があると思う。
そして、物語はベラの成長過程がとても痛快で爽快だった。
マーク・ラファロ演じるクズ男を、あっという間に人として追い抜いていく描写は笑ってしまう。
性に対して羞恥心がなく、常識や固定概念にとらわれないベラが様々な人と出会い、世界を知り、さらに成長していく。
あんなに精神的に幼かったベラが、途中からカッコよく見えてくる。
とくに、船上で出会うシニカルな黒人男性との会話が興味深かった。
人間や社会に対して諦観の念を抱いている黒人男性に、世界の残酷さ現実を知らされショックを受けたベラが、それでもなお、より良い世界(理想)を追い求めることを諦めない。
その姿に、観客として観ている自分も完全にベラに追い越された気になった。
娼館の場面でもベラは、男性本位のルールの中で、諦めずより良い環境を求めて模索し行動を起こす。
その結果、客の男性との関係性にささやかな改善が見られる。
このシーンはとても微笑ましく、ほっこりする。
また、ベラは娼婦という職業に対してなんら後ろめたさを感じないし、恥じてもいない。
今いる環境の中で、ベラなりのやり方で最善を尽くし、楽しんでいるようにも見える。
まぁこういう内容から、女性の自立やフェミニズム的な映画として語られることも多いと思うけど、そんな堅いことを抜きにしても、単純にめちゃくちゃおもしろい作品だった。
個人的に大好きなウィレム・デフォー(ゴッド)もすごく良かった。
完全なマッド・サイエンティスト(明らかに父親のせい…笑)だが、その異常さと、ベラに対する愛情・理解を見事に演じていたと思う。
やっぱり何を演じても印象に残る俳優だなぁ。(まぁ顔のせいもある…)
ラストも毒気強めで賛否あると思うけど、なんか「ザ・フライ2」の終わり方みたいで個人的に好きだった。