逃走迷路
航空会社に勤務するバリーは、軍需工場への破壊工作の濡れ衣を着せられ、手錠のまま逃亡の身となるが…。
この映画「逃走迷路」は、アルフレッド・ヒッチコック監督の名人芸が堪能出来る、追われ型の逃亡サスペンスの傑作ですね。 この映画「逃走迷路」は、サスペンス・スリラーの神様アルフレッド・ヒッチコック監督が、第二次世界大戦中の1942年に発表した作品で、無実の男が警察に追われながらも、真犯人を突き止めるという、ヒッチコック監督お得意の"追われ型の逃亡サスペンス"の会心作です。 航空会社で働くバリー・ケイン(ロバート・カミングス)は、ふとした事からナチ破壊工作の殺人事件に巻き込まれ、無実の罪で追われる事に----という意表をつく大胆なストリー展開が、逃走劇の面白さに拍車をかけていきます。 とにかく、手に汗にぎる、まさにスリルとサスペンスのつるべ打ち。 アメリカ西海岸の軍需工場で、謎の火災と殺人事件が発生し、無実の罪で追われるケインは、警察と外国のスパイの手を逃れながら、大西部からニューヨークへと真犯人を探して行きます。 真っ白い壁にもくもくと黒煙が上る、冒頭のショッキングな発端。 赤ん坊とプールを使ったトリック・ショット。 そして、キラキラと映画を映しているスクリーンの前、銃をぶっ放している犯罪者の影がダブるという、華麗で斬新な映像テクニック。 やがて、スパイの本拠の大邸宅でのパーティの最中に連れ込まれた、主人公のケインと恋人は、踊りながら脱出しようとしますが--------。 とにかく、映画の一場面、一場面が、凝りに凝ったヒッチコックタッチのオンパレードで、映画の楽しさ、面白さを、ヒッチコック監督の名人芸で十二分に堪能させてくれます。 そして、映画のラストシーンは、映画史上あまりにも有名な、自由の女神像の手にぶら下がってのハラハラ、ドキドキのアクション--------。 現在では観光客は、女神像の冠のところまでしか登れませんが、この映画の製作当時は、右手に掲げているたいまつのところまで登れたそうですが、追うケインと追われる犯人は、そのたいまつの外側に出ます。 犯人が落ちそうになり、危うく女神の指の外側に左手でぶら下がり、ケインが犯人を救おうとして手を差し伸べ、ようやく袖をつかむが、袖は腕の付け根にある縫い目のところから破れ、遂に犯人は海に向かって墜落して行きます。 このシーンの海へ落ちて行く男の姿をカメラを固定させたまま、真上から撮る見事なショット--------。 ヒッチコック監督は、高所からの転落の演出にもさまざまなバリエーションをもたせていて、見事の一言に尽きます。 このシーンでの音楽も無く、音さえも無い、この数分間はまさしく胸が痛くなる程のスリルと緊張感に満ち溢れています。 いったいどうやって撮影したのかと思われる、じっくり観てもよくわからない凄いカットです。 ヒッチコック映画でのお約束とも言える、ワンカットだけ自身の姿を見せる場面もご愛敬の、まさにヒッチコック監督こそは、本当の映画の魔術師なのだと思います。
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