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引用:IMDb.com

ホテル・ムンバイのライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年05月07日更新
この機会に見れて、本当にこれ良かったです。なかなか怖い映画ですし、ふさぎがちな日々にちょっとハードかなと思われるかもしれませんが、ちゃんとしっかり希望も残す作品にもなっておりますので、ぜひこのタイミングでお家で落ちてください。(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/) で、
アンソニー・マラス(トロント国際映画祭正式出品作品/アデレード映画祭観客賞受賞/パームスプリングス国際映画祭監督TOP10選出)「ホテル・ムンバイ」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。 
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。 

宇多丸さん『ホテル・ムンバイ』解説レビューの概要

①リスナーさんからの感想 〇割は、〇〇の感想
②過去に2作作られた『〇〇〇ダ〇〇』『〇ェ〇〇〇〇〇テ〇』
③印象的だったのは、『あいつらは、〇〇〇なんだから、〇〇と思うな!』
④作者から〇〇の意義を問われていると感じた

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。 

ホテル・ムンバイ、宇多丸さんの評価は・・

(宇多丸)
さぁこっからは、『週間映画時評ムービーウォッチメン』改めまして、昨年のリスナー枠で当たらなかった作品を扱う『リスナー枠取りこぼしウォッチメン』
今夜使うのはこの作品『ホテル・ムンバイ』 

2008年、インドムンバイ同時多発テロの際、テロリストに占拠されたタージマハルパレスホテルの悲劇を映画化。
テロリストによって、500人以上の宿泊客と従業員が人質に取られる中、宿泊客を逃すためにテロリスト立ち向かうホテルマンのひとりを、
『スラムドッグ$ミリオネア』などのテーヴ・パテールが演じるほか、部屋に取り残された子供を救出するために行動を起こすため、アメリカ人旅行客役として、『君の名前で僕を呼んで』などのアーミー・ハマーも出演。
監督は、本作が長編初監督作となるオーストラリア出身のアンソニー・マラスといったところでございます。

ということで、初のリモート放送ウォッチメンでね、本当にラジオできるかな?という状態でお送りしますが。
この『ホテル・ムンバイ』もう見たよ!という皆様いろんな形で見ていただいたんですかね?リスナーの方から感想を多数頂いております!ウォッチメンから観賞報告ありがとうございます!
そしてですね、メールの量は普通よりちょい少なめ‥ちょっと見れる環境ある方ない方いらっしゃるでしょうし、このご時世的にちょっと『ホテル・ムンバイ』見るのキツいかなぁ~なんていう方もいらっしゃったかも知れないですね。
賛否の比率は、でも9割が褒めの意見。忘れられない一本、今年のベスト!上映中ずっと緊張感が続き、見終わったあとには、疲れ果てていた。
実話ベースなのに、ちゃんと映画としての面白さもある。
テロリスト側の描き方もフェア。だからこそテロの虚しさや、テロを生み出した社会への憤りが湧いてくる。と言った意見が多かったということです。
一方、もう少しホテルマンたちの葛藤を描いてほしかった。といった声もありました。
代表的なところをご紹介しましょう!

引用:IMDb.com

ホテル・ムンバイを鑑賞した一般の方の感想

ラジオネーム『レイレイレイラさん』
私は外資系の会社勤務で、年に3、4回のインド出張があり、ムンバイに数ヶ月住んでいたこともあります。
昨年の秋、珍しく日本公開から少し遅れてインドで本作が公開され、ちょうどそのタイミングでムンバイ出張があったため、『せっかくだから現地で見よう!』と見逃していた本作を見に行きました!
うわぁ~!ムンバイ現地で『ホテル・ムンバイ』
しかも、ちょうど惨劇の舞台となってしまった、南ムンバイ・タージマハルホテルのすぐ近くの小さなショッピングモールの映画館で、英語版が上映されてるとのこと。
映画の前後に、タージマハルホテルにでも寄って行こうかなぁ~ぐらいの、軽い気持ちでタクシーを使い映画館に向かいました。

映画が始まり、私は冒頭からいきなり恐怖で震えあがりました。
テロリストたちがタクシーを走らせる道。それは、私がたった今通ってきた道と全く同じで、彼らがタクシーの窓から見ていた光景は、私がついさっきぼんやりと眺めていた景色と、完全に重なっていたからです。
とてつもない臨場感とともに、自分が見慣れた光景が破壊され、普通の少年たちが散弾銃で、人を殺しまくる光景が本当に‥

散弾銃じゃないな!アサルトライフルですね。『AK 47』ですね。

怖くてたまりませんでした。
また、テロリストの少年たちの言動も、理解できないというよりは、細部まで納得してしまうもので、特に豚肉をうっかり食べた食べないのジョークのくだりのシーンは、いかにも現代の普通のムスリムの少年たちの、悪ふざけっぽくてゾッとしました。
機動隊はまだ、デリーにいると聞いた時は、私もインドに住んだことがあるからこそ伝わってくる、
『それは、間に合わないなぁ~』という絶望感がありました。
普段、良くも悪くも純粋で信心深いインド人と働いているからこそ、ホテルスタッフ達の、身を挺した行いは、決して映画のための誇張だとも思えなかったし、テーヴ・パテール演じる信教徒ホテルスタッフが、あっさりターバンを外したシーンは、胸に迫るものがありました。
その信仰の重さというものを知っている分、映画が終わり、帰りには予定通り『タージマハルホテル』に立ち寄ってみましたが、そこには映画と同じデザインの制服で、笑顔で私を迎えてくる従業員と、まるで何もなかったかのように佇む美しいホテルの姿がありました。

インドの映画文化本当に素晴らしく、私は出張の度にインドの最新設備の映画館で、映画を見るのをいつも楽しみにしていました。
いつか、コロナが収束したらまた、インド出張に行き映画館にも行けるでしょう。
でも、あの南ムンバイの小さな映画館に行くことは、多分もうないと思います。
『ホテル・ムンバイ』観賞、私にとって最も忘れられない映画体験のひとつになりました。

というね、これは凄いですね!シアター期一会としてこれは強烈な体験だったと思います。レイレイレイラさん、ありがとうございます。

ホテル・ムンバイを鑑賞した方の批評

一方ね、『拓哉患者さん』
『ホテル・ムンバイ』観ました。ホテル内でのハラハラドキドキ感凄かったし、重要登場人物があっさりと、ほにゃららになってしまう様も、まさに現実の事件をベースにした作品という感じと。
色々書いていただいて一つ不満があるとしたら、客の命を守るホテルマンたちが、あまりにヒーロー然としてることでしょうか?
いくら『お客様は神様です。』と言っても、映画的にはもう少しホテルマンたちの迷いを描く場面があればな‥と思いました。

ただあの、『家に帰っていいですか?』って言うんでね、帰る苦渋の思いで帰る方もいたりとか、あとはやっぱりいつも、お客のことをずっと慮っていたあの女性従業員なのにぃ~‥っていう描写もあったりしてね、そこはなんか決して言葉多くはないけど、描かれてる部分もあったかな?という風に個人的に思ったりしますが。

引用:IMDb.com

ホテル・ムンバイをBlu-rayで鑑賞

とはいえ皆さんね、基本的には本当に褒めのメールばかりでした。ありがとうございます!
といったあたりで、『ホテル・ムンバイ』私も今回、このタイミングでブルーレイをあえて取り寄せて、自宅で拝見致しました。

2008年インドのムンバイで実際に起きた、同時多発テロを題材にしてるということで、本作のようにですね、近年特にやっぱり2001年の9・11アメリカ同時多発テロ後ですね、その数年経ってから‥要は、その制作は観客側の精神的ほとぼりが冷めてきた頃に‥以降ですね、実際にあったその多数の死者が出たテロとか、あるいは紛争が起こった、あるそんな残酷な事件などですね、多くは無力な一般人である当事者に寄り添った視点で、リアルに生々しく切り取った映画というのが、明らかに増えているというというような感じがします。


9・11で言えばやっぱり、『ユナイテッド93』とか、あのあたりもそうでしょうし、あと今回の『ホテル・ムンバイ』同様、ホテルマンが体を張って半端じゃなく暴力的な事態から、人々をできる限り守ろうとするというような話としてやはり、これは1994年のルワンダ大虐殺を描いた2004年の『ホテル・ルワンダ』とかこの映画が当然、まずは頭に浮かびますし、あとまあ僕のこの映画時評コーナーで扱ったもので言えば、前の番組時代に2018年3月3日に扱った、クリントイースト監督の『15時17分、パリ行き』

これねまぁ、2015年にオランダパリ間の鉄道の中で実際に起こった無差別テロ、これを扱った作品もありました。

他にも、『キャプテン・フィリップス』とかね、枚挙にいとまがない感じなんですが、この2008年に起こったムンバイ同時多発テロ。
その中でもこの、タージマハル・パレスホテルムンバイが誇る、五つ星最高級ホテルでのですね、無差別大量殺人及び立てこもり事件という、これを題材に撮った映画というのも実は、今回扱うこれは2018年オーストラリア、アメリカ、インド合作の『ホテル・ムンバイ』

ムンバイ同時多発テロを扱った他映画

以前ですね、僕が知る限りでもすでに2本作られてるというわけですね、映画がね。
まずは2015年フランス映画で、これは日本タイトル『パレスダウン』というね、原題はズバリ、タージマハルというねタイトル。
これは、宿泊客の18才のフランス少女の視点にほぼ絞ったつくりにになっていると、最後の方はあの、階下の女性とですね、窓越しに励まし合うというところとか、ここなんかなかなかいい作品でしたけどね。

あと2017年にも、オーストラリア今度はネパール合作、これ日本のタイトル『ジェノサイド・ホテル』。原題が『ワンレスゴッド』というですね。
こちらは群像劇で、あとテロリスト青年側の描写もそれなりに割いてあるという、比較的今回の『ホテル・ムンバイ』近い作りになっている作品。
なんだけどまぁ、全体に割とこれまったりしたテンポと、妙にスピリチュアルなノリというか、語り口が特徴の一本だったりなんかして、それぞれに描き方の角度が違うのこれ当然です。要するに、その事件に遭った方いっぱいいらっしゃいますし、どういう角度から切り取るかがあるのは当然として、やはり今回の『ホテル・ムンバイ』が、メッセージ性のバランスやエンターテイメントとしての質の高さなどなど、その過去の2作と比べても段違いで突出した作品であるのは、明らかであるような気がしますね。という風に思います。

引用:IMDb.com

共同脚本のアンソニー・マラスは、ホテル・ムンバイが長編映画デビュー作!

監督と共同脚本、共同編集というところもクレジットされている、アンソニー・マラス。
なんとこれが長編映画デビューなんですね。
この前に撮った2011年の短編『ザ・パレス』というのも、これも1974年に本当に起こったトルコのチップロス信仰を描いた作品ということで。


僕今回、本当申し訳ないんですけど、フルサイズの作品が見れなくて、ちょっと予告編しか見られなかったね。でもそこから大体どういう作品かってのは僕は、うかがえる限りでも、突然の圧倒的な暴力によって日常がもう根本からひっくり返されての恐怖、例えば今回は『ホテル・ムンバイ』にも出てきますけど、クローゼットの中で、息を潜めて殺人者の追跡者の行動を覗き見るというような、サスペンス的なくだりがあったりとかなんかして、限りなく今回の 『ホテル・ムンバイ』に直結する作品のようですね、この『ザ・パレス』。

しかもこの実は、アンソニー・マラス自身がまさに、その紛争の最中ギリシャから難民として逃げてきたって、そういう経験をしている方だそうで、なのでその短編『ザ・パレス』そして今回の『ホテル・ムンバイ』と、一貫して描いている突発的暴力によって今までの生活がいきなり破壊されてしまうという、その極限状態描写、その圧倒的な緊迫感リアルさみたいのは、まさにこのアンソニー・マラスご本人が体験してきたことだからこそなのかもしれないですよね。筋金入りってことですよね。

さらに本作には、エンドロールにも出てきますけど、インスパイアー元になった2009年のドキュメンタリー、『サバイビング・ムンバイ』というドキュメンタリーがあって、これは僕あの今回ですね、日本語字幕とかついてない状態ですけど、配信のレンタルでこれは見ることができました。

こっちはですねそのタージマハル以外にも、標的になった高級ホテルのオベロイ・トライデントホテルっていう、本当にいた人々の話なんかも入ってる作品なんですけど、ドキュメンタリー。
とにかく、その中でですね本物の生存者たちが語っている様々なエピソードが、後ほどまたネタバレ‥決定的なネタバレしないようにしながらお話ししますけど、今回の劇映画としての『ホテル・ムンバイ』 にもそのドキュメンタリーで、その生存者たちが語っているエピソードがしっかり反映されてたです。

ホテル・ムンバイは事実を元に再構成した作品

ということで本作はですね、この『ホテル・ムンバイ』は、アンソニー・マラスと共同脚本のそして製作総指揮のジョン・コリーさんという方が、当事者とか関係者に取材調査を重ねて、例えば、一応主人公というか、この映画は群像劇なのでより正確にはメインキャラクターの一人といった感じのデーブ・パテールはもちろん、『スラムドッグ$ミリオネア』チャッピーとかライオンとかありましたけど、デーブ・パテール演じるホテルマン『アルジュン』のようにですね、複数の方、モデルとなる人物を混ぜた架空のキャラクターもいれば、アルパム・カーさん演じるですね、オベロイ料理長というね、これは本当に実在の方ですね。
非常に有名なコック、料理長あの‥料理人の方なんですけど、オベロイ料理長のように実在の人物もいるという感じで、事実をもとに一本の劇映画として再構成した作品という感じだと思います。

既存の映画ジャンルで一番近いところで言うとやっぱりですね、特にビルが舞台で階を上ったり下りたりするところにまた、見せ場やサスペンスが生まれる。状況に応じて上に行った方がいいのか?下に行った方がいいのか?みたいなところで見せ場を作ってくれたり。やっぱり『タワーリング・インフェルノ』みたいな、いわゆるグランドホテル形式のパニック映画もの、あるいはジョン・マクレーンのいない『ダイ・ハード』と言うかですね、そういうことですよね。

ちなみに、『ダイ・ハード』連想するんだとしたらあの、最初にあのデーブ・パテール演じる主人公のアルジュンが、
『靴忘れてきちゃった‥。』と言って、足に合わない靴履いてるってところで、ダイハードだったら確実にそれを生かした何か見せ場があったわけですけど、別にサスペンス的に生かされる件あるのかな?と別にそれなかったっていうのはありましたけどね。
そんなような感じだと思ってください。

ただしですね、その一方で同時にテロリスト側、というよりあのテロの駒として使われた青年たち側の視点も描いてるのは、本作この『ホテル・ムンバイ』という作品の一つの特徴で、例えばさっき言ったクリント・イーストウッドの『15時17分、パリ行き』が、あの元になったルポルタージュにはあった、そのテロ実行犯のその青年側のストーリーっというのがあるわけです。これはあの原作の本で日本語でも読めますけど、これはこれで凄い、この話があることがまた重みを増してるようなルポルタージュなんですけど、映画版ではバッサリそこ切ってますよね。あのテロリストの青年側の事情をみたいなのは、全くイーストウッドは切ってるわけですけど、それとは対照的なスタンスと言えると、それは本作全体が主張しようとしているメッセージとも関係してることなんですけど、とにかくその映画の冒頭に写し出されるゴムボートに乗って、そのムンバイに上陸してくるその青年たち。まだあどけなささえね、ちょっと残すようなその彼に対して、パキスタンにいたというその首謀者らしき男の声がずっと聞こえてくる。
その男が冒頭からですね、最後に至るまでですね、絶えず彼ら以外、その彼ら以外の人々、その彼ら以外の世界への憎しみを煽るような言葉をずっと吹き込み続けてるわけですね。

引用:IMDb.com

ホテル・ムンバイ、特に印象的なシーン

特に印象的なのは、『あいつらは異教徒なんだから、人間と思うな!』この人間と思うなというこの考え方、このセリフが非常に印象的なわけです。彼らはまさに、あいつらは異教徒だから人間の扱いしなくていいんだっという風に、信じている。というより信じ込まされてきたから実際その後、平然と人々を殺しまくるわけでですよね。

なんですけどしかし一方でですね、その青年たち、特にその中の一人にその描写が集約されてるんですけど、青年たちのうちの一人がですね、例えばそのタージマハルホテルにですね、巨大で美しいロビーに足を踏み入れて、思わず
『なんだこれ‥こんなの初めて見たよ!まるで楽園だ!』って、ちょっとついうっとりしてしまったり、全く同じ青年がですね、今度はその、水洗トイレがあるの知らなくて
『これ、水流せるんだ!って、これいいね!』と驚き喜んだり、あとまぁ、食べ物をつまみ食いして、
『うんまっ!』みたいになったりですね。
あるいはさらに後半では、その首謀者が家族にね、本当にお金を自分がその例えばその、テロやったあと死んだとしてお金を本当くれるのか心配し出して、こっそりその家族に電話して号泣してたりもすると。要は、かなり貧しい環境で生まれ育って他の世界のことを知らないまま、その純粋さからゆえに恐らくそこにつけこまれて、こうなってしまっただけの普通の青年でもあるんだってことが割としっかり描かれている訳です、この『ホテル・ムンバイ』は。

その中で、中ではわりと冷酷なリーダー格の男でさえ、
What you are Name?
というね、すごく簡単な基本的な英単語あるいは会話さえ、全く分からない状態でここに来てるぐらいで、とにかく
あ‥やっぱ相当貧困と、無知つまりその教育が行き届いてない状態っていうのが、ベースにあるんだなって事かなり意識的に描いてる作品なんですよねこれは『ホテル・ムンバイ』は。

つまりテロ実行犯たちがですね、どれだけもちろん映画の中で酷いんです、極悪非道なんです。やっぱり見てたら当然怒りも湧く、憎しみも湧くわけなんです。なんだけど、この映画自身の語り口は、彼らをあくまでそれでももちろん、『ひとでなし!』なわけですけどね、あくまで人間として見ることを投げ出さない。

ホテル・ムンバイが心がけている事

つまりですね、作品の語り口そのものが、そのテロリストと同じ次元に出さないように気を付けてるわけです。つまり、他者にレッテル貼って人間と思わないっていうその思考に決して陥らないように、映画自体がそれを心がけてる作品だということなんですね。
事実、先ほど言ったですね本当は単に純朴なだけでもあるそのテロリストの青年がですね、ついに!そんな首謀者からあれだけ相手を人間と、あいつら人間じゃないと思わなくて良い!と言って、殺してきたその青年がどうしても相手を人間と思わないことができなくなってしまう。この瞬間ですね、本作で間違いなく最も美しい感動的な瞬間という。しかも皆さん驚くべきか、この話こそがまさに先ほど言った元になったドキュメンタリーで生存者が語っていた事実を元にしたエピソードなんですよ。これこそが本当の話なんですよ。

と言うね、しかもそれは劇中で2度ほど、もちろん状況が状況だけにまずは否定的に語られるその『祈り』というものをめぐる意味、つまり、つまるところ信仰の意味ですね。この信仰なんていうのがあるからね、こんなことになってるだ!あるいは信仰なんて意味があるの?っていう信仰の意義を、非常に真摯に問う作者からのメッセージがこの最も感動的な場面にも、込められているというね。

そういうことに関して言えばですね、他者をどう見るかということに関して言えば、テロリスト側だけではなくて、宿泊者側つまり一般、我々側にもある偏見という面にもちゃんとスポットをあてる。例えば中盤、主人公はアルジュンのその宗教徒としてのその姿、ターバンを巻いてたり、ひげ姿であるその装いに関するその、ある白人女性とのやり取りここで、そこも我々のが一般側にもあるその他者として人を見る視線というのも、正面から誠実に描こうとしてるということなんですね。
という事で、ちょっと割に踏み込んだね、そのメッセージの話し方してしまいましたけども、この『ホテル・ムンバイ』という映画、その偉さはですね、もちろん今言ったようなメッセージの深さバランス感覚の素晴らしさ、このもちろんあるわけですが、同時にですねこれもメールで書いてる方ね多かったです。
やはりエンターテイメント的な面でも、きっちり高レベルで面白いってことですね。めちゃめちゃ面白いんですよね。
序盤それぞれのキャラクターの日常描写から割と脇の人物までくっきりと端的にスピーディーに観客に印象付けしていく。そんなにくどくどとね、この人はこういう人でなんて語らなくても、ちょっとしたセリフとかちょっとした佇まいとかちょっとした他の人との関係性で、この人はこういう人っていう印象付けていく、その手際だけどもう長編2作目にして熟練の技であるくらい上手いですし、そこからですね、いよいよいざテロがその開始されてですね、みるみるその日常が崩れて行く、そこからのですね、そのサスペンスからサスペンス、要するにその状況の変化に従ってのサスペンスからサスペンス、手を替え品を替えの見せ場が連鎖していく、その構成の巧みさと引き出しの多さ。
あとはその奇をてらわない非常にオーソドックスな見せ方なんだけど、やっぱりそのツボを押さえた的確な演出ぶりという、本当にぐいぐいぐいぐい引き込まれてしまう。

例えばですね、ホテルマンのそのアルジュンと並ぶ宿泊客側のメインストーリーと言ってよかろう、アーミー・ハマー演じるそのアメリカ人の建築家の夫とナザニン・ボニアディーさんという方が演じている『ザーラ』という、この方中東系のね女性なわけですねこの夫婦。彼らはまだ、その生後そんなに経ってない生後間もなさそうな赤ちゃんを、ティルダ・コブハム・ハーヴェイさんという方が演じているベビーシッター、『サリー』さんという方に預けたまま、そのテロに巻き込まれてしまう。

要するに赤ちゃんとずっと離れてるというのがまず、一つ最初の状況としてある。
最初、そのベビーシッターさんがシャワーを浴びて電話に気づかないというのも、もちろんベタではあるんだけど、普通にやっぱりこうハラハラさせられますし、その後これは全編に渡ってですね、ドアがノックされる度にそのドアをノックしてるがテロリストなのか誰なのか、つまり出ていいやつかダメなやつかサスペンスが発動するわけです。

しかも場合によっては、その開けた途端即射殺になったりもするので、つまりこの映画の肝はですね、どんな行動が正解か誰にもわからないって言うまま話が進むところなんですね。時に観客にだけはちょっと神の目視点で、複数視点がある分、
『あー!ダメダメ!そこ開けちゃダメ!』
みたいのがあるから、そこでもさらにサスペンスが増したりするそんな作りになってるわけですけど。

引用:IMDb.com

一発目のサスペンス

まずそのメイドさんが、そのノックにドアを開けるかどうかこれで一発目のサスペンスが来てですね、そこからもう、さっき言ったですね、クローゼットに隠れて追跡者をやり過ごそうとするかという件、これ本当にサスペンスホラー映画のね、割と定番的なシチュエーションなんだけど、この『ホテル・ムンバイ』がそこにですね、さっき言った生後まもないド赤ちゃんというですね、一要素を加えることでさらに何倍もの
『うわぁ~やめてくれぇ~』
という緊迫感を高めているという、ここは本当にすごいあたりでしたし、あるいはその後、アーミー・ハマー演じるそのお父さんがですね、ベビーシッターのいる部屋に単身向かおうとする側のその一連のシークエンス、例えば同じショット内にそれぞれ見えない位置にいるそのアーミー・ハマーとほかの客とテロリストというその位置関係の見せ方、これアンソニーマドセンこの辺が非常に上手いですし、互いの距離感位置関係をこれ以上ないほど端的に示したからこそ、まさしく肝が冷えるような恐ろしさを感じさせる見事な見せ方とか、さらにそこから連続して今度はエレベーター内、途中、
『あっ!途中階に止まっちゃう!』
というところのハラハラからのその食べ物を乗せたワゴンを挟んで、そこにしかも、そこはさっき言ったように、彼ら側の人間性演出にも重なってたりするという、また全く異なる空間を使ったサスペンスを用意してたりとか、はたまた終盤、とある宿泊客の気持ちはわからなくもないが、致命的なうかつ行動、これも本当にあった話です皆さんね。

『ダイハード』でも描けている、こういうとき気をつけなければいけませんが、によってついにテロリストたちが凄くこう‥背後に迫ってきちゃう、ここのもう悪魔の生贄かっていう絶望的な同一ショットにおさまった、この恐ろしい追いかけっこの辺りであるとか、とにかく単純にサスペンススリラーとって普通に畳み掛けるように面白い、その上でさっき述べたように他者を人間と思うな思考、それはテロリスト側のそれであり、そしてテロリストを単に悪魔的な存在そして、切り捨てる思考でもあるわけですが、そこに陥らない方にちょっとメッセージ。

そのある驚くべき感動的な瞬間を用意してくれる。しかもそれが事実に基づく、つまり現実に世界や人間に希望はあるんだってことも示すということですね。そんなところまであくまでさらりと感じさせる。ある男が家から出かけ帰ってくるまでというところ込めた全体の構成の美しさ上手さ、そして撮影編集含めて見せ方の上手さ、巧みさ、そしてセリフの大小に関わらず、キャラ分け、印象付けしっかりする役者陣とその演出の上質さ。そしてもちろんメッセージの素晴らしさ。
ということで、これはなるほど!一級品でございました。

この機会に見れて、本当にこれ良かったです。なかなか怖い映画ですし、ふさぎがちな日々にちょっとハードかなと思われるかもしれませんが、ちゃんとしっかり希望も残す作品にもなっておりますので、ぜひこのタイミングでお家で落ちてください。

<書き起こし終わり>

※〇〇の正解は

①9割は褒めの感想
②『パルスダウン』『ジェノサイドホテル』
③『あいつらは、異教徒なんだから人間と思うな!』
④作者から信仰の意義を問われていると感じた。
でした。

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