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引用:IMDb.com

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーのライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月29日更新
良いところ、本当に多いです。特に終盤はほんと素晴らしいですし。『エピソード4』、スターウォーズが好きなら絶対盛り上がること間違いないですし、最高傑作って言ってる方がいるのも分かる、すごく良い部分がある作品なのは間違いないと思いました(TBSラジオ「ムービーウォッチメン」)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ムービーウォッチメン」(https://www.tbsradio.jp/a6j/) で、ギャレス・エドワーズ監督の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。 
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。 

宇多丸さん『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』解説レビューの概要

①最終的にどうなるか観客のほぼ全員が知ってるという前提で作られている。
②スピンオフだから許される「○○を字幕で出す」
③"持たざる者たち"によって希望が受け継がれていく。
④「勝った!」ではなく「○○には届いたはず。」
⑤ドン・キホーテとサンチョ・パンサ的コンビが秀逸。
⑥○○っぽい段取り、余計な見せ場が多い。
⑦主人公のキャラが弱い。
⑧終盤の盛り上がりに間違いなし!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂 く事で判明します。 

映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」宇多丸さんの評価とは

宇多丸:
毎週土曜夜10時からTBSラジオキーステーションに生放送でお送りしている、「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」。ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を、"映画ウォッチ超人"ことシネマンディアス宇多丸が毎週自腹でウキウキウォッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーでございます。
今夜扱う映画は、先週ムービーがチャマシンを回して決まった・・そして46時間前に日本で公開が始まったこの映画。

『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』。

『スターウォーズ』シリーズの第1作『エピソード4/新たなる希望』の直前を描いたスピンオフ作品。エピソード4でレイア姫がR2D2に託した帝国軍の最終兵器「デススター」の設計図を、反乱軍が、いかに入手したのかを描く。主人公のヒロインジン・アーソを演じるのは、『博士と彼女のセオリー』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズ。今、『インフェルノ』流行ってますよね。
監督は、2014年のハリウッド版ゴジラのギャレス・エドワーズということでございます。

ということで、これを観たよというリスナーの皆様、ウォッチメンからの監視報告、メールなどでいただいております。
メールの量は・・いつもよりかなり多い!公開からわずか40時間ちょっとしか経ってないことを考えると、かなりの量ではないでしょうか。さすが、『スターウォーズ』の新作ともなればこういうことになる。
そして、賛否の比率は、"賛"褒めてる人が8割以上。

引用:IMDb.com

映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を鑑賞した一般の方の感想

「名もなき者たちの戦いに泣いた。」
「エピソード4がすぐに観たくなる最良のスピンオフ作品。」
「ドニー・イェン最高。」

などの声が並ぶ。
中には「スターウォーズ映画史上、最高傑作では。」という人もちらほら。

一方、否定的意見の方は・・

映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」批判的な意見

「キャラクター描写が薄く、魅力に欠ける。」
「話運びがとにかく鈍重。退屈だった。」

という意見も。
"賛"の人も"否"の人も、
「前半はかったるい」
「後半に向けて盛り上がる」
「ラストシーンには感動する」
というところでは大部分一致していた。同じ部分でね、同じ話して取っ組み合いの喧嘩してるというね。よくある不毛なパターンですね。
代表的なところ、ご紹介しましょう。

『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』代表的な感想

(メール紹介)R2T2:
宇多丸さんこんばんは。ローグワン観てきました。
鑑賞後も動悸が治まらず、まだ冷静に思考できない状態ですが、ひょっとしてこれは『スターウォーズ』シリーズ最高傑作ではないでしょうか。
今まで『スターウォーズ』シリーズは、フォースやライトセイバーを使いこなせる、ごく少数の選ばれし存在の視点から語られてきました。だか、今作は、その他大勢の"持たざる者たち"の生き様を描いています。"持たざる者たち"は"選ばれし者"に勝つことはできない。だが、希望を繋いでいくことはできる。"持たざる者たち"にもできること・存在意義があることを教えてくれます。

宇多丸:
ということでね。
ラスト、名もない同盟軍兵士たちのところ、僕も分かりますね。シリーズ史上、屈指の名シーンだと思います。あのシーンだけでも100億点の価値があると思います。最近、点数の感じが自分でもよく分かんない(笑)。今回点数表現を控えてしまいましたが。

(メール紹介)ミツバチバッチ:
会社終わりに劇場へ駆けつけ、たった今観て参りました。
感想としては、不満です!いけすかない表現なのは承知で言いますが、この映画"人間が描けていない"に尽きると思います。
まず、キャラクターたちの気持ちの変化が今ひとつ呑み込みづらい。
ジンのように悲しい生い立ち故に心を閉ざしている人が主人公の場合、そのキャラクターが心を開いていくプロセスは、普通、仲間たちとの絆が深まっていくのと並行して描くと思うんです。
ところが今作では、クライマックスまでに、ジンが泣いたり笑ったり感情を露わにするきっかけは、結局お父さんや、フォレスト・ウィテカー演じる育ての親絡みのシーンで、全部内輪の話なんです。
これらのシーンでジンはいつも単独行動です。ローグ中隊は一緒に旅をしているだけの添え物で、ジンは彼らとは無関係なところでトラウマを自己解決し、クライマックスまでに自力で立派な戦士の顔になってしまうんです。
そして、そんな風にきちんと絆を深めるプロセスも描いていないのに、いつの間にかローグ中隊が「お前と戦って死ねるなら本望」的なテンションになってしまっているんです。
そんな状態でクライマックスに突入されたって、乗れません。
あとは、ドニー・イェンとK2SO(ドロイド)以外のキャラは、皆ローテーションで無口なので、個性もよく分からないし、好きにもなりませんでした。
改めて、レイやフィン、ポー・ダメロンに一瞬で魅了された『フォースの覚醒』(エピソード7)の凄さを感じました。
とはいえ、正直何回か泣きました。ジンたちの最後は言うに及ばず(宇多丸:あ、言っちゃったな。)、特筆すべきはあの赤いライトセイバーが暗闇の中でブシュンと光る怖さ、神々しさ(宇多丸:全然ネタバレじゃない、皆知ってるわ!)、狭い通路でダース・ベイダーに襲われることの圧倒的な絶望感が伝わってきました。
ギャレスさん、総合的には、本当にありがとうございました。

宇多丸:これはわかりますよね(笑)。

引用:IMDb.com

『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』宇多丸さんが鑑賞した解説

さあ、ということで『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』、私もTジョイ・・先ほどの、高橋ヨシキさんと昨日観てきた直前の音声もありましたけど。
あ、そうだ、『ローグワン』観賞直後の高橋ヨシキさんの感想。
まあ一言の軽い感想ですけど・・観終わった直後なんでちょっと動転してるかもしれませんけど、こちらもお聞きください、どうぞ。

(ダース・ベイダーのテーマが流れる)
(観賞直後音声-開始)

ローグ・ワン、見終わった直後の音声

宇多丸:
皆さんご安心ください、高橋ヨシキさん、ご存命中でございます。それでは、終了直後のヨシキさん、お話を伺ってみたいと思います。いかがでしょうか。

高橋ヨシキ:
どうも、お疲れ様でした。

宇多丸:
お疲れ様でございます。

高橋ヨシキ:
2回連続で観ちゃって、どんどん、観ていくと2回目の方が良くなる感じもあって、すごい楽しめましたね。
あと、結構・・割とネタバレすると、「えっ!?」ていうか、秘密が多い映画だったので、急いで観た方がいいと思います。
あと、最近はおじさんくすぐり的なことも諦めて見るようにしてるっていうか、普通に、素直に楽しめばいいんじゃないかっていう心境に今はなってます。

宇多丸:
やってくれてんだからね、せっかくね。

高橋ヨシキ:
そうそう、貰えるものは貰ってといてっていう。その方がいいと思います。

宇多丸:
分かりました。非常に楽しんだということで。

高橋ヨシキ:
そうですね。

宇多丸:
ということでございました。高橋ヨシキさん、ありがとうございました。

高橋ヨシキ:
どうもありがとうございます。

(観賞後音声-終了)

宇多丸:
はい、ということで、ヨシキさん多分、ちゃんとした感想はヨシキさんのメルマガであるとか、「すっぴん!」の方でやるとか、あちこちでもっとちゃんとしたのがあると思うんですけどね。とりあえず終わった直後はこんな感じのテンションでございました。

『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』宇多丸さん解説

ということで、ヨシキさんと観たTジョイプリンス品川のIMAX字幕3D、連続で2回観て、つい先ほど、私TOHOシネマズ錦糸町に吹き替えも観とこうと思って、吹き替え版2D観てきました。
曜日と時間のせいもあって、子供たちも含めて満席状態で観ました。
今回、スペシャルウィークということで、いろんな方がお聞きになってるとおもいますので、リスナーの皆さんの中にどの程度の"スターウォーズ弱者"がいらっしゃるかちょっと分からないので・・実際、さっきの吹き替え版観て出てきたばかりのお父さんとお子さんは、お父さんが「これ、まだお話続いてるやつだから。」、子供が「えっ!これ続きものなの?」。こんな会話が聞こえたぐらいでですね、改めてそういうビギナー中のビギナーの方が意外といらっしゃると思うんで、評もクソもない大前提を先に言っておきますけどね、今回の『ローグワン』、最低限でも1977年の1作目『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』は、最低限でも観てることが絶対条件です。一応念を押しておきますが。

引用:IMDb.com

観客のほぼ全員が知ってるという前提で作ってる作品

何しろ、先ほど「ネタバレ?いや違う」って言ったけど、要は、最終的にどういうことになるかは、『スターウォーズ』を観てる、観客のほぼ全員が知ってるという前提で作ってる作品ですからね。言っちゃえば、「エピソード4のあの物語に繋がっていくんだ」もっと言っちゃえば「エピソード4のあのオープニングに繋がっていくんだ」というその1点に向けて全てが組み上げられていると言っても基本過言ではない作品ですよね。分かってるからこそ盛り上がるというタイプの作品なんですね。後ほど言いますけど。
ということで、逆に言えば、エピソード4を観ていれば、そしてエピソード4から始まるスターウォーズサーガが好きなのであれば、ほぼ自動的に楽しめる、グッときてしまう部分がある1作なのは間違いないと思います。
メールにもいっぱいありましたけど、今回の『ローグワン』を観てから改めてエピソード4を観返せば、更に感慨が増すであろうことも必至と。非常に『エピソード4』観返したくなりますね、やっぱりね。

"あの"明るい話の土台にこんなに重たい背景が横たわっていたとは・・

要は『エピソード4』っていうのは、『スターウォーズ』シリーズの中でも最もストレートに明るい話なわけですよね。ストレートにエンターテインメントしてる1番明るい話なのに、"あの"明るい話の土台にこんなに重たい背景が横たわっていたとは・・それだけで切ない。要は、エピソード4の主人公のルークたちが華々しくワァーっとなっていく(活躍していく)のが、「その影に、あの人たちの犠牲があったんだ・・!!」っていうのが切なくなるというね、効果がございます。
それとは別に、『イウォーク・アドベンチャー』とか、その続編の『エンドア/魔空の妖精』とかありますけど、それを別に(無かったことに)すれば、スターウォーズの劇場用実写長編映画としては初めての正式スピンオフ作品ということで。つまり、メインのストーリーの「エピソード○○」とかってつくカノン(正史)とは違うスピンオフということで、カノンとは異なる・・例えば映画としてのスタイルやトーンに比較的自由にトライできる機会っていうのもある。
要するに、スピンオフだから、言っちゃえばスターウォーズのメインの方ではできない
、ジャンル的な挑戦とかもできたりすると。

今回の『ローグワン』、禁じ手の手法をバンバン使ってる

というのが今回の『ローグワン』。まあ戦争映画的な展開っていうのは勿論のことですけど、そのカノン(「エピソード○○」の方)では結構禁じ手の手法をバンバン使ってる。
例えば、字幕で惑星の名前とか設定を出すのって、あれ絶対にカノンじゃやらない語り口っていうか、やったらファンが怒る語り口ですね。スピンオフだから許されるし。
あと、これは高橋ヨシキさんに言われてそういえばと思ったけど、回想が入るっていうのは、カノンは絶対ないんですよね。
フォースでいろんなこと閃いたりはするけども、回想はない。だから、回想ショットが入ったりすることも含めて、今回の『ローグワン』、そういうところも観てて、今回はスピンオフだから、スタイルからしてカノン(正史)とは違うことをやるという宣言だという風に僕はとって観てましたけどね。

引用:IMDb.com

結局壮大な家族喧嘩の話じゃないか

それこそ、カノン(正史)のエピソード○○とかは、事実上、メールでも皆さん仰っている通りです・・一部の、資質をもともと豊かに持っている、具体的にはもうスカイウォーカー家ですからね、スカイウォーカーの家系を中心とした"もともと持ってる人たち"の物語に、最終的には結局収斂していってしまいがちなところですね。要は、実は狭い小さいところの話に感じられるところもなくはないわけですよ、時には。「結局壮大な家族喧嘩の話じゃないか」なんてよく言われますけども、そういうのに対して、例えば今回の『ローグワン』のように、フォースの力を持っているジェダイとかシスっていう連中以外の、普通の人々・・皆んもこの表現使われてましたね、"名もなき人々"の物語を紡ぐことができるっていうことをやってみせることで、むしろ、今後の『スターウォーズ』の世界観、スターウォーズサーガに広がりが出た。スカイウォーカー家の話だけじゃないですよっていう。勿論、小説版とかコミックの方ではスピンオフはやってたけど、実写映画版としては初めてちゃんとやってみせたということです。そういう広がりが出たという意味で、要するに、カノンとスピンオフを1年ずつ交互にやっていくという、ディズニーに移籍して以降の『スターウォーズ』の戦略の何という確かさよ!ということでもあるんですけどね。

今回の『ローグワン』、重要な1作

ということで、それを証明してみせるという意味でも非常に今回の『ローグワン』、重要な1作ですし、ほんとに、下手すりゃ今後100年続くかもしれない『スターウォーズ』というエンターテインメントを占う重要な局面でもありますし、僕的に今回の『ローグワン』で非常に大きいファクターは、ドニー・イェンと、その相方を演じているチアン・ウェンさんという方のキャスティング。まあドニー・イェンは言わずと知れた中国のカンフー・武侠アクションスターですね。もう大スターでございます、長年ね。このキャスティングが僕は非常に大きい・・つまり、『スターウォーズ』というのはですね、黒澤明の映画含めて、東洋的なるものからのインスパイアが非常に大きいと公言しているシリーズでありながら、これまでただの1人もメインキャストに東洋人がいなかっとんですね。僕はそれが、スターウォーズファンでありながら非常に不満に思ってた部分ですね。はっきり言って、『フォースの覚醒』でさえも入ってなかったところにすごく失望して、ちょっと怒ってたぐらいなんですね。「レイシスト認定するぞコノヤロウ」みたいに思ってたぐらいなんですけど、『エピソード4』の時点でオビワンを三船敏郎が演じるなんてキャスティングももし実現してたらね・・ただそれが実現してたら、ひょっとしたら何かがバランスおかしくなってたかもしれませんからなんとも言えないところだけど、ようやく東洋人がメインキャストにというか実現したということも非常に僕にとっては大きいなということでございます。

「もう良いにきまってるでしょ、それ!」っていう作品

ということで、観る前からすでに僕が今まで言ってきたような条件(ガワの条件)の部分でもう一定以上作品としての意義が保証されてるような作品なんですね。「もう良いにきまってるでしょ、それ!」っていう作品なんですけど。
実際に観て僕はどうだったかと言いますとですね・・ここから先、私の意見強く言わせていただきますが、大絶賛派が非常に多いのは存じ上げております。それが多い中申し訳ないんですけど、僕は決して、両手をあげて全部が全部「最高!」っていうテンションでは、正直ないです。まず先に、良かったところの話をしておきます。っていうのは、良いところはめちゃくちゃあるんです。良いところもいっぱいある作品です。なので良かったところを先に言いますけど。
とにかくこの映画、当たり前っちゃ当たり前なんですけど。
こう言ってる方が多いのも分かります。というかこれがほんとにこの映画の事実なんでしょう・・後ろにいけばいくほど、終わりに近づけば近づくほど、つまり『エピソード4』に近づけば近づくほど、ぐいぐいエモーションが高まっていくということは間違いないと思います。

引用:IMDb.com

その後を知ってる我々観客

要は、その後を知ってるわけですよね、我々観客は。その後っていうのはつまり『エピソード4』ですけど、その後を知ってる我々観客は、主人公たちが最終的にどうなっていくのか、まああらかた予想がつくわけですよね、『エピソード4』で語られることであるとか。「あ、私やりました」って人が出てこないわけですからね。っていう、言ってみれば、物語的運命ですよね。我々も「こうなっていく」というのを知っている。その物語的運命に今回の劇中の登場人物たちが、否応なくやっぱり物語的運命に行きついていく。その否応ないところに行きついていくっていうのは、要は悲劇なわけですから。その悲劇性というのに、やっぱり非常に涙腺を強力に刺激される作りのは間違いない。すごい終わりに近づけば近づくほど、というのはあると思いますね。
しかも、ここほんとに良いところだと思うんだけど、今僕悲劇って言いましたけど、この悲劇は、同時に劇中何度もキーワード的に口にされる「Hope」。希望っていうね、この「Hope」っていうのは言うまでもなく、「Hope」って言葉自体が『エピソード4』、つまり『エピソード4 A New Hope』という作品の暗示であるわけですけど。悲劇が希望と表裏一体のものであるっていう、そういうことを描いているわけですね。

ある1人の人物が人生とか命をかけて果たしたある役割

要は、ある1人の人物が人生とか命をかけて果たしたある役割みたいなものがあるとして、それ単体では非常にちっぽけな、なんなら「それ失敗じゃん」とか、それこそ悲劇的にも見えたりとかっていう出来事かもしれないんですけど、それがまた次の誰かに伝わっていったり、その受け取った誰かがまた次の誰かにそれをバトンタッチして、やがては偉大な何かを達成するかもしれないというようなこと。これって、僭越ながら・・例えば、僕らRHYMESTERというグループなんですけど、『そしてまた歌い出す』だとか、あと佐々木中くんという方の『切りとれ、あの祈る手を: ("本"と"革命"をめぐる五つの夜話)』で書かれているテーマとも本当に通じる話だと思うんだけど。
なので、主人公たちが今回の『ローグワン』の劇中、自分たちのやったことについてこういうことを言うんですね。「誰かには届いた筈だ。」ということを言うじゃないですか。
「やったー!勝った!」じゃなくて、「大丈夫だったかな・・いや、きっと誰かには。」と、この"誰かには"って言い方が良い。

新たな希望となっていく小さな小さなバトン

そういう風に口にしてからまさに劇中、どんどんその"誰か"たちによって、ほんとに、のちに新たな希望となっていく小さな小さなバトンが、文字通り手渡しされていくと。それもほんと地を這うような手渡しをされていくという、終盤のある展開。これはもうほんとに、絶対『スターウォーズ』の正史の方では語り得ないし語られ得ないだろうし、しかし同時に、その正史・・ルークやアナキン・スカイウォーカーやダース・ベイダーっていうような有名な英雄たちの物語にも厚み深みを更に増す、まさにスピンオフならではの・・ほんとにこの表現使ってる人多かったですけど"名もなき英雄たち"ですよね。"名もなき英雄たち"の物語だっていうテーマを、この終盤のバトンタッチが、ほんとに見事に浮かび上がらせてて、無論もう、ここはもう勿論涙腺大決壊ってことでね、ドバーッて感じですし。

引用:IMDb.com

"名もなき英雄たち"の物語だっていうテーマ

あと、この"名もなき"ってところで言うと、今回、主人公たち側だけじゃなくて、悪役側・・デス・スターの工事責任者クレニック長官--ベン・メンデルソーンという方が演じている--が、これもやっぱちょっと"名もなき"タイプ故の哀感が最終的に物凄く味わい深く浮かび上がってくる役柄で、非常に良かった。彼が・・例えば、弱げなんだよね。クライマックスでドカーンってあちこちで爆発してんのを、目が泳いで「どうしよう。」って感じになってるところとかですね。あと彼の迎える最期があって、非常に味わい深い。あのラスト・・彼の想い。顔をあげたら「あー・・。」っていう。あれは見事なシーンじゃないでしょうか。個人的には、ピエット提督以来の帝国将校の大ヒットキャラ。クレニックさん、僕素晴らしかったと思いますし。
それに対する、のちに『エピソード4』でメインの悪役を張っていく連中。要はダース・ベイダーであったりピーター・カッシングの演技をCGIでもう1回作り直したモフ・ターキンであるとか、ああいう連中の本当の悪さ、怖さ。これまでの、いわゆるカノンでは描かれなかったような悪さ、怖さっていうのが、今回しっかり描かれているっていうのも非常に良かったんじゃないでしょうかね。
「あ、ダース・ベイダーって怖ぇんだ。」ってね。

ダース・ベイダーについて

ダース・ベイダー・・『エピソード4』バージョンで目が赤いわけですけど、目が赤いっていうのをことさらに強調する光の当て方とかがちょっとわざとらしくて嫌でしたけどね。あと、『エピソード4』直前にしてはちょっと動きすぎじゃないかなとか、体型がデヴィッド・プラウズと変わるとちょっと違って見えるなとか、色々言いたいことあるんだけど、まあいいや。
ということで、"名もなき組"というか"名もなきキャラ"みたいなことで言えば、やはりドニー・イェン演じるチアルート、チアン・ウェンさん演じるベイズのこのコンビ。東洋人コンビが本当に素晴らしいと。

ドニー・イェン、連想するのは『座頭市』

ドニー・イェン・・盲目で杖を振り回して戦うということで、当然連想するのは『座頭市』ですよね。世界的に有名なキャラクターですから。そこに、相方というか、ほとんど古女房的なベイズっていうキャラクターが、呆れ半分に付き従うこのキャラクターがついたことで、ドニー・イェン単体だと『座頭市』なんだけど、ベイズのキャラがつくことで、要はドン・キホーテですね。ドン・キホーテとサンチョ・パンサ。この構図が浮き上がってくる、入ってくるところが僕は今回すごく味わい深いあたりだと思います。
つまり、ドン・キホーテってどういう人かっていうと、"すでに滅びた騎士道を信じ続けている夢見る男"なわけでしょ。で、サンチョ・パンサは、それにずっと付き従ってるけど、でも現実主義者で、「この人もう頭おかしくなっちゃってんだよ、旦那様」ってやるじゃん。ところが、サンチョ・パンサは、ドン・キホーテが倒れた時に、「騎士道があるだろ!」って、要は、すごく懐疑的に現実的に見てた男がついにその理想に感化されるっていう、そういう話なわけですよ。

引用:IMDb.com

クライマックス

なので、クライマックス、まさにその構図ですよね。ずっと「フォースなんてさ・・。」って言ってた人が、言葉を受け継ぐようにやるというね。非常に、本作の(テーマ的には)白眉と言っていいんじゃないでしょうかね。
ただね、これドニー・イェンだから仕方ないんですけど、案の定・・ぶっちゃけ、ドニー・イェン演じるこの方は、どんなジェダイより強いです、正直。こんな強い人見たことないぐらい。ということで、ちょっと描写としてのバランスが悪いかななんていうのがあったり。ただ、素晴らしかったです。キャラクターとしても、場面としても。
あと、リズ・アーメットさんが演じる元帝国軍パイロットのボーディーさんっていうキャラの、見るからの小物感とか。K2SOっていう今回のドロイドの、ドロイドらしからぬっていいと思うけど、やさぐれ感とかも含めてですね、"名もなき人"たちの物語として非常に良いキャラ揃ってるなと思いましたし。

非常にダイナミックな映画全体のルック

映画全体のルックも・・特にデジタルアリアレクサ65ミリカメラ、ウルトラパナビジョン70レンズっていうのを活かした、非常にダイナミックな、広い景色の画のところ、本当に素晴らしかった。グレッグ・フレーザーさんという撮影監督が撮ってる。
オープニングの、ちょっと西部劇風っていうか、マカロニウェスタン風の悪漢たちが家にのそっと並んで横になってやってくるあの辺も良かったですし、あとやっぱりクライマックスの、モルディブでロケしたというビーチ・・まず、"綺麗なビーチとスターウォーズ"っていう、組み合わせの妙は本当に発明だと思いますし。あと、勿論戦争映画的なルック。もともと『エピソード4』自体が第二次大戦モノというものに大きくインスパイアされた作品なので、今回の、本格戦争映画的なルックに「これがスターウォーズだよ!」と感じる人が多いのは当然だなという風に思います。
あと、デス・スターのレーザーの結果、完全に原爆風になってますよね。あれも本当に良かった。
要は、主人公のお父さんはデス・スターの開発者なんだけど、ちょっとオッペンハイマーが入っているというかね。悪魔のような兵器の開発者なんだけど、その苦悩というのが入っていて、というような感じ。その辺りも含めて、ギャレス・エドワーズさんのこだわりの部分というのがよく出てる部分もいっぱいあったと思います。

良い所は良い。が・・

ということで、良いところはとても良い作品だと思うんです。
ただ、正直ですね、ちょっと色々惜しいところも多い作品だとは思う。
まずは、なにしろクライマックスの肝心の、デス・スター設計図ぶんどり作戦。まあこれが1番見たいわけですけど、ここにいくまでが長すぎだし鈍重ですよね。この意見も多かった。はっきり言うと、結構退屈です。
っていうのも、なんか余計だったり、重なってたりする段取りとか絵面がいちいち多いわけです。例えばヤヴィン(第4衛星)にある反乱軍基地に主人公たちが2回行ったり来たりするのとかね、なんかくどいなとか。
栄えてる市場っていう場面が2回出てくるとか、なんかくどいっていうのはあったりする。

引用:IMDb.com

余計な見せ場が多い

全体に、今回クライマックスで、開閉する出入り口であるとか、「パネルを直せ」だとか、ちょっとゲームっぽい段取りみたいなのがすごく多い。メインスイッチが物凄く嘘くさいところにドーンとあるとか。ゲームっぽい段取りが多かったりして、なんかこう余計な見せ場が多いという感じがしますね。
あとは、フォレスト・ウィテカーの役が予想以上に何の役にも立たないのとかも含めて、中盤は端的に展開として面白くないんですよ。面白い場面がないっていう。
で、だらだらしてる割には、メールにも多かった、肝心の主人公のキャラが特に弱いというふうに、私思います。これもメールにあった通り、主人公たちがチーム化していくプロセス含め、大きな動機付けやそれになるようなポイントが、結構関連的な台詞で説明されるだけだったりするところが多いというふうに思います。

『エピソード7』とは、ほんとに対照的

そういう意味で、色々難しい部分を全部先送りして済ましたずるい映画なのは間違いないけどらキャラ立ちとか関係性描写みたいなことは抜群だった『エピソード7』とは、ほんとに対照的だなという風に思います。
あと、必要な描写がないんですよね。例えば、カイバークリスタルを集めてるっていう具体的な絵面は必要でしょ!とか、色々あったりしますね。
何にせよ、戦争チーム潜入モノ・・例えば『特攻大作戦』とか『荒鷲の要塞』、『ナヴァロンの要塞』とか色々ありますけど、要するに、元々結構確立されてるジャンルなだけに、"もっとできただろ感"がすごく目立ちやすい部分ではあったかもしれませんね。

親父接待の部分にも言いたいことがある

あと、これはうるさ型故かもしれませんが、色々親父接待の部分にも言いたいことあるんですよ。あるんだけど、これだけは言わせてくれ・・ラストのラスト、僕は号泣してましたよ。大号泣してるそのピーク、ある人物が、パンアップでフッて顔を映すんですよ。まあそれがオチになってるんだけど。その顔がね、CGで作ってるんですけど、微妙に僕の知ってる顔と違うっていうんです。これは初見時は大変ノイズになりました。2回目以降はそういうもんだと思って観たんで大分心穏やかになりましたがね。
あと音楽のバランスとかに関してもちょっと僕は言いたいこと・・これはもううるさ型おじさんからです。
なので、良いところ、本当に多いです。特に終盤はほんと素晴らしいですし。『エピソード4』、スターウォーズが好きなら絶対盛り上がること間違いないですし、最高傑作って言ってる方がいるのも分かる、すごく良い部分がある作品なのは間違いないと思いました。『ローグワン/スターウォーズ・ストーリー』是非劇場でご覧ください!

<書き起こしおわり>

○○に入る言葉のこたえ

②スピンオフだから許される「設定を字幕で出す」
④「勝った!」ではなく「誰かには届いたはず。」
⑥ゲームっぽい段取り、余計な見せ場が多い。

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