STAND BY ME ドラえもん2のライムスター宇多丸さんの解説レビュー
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RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、『STAND BY ME ドラえもん2』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
宇多丸さん『STAND BY ME ドラえもん2』解説レビューの概要
①宇多丸さんが酷評した事が話題になるほどの酷評
②はっきり言ってめちゃくちゃ評判が悪い
③前作の唯一良かった点、のび太の○○
④前作の良かった部分さえぶっ壊していくストーリー
⑤少なくとも今作られる作品としては、ここだけは見直すべき所。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
映画『STAND BY ME ドラえもん2』宇多丸さんの評価とは
さぁここからは私、宇多丸がランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する、週刊映画時評ムービーウォッチメン。今週扱うのは(2020年)11月20日から公開されているこの作品、『STAND BY ME ドラえもん2』。
漫画家、藤子・F・不二雄原作の国民的漫画ですね、そこからアニメ化もされました。ドラえもん初の3DCGアニメーション映画『STAND BY ME ドラえもん』の6年ぶりの続編。原作漫画のエピソード「おばあちゃんのおもいで」を軸に、前作で描かれた「のび太の結婚前夜」から続く、結婚式当日に巻き起こる騒動、この結婚式当日のエピソードはオリジナルで付け足している感じでございます。
大人になったのび太役の声優は妻夫木聡さん
前作から引き続き、監督を八木竜一さん、脚本・共同監督を山崎貴さんが担当されております。声の出演には、水田わさびなど通常のアニメ版のキャストに加え、大人になったのび太役の妻夫木聡さん・・妻夫木さんはね、CMでのび太役をやったりしてますからね。おばあちゃん役の宮本信子さんも参加しております。
ということで、リスナーの皆様からも感想を頂いております。ありがとうございます。メールの量は、多め。
まぁ、『ドラえもん』人気っていうことなんですかね?賛否の比率は、褒める意見が1割ちょっと。残り8割以上は否定的な意見でした。はっきり言ってめちゃくちゃ評判が悪いという感じみたいです。
映画『STAND BY ME ドラえもん2』を鑑賞した一般の方の感想
褒める意見としてあったものは、
「結婚式やおばあちゃんの絡みのシーンでは泣いてしまった。」「原作のエピソードをうまく1本の話にまとめている。」などがございます。
一方否定的な意見としては、「今年ワースト。あまりの出来のひどさに本気で腹が立った。」「大人になっても現実から逃げ続けるのび太がクズすぎる。」「しずかさんが聖人君子のように描かれてて気持ちが悪い。」「映画化にあたって原作エピソードを改変した結果、原作を持つメッセージも台無しになっている。」「タイムパラドックス物としてもめちゃくちゃ。」等々がございました。
代表的なところをご紹介しましょう。
自分も結婚式に列席をしたような疑似体験をさせてくれるような作品
”エヌしまゴリラ君”さん。この方、評価は一応、「褒め」という方みたいですね。色々書いていただきつつですね、良かった部分。
「特に結婚式の列席者が涙ぐむ表情の作り方は秀逸でしたし、ストーリーの起伏はたしかに少ないながらも、ドタバタ感と『おばあちゃんのおもいで』と『ぼくの生まれた日』というエピソードをうまく内包しながらも、1作品としてうまくまとめ上げていて、しっかり結婚式というエンディングに着地していたので自分も結婚式に列席をしたような疑似体験をさせてくれるような作品でした。また、入れかえロープの魂が入れ替えるアニメーションを3DCG化した意義や・・」。
確かにこの魂同士がこう入れ替わるっていうか、そういう描写がね、途中でドラマティックに扱われるという。
「また、”忘れん棒”にこの映画のストーリーの矛盾点をうまく回収する役割を持たせて、秘密道具を準主役にしてくれた所は原作『ドラえもん』を読んでる時の膝を打つ感覚を蘇らせてくれた気もします。」という。
ただこの方は批判的な意見も結構書いていただいて、というような方でですね、まぁどちらかといえば一応”褒め”、というような方でございます。
映画『STAND BY ME ドラえもん2』の批判的な意見
一方、ラジオネーム”スギーモー”さん。「師匠がガチャを当ててしまわれたのでウォッチメンに参加するべく見てみました。結論を申し上げます。今年ワーストの出来だったと思います。とにかくこの作品に出てくる何もかもが気持ち悪い。私は3D表現のドラえもんたちにそれほど嫌悪感はないのですが、とにかく脚本や構成が投げやりなんじゃないかと疑いたくなるほどひどいし、訴えかけてくるメッセージも気持ちが悪いです。さんざん他人の人生を改変しまくったのび太に、もはや聖人のようなしずかが”あなたはそのままでいいのよ”なんて言う展開には開いた口が塞がりませんでした。」というね。
「今回は映画オリジナルの展開でおばあちゃんの人生まで狂わせてしまいました。」というようなご意見。「私の記憶では欲が出たおばあちゃんの”のび太の花嫁が見たいわね”っていうセリフは、あのエピソードのオチだったはず。それを実現させることがサービス精神とでも思ってるのか知りませんが、他人の未来を変える行為に作り手は無頓着すぎます。ウェルカムボードをジャイ子が書いたという小ネタ。作り手は”気が利いてるでしょ?”と本気で思ってる可能性がありますが、よくよく考えたらのび太の本来の結婚相手はジャイ子だったはずです。」ジャイ子問題、これは本当に重大!!
のび太ファースト、のび太第一主義
「と、まぁのび太ファースト、のび太第一主義と言いますか、作り手はのび太が自己中心的な理由で他人に迷惑をかけまくってる件を不問にしすぎです。」というようなね、ご意見でございます。皆さんも色々書いていただいて、ありがとうございました。
『STAND BY ME ドラえもん2』宇多丸さんが鑑賞した解説
さぁ、ということで『STAND BY ME ドラえもん2』。私もですね、TOHOシネマズ日比谷で2回、見て参りました。
ということで、2014年の『STAND BY MEドラえもん』、前作ね、僕は同年の8月30日『ウィークエンド・シャッフル』時代に評しました。それの続編ということですね。山崎貴さん、脚本を書かれて・・全体のその大筋のビジョンもやっぱり山崎さんのビジョンが大きい。八木竜一さんというね、CGクリエイターの方と組んではいますが、やっぱり山崎さん作品という色が濃いこちらの作品と考えておりますが。
脚本・共同監督の山崎貴さんについて
明らかに現在の日本映画界を代表するヒットメーカーでありつつ、少なくとも僕はこの過去、この映画時評コーナーで取り上げてきた作品に関しては、その『STAND BY ME』含め基本かなり批判的な評をしてきた、と。
ですけれども、昨年の『アルキメデスの大戦』に関しては、特にオープニングシーンと、そのまさに原作を1本の映画として着地させるためのとあるアイディアについて、すごく高く評価させていただいたりもしました。これ、公式書き起こしがこちらは読めますんでね、ぜひ参照していただきたいんですけど。
僕の考えたホニャララ
でとにかく山崎貴さんはですね、こういう作家性なんだな、という風に僕、最近ちょっと割り切れてきたんですけど、山崎貴さんは、要は”僕の考えたホニャララ”を、わりと臆面もなく、まんまやりたい人で。それこそ監督デビュー作、2000年の『ジュブナイル』という作品はですね、それこそもう本当に『STAND BY ME』+『ドラえもん』的な「僕の考えた『STAND BY ME』+『ドラえもん』」的なことをやった一作で、という。まあ、それも『STAND BY ME』評の中で言いましたけど、要はそもそもその作り手としての志が二次創作っぽい人っていうか。で、良く言えば原作とかモチーフに対して、その山崎貴流の解釈というのを毎回している、とも言える。
山崎流解釈の『アルキメデスの大戦』
で、その山崎流解釈が、『アルキメデスの大戦』ではうまくハマったパターンというか、たぶんですね、その『アルキメデスの大戦』は、あれがいわゆる良い話じゃなかった、いわゆるバッドエンド物だったからこれがハマったんじゃないか?っていうのが、私の仮説ではあるんですけど。
というのもですね、この山崎貴さん流の解釈によって抽出されたお話がですね、いかにも良い話風、美談風に提示されているんだけども、いやいやそれ全然いい話じゃないですから!みたいに、少なくとも僕には思えてしまうという事、これまでの作品では圧倒的に多かった、という感じですね。
阿鼻叫喚の『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』
それこそその2019年の『アルキメデスの大戦』とほぼ同時期に公開され、本当に阿鼻叫喚の、特にドラクエファンから阿鼻叫喚の否定的反応を巻き起こした『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』もそうですけど。さっきから言ってるように、その山崎さんなりの原作、モチーフ解釈。つまりこの場合は『ドラゴンクエスト』というゲームをプレイしたことで各々が得た感動、経験とは何か?っていうのを、一応山崎さんなりに、その本質を考えたなりの、その後半の特にトリッキーな仕掛け、という事で。しかもまぁ、それと同様の構造を持っていると言える、例えば2014年の『LEGOムービー』とか、そういう成功例もあるので、あぁいう仕掛け自体が悪いとは言えないんだけど、一概には。
ただですね、この『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』に関してはやっぱり、その最終的な解釈の先に出てくる”善き事”の押し付け感。美談感の押し付けがですね、一種その普通のゲームプレイヤーからすれば本当に言わずもがなの説教をされてるようにも響いてしまっていたという。これはやっぱり嫌われる、気持ちはわかるけどコレは嫌われるだろうっていう感じはやっぱりありましたよね。
僕は正直山崎さんとはたぶん、はっきり言って考え方の相違がある
ということで、とにかく山崎さんの”僕の考えた○○”の中のですね、特にその”僕の考えるイイ話”という部分。つまり、どういうものが“イイ話”なのかという、根本的な価値観、世界観に関わる部分で、僕は正直山崎さんとはたぶん、はっきり言って考え方の相違があるっていうのも、『STAND BY ME』評で言及しました。
つまり僕は、彼が「美談」として提示するものに、わりとはっきりした倫理的違和感を抱くことが多い、という事ですね。で、『ユア・ストーリー』ではそれが、より多くの人にね、僕のこの感じが、共有された。まぁバレた!って感じだと思いますけど。
2014年の前作『STAND BY MEドラえもん』について
で、ですね。その意味で、今回の『STAND BY ME ドラえもん2』ですけれども。僕がその前作、一作目に感じていた、山崎流、”ドラえもんのイイ話なところ解釈”の問題点が、半ば無理矢理その続きを展開してしまったがゆえに、より拡大され、お話としてもキャラクターとしても完全に破綻した、文字通り本当に・・なかなかここまで言うことは少ないですけど、本当に、どうしようもない作品になってしまったと、まずは言わせていただきます。
前作はですね、『ドラえもん』という一見その「終わりなき日常」が永遠に続くタイプのシリーズに見えるけども、実はそうじゃなくて、そののび太という主人公の人生をどう立て直すか。「立て直すか」の解釈がちょっとまた分かれるところですけども、どう立て直すかっていう、はっきりとした目的がうっすらと全編を貫いている、そういういわば「のび太成長譚」としてのストーリー、でもあるという、その『ドラえもん』という作品の本質を、無数のエピソードから抽出し、1本の完結する話として凝縮してみせた話。
結婚をゴールとして描くのは・・
もちろん、その1本の話としてムリヤリ凝縮した結果、いろんな問題点も出てきてはいるんだけど、えぇそういう作品。で、特に僕は個人的には、のび太の成長のそのゴールとして、ヒロインというかな、その中で一番かわいくていい子とされている、しずかちゃん、との結婚というのをですね、あまりにも確定的なゴールとして置くのは、色んな意味で実はあんまり感じが良くない話だなぁと・・これは前から僕はもう、子供の時から思ってて。
「ジャイ子問題」「セワシ問題」
これ詳しく話し出すとこれ自体でもう2時間、3時間行っちゃうので。まあ「ジャイ子問題」「セワシ問題」、色々ある訳ですね。はい。僕はいつも思うのは、「そもそも、大人になってから立てた会社の火事を防ぐのが先ではっていう風に、まずはいつも思うんですけども。で、それはいいんだけどもね。とにかくしずかちゃんとの結婚というゴールが重要視、なんなら絶対視されるようになっていく。シリーズを重ねていくあまり。で、段々それに従って、しずかちゃんというキャラクターも、どんどんどんどん、その現実離れしたいい子、現実離れした「聖女」になっていくという。これがいかにもですね、昔の少年向け漫画の限界という風に、それも僕はやっぱり以前から思っていたので。2014年にですね、改めてこの話を語り直すという際にですね、そこに意識的なアップデートを加えていないのは何だかなぁ・・という風に思ったりもした訳です。
「さようなら、ドラえもん」
で、「さようなら、ドラえもん」というね、そのドラえもんの中で公式に3つある最終回のうちの最後の話、非常に素晴らしい。名作だと僕も思います。「さようなら、ドラえもん」で終わっていれば、オープンなエンディング、結婚という所が必ずしもゴールではなかったんだけど、そこにさらに”ウソ800”というね、これは連載誌の時にもあった流れを、忠実という名の無批判さで踏襲した結果ですね、その、のび太の成長、つまりドラえもんからの自立を先送りにするっていうことが“イイ話”なんだ、っていう所に終わっちゃってたのが、『STAND BY ME ドラえもん』。
まぁこれ、イイ話だよねって本当に思ってるんだろうけど、僕はちょっとそれは頷ききれないな、っていうような感じの作品だった訳です。
ただしですね、これ『STAND BY ME ドラえもん』、前作のちょっとフォローをしますけど。
『STAND BY ME ドラえもん』、前作のちょっとフォロー
前作は、しずかちゃんとの結婚を翌日に控えた青年のび太が、ドラえもんと・・少年のび太から、「ドラえもんがあそこにいるから会う?」って言われた時、はっきりとそれを拒否するんですね。「ドラえもんは、君の、僕の子供の頃の友達だから。」って。これはすごく良いセリフだと思います!!
つまりこのセリフがある事で、のび太の自立、いつかドラえもんと別れて自立していくであろうという成長の可能性は、否定してないんですよ。そう。一作目は。
なので、一作目だけで完結するんだったらまだ、あれはあれでまぁありかな、なしではないのかな、ぐらいの言い方はできたと思っています。
しかし、なんと今回の2はですね、僕が今言った、その素晴らしい青年のび太のセリフを、完全に台無しに。さかのぼってつまり、前作のかろうじて良かった部分さえ否定するような事をやってしまっているという。もうとてつもない事になってます!
以下、『STAND BY ME ドラえもん2』に関して、かなりネタバレを含むアレをしますのでね、非常に楽しみにしていらっしゃる方、いっぱいいらっしゃると思いますので、ぜひぜひ劇場でウォッチしてくださいね〜本当にね。
注意!ここからネタバレを含みます!
はい!ここからネタバレします。
ちなみに山崎貴さん、今回の2のノベライズ版あとがきで、こんな事を仰っています。
まず一作目に関して。『STAND BY ME ドラえもん』は、名作と呼ばれているいくつかのエピソードを並べてみたら、ラブストーリーとして1本の物語になっているではないか、という発見だけで始めた企画です。
「コンピレーションアルバムのようなもの」とまで言っちゃってる訳ですね。まぁ大体そのぐらいの志で作ってるという。
しかしパート2ともなると、だいぶ自分でも物語を作っていかなくてはならなくなります。一作目の時に入れたくてもどうにも入れられなかった『おばあちゃんのおもいで』を中心にさせてもらうという事は瞬時に決めましたが、お話を膨らませるにはどうしたらいいのか。そこで、おばあちゃん「あんたのお嫁さんをひと目、見たいねぇ」という、ここを深堀りできると気づいた。そして脚本打ち合わせに集まってくれたメンバーの、「そして結婚式に行ってみたら、大人ののび太は自信がなくなって逃げてたりしてね」というこの言葉。これによって、すぐに新しい物語の流れが出来上がりました、というような事を言っている。
「辻褄合わせ」から発想しているお話
つまりですね、元々こんな「辻褄合わせ」から発想しているお話なので、支離滅裂なのもまぁ、当然と言えば当然なのかもしれないんだけどという。それに、お金を払って96分付き合わされるね、側はたまったものではないという。ちなみに前作と対照的に今回の2はですね、完全に要するに『ドラえもん』のキャラクター達が何たるかを知ってないと、全くわからないタイプの話になっています。一見さんお断りの作りになってます。
えー、辻褄合わせって言いましたけどね、たとえば序盤。のび太の部屋でドラえもんと2人でやり取りしてるんですけど、そこに、ポロポロポロポロと、不自然極まりない、その場ではよくわからない出来事が、提示されては、スルーされていく訳です。当然それはですね、後ほど「実はこういうことでした」という風に明かされていくんだけど。ええとこういうのは、伏線回収とは言いませんというのはね、繰り返し私はね、言ってるあたりでございます。つまり「伏線」というのは、元は別のものとして機能していたものが、後ろで違うものとしてまた別に機能するということであって。最初に意味がわからないディテールをばらまいて実はこうでした、なんてのは伏線ではない、というね。
意味がわからないディテールは伏線ではない
山崎貴さん、今回の映画に合わせた『ドラえもんまんがセレクション』という本の中のインタビューで、
「『TENET テネット』も特殊なタイムトラベル物で楽しかったですが、やっている事は我々の映画と共通しています。」
というね、非常に豪語と言うにふさわしい言葉を仰っているんですけど!うん!あの『TENET テネット』のツッコミどころの部分、『TENET テネット』のダメな部分が確かに共通してるかなと思いますね。えぇ。さすがですね。
とにかくまずはですね、「おばあちゃんのおもいで」エピソード。よちよち歩くおばあちゃんっていうのは正直、不憫かわいくてね、涙腺を刺激する部分があるのは確かにわかる。ただですね、その小学生ののび太を受け入れる訳ですね。「疑いませんよ」「わあん!」っていう。これはまぁ感動的だとしましょう。
で、そこからさっき言った「お嫁さんを見たい。」発言をするんですけど、おばあさんが。漫画ならコマの流れとか、あるいは作品全体の尺感、あるいはそもそも、これはギャグ的なオチなので、さっきのメールにもあった通り。オチとしての機能という所から、この話も自然に読めるんですこの話はね。
「忠実」という名の下に、そのまま映像に置き換えても変になるだけ
なんだけど、映画の時間感覚でこれを、流れでそのセリフが急にまた出てきちゃうと、いかにも不自然というか、「おばあちゃん、はえぇな!」「おばあちゃん、もう新たな要求?」みたいな。笑
という風にしか思えない流れになっちゃってるんですね。事程左様にですね、藤子・F・不二雄先生が、当然”漫画ならでは”の方向で突き詰めた演出、感情表現。本当にそれは見事です藤子先生。それをですね、要は「忠実」という名の下に、そのまま映像に置き換えても変になるだけ、みたいな所が本当に多いんです。これは前作でもいっぱいありましたけど。というか、そんな所ばっかりなんですよね。
例えばですね、驚いたり焦った時に、あの、白の中にさらに黒い丸がある目の玉表現というのが出てくるんですけど。あれ動いてるキャラに付けるとイッちゃってる人にしか見えないみたいなのがあったりする訳です。
あと、動きもまぁオーバーアクト感だけをやるだけで、ちっとも気持ちが入ってるようには見えない感じだったりしてね・・とにかくですね、前述の通りそののび太としずかの結婚式当日に行く訳です。そのおばあちゃんが、お嫁さんを見たいって言うから。
ギャグになっていないギャグ
そうすると、のび太が来てない。代わりにその子供ののび太が青年のび太になりすす、というドタバタ劇が続くんですけど。ここも例えばですね、その「新郎の挨拶をしてください。」と言われて、子供だから挨拶って言われて「こんにちは!」って言って、一同ガクッ!となるって言うんですけども、これ普通は「こんにちは!」って言ったら、その後に話がなにか続くのかなって思うだけで、「こんにちは!」って言ったからガクッ!って・・これいかにも頭で考えたカッコ付きのギャグっていうか、まぁギャグになっていないギャグですよね。とにかく、普通につまんないんですね。笑
とにかく、普通につまんないんですね。笑
という事で、青年のび太を探そうとするんだけど、さっき言ったその序盤の不自然な、不自然きわまりないその伏線の数々が、まぁ辻褄合わせ的に回収されていくだけの、本当に面白くもなんともない、だけではなく、どんどん本来の物語の目的がぼやけていって何の話だかよくわからなくなってくだけの、本当にこの言葉を使わせてください、愚鈍な展開が、ノロノロと続いていく。
あとね、これは山崎作品に多いなと思うんだけど、何かが起こる。でそこからのリアクション、という、何かが起こるのとリアクションの間に、いちいちワンクッションあるんですよ。これがウザい!っていうね。
で、色々とあってですねぇ。ノロノロノロノロと続いて。で、青年のび太は、実は子供ののび太たちの乗ってきたタイムマシンに勝手に乗り込んで子供時代に戻っていた。はっきり言ってこれ、二重三重に無責任かつ身勝手な、かなりひどい行為ですよね、青年のび太の行為は。で、よっぽどの理由があるかと思いきやですね、要はまぁ、またぞろその”しずかちゃんを幸せにする自信がない”程度の事を繰り返してる訳です。
前作の自立を匂わすセリフが台無しに
あの、いいけどそれ、結婚式当日に言うこと?っていう。。そしてこの時点でもう既に一作目のね、あのセリフが完全に台無しになってますね。もう無!ですねこれね。で、僕はその「しずかちゃんを幸せにする自信がない」みたいなことを言い出したところで、このあたりではっきり映画館の中で、すいません、マナー違反ですけど、大きめの舌打ちが始まってしまいました。チッ!チッ!ってね。
ただね、そんな事言う割に、「自信がない」とか言ってる割に、「いや、でも自信がついたらタイムマシンで元の時間に戻ればいいんだ。」とかケロケロ言いやがったりする訳ですよ。はぁ、自信がついたらですか。。ええと、それを今言い出すって本当にお前マジでサイコだし、こんなやつとは何人も結婚すべきではないと思うけど、まぁじゃぁ100歩譲って、どうやって自信をつけるというか、機嫌を直して未来に帰っていただけるんでは?と思って見ているとですね、ここは45年後っていう原作の漫画にもあるエピソード要素が入って、「入れかえロープ」で、のび太は少年期気分を満喫しだすんですけど。。
「入れかえロープ」
あれ?ちょっとなんか、話変わってない?っていう。そもそも、「子供時代の僕がもっとちゃんとやってればよかったんだ!」っていう風に言った時に、そしたらドラえもんが「それなら簡単だよ」って言って、入れかえロープ出すんですよ。「えっ、話違くない?(笑)えっ違くない、これ?(笑)」っていう。
でですね、そんな事が始まる。入れかえロープだけ序盤の非常に不自然な中で、これだけが新製品として出てくるっていう所で、まぁ「不良品でした」とか言って、タイムサスペンスっていうかな物語障壁を無理やり作り出して、っていうのも本当になんだかな、なんですが。
中学生3人に追われることになる
で、その無理矢理な物語障壁を作っていると言えばですね、この場面ね。
最終的にその大人の心が入ったえのび太、中学生3人に追われることになる訳です。ここもまぁ、きっかけはハッキリと自業自得ですし、あとあの、バイクに音声認識がない事に戸惑うくだりとかもうさ、おかしいだろう?未来しか知らないっていう訳じゃなくて、昔時代を満喫しに来ているやつがこの、本当に頭で考えた「ギャグ風」ね。クソ面白くもねえ!で、そこからまたそのバイク暴走が始まってですね、唐突にアクションシーン的な盛り上げが入る。
まぁ、これでもないとこの話、映画全体が盛り上がる場所がないから、無理やり作るんだけども。。このアクションは本筋と関係のない自業自得トラブルなんで。正直、その青年のび太へのムカつきだけが増していく。
で、土手からバイクごとボーン!って出て。そしたらそのバイクがボーン!っていったまま、そのバイクの着地音も何もないという、非常にずさんな作りからですね、中学生3人との対決になっていくんですけど。
「のび太をぶん殴っていいのは俺たちだけなんだー!」
これ、要はね、それを助けてくれようとするしずかちゃん、さらにはジャイアンとスネ夫も加勢、っていうんだけど、ここでジャイアンとスネ夫が、「のび太をぶん殴っていいのは俺たちだけなんだー!」って言うのをですね、なんのギャグ的なツッコミもなく、いいセリフ的に響かせるというこの無神経さ。で、なんとかその中学生を撃退して。まぁその、「さようなら、ドラえもん」でのジャイアンとの対決の拡大版、みたいな事なんでしょうけども。
ぜんっぜん今時はイイ話じゃねえから!
そこでそののび太がですね、「僕しずかちゃんを守れたかな?」って言う。それで頷くしずか。いや、お前守るも何も、そもそもしずかちゃんはお前の作ったトラブルに巻き込まれただけなんだけど?みたいな。笑
で根本の問題として、その暴力的な事態に対して体を張って、つまり自分も暴力を振るうことを辞さず「守る」のが、男性として一人前になる事、みたいな。この図式自体が、ぜんっぜん今時はイイ話じゃねえから!っていう。少なくとも今作られる作品としては、ここだけは見直すべき所だよ、むしろ。
で、とにかくそんなのがあってですね、しずかちゃんを、カッコ付きね、「守り」、なんか「ぼくの生まれた日」エピソードで両親の愛を確認した事で結婚式に戻ってきた青年のび太がですね、スピーチ、本当の結婚式でよく聞く、本当に型通りのイイ話スピーチで。もう本当にね、1番酒飲みたい時間帯ですけど。で、そこにですね、遅刻、中座、失態をしたそののび太を、怒りもせず、あと替え玉だったことも分かった上で受け入れるという、まさにのび太にとっての聖女となっている大人しずかが、ですね。
のび太の自立を完全に否定してウヤムヤにする
のび太にこんな事言うわけですよ。ドラえもんの関与も分かった上で、「あなたはそのままでいいのよ」とかまず言い出す訳ですね。
つまりこれは、もちろんそういうテーマの話があってもいいけど、少なくとも、のび太成長譚としての『ドラえもん』っていうのを、完全に否定してウヤムヤにするような事を、しずかが言ってしまう訳。その上で、のび太はこんなことを言う。「僕は、僕が幸せになるために戻ってきた。それがきっとしずかさんを幸せにすることだから。」って。
俺、そこではっきり声出して、「はあ?」って言っちゃった。笑
えっ!?なに言ってるか、ちょよくわかんないんだけど・・って思ったら、それに対してしずかさんが、「よくできました!」
「えっ? あ、ええっ!?な・・?あんたらなに?なにが”よくできた”なの?しずかさん何を認めたの?」のび太がとにかく無制限に甘やかされ続けるだけにしか見えない着地になっていくと。
皆さんに聞きたいのは、これイイ話なんですか?
皆さんに聞きたいのは、これイイ話なんですか?僕全く理解できないですこれは。神経的に。
という事で本作の青年のび太はですね、感情の流れ、行動が本当に変すぎて、なぜなら辻褄合わせでお話を作ってるからなんですが、キャラクターとして完全に破綻してるし、それに合わせて周囲のキャラクター、特に大人しずかは、更にやっぱり破綻したようなというか、ちょっともうおかしなことになっちゃってるっていう事だと思います。
普通にアニメとしてもですね、たとえば子供時代が昭和40年代なのに対して、その25年後のあの未来感というのは全く意味不明とか。アニメとして絵的に面白くないとか色々あるんですが。あと、とにかくやっぱり2を作るなら、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的にじゃあなんか、その1の批評的な見直しをするとかそういうこともないですし、とにかく、1作目を5億歩譲って認めたとして、っていうか、だからこそ、それすら破壊してしまった、本当に救いがたい、蛇足にして駄作中の駄作。ドラえもーん!時間、返してーっ!
書き起こし終わり。
○○に入る言葉のこたえ
③前作の唯一良かった点、のび太の自立