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引用:IMDb.com

アナと雪の女王2のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年05月07日更新
今回の「2」を見ることで、アナ雪全体がさらに僕は心置きなく好きになれる!ということを、複数回見て、さらにそこを実感いたしました。(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、クリス・バック、ジェニファー・リー共同監督の「アナと雪の女王2」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さんアナと雪の女王2 解説レビューの概要

①メールの量は多め。
②褒める意見が全体の○割、否定的意見がそれよりちょっと多め。
③一作目の制作過程でキャラクターが180度変わったエルサ。
④一作目は、粒揃いの名曲揃いで歌劇としての魅力がただ事じゃない。
⑤一作目の物語を問い直し、発展的に補完する「2」、いわば二作でセット。
⑥楽曲のライトモチーフ的な使い方が、鳥肌が立つような極上の効果を上げている。
⑦抽象化された表現に”よくわかんないなー”という意見もわかるものの、非常によく出来た「2」。
⑧複数回見ることで、アナ雪全体を心置きなく好きになれる!ことを実感!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

アナと雪の女王2解説、宇多丸さん書き起こし

(宇多丸)

さあここからは、私、宇多丸がランダムに決めた最新映画を自腹で鑑賞し評論する週間映画時評「ムービーウォッチメン。」
今夜扱うのはこの作品!「アナと雪の女王2」。

世界中で社会現象を巻き起こし、日本でも歴代3位となる興行収入を記録したディズニーアニメーション「アナと雪の女王」の続編。
雪と氷に覆われたアレンデール王国の女王エルサと王女アナの姉妹は、エルサの魔法の力の秘密を解き明かすため、オラフや仲間たちと冒険に出る、というですね。

主な声の出演は、前作に引き続き、イディナ・メンゼルとクリステン・ベル。
日本語吹き替え版では、松たか子と神田沙也加。
監督は前作のクリス・バックとジェニファー・リーが続投しております。

ということで、現在もね、大ヒット中なんでしょうね。
「アナと雪の女王」を見たよーというね、リスナーの皆様、ウォッチメンからの監視報告、感想メールいただいております。ありがとうございます。

メールの量はまあ、当然と言いましょうか、多めでございます。
皆さんありがとうございます。

賛否の比率は、そうなんですよ今回、褒める意見が全体の3割、否定的意見がそれよりちょっと多め。
賛否両論パッキリと別れていると。
やっぱり一作目のね、ファンが多いでしょうからね、なかなかのハードルだと思いますが。

引用:IMDb.com

アナと雪乃女王2を見た感想まとめ

褒めてる人の主な意見は、

・前作のファンとして納得の内容。
・先祖の罪の贖いやプリンセスストーリーとしてのアップデートなどテーマの追求も見事。
・エルサが自分自身の謎に迫っていくストーリーが良かった。
・CGの表現がとにかくすごい

などがございました。

一方否定的な意見は、

・脚本が致命的にダメ。
・説明不足で散漫で、キャラクターの感情の動きも理解できない。
・前作の主題歌「ありのままで」「Let It Go」を超える楽曲はなかった。

などがございました。

代表的なところをご紹介いたしましょう。
ラジオネーム「ナベ」さん、女性の方、初投稿だそうです。

宇多丸さん、こんにちは、初投稿です。

ありがとうございます。

「アナ雪2」見てきましたよ。
鑑賞後に心が喜びで満ち溢れる素敵な作品でした。
前作は、他者と向き合い、相手を受け入れていく、受けられていくという物語だったと思います。
しかし、今作は主人公エルサが自分と向き合って、自身を知り受け入れる、そんな個人のための物語だと感じました。
不思議な力を持つがゆえに拭えない孤独を抱えてきたエルサが、自身に隠された秘密にたどり着くシーンでは、力強く嬉しそうに駆けていく姿を見て、胸がワクワク高鳴ると同時に、涙が溢れてしまいました。
映画というと、つい作品や、作品が我々や現実に与える影響を考えがちですが、この作品には不思議と物語に出てくるキャラクターたちの幸せだけを願わされました。

というね、「ナベ」さんのご意見でございます。

アナと雪の女王2、否定派の方の感想

一方ですね、ラジオネーム「スナッチ」さん、35歳男性。
えぇとですね。

ハッキリ否定派です、と。

まず今作は「アナ雪1」の欠点を覆い隠していた「Let it go」ほどのキラーチューンがない。
「イントゥ・ジ・アンノウン」じゃちょっと弱いため、その結果ただまずい映画になってしまったと思います。
何よりダメなのが脚本です。
端的に言うと、どうでいいところが説明過多なのに、肝心なところが説明不足です。
5種類の精霊がいるだの、という新情報を、噛み砕く暇もなくぶち込んでくる割に、”じゃあ精霊に何の意味があるの?”というあたりの、浮かんだ疑問に答えてくれません。
その後も、”なぜエルサが自分の生い立ちを知ることがアレンデールを救うことになるのか?”など説明が足りないため、目的と進行しているストーリーが一致せず、結果的に作品全体の印象を難解なものにしてしまっていると思います。
また最終的にテーマが明らかになり、先住民の犠牲によって成り立っている快適な生活、それを捨てる、いわゆる開拓者が落とし前をつける話になるのかなと思いきや、その問題提起に対する踏み込みも中途半端に終わってしまいます。

と、色々書いていただいてね。
あと今回のディズニーの、その「アナ雪2」にまつわるステルスマーケティングについても、まあ、怒りを感じる、ということも書いていただいております。

ありがとうございます。
ちなみに、あのまあ、これちょっとネタバレになるから、アレかもしんないけど。
オチに関しては、あのドーンとくる奴がそのままドーンといっちゃって、っていう、あの方向のストーリー。
あの、なんていうのブラッシュアップの途中、そういう方向の案もあったようですよ、というような感じですね。

ってことで「アナと雪の女王2」。
皆さんメールありがとうございます。
あ、もう1個あったでしょ、アニメーターの。
ごめんなさい、もう1個だけつけさせてください。

引用:IMDb.com

日本のアニメーターの方のアナ雪2感想

ラジオネーム「フトカシ」さん、女性。

ディズニーパークでバイトするほどディズニーアニメが大好きな日本のアニメーターです。
よくこちらに出演されている井上俊之氏のお向かいの席に座ってるというご縁もあり、いつも楽しく拝聴しています。

すごいですね、もう現役バリバリ。
で、この方色々書いていただいて。

アニメーターとして今回特筆すべきは、やはりエフェクト表現です。
木の葉が舞ったり、ノックにまたがるエルサが颯爽と切る風は、通常のスクリーンなのに4DXかと錯覚し、思わず目を閉じてしまうほど。
特に物語のキーとなる水の表現、ピノキオを彷彿とさせる、気の遠くなるほど繊細な波のアウトラインは、もはやリアルを超えたリアル。
人が空想の中で思い描く、美しくも恐ろしい水の姿を見事に描き出していました。
そしてエンディングが流れると同時に、”さて、2Dにこだわる日本のアニメーターたちよ。お前は今2Dの表現をもって何ができる?”と問いかけられてるような気になり、その明確な答えを提示できなかった私は、人生で初めて映画を見て悔し泣きをしました。

という。はい、これちょっとなかなか強烈だったので、ご紹介いたしました。
さすがね、こうね、本当にプロ目線。

宇多丸さんのアナと雪の女王2を見た感想とは!?

はい。いってみましょう「アナと雪の女王」。
私もTOHOシネマズ日比谷でIMAX字幕、TOHOシネマズ六本木で吹き替え、バルト9で字幕を見てまいりました。

ということで、言わずと知れたですね、「Let It Go」の大ヒットとともに、社会現象となったと言ってよかろう、本当にもうスーパーメガヒット作「アナと雪の女王」。「Frozen」ですね原題、の続編。
で、まあその、前の第一作目、2013年11月にアメリカで公開されて、2014年3月日本公開。
僕は前の番組時代、ウィークエンド・シャッフル時代に、2014年3月29日にリアルタイムでの時評をしました、と。
で、まあその後もね、色々もう語り尽くされた感がある作品ではありますが、改めて僕なりにサクッとだけ、この作品としての位置づけ的なことを確認しておきますと。。

まあ一応あのアンデルセンの「雪の女王」を、一応原作にしているんですね。
ちなみに今回「2」で、あのアナとエルサのお父さんの、子供時代に読んでいた本が一応そのアンデルセン原作というのをなんとなくほのめかしてたりもします、という感じですけどね。
はい。なんですが、まあ、あの大幅にアレンジというか・・ほぼほぼもう別物になってるってことですね。

監督は、あのジョン・ラセターがですね、「もうディズニー戻ってこいよ」という感じで、このために呼び戻してきた「サーフズ・アップ」などの監督クリス・バックさんと、脚本を書いたジェニファー・リーさん。
これは共同監督で、ジェニファー・リーさんは、まあこの時点ではかなりの新鋭って感じで、「シュガー・ラッシュ」なんかも手掛けていらっしゃいましたけどね、はい。

で、まあその、大きなアレンジをした、と。
で、その大きく変える、もっともその重要な要因となったのが、当初はストレートにヴィランとして描かれるはずだったエルサ。
ね、キャラクターが、制作過程でほとんど180度変貌していった、という部分だってことですね。

引用:IMDb.com

名曲「Let it Go」が出来上がった経緯

これは僕、あの、評をした後から知ったんですけど。
メイキング番組でジョン・ラセターが語っていることによると、ジョン・ラセターの息子さんが難病かかってて。
えぇ、でまぁ彼のその姿を見てて、その魔法を使う女性の生まれ持ったその何かというのを・・生まれ持った何かがあるからといって悪役として扱うって、なんか、どうなのかなって気がしてきた、と。
で、そこでその楽曲制作のクリステン・アンダーソン=ロペスさんとロバート・ロペスさんの夫妻に、まっ”エルサの内面に寄り添うような曲歌、ちょっと書けない?”というふうに依頼して。。
で、出来上がってきたのが、まさにご存知「Let It Go」だったと。

で、そのリアルタイムの評の中でも言いましたけど、あの制作途中の絵コンテだと、エルサ、かなりねやっぱりヴィラン風に描かれている、最初は。
恐めで、ちょっと意地悪そうに描かれている。要は昔のディズニーの”悪い魔女感”寄りの顔をまだしてるわけですね。

もっと言えば、出来上がった現状の作品でも、よく見ると「Let It Go」の場面はですね、
特に歌の歌い終わりのあたり、パターンってこう、閉めるあたりの前後あたりは、ちょいワルな表情、ちょっとこう、不遜な表情みたいな・・ちょっと残っていたりします。

で、まあとにかくですね、映画中盤、物語的にはエルサが完全な孤独の中に閉じこもってしまう。
むしろ悲壮なニュアンスが強い場面のはずなんだけど、普通ならそう全然そういうふうになりそうなところ、やっぱりこの「Let It Go」の圧倒的な名曲ぶり、そしてそれをまた見事に歌いこなすイディナ・メンゼルさん。
そして、まああるいは日本語版なら松たか子さんのやはり圧倒的な歌唱力。
そして、もちろんアニメーションならではの爆発的な感情表現ですね。などが、全てが相まってですね。

「生まれついて持った人との違い」をテーマにしている

要は生まれてついて持った、人との違い、社会的に差別されたりしがちな資質、ま、このエルサの氷の魔法というのはそれのメタファーでもあるわけですね。
だからこそ、まあそのエルサっていうのは、その例えばLGBTQの皆さんの、ちょっとシンボル的にこう解釈されたりなんて、そういう流れもありましたけども。
なのでその長年抑圧されてきた、あるいは自分自身をこう、なんていうか押し隠してきた、その本当の自分ていうのを一気の解放する喜び。
このシーンね、力強さ満ちた本当に感動的な名シーンとなっているという、ね。
というのも、皆さんご存知の通りってことですよね、はい。

本当にまさにこれは歌とセリフが混然一体となったミュージカルならではの、要するに状況とかそのものは悲しいのに歌のエモーションがアゲにいく、というですね。
はい、これ本当にもうミュージカルならでは。
そしてその爆発的感情表現ができるミュージカルアニメーションならではの、やはりもう歴史的名場面であることは、これはもう異論ないところだと思います。

というところで、まあエルサはそのヴィラン扱いから、もう一人の主役、ディズニー初のダブルプリンセスの一人になった。

引用:IMDb.com

妹のアナの物語

で、もう一方のその妹のアナの物語もですね、これは2009年の「プリンセスと魔法のキス」、2010年「塔の上のラプンツェル」に続く、まあ二度目の、というかな、ディズニー・ルネッサンスの流れでですね。

要は、昔ながらのそのディズニープリンセスのようにですね、素敵な王子様に受動的に見初められ、結婚することが幸せのゴール、というわけでは必ずしもないですよね、という。。
つまりその定型のひっくり返し、てのを、この妹アナのサイドエピソードをやっていると。
そういう意味で、価値観のアップデートでも非常にわかりやすくやっていたし、ということですね。

あとはやっぱりですね、さっき言った「Let It Go」だけではなく、ね。
「Do You Want to Build a Snowman?」=「雪だるまつくろう」とか、「For the First Time in Forever」=「(生まれて)はじめて」といった粒揃いの名曲達。
本当にもう見直しても、この名曲のつるべ打ちぶりは、やっぱ一作目ただ事じゃない。マジック起こり過ぎだと思いますね。

しかもそれがですね、それらが単に名曲として単体であるわけじゃなくて、
いわゆるライトモチーフですね、その何かこう決まったものを表現するときに必ずその旋律が出てくる、ライトモチーフとして、ストーリーテリングと絶妙に絡み合い、出入りする。
その歌劇としての魅力がもうやっぱりただ事じゃないんですよ、やっぱりあの「アナと雪の女王」は。
だから、最後にもうバーン、めでたしめでたしの後に、ドーンと「雪だるま作ろう」が流れると、それは「うわー」ってなっちゃうってことなんですよね、はい。

でまぁ結果、その新時代ディズニーの集大成にして決定版的な一作となった。
そして、何より多くの人に愛され続ける一作となったということでございます。

アナ雪は新時代ディズニーの集大成にして決定版的な一作

ということで、その後スピンオフ短編を2つ挟んでの今回の「2」ということなんですけど。
やはり一作目がですね、これだけ存在として大きくなってしまった、からこそですね、その商業的要請を超える説得力ある内容にするっていうのは、これもうなかなかできないし、正直僕も懐疑的な気分の方が、事前にはちょっと大きかったんですけども。

これ、ちょっと意見が分かれるの前提で、私の見方でございますが。。

引用:IMDb.com

意見が分かれる前提で、宇多丸さんのアナ雪2本音レビュー

結論言ってしまえばですね、本作まず単なる続編というよりは、一作目の物語がどのように人々に受容され意義を持ったのか、例えばそれこそLBGTQの皆さんのシンボルとして、そしてその解放のシンボルとして解釈されたとか、そういうような諸々を分析し考え抜いた先に・・”ん?だとすると、一作目この話ここで終わらせていいのかな?”という問いを改めて引き出している。

具体的に言えば、こういうことですね。
エルサは、確かに一作目の結末、当然ハッピーエンドですから、その氷の魔法の能力という、マイノリティ的な存在、資質っていうのはアレンデール王国の人々に受け入れられて、なんなら社会貢献にもなって、めでたしめでたしってなってるわけですけど。
さっき言ったようなですね、その周囲の人々や社会との違いってのをずっと抱えてきたような人がですね、こうして社会の中に丸く回収されていくっていうことだけが、理想的な着地となってしまっていいのか?ってことですよね。
実際エルサは、えぇ、なんていうか彼女の孤独は、実はこれだと”本質的には解消されていないんじゃないか?”っていうことに、僕はハッキリ言って正直一作目見終わって、ちょっとそこは感じたんですよね。
これ彼女が・・でも彼女自身はここにいても、結局彼女の存在としての孤独っていうとこは受け入れてもらってるけど、優しくしてもらってるけど、”なってんのかなー?”ってちょっと思ったとこではあるんです。
だからこそ、あの氷の城に閉じ込める場面の方が、なんか喜びに溢れているように見えてしまう、という問題があるわけですよ。

そういう問いをしっかり引き出してる。
しかも一作目の作り手自身が、自身自分たちの作った名作と言われたものをもう1回問い直して、”足りてねぇんじゃねーか?ひょっとして”というところまで引き出している。
で、そこから、前作では特に説明がなかった、そのエルサの能力のそもそもの理由とか、そしてあの両親の真意ですね、つまりあの両親たちがエルサの能力を恐れ、持て余し、抑圧したことが、そもそも一作目のトラブルのすべての原因じゃないですか。
というふうに、一作目が見えかねなかったところを・・などなど掘り下げる方向でいくという。。
要はですね、一作目の達成を踏まえた上で、それをさらに発展的に補完するというのは、言ってみれば、続きというよりは”二作セット”でより物語的な完成度が上がるというような、なんなら二部作的に扱っていいんじゃないかというくらいの、置き位置になっている。
で、僕はその意味において、すごくよく考え抜かれた「2」だなっていうふうに思ったんですね。
はい。ま、そんじょそこらの「僕は続けなければ良かったのに」的な・・要するに後に接ぎ木していくというよりは、一作目を補完的にやるというか、そういう話というふうに思いました。

順を追って、アナと雪の女王2を解説

ま、ちょっと順を追っていきましょう。
まずですね、会社のね、あのディズニーとかのクレジットの上に乗るように、前作同様あの「ナ―ナーナー、ヘイヤ、ヘイヤ」と言われる、いわゆる「チャント(chant)」ってやつですね、フレーズが乗りますね。
今回しかもこの「チャント」のルーツ。
一作目では何の説明もなかったです、あの「チャント」のルーツも劇中明かされていくというのがあったし。

で、そこからアバンタイトル。
前作冒頭より多分もうちょい前の、もうちょい幼い段階のエルサら姉妹に、お父さんであるそのアグナル国王がですね、その魔法の森をめぐる昔話を、しかもこれがですね、”あんたそこまで話したんなら、もうちょっと詳しく話せば後々またトラブルが起きないんじゃないの?”みたいな、絶妙なぼやかし加減でですね、その昔話をするわけですね。
えぇ、まあアレンデール王国と森の民であるノーサルドラ人との対立。

ちなみにですね、アレンデールこの「アナと雪の女王」の世界観は、ノルウェーとかフィンランドとかアイスランドにリサーチして作られていて、このノーサルドラの人々も、北欧の先住民族であるサーミの人々、これあの「サーミの血」というスウェーデン映画、僕以前の番組でちょろっとお話しましたが。
「サーミの血」ご覧になった方がいると思いますが、サーミ人たちに取材して造形されていったということですね。
これ僕ね、この先住民のこの感じが、出てくる感じが、後で出てくるあのアース・ジャイアント、あの岩で出来た、ね、あの精霊がいますよね、あれの造形コンビ、僕なんか「太陽の王子 ホルス(の大冒険)」みたいだなっていうふうに思ったり。。
っていうかそもそもヒルダだって、”ちょっとエルサってヒルダっぽいよね”とかそういうことを改めて思ったりもなんかした次第でございます。

ま、とにかくそのアレンデールとノーサルドラの、いかにも怪しい、つまり背景には”明らかに何らかの政治的陰謀があるでしょ、これ”っていう・・民族間国家間対立があるという、まあ世界中のさまざまな状況に置き換え可能であるだろう話がお父さんから語られる、と。
で、続けてお母さんがその全ての、”なんでなんで?”ってそういう全ての謎を解くという伝説の川アートハランの子守歌「All is Found」、こんな曲で・・この歌を歌う。
これを歌うわけですね。
幼い姉妹に歌って聴かせるわけです。
というところからタイトルが出て、そしてその歌を現在のエルサが受け取って歌い終わる、というところから始まるわけですね。

で、終わってさあ日常的な暮らしになるのかと思ったら、あのノルウェーの歌手だというね、オーロラさんという人が、「あぁ、あぁ」。
これ昔ばなしの中でもいいワンフレーズ出てきまして、要所要所で「あぁ、あぁ」。
この声にまあ惹かれていく。。
全編でキー的に使われる、まあいわゆる”遥かなる山の呼び声”というやつですね。
”遥かなる山の呼び声”を聞くという、ここまでがまぁ一応オープニングのセッティングなんですけど。

一作目のオープニングがですね、あれ本当に惚れ惚れするような手際のよい簡潔な語り口だったんですね。
もう本当に一作目のオープニングの語り口、スピーディーさ、ともう、それだけで僕涙が出てくるぐらい見事だと思いますけど。

引用:IMDb.com

今回は、1作目のシンプルさに対する更に問い直し

今回は何しろちょっとその一作目のシンプルさに対するさらに問い直しってのが、さっき言ったように根本の狙いでもあるということもあって、若干話が入り組んでいて、説明的なわりに少なくとも最初はやや飲み込みづらいところ正直あります。
なんか今回入り組んでるなって感じがする、と。

ただですね、しかし映画を見終わってから振り返ってみるとですね。。
まずここで暗示される”ノーサルドラとの因縁のその真相は?”というのが、映画全体を一種ミステリー要素的に、要するに今回のストーリーを直線的に推進する大きな力となっているわけですね。という。
で、その謎を解くために、母の子守歌にあったアートハランを目指すのだ、道のりは厳しいし、そこで目の当たりにする真実は恐ろしいかもしれないけど、という物語の流れ。
要するに、この後に来るであろう物語の流れ、ていう・・それが歌詞でも暗示されているし。
しかも、それに導かれていくのはエルサその人なんだと。
エルサがそれを受け取るというところで、実はやはりですね、とても効率よく、なんていうのかな、これから語る話の方向性と、どういうことになっていくかっていう。。
そして、話の推進力ね、ミステリー要素・・実はやっぱりすごくね、効率よく配されている。
1回見て、もう1回思い返して、”あそこやっぱよく出来てたわ”っていうふうに思ったりする。

特にですね、先ほど一作目に関してですね、楽曲のライトモチーフ的な使い方が見事、というようなこと言いましたけど、今回はよりそれがお話の根本に埋め込まれてるわけです。
さっき流した「All is Found」。ね、お母さんの子守歌であるとか。
あるいは「あぁ、あぁ」って、この”遥かなる山の呼び声”が、ここぞというところで!ということですね。
あるいはキャラクターとの対話とか、あるいは謎解きとして、その時々の歌やストーリーとビシッと合致して、ちょっと鳥肌が立つような極上の効果を上げてると思います。

オープニングで早くも・・

例えばさっき言ったようにですね、オープニングで早くも、ここではないどこかからの呼び声ですね、聞いてしまった。
母が歌い聞かせたアートハラン、その子守歌とともに受け取ってしまうエルサ。
彼女は、さっき言ったようにですね、作り手が提示する問題提起として、やっぱりその周囲との違和感、孤独を抱えながら、表向きは平穏に暮らそうとしている、と。
ね、まぁ、でそこから、そのアナとかオラフ、クリストフとか町の人々がいかにもアナの曲らしいポップさで歌う、
「Some Things Never Change」という曲ね・・という「ずっとかわらないもの」で。
エルサも、”ずっと変わらないもの”でいてほしいと思っている。
それはそれで大事にしたいんだけど、ということ・・なんだけど。。
要は前作「Let It Go」がですね、自分を初めて解放する喜び、自分は自分だっていう、一種孤独を受け入れる強さの歌なんですね、「Let It Go」がね。
”孤独でかまわない”っていう歌ですよね。
「それもきっとしあわせ」じゃないですけど、”孤独でかまわない”って歌なんですけど。

今回のエルサは、そんな自分が本来いるべき場所、自分が本当の意味で一人ではないんだと実感できるような場所を、今の暮らしを捨ててでも、正直探さずに、そして目指さずにはいられない、という話になってるわけですね。
なので、その抑えられない気持ちの歌としての、今回のそのメインの歌、やられているこの「イントゥ・ジ・アンノウン」。
あのちょっとね、これが最終的にアートハランという、ですね・・これあのね、リチャード・ドナー版「スーパーマン」における”孤独の砦”に非常によく似たですね、エルサにとっての要するに文字通りのホームなわけですよね。
ホームを目指すのも、彼女の本当の自分自身を発見する旅だから。。
途中でアナたちとこう道を分けますよね。
で、アナたちは怒りますけども。
アナたちが連れていけないのは危険だから以上に、”自分を発見する旅なんで、私の心の中に行く旅なんで”ということで・・一旦別れなければいけないことになる、ということ。

引用:IMDb.com

Show Yourself

そしてですね、そこでアートハランに着いてから歌われる、この「Show Yourself」という歌、これ、こちらを。。
さっき言ったようなライトモチーフ使い、ずーっと「Show Yourself」が・・こんな静かに歌ってますけど、ずーっと最後こうエモーションがグーッと上がって、エモーションが最高潮に達したところで、さっきから言っている、とあるライトモチーフ使い、”そこでこれがくるかー”っていうのがドーンとくる。
最強にハマって、僕はこれはほとんど「Let It Go」の成熟版といったような爆発的感動、表しているな、というふうに思います、はい。

だからこそ、その後ですね、はい。「Let It Go」ですね。
エルサが要するに自分が、エルサが「Let It Go」を歌ってるところを客観視する視点が入ってるんですね、その後の場面で。
あれ要するに、もう彼女はもう既に完全に自分が自分であることを誇ることができる段階、成長したからってのを示したりする、ということですね。
ただ、ここが非常に抽象化された表現なんですね。
非常に抽象化された表現が続くため、何かぼんやりした印象、もしくは”よくわかんないなー”っていう印象持たれる方も結構いるのもわかるって感じです。

非常に抽象的かつ哲学的な、なんか話になっちゃってる。
で、そこでいわゆるそのアレンデール王国のその影の負の歴史、これまた、世界のいろんな歴史に置き換えがきく国家民族間対立、分断の構造ですけど、これをその子供向けものね、みんなが見る作品としてこう盛り込むその志っていうのは本当に素晴らしいですし。。
個人的には、はい高畑勲、宮崎駿、あるいは富野由悠季といった人々のですね、先人たちの仕事がちょっとこだましているようにも感じる。
例えば「海のトリトン」感であるとか「ナウシカ」感もあるとかね、もちろん「ホルス」感もある、という感じがいたしました、はい。

アナの存在意義

で、エルササイドの話ばっかりしてしまいましたけど、今回エルサが本当の自分のアイデンティティを確立していくのと並行して、言っちゃえばただの人で代表であるアナがですね、それでも今やれる最善のことをやる、ということで「The Next Right Thing」というこの歌。
”そうするしかないんだ”というふうに、自分を鼓舞して前に進んでいくことを選択していく。
これ、一作目でのアナに対して、やっぱり、あじゃアナの存在意義って、普通の人は何ができるのかっていうところを、しっかり非常に重たい場面でしたが、提示した部分もこれ、僕は「2」としてやるべきことちゃんとやってると思いました。
実にずしんと胸に響くあたりでございました、はい。

前作はですね、その姉妹のリユニオンに着地していく話だったのに対して、今回はそれぞれが自己をしっかり確立した上で、だからこそ、ずっと変わらないものがあるんだから、離れていても大丈夫だって。。
これ、それこそあの「Let It Go」・・お子さんたちと見る親御さんに、これから見るメッセージとして、その親御さん、巣立て(られ)る側もそして巣立つ側も、”家族の形に固執しなくても大丈夫だよ”っていう非常に重要な後押しをしてあげる話になってるかな、と思いました。

はい。えぇ、あ、すいません、時間がこれきちゃってね。
オラフの可愛さとか、あるいはですね、コメディリリーフとしてのクリストフのね、今回は、80年代ロックバラードオマージュがくだらなすぎて・・これ褒めてますけど。
「Lost in the Woods」ね、これ、もうそういうものとして非常に面白く楽しめました、って感じですね。

ただ、彼がそのアナにプロポーズする件のサブプロットが、もうちょっと気の利いた回収してほしかったな、とかもありますし。
あと、その人そんなに重要な役割だったの、今までアップにすらなったことないんですけど、みたいな・・ちょっと若干の後出し感がある設定も感じたりしますが。
ただですね、勢いで一気に持ってった、実は構成とかなかなかトリッキーの「1」よりも、それを土台に考えて作られた分、非常に今回、丁寧なバランスに実はなってると思います。

引用:IMDb.com

アナ雪は二作で一作セット

やっぱり二作で一作セット。
作り手たちの言葉によれば、”エルサが神話的、アナがおとぎ話的”。
これが共存しているのがアナ雪の物語ですが、最終的にその両者がそれぞれの世界へ帰着していく、という今回の結末、僕は納得でございましたし、今回の「2」を見ることで、アナ雪全体がさらに僕は心置きなく好きになれる!ということを、複数回見て、さらにそこを実感いたしました。

ということで、一作めと異なるテイストでございますが、僕は非常によく出来た「2」だと思いました。
ぜひぜひ劇場で。あなたのご意見、どうなるのかわかりませんが、ウォッチしてください、あーすいません、早口で。

<書き起こしおわり>


○○に入る言葉のこたえ

②褒める意見は全体の3割、でした!

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