劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のライムスター宇多丸さんの解説レビュー
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RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
宇多丸さん『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』解説レビューの概要
①記録的大ヒット!この期間に劇場公開された世界中すべての映画の興行収入よりも、日本の鬼滅の刃の興行収入が多い状況。
②原作を知らなくても楽しめる。
③死を美化する内容である点、大きな問題点という意見も。
④○○はすごく映画的
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』宇多丸さんの評価とは
(宇多丸)
さぁここからは、私宇多丸がランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する映画週刊時評ムービーウォッチメン。
今夜扱うのは、10月16日に公開されたこの作品。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。
週刊少年ジャンプで連載されていた吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さん。あのちょっとまだプロフィールが謎に包まれているというかね、表に出ていらっしゃらない女性の方なんですよね。
吾峠呼世晴の大ヒットマンガをアニメ化した鬼滅の刃の劇場版。
大正時代の日本。主人公の炭治郎(たんじろう)は鬼に変わってしまった妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻し(字が難しくて読み違えそう・・!)
家族のカタキを取る為に鬼殺隊に入隊。鬼殺隊最強剣士の1人、煉獄杏寿郎 (れんごくきょうじゅろう)達と無限列車に潜む鬼たちと戦う任務に臨むと。漢字が多いよう。
声の出演は、花江夏樹さん、鬼頭明里さん、日野聡さんなどテレビ版に続き外崎春雄さんが監督を務める。ufotableという制作会社が作っております。
鬼滅の刃、記録的大ヒット!
という所で、この鬼滅の刃もちろん皆さんご存知の通り目下まぁ記録的大ヒット!
日本のみならず、この期間に劇場公開されたすべての、世界中で公開したすべての映画の興行収入よりも、日本の鬼滅の刃の興行収入が多いと言う、どうかしてるぜっていう事になってますけどね。
それくらいね、世界の映画館が今ね、ストップしちゃってるっていう事でもありますけどね。
見れるという事がありがたい事です。
映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を鑑賞した一般の方の感想
メールの量ですが、見たよというムービーウォッチメンリスナーの方からの感想の量ですが、「多い」!
今年最多とまではいかず、という感じでございます。『TENET(テネット)』よりは少なかったようですが、多いという感じです。
賛否の比率は褒める意見が半分ちょっと。その他は良い所もある良くない所もある。
良くない所もあるがそれでも好きという声が目立った。
褒める意見の主な内容は
・丁寧な作画、迫力のある音楽、声優たちの熱演が良かった。
・原作をあまり知らなかったがそれでも楽しめた。
などなどがございました。確かに知らないで行ってもちゃんと楽しめる作りですよね。原作やテレビシリーズのファンも、ほぼ知らないという人もどちらもそれなりに満足できた様子。全然つまんないってことはまず無いんじゃないかなぁ。
「これだけ活気のある映画館は久しぶり」という喜びの声も多かった。
一方批判的な意見としては、
・なんでもかんでもセリフで説明しすぎ。
・原作通りだが展開が唐突だし、ギャグのせいでテンポが損なわれている。
などがございました。
映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の好感触な意見
代表的な所をご紹介しましょう。
ラジオネームhkさん。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』ウォッチいたしました。
原作はまぁ既読で読んでいて、映画の感想は3ですと。
心情を吐露しすぎ、同じ事を繰り返し言い過ぎといった正論は、この映画に対してはご容赦いただけないでしょうかというね。
で、いろんな事を書いて頂いて、
「一見続き物の新参お断り映画に見えても、原作にはない墓周りの場面を冒頭に追加したり、中盤の夢パートを少し長くする事で各登場人物の人柄説明に時間を割くなど。独立な映画として成り立たせるための工夫行われており、無限列車での戦いが3分の2、残り1/3が本当の見せ場と映画自体の構成も計算されたものになっております。
展開を知らない方にとって後ろ3分の1が唐突なのは否めませんが、圧倒的な治療でカバーできていると思います。(で色々また書いて頂いて)
何より鬼滅の刃という作品において、無限列車編を長編映画にする事を選択し、語られる物語の本質に向け、正しく映画化してす見せた事に脱帽です。鬼に通ずる無限という言葉、列車という舞台、夢で描かれる死への向き合い方、そして不可逆的にやってくる夜明けでの決着における人間と鬼の見事に対局な結末。
原作の持つこれらの要素を劇的にスクリーンに展開する事で鬼滅の刃という作品の持つ、残酷さ美しさを一本の映画内で提示し、語りきることに100%成功しているのではないでしょうか。
この映画に関わった全ての方々と、20歳の若き青年煉獄杏寿郎が日本のシネコンを守ってくれた。これは誰がなんと言おうと揺るがない事実だと思います。」
映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の批判的な意見
と。一方良くなかったという方もご紹介しますね。
ラジオネームデコさん。
「鬼滅の刃、漫画全巻持っていて、この映画がどのようなストーリーになるか分かった上で鑑賞しましたが、結論から言うと否です。否定的です。
劇場版という事で作画や各キャラクターの技の演出など、テレビアニメ版よりもさらにクオリティが上がっていましたが、さまざまな足し算をしていく事で1本の映画としてはマイナスになっていったのではないかと感じました。
テレビアニメと劇場版で違う事は作品のクオリティだけではなく鑑賞側干の作品を見る姿勢がそれこそ全集中して作品に望む形になるので状況説明のセリフや感動のシーンでの音楽の使い方などが過剰に感じるなぁと、ノイズの部分が目立つように感じました。
原作を忠実に再現しているので、ストーリーについては何とも言えない部分ですが、やはり後半の唐突さは気になりました。
内容も「鬼になれ」「断る」のやりとりが冗長に続いているだけに見えましたし、すべてのキャラクターがそれぞれ泣いたり悲しんだりする部分が長く、カラスまで涙しているシーンはさすがに笑ってしまいました。
これね、あの原作確かめましたけど、さすがに原作マンガではカラス泣いてないんで、これヤマト復活篇、あるいはブッタ第一部冒頭等における、いきすぎた動物描写・・(笑)
でもあのカラスは知性があるからさ、はい。
私もちょっと「えっ?」「今俺が見たものは」って思いましたけれども。(笑)
「そもそも週刊連載でのストーリー展開と1本の映画としてのストーリー展開の合わない部分があると思っていますが、オリジナルストーリーではなく原作の途中から始まって途中で終わるというストーリーで映画に出来てしまうのは、逆に鬼滅の刃がすごいという事なんでしょうね。
ダラダラと書いてしまいましたが、鬼滅の刃劇場版は様々なものがきっちり詰め込まれた映画だと思いますが、見る側に想像する余地も与えないほどすべてが説明された映画だったと思います。
それが個人的にはすごく窮屈に感じてしまい、思ったほど楽しめなかったというのが感想です。」
というご意見。
あとですねちょっとこれ、あの長いのでちょっと読みきれないんですが、ラジオネームミオートさんという方。この方、保育士の方から教育的観点からもちょっと批判的意見・・
教育的観点から見た鬼滅の刃の問題点
えー要するにですね、まぁ鬼滅の刃で今回の映画に限らず作品自体に関してですね、死を美化する内容である点、大きな問題点ですと。
死を美化する、死が温かいものであるかのように美化して描かれる事。これははっきり申し上げまして最悪としか言いようがありません。教育者としてはね。
この映画がR指定ではなくPG指定であるという点、これどうしてこの黒グロさでPG12なのかというね、ちょっとこのレーティングに関しても疑問を呈されているというメールでございました。
といったあたりで、皆さん!いっぱいメール頂いてありがとうございます!
非常に熱量高い物もあって、ありがとうございました。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』宇多丸さんが鑑賞した解説
私も『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』tohoシネマズ日比谷にて2回観てまいりました!さすがにね、平日の昼は落ち着いては来てますが、でも昼にしては結構いる感じでしたかね。
先週まではね、全く知らない状態でしたけど、知らない状態で一旦1回見て、アニメ版を全部見て、原作漫画を読んで、もう1回劇場に行って、でもう1回映画の原作マンガも最後まで読んで、というような感じで、私も出来る限りの事をして参りました!
まぁ昨日木曜パートナーの宇内梨沙さんとしみじみ話してたんですけど、ここまで老若男女全方位的に巻き込んでの一大ブームってちょっと記憶にないっていうか久しぶりというか、かなり稀有な事だと思いますね。
例えばエヴァンゲリオンがやったって言っても、それはやっぱり青年的な年齢以上という所になるでしょうしね、はい。まぁ本当にすごい事だと思います。
今日はですね、その国民的大ヒット作品について僕なりに理解し、楽しんだり、あるいは興味深く考えたりというのをちょっとお話しさせていただこうかと思います。
なのでまぁちょっとディープなね、本当にファンとしてのディープな話みたいな事を期待してる方、ちょっとそれはあの、私の役目ではございませんのでご容赦下さい。
個人的には特にですね、週刊連載漫画からテレビアニメシリーズから劇場用映画という、それぞれのメディアの違いというのは非常に際立ったという意味で、際立っているという意味で改めて色々考えさせられる良い機会にも
なった作品でした。
鬼滅の刃、原作マンガについて
まず、すべての土台となる原作漫画、2016年から2020年週刊少年ジャンプで連載されていました。
話としては、残酷さやね、おどろおどろしさを含むような。いわゆる伝記ロマンっていう事でいいと思うんですよね。限りなく時代劇的なニュアンス。まぁただ、大正時代を舞台にした、ただ具体的な大正時代性みたいな・・例えば関東大震災が出てくるとかそういう物は描かれない・・なんとなく、ちょっと前な時代劇よりな近代的な対象を舞台にした伝記ロマン的な物。
もちろん残酷さや、おどろおどろしさ。あったりするんですが、事前にその設定等から想像していた、いわゆる劇画タッチ的なイメージからすると、もちろんそういうね、濃い、圧が強い、ハードで重たいっていう見せ場もあったりするんですが、全体的には僕、事前のイメージからすると意外なほどポップ、コミカル方向にデフォルメされた所が多いのがすごく印象的でした。結構コメディなんだなっていうね。
善逸くんのキャラクー
で、実際声出して笑っちゃうからそこが一番楽しいんだったりでしょうね。特にやっぱりみんな大好き善逸くんとかをはじめ、ちなみにこの善逸くん、人気投票一位だったそうですけど、僕個人的にはですね、この善逸のキャラクター、いわば逆ギレ潔癖最高キャラ的な面白みはですね、ご存知クリピーナッツDJ松永とすごい近いものを
感じて余計に親しみを感じてしまって笑ってしまったっていうね。(笑)
「ああああごめんなさい!」「はいわかりました!」「はいおりますおります!」とかさ、ああいう感じがすごい松永っぽいっていうね。
逆ギレ潔癖最高キャラ。(笑)
みんな大好き善逸くんを始め、やはりクレイジーなレベルで野生児すぎる伊之助くんであるとか、そして突き抜けていいやつぷりが先程もね、ちょっと山本さんとお話しましたが、天然というかほとんどサイコ的なその常人ばなれした領域に入っている主人公、炭治郎くん。
この3人の少年を通じた、それぞれにヤベエ面も持っている、あるいはその暗い過去、バックグラウンドを持っていたりする、つまり、詰まるところ、キャラが立っているこの少年3人および、その周りの人物たちのワチャワチャした人間関係とか、ワチャワチャしたその青春コメディー感っていうのが実はとっても楽しい、多幸感。そこが非常に大きな魅力、人気の源になっているというのは遅まきながら、ちょっとわかった部分ですね。
やっぱり彼らのキャラクターそのものが好きになっちゃうとかね、彼らと一生ワチャワチャしていたい!っていうふうになるとかね。
無限城
だからこそ、特に終盤、ラスボスがね、本拠としてる無限城っていう所でね、延々続く、敵味方双方の、もう本当に削り合いの決戦、がですね。痛々しくもドラマチックに盛り上がっておりますね。
このクライマックスの、なんていうのかな非常にお互いにキャラ立ちしまくった最上級忍者チームの総力戦みたいな感情。
これ僕、白土三平の忍者武芸帳を終盤、彷彿させて、これは確かにめちゃめちゃ燃えるし、盛り上がるなぁという事ですごく楽しく読みました。
今言った青春コメディー感とも通じる部分ですけど、味方チームも敵チームも組織構成。ヒエラルキー。あるいはその中でのルールというのが、ものすごくわかりやすく図式化されていて、言っちゃえばスポーツ的なのも、これ
大きいなと思いました。
これ鬼滅の刃の魅力の・・まぁ要は地区予選から全国大会プロ2軍から1軍、そしてメジャーリーグ的にですね、お話全体の進むべき方向とか今どのぐらいに主人公たちがいて、何が争われているのかっていうのが、スポーツ的ゲーム的に非常に焦点が常に明確に絞られているという事ですね。
で、その戦いと戦いの間には、休息と訓練期間とがきっちり挟まれて、あるいはその少年達ならではの、憧れとか焦りであるとか、自分はまだこれしか出来てないって焦りだとか、あるいはコンプレックスみたいなのも、その間に描かれっていう。
戦闘シーンのロジック
あるいは戦いの最中も、こういう敵だからこう攻める、こう守るというようなロジックが割としっかり積み重ねられていって、ファンタジー的なチートは意外と少なかった。
これだからmすいません、あの昨日、木曜に話してた私の予想、すみません失礼千万なあのファンタジー的なチート、あんまりしてませんでした。
だがそれだけに地道な削り合いみたいな事をしていくような話で、要は割とストレートにスポ根マンガ的な作りだなという事ですよね。
加えてもちろん、その伝記ロマンというね、ジャンルならではの特に敵方の奇想溢れるですね、奇怪なそのアイデアあふれるギミックの数々も楽しいという感じですね。
まぁもちろんその、ジョジョ的って言い方もできると思うけど、それこそ山田風太郎とかさ、伝記ロマンのまぁ歴史でも、さっきの忍者武芸帳とかもそうですけど、連綿とあるもんですよこれはね。
無限列車編は映画『インセプション』ぽい?
例えば今回のその無限列車編で言うと、かなりインセプションぽい事をやっている訳ですよね。もうはっきりと。なんだけど、こちらのその前の方の話でも、例えばの鼓を叩くと部屋が回るっていう響凱 (きょうがい)っていう鬼のね、あの技であるとか、あるいはラスボス、そのさっき言った鬼舞辻無惨。この鬼舞辻無惨この独特の感情めのネーミングセンスもやっぱり面白いあたりですよね。これも叙情的って言ってもいいかもしれないですけど、まぁその伝記ロマンっぽい所ですよ。
本拠のさっきから言ってる無限城って言うのとかもよ、すっごくインセプションぽい。重力が上下自由になっちゃってる感じとかもあったりして、あとは今回の劇場版に入れる魘夢(えんむ・下弦の壱)っていう鬼の手に、手だけが歩いてってとか、手に口が生えてる感じとか。あればすごいデルトロっぽいなと。特にやっぱパンズラビリンスぽいなーとかね。
あとあの後半の機関車と、鬼が融合、その肉と機械が融合みたいな『ギーガー』的、もしくはその『デヴィッド・クローネンバーグ』的あるいは『遊星からの物体X』的だったりということで、とにかく色んな過去のエンターテイメントのいいとこ取りっていうのも当然していって、その敵が倒された後にね、やや同情的に描かれる、なんなら主人公に感謝すらするっていう、先ほどメールでちょっと批判的にね、書かれた部分ですね。それもまぁ少年漫画では昔からある傾向ではある訳ですね。
まぁ確かにちょっといい気なもんだな結構だけどある。って倒された敵さえ感謝みたいななんだけど、特にね、この時代、不信と分断のこの時代にはですね、タイムリーに響くというのも確かにあったりするかな、というふうに思いました。
王道少年漫画
ということで、まぁあの王道少年漫画、王道ジャンプ漫画、もっと言えば王道少年向けエンターテイメント全般、その構造をですね、改めてしっかりわかりやすく整理し直して再構築、で尚且つ今風のキャラクター造形であるとかギャグセンスでポップにい仕上げてコーティングして見せたという感じで、あと人気週刊漫画に珍しくきっちりね、要するにジャンプにしては珍しく、きっちり風呂敷を畳んでみせた完全に畳んで見せたという所まで含めて、なるほどそれは面白いし、まぁ大したもんだというか、素直にめちゃくちゃ楽しみました。
原作漫画本当に、あのジャンプを、ジャンプの人気漫画をぴっちり読み切ったのもすごい久しぶりでしたし、これはやっぱ鬼滅の刃だからこそ俺は・・要するに古典的なその少年漫画の良さみたいなものを再構築したマンガだからこそ僕も読みやすかったという所があったと思っています。
連載漫画ならではのダイナミズム
ご多分に漏れずというか、主人公たちの成長とシンクロするかのように画力がみるみる上がっていくというね、これも本当に連載漫画ならではのダイナミズム、すごく堪能しました。
でですね、それをさらにアニメ化した2019年のアニメシリーズですけど、お話の展開、セリフなどはもちろん漫画ではあくまでね、その息抜き的な1コマのみとか、そのコマの隅っこに描かれているような、要はあの小ボケみたいなね、ちっちゃな小ネタみたいな物の殆どすべて、余す所なく拾い上げてアニメ化している訳です。プラスその声優陣たちの熱演も相まって要はよりコメディ色が強いと言うか、ちょっと言っちゃえばクドいほど笑わせてくる作りになっている訳ですね。
マンガとアニメの差
ちょっとコマの隅に描かれてないギャグも大写しになっていると。それに加えて多くの方も指摘されてる通り、アクションシーン、バトルシーンがより具体的な動き、振り付けに置き換えられていると。
あるいはその水の呼吸ホニャララみたいな技を繰り出すキメの絵は、その水の呼吸であれば浮世絵風のタッチでガーンとこう波が動いたりする、ケレン味たっぷりな見せ場になってたりすると。
とにかく戦闘シーンがよりわかりやすく躍動感ある、まさにアニメならではの見せ場になっていると、着物の柄ひとつ取ってもこれ描くの大変だと思うんですけどね。
またやはりマンガ版では比較的あっさり描かれていたグロテクスな描写、人物、墓、人体破壊とかが、ギャグ同様丁寧に余す所なく拾われているためにバトルシーン同様、アニメならではの具体的な動きの絵として提示されるために、所々その太さの異なる筆圧を感じさせる人格性のタッチも相まってですね、原作以上にエグみ、ホラーみ、残酷さ、全面に出たような作りになっていると。
あるいはそのさっき言ったような、義務的な見せ場の迫力も増していると。
つまりはその、カッコツケですよ、すべて原作通りでありながら、笑いも闘いもグロさもスペクタクルもすべてが増幅されてより味が濃いめになってるというのこのテレビアニメ版だと思いますね。
非常にたくみにバランスを考えられた原作のアニメ化だなというふうに思います。制作を手がけたこのufotable というね、会社が演出作画、CG技術などもろもろ全てを社内で賄える体制があればこその、このクオリティーというのは、これ僕はもちろんアニメ専門外ですけど、例えばですね、これエリアジャパンというところに載っていた、デジタル映像撮影監督寺尾さんという方、あるいは3D監督西脇さんという方もインタビューなどを読むと、なるほどこのufotableという会社の総合力チームワークの賜物なんだなというのはすごくよくわかったりします。さっき言った水の呼吸表現がどういうふうに出来上がってきたとかね、書かれて非常に興味深いインタビューでしたけど。
アニメから映画へ
この非常によく練られ、実際出来が良かったこのテレビアニメは主人公炭次郎がある種覚醒するその序盤の見せ場をさっき言ったようなダイナミックなケレン味溢れる、まぁこれぞアニメ、だね、これぞ日本アニメなアクション表現を見せる、あるいはその露頭スコープをまで駆使してですね、あの踊りの部分を見せるとかですね、非常に贅沢に仕上げて見せた評判の第19話以降はですね、『プロフェッサーX』じゃなかった親方様率いる柱軍団の全貌で要するにここで改めてもう1回全体のルール説明をした後で、さっき言ったそのスポ根的サイクルで言うと休息から訓練のターンに当たる、割とほんわかしたエピソードを並べて見せて、で最後にさぁいわばじゃあここから
プロの初戦に出陣だってところで話がアニメで終わってる訳ですね。
要はもちろん今回の劇場版を作ることありきで終わらせているアニメシリーズな訳ですよね。この無限列車編を映画にするというこの判断も僕もすごく的確だと思います。まずそのですね、間違いなく制作陣も重々意識してる事だと思うんですけど、単純に列車っていうのはものすごく要するにそれだけで映画的になる装置舞台になる訳ですね。
映画と列車の切っても切れない関係
この間『TENET(テネット)』評で言った事とも通じますけど、一直線かつ一方的な時間空間体験というのはまさに映画というメディアの構造そのままでもあってですね、だからこそ映画史と列車は切っても切れない関係にあるわけですから列車はすごく映画的だし、加えて先ほどもインセプションと言いましたけど、今回メインモチーフとなっている夢というのもまた当人にとってはリアルな一方的な没入体験という目で、これのテネット評でも言った通り映画そのもののあり方とも重なるものということでございます。
ということで無限列車編を映画にするってのは非常にこう寝台として適格だと思います。
さらにストーリー的にもですね、少年3人にとってのいわばプロデビュー戦を目指すその中で目指すべきロールモデル、ここでは快男児、行き過ぎてやっぱり最高感漂う快男児、煉獄杏寿郎さんを魅力たっぷりに描いた上でいわばそのプロの世界の厳しさ、上には上がいるという現実、今後の道のりの険しさというのを示す所に着地していくあの「煉獄さぁん」てあの泣かせる、僕はあの「マチルダさぁん」をちょっと思い出しましたけど、まぁ青春タイガーストーリー第2部第1話としては申し分のない物だというふうに思います。
非常に古風なまでに教育的な着地
少年たちにをその己の至らなさ己のその成長途中ぶりというのを見せつけるという意味でも非常に古風なまでに教育的な着地だと思いますね。
もちろんその大スクリーンを前提に緻密にスケール感を増して映画化されたそのものが大正解、特にやっぱり列車という巨大でありながらも閉鎖空間でもあるというこの舞台であるとか、あるいは原作が割とあっさり目に省略している具体的なアクション、見せ場としてテレビシリーズ以上のダイナミズムダイナミックで提示してみせるバトルシーン、鬼のシーンも増えてサービス満点だし、細かい部分で言うと列車の最前にいた機関手を、炭治郎が一旦、石炭置き場まで避けるとかそういうアレで、要するに原作まんまにするとちょっとおかしい所、ちょっと足してたりしてすごく原作に忠実に見えるけど映画用の住人もすごく細かくしている、それはすごくわかるんです。
アニメ版だと気にならなかったのに、映画になると気になってしまう部分
ただ一方テレビアニメ版だと気にならなかった部分が映画にすると気になってしまうという部分があって、個人的に一番気になったのは周囲の一般人、モブキャラとリアリティライン的なすり合わせがマチマチというか、映画、特に無限列車編はその一般人と隣り合わせて戦ってる話なのに、例えば列車が転がり切った後であの後ろにいる一般人の存在感が全く見えない、なのに例えば鬼が登場した時には一応驚いてみせると。ちょっとなんかその一般人の描き方というのはちょっと突き詰められきってないというか、言っちゃえば書き割りっぽい感じがすごく際立っちゃってる。こういうその結局は主人公たちのためだけに奉仕する物語世界っていう所が映画だとちょっと際立っちゃう。
ちょっとやっぱり子供向けっぽい感じだなっていうふうに、こういう所で見えちゃうんですね。
漫画を映像化する難しさ
あるいはですね、これ鬼滅に限った話じゃないか、やっぱりあの全ての設定、展開、感情。物語内のすべてが言葉によって説明されるってこれはもちろんあの元が漫画なんで。漫画でね、言葉とかセリフの比重が大きいのは日本の漫画の文法の進化の流れ上、それは良いと思います。
でそれを忠実に映像化した場合ですね、やっぱりテレビアニメの集中度ではなく、まさに先ほどメールにあった通り映画館での全集中だと、これはちょっといくらなんでもクド過ぎるという事がある。あるいはそのね、なので原作に忠実というのが今回の映画版ではちょっと枷になっているという感じがしたんですね。あるいは映画にするのであれば列車を使ったアクション、例えばカーブを使うトンネルを使う、原作に確かにないんですが、そういう見せ場として展開するという事が可能だったはずなのに、この場合は原作通りが一種原作の一種抽象空間というところでしか機能していないのはちょっともったいないんじゃないかという風に、まぁ映画ファン的には思ってしまいました。ただしやっぱりですね、テレビシリーズを作った上でのこの劇場版ということで、こうコストとのバランスを考えてこのクオリティコントロールはやはり非常に上級というか、あの高度なものをといえるでしょうし、色々言いましたけど、非常に鬼滅の刃という話自体、今回実習してめちゃめちゃ良かった、ファンになりました。劇場作品が出れば必ず見に行きます。ここから先非常に期待もしています。特に個人的にやはり終盤の無限城内の縦横無尽の戦い、どう映像化するのか?一本にはたぶん収まりきれない気がしますが・・はい。といった事でちょっと駆け足になってしまいましたが、鬼滅の刃、私こんな感じで見ました。あなたもぜひ国民的大ヒット作品劇場でウォッチしてはいかがでしょうか?
<書き起こしおわり>
○○に入る言葉のこたえ
④列車はすごく映画的
でした!