ノマドランドの映画ポップコーン編集部の解説レビュー
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『ノマドランド』を解説します
原題:Nomadland
「スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、「ザ・ライダー」で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。監督はクロエ・ジャオ、主演はフランシス・マクドーマンドが務めました。
第93回アカデミー賞作品賞を受賞し超話題に
第93回アカデミー賞では計6部門でノミネートされ、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞。
『ノマドランド』受賞一覧
■第93回 アカデミー賞 (2021年)
受賞: 作品賞 / 監督賞 / 主演女優賞
■第78回 ゴールデングローブ賞 (2021年)
受賞: 作品賞 / 監督賞
■第77回ヴェネチア国際映画祭
受賞: 金獅子賞
■第45回トロント国際映画祭
受賞:観客賞
本作は第77回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞した史上初めての作品に。
第78回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)と監督賞を受賞、第93回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞の最多3部門を受賞。
なおクロエ・ジャオ監督は非白人女性監督として初めての快挙となりました。
『ノマドランド』のあらすじ
ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。
『ノマドランド』見た人の感想・評価まとめ
twitterで、『ノマドランド』を視聴した人の感想や評価を徹底調査してみました!
『ノマドランド』良い評価・感想
『ノマドランド』観てきました
— ぬるこ (@Latte_will) April 28, 2021
放浪の旅に出た主人公が先々で他のノマドの人と関わり合い様々な仕事をし旅を続けていく
まるで本物のノマドのドキュメンタリーを観ているような感覚になるくらいリアルに描かれていました
広大で息を呑むほど美しい景色と音楽に癒された
静かだけどとても濃い作品でした pic.twitter.com/FlSE35T9LT
#ノマドランド
— キリコはつらいよ ~走れ、キリコに追いつかれない速さで~ (@7aDO0HAPTVRmOaq) April 1, 2021
拝見しました
早くも今年の洋画ベストかも
描き方としてノマド(放浪)という生き方に過度な肩入れも否定もしないとこが良い
「正しい」生き方じゃないかもしれない。でも傷ついた人達が自分らしく、そして人に優しくできる生き方なら良いのではないか。監督の視点は限りなく優しい pic.twitter.com/dqB0qi6PpY
「ノマドランド」鑑賞。
— らくだ@長期投資家 (@camel_10435) April 24, 2021
過酷な環境で気高く生きるノマドの人々。
貧困などでその生活を選ばざるを得なかった人も少なくないはず。
自分にこの生活ができるのかと、様々な生き方を考えさせられる良い映画体験でした!
そして自分にとって大切なのは選択肢を持つことだと再確認🎬 pic.twitter.com/3gtFlYcNFq
『ノマドランド』鑑賞。
— CHOCOMONKEY (@_chocomonkey) April 23, 2021
アカデミー賞の前に観ておくかくらいのつもりで前知識も何もなかったんだけど、エンドロールでキャストに並ぶ名前を見て納得。ずっと感じていた違和感(リアリティ)はこのためか。
観ていてかなりしんどかったんだけど、同時に不思議と何か元気をくれるような映画でもあった。 pic.twitter.com/SKK9o0Rezz
・『ノマドランド』観てきました
放浪の旅に出た主人公が先々で他のノマドの人と関わり合い様々な仕事をし旅を続けていく
まるで本物のノマドのドキュメンタリーを観ているような感覚になるくらいリアルに描かれていました
広大で息を呑むほど美しい景色と音楽に癒された静かだけどとても濃い作品でした
・#ノマドランド拝見しました
早くも今年の洋画ベストかも
描き方としてノマド(放浪)という生き方に過度な肩入れも否定もしないとこが良い
「正しい」生き方じゃないかもしれない。でも傷ついた人達が自分らしく、そして人に優しくできる生き方なら良いのではないか。監督の視点は限りなく優しい
・「ノマドランド」鑑賞。
過酷な環境で気高く生きるノマドの人々。
貧困などでその生活を選ばざるを得なかった人も少なくないはず。
自分にこの生活ができるのかと、様々な生き方を考えさせられる良い映画体験でした!
そして自分にとって大切なのは選択肢を持つことだと再確認
・『ノマドランド』鑑賞。
アカデミー賞の前に観ておくかくらいのつもりで前知識も何もなかったんだけど、エンドロールでキャストに並ぶ名前を見て納得。ずっと感じていた違和感(リアリティ)はこのためか。
観ていてかなりしんどかったんだけど、同時に不思議と何か元気をくれるような映画でもあった。
などなど、twitterでの感想を検索すると、8割〜9割以上が「面白かった」「良かった」という意見のように見えました。
『ノマドランド』悪い評価・感想
思っていたより静かで、寂しくて、ありのままのノマドの方々を映した作品。経済的困難であったり、さまざまな理由で家を持たない選択肢があることを知った。
— ぺが (@creamsodanomuyo) April 29, 2021
でもごめんなさい、久しぶりに映画館でうとうとしてしまいました…#ノマドランド pic.twitter.com/PLGI9o4jSo
ノマドランド自分には響かんかった、喪失体験をしたことがないからかな
— ふく (@huku_luckykili) April 25, 2021
ノマドランドはよくわからんかった
— ヒロシDEATH (@hkotakota) April 26, 2021
ノマドランド、できたら紹介動画やりたいなと思って公開初日に観に行ったけど、あまりに物足りない内容だったのでやめました。。
— 池田ビッグベイビー (@bigbaby_ikeda) April 26, 2021
オスカー自体、業界・社会内でのマイノリティの尊重という側面で意義はあれど、映画そのものの評価という部分で信頼できるかと言われると難しいですね。。 https://t.co/bZ0TZw5lqN
一方、悪い意見を探すと少ないですが
・思っていたより静かで、寂しくて、ありのままのノマドの方々を映した作品。経済的困難であったり、さまざまな理由で家を持たない選択肢があることを知った。
でもごめんなさい、久しぶりに映画館でうとうとしてしまいました…
・ノマドランド自分には響かんかった、喪失体験をしたことがないからかな
・ノマドランドはよくわからんかった
・ノマドランド、できたら紹介動画やりたいなと思って公開初日に観に行ったけど、あまりに物足りない内容だったのでやめました。。
オスカー自体、業界・社会内でのマイノリティの尊重という側面で意義はあれど、映画そのものの評価という部分で信頼できるかと言われると難しいですね。。
眠くなってしまった方や、響かなかった、よくわからなかった、物足りなかった等の意見が見られました。
『ノマドランド』映画ポップコーンによる徹底解説
ノマドランドのストーリー
2008年のリーマンショックにより世界規模の金融危機が発生。その影響は現役世代だけではなく、リタイア世代にも容赦なく降りかかり、多くの高齢者が家を手放すことになりました。
家を失った高齢者は自家用車で寝泊まりするいわゆる車上生活。職を求めて全米各地を動き回っていました。
専門職での経験があったとしても、それを活かせるような職がほとんどなく、安い時給で過酷な肉体労働に従事するほかなかった。
そんな不安定な状況下でも、彼・彼女らは自尊心と互助の精神を保持し続けていた。彼・彼女らは「現代のノマド」とでも言うべき存在です。
本作『ノマドランド』の主人公ファーンも「現代のノマド」の1人です。
ファーンはネバダ州のエンパイアで臨時教員をやっていましたが、工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、そのあおりで彼女も家を手放す羽目に。自家用車に最低限の家財道具を積み込み、日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出て、その過程でファーンは同じ境遇の人々と交流を深めていくのでした。
本作はそんなファーンの姿を通して、「現代のノマド」の実像を描き出していきます。
ネタバレなし!『ノマドランド』の鑑賞ポイント
ネバダ州のエンパイアは実在するゴーストタウン
主人公ファーンが暮らしていたエンパイア。実際に実在していた街で、この地でUSジプサムという会社が石膏採掘場と石膏ボード製造工場を運営していました。
このような大きな工場がある街の周辺は、その工場の労働者だけで成り立っているという事が多々あります。
ところが、2011年1月31日。
2008年のリーマン・ショックによる不況、建設不況で石膏の需要が減少。USジプサム社は88年続いたエンパイアの工場を閉鎖する事となりました。
当然、その工場で働いていた人達は行き場をなくします。その工場の労働者がいる事で成り立っていた街は、住民も、電気や水道、食料といったインフラも全てがなくなってしまいます。当然同じ地では暮らせなくなり、住んでいた土地や家の価値も0になります。
主人公ファーンも例外ではなく、エンパイアの工場閉鎖で住んでいた家を捨て、自家用車で寝泊まりする生活を余儀なくされます。
家を失った米国の高齢労働者たち
映画『ノマドランド』の原作となっているのは、家を失ったアメリカの高齢労働者たちを描いたノンフィクション、『ノマド 漂流する高齢労働者たち』です。
ノンフィクションという事が表しているように、アメリカでは事実、高齢者が突然職を失い、家を失い、ノマドとして車上生活や過酷な労働を強いられているようです。
Amazonでノマドが働いてるのは本当?
車上生活をしていて意外と困る事の1つが「駐車場代」。家の家賃が払えず車上生活をしている高齢者ですが、車上生活をする以上切り離せないのが車を置いておく料金なんですね。
『ノマドランド』の序盤で、主人公ファーンがAmazonの配送センターで働く姿が映し出されますが、このアマゾン配送センターは実在する配送センターです。
Amazonはクリスマス前の1ヵ月程度が繁忙期になる為、その期間キャンピングカーなど車上生活をしている人達が無料で駐められる駐車場を用意し、臨時的に労働者を募集します。なんとその規模は、アリゾナ州だけで2000人もいるとの事。Amazonから見ても、ノマドの高齢労働者は貴重な労働力なんですね。
Amazonでの仕事は、ダンボールに荷物を詰めたりバーコードをピッとしたり・・楽しそうに見えてしまうのですが、実はかなりの重労働。
1日10時間以上立ちっぱなし、同じ作業の繰り返し、1日に20キロ以上歩くこともあるんだとか。。若い方でもつらそうなハードワークを、高齢労働者が行っています。
『ノマドランド』に登場する演者は、実際にノマド生活をしている人
少数を除き、『ノマドランド』で漂流者、いわゆるノマドを演じているのは、本物のノマド生活者なのだそうです。だからこそ非常にリアルな映像になっています。
スクリーンで見るべき、アメリカの映像美
『ノマドランド』では、主人公ファーンが車上生活を始めるところから1年の月日を描いていきますが、季節を感じられるようアメリカの各地の景色、美しい自然を大きく映し出しています。
『ノマドランド』を見た感想まとめ
数々の賞を受賞している『ノマドランド』ですが、その名声や評価に値する作品でした。フランシス・マクドーマンドの演技は『スリー・ビルボード』の時にも惚れ惚れとしましたが、今作の『ノマドランド』では更に圧巻の演技力で、この役は彼女以外では成り立たないのではと思いました。
高齢でも働かないといけない、家もなく、過酷な労働環境でー。この状況はとても悲しく辛く感じる物ですが、この『ノマドランド』では過去にとらわれず、その状況を楽しもうとする活気あるシーンも描かれ、決して暗いだけの映画ではありませんでした。
ただ、万人受けする内容ではないとも感じました。
起承転結がしっかりとある作風ではないので、退屈に感じたり眠くなる人もいるでしょう。
アメリカの高齢者が、老後も働かざるを得ない状況を脚色なくアメリカな広大な景色と共に淡々と描いていく、そんな映画でした。
日本でもAmazonの配送センターで高齢の方が働いていたり、高齢になっても働かざるをえない状況は他国の話と簡単に受け流せない状況にあるのではないでしょうか。