映画ポップコーンの評価
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緒形拳の色んな魅力が爆発している。 平気で人を殺す、理解不能な殺人者の顔。 何かが降りてきてるのかと思うばかりの演技に、ゾッとしている間もない。 人懐っこい仮面を被っていて、騙される人が続々と現れる。特に、女性。 緒形拳が、女たらしなんて。勝手に思い描いている緒形拳そのまま。 昭和の邦画で女性を、たらし込めるのが似合い過ぎな俳優。 たらし込める方が似合っているのに、巌に騙される、小川眞由美の演技も凄い。 「THE女体」という昼下がりに行けないものを見た感じのエロスが、そこら中に溢れ出ている。その上、冷たい言葉を男に吐くのがお似合いの彼女が、一途な女な女性を演じている。 平気な顔して嘘を付いているけど、年の功、色んなものや色んな人を見てきた人には通用しない。 でも、その人間の人となりが残念なので、通用しない、もどかしさ。 緒形拳演じる榎津巌の知らぬ所で、巌の父鎮雄と巌の妻、加津子が、異様なことになっているのも重要で、この2人も濃度が高い。 巌とハル、鎮雄と加津子。 凄まじいパワーのキャラクター達。 なぜ、巌は人を殺していたのか?その謎を解く鍵は、思いもしない所にあり、衝撃。 邦画の本気のエネルギーは、凄さまじい。
父親との幼少期からの難しい関係や本人の性格があのような残虐な事件をたくさん起こした原因なのか、理由の一つに挙げられるかもしれないけどすごい人間がいるんだなと鳥肌がたちました。昔の日本映画の映像なので、薄暗く感じていかにも悪い事をしていそうな雰囲気を出しています。大量殺人鬼が次から次に事件を起こしていく映像が秀逸です。この犯人を連行して取り調べるまでの描写が冒頭にあるのですが、どこか他人事で被害者に対する謝罪の気持ちのようなものが全くなく第三者の目線で供述しているのです。話が進むにつれてその意味がわかってくるような人間性が描いています。 殺人には理由があるのが普通ですが、殺した理由がよくわからない殺しもあります。これがどれかは、見てのお楽しみという感じです。緒形拳はもちろん昭和を代表する名優ですが、目力がすごいですね。あの目は犯罪者としても濡れ場を演じている時も射抜かれる感じで、相手はどうしようもなくなるのではないかと思えるほどです。そうかと思えば、子供のような屈託のない笑顔も見せる。緒形拳の顔は見ものです。
この作品を知ったのは、2007年に柳葉敏郎が演じていたリメイク版のドラマ。主人公である榎津巌の壮絶なキャラクターに覚えがあるほかに、昭和映画好きの父親が名作だと言ったのを受けて鑑賞したが、その言葉にウソ偽りなしだった。 昭和38年(1963年)。その当時を震撼させた殺人鬼・榎津巌によって日本中が恐怖におののいていた時代。彼は女性や老人含め5人を殺害して、弁護士や大学教授を騙って様々な人から金をだまし取る詐欺師でもあった。 息をするかの如く詐欺を働き、盗みと殺人も繰り返す男の逃亡劇を描く物語が本作。この榎津のクズっぷりを演じる緒方拳の目力がとにかくすごいです。反面、詐欺働いている時の笑顔と態度が、ある意味ホント清々しいですよ。殺しのシーンも、気づけば「えっ?」と言うくらい、いきなりかかるんです。 また、榎津の狂気を愛してしまう売春宿の女将であるハルさんが哀れで仕方なかった。終戦間近に母親(15年服役後に出所するが売春宿の女衒になる)が犯した殺人のせいで肩身の狭い暮らしを強いられ、身体を売っても醜悪な老婆となって戻った母親の邪魔によって稼ぎが少ない始末。 出会う男も自分をモノや家畜と扱うことに心底嫌気が差した時に、榎津に出会ってしまう。この時、すでに2人の人間を殺して日本中を逃げ回っていた榎津は大学教授として潜り込み、巧みな話術と性技(玉のような汗をぶつけ合うセックスシーンが時折出てくるもんだから、何とも言わぬエロスを漂わせる)を使って宿の人間を手玉に取っていく。 その獣のような絶倫ぶりも相まって普段は優しく接するものだから、ハルさんは完全に榎津に惚れてしまう。だが榎津は生まれの大分県で妻を持っているんです。 これ以上行くとかなりネタバレになるんで、続きは本編を見ることをお勧めします。 <おすすめポイント> ・緒方拳の目力と演技力。 ・父親役の三国連太郎(佐藤浩市のお父さん。釣りバカ日誌のスーさん)の哀愁ある演技 ・ラストシーンの壮絶さ。 ・BGMは少ないが、その部分を補うほどのストーリーの厚みがいい。BGMなくても成立させることができる昭和当時ならではの名作。
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