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引用:IMDb.com

勝手にふるえてろのライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年05月20日更新
観終った後、「あそこさー!」「いやいやでもそこは。」とかいろいろ言う感じも含めて、本当に観終った後、実際の人物の人生を語り合うように語り合いたくなるような。確かに大切な、これは俺の話だ!っていうふうになる人もいっぱいいるのも分かる!大変素晴らしい作品でございました。(ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフルより)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、大九明子監督作「勝手にふるえてろ」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん「勝手にふるえてろ」解説レビューの概要

①松岡茉優さんの意外にも初主演映画
②なかなか描かれる機会のなかった「○○」
③中盤のあるどんでん返し的な仕掛け
④誰もが経験したことがあるであろう主人公の行動や言動とそれへの共感
⑤人それぞれ、人を見る見方にはズレがある


※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

「勝手にふるえてろ」宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)
本日、11時台ゲストがクレイジーケンバンドより小野瀬雅生さん登場ということで、クレイジーケンバンドバージョンでやっております。いつももちろん西原商会さんもありがとうございます、ということでございます。

毎週土曜夜10時からTBSラジオのキーステーションに生放送でお送りしているRHYMESTER宇多丸の「ウィークエンド・シャッフル」。ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと「シネマンディアス宇多丸」が毎週自腹でウキウキウォッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーでございます。

今夜扱う映画は、先週ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画「勝手にふるえてろ」!

終わった瞬間に、「ニ」を演じてる渡辺大知さんがボーカルのこの黒猫チェルシーの曲が流れ出して。ちょっとこう「ニ」側の、男側の心情の歌詞っぽい感じで終わるのもなんかこう、そこで反転するのも、ちょっといいなと思いましたけど。

ということで、芥川賞作家・綿矢りささんの同名小説を実写映画化。恋愛経験のないOL「ヨシカ」が10年間脳内恋愛を続けている中学時代の同級生「イチ」と、突然告白してきた職場の同僚、通称「ニ」、ちゃんと名前がある人なんですよ!っていうあたりも最後に出てきますけど、「ニ」の間で悩み、暴走するさまを描くラブコメディー。

主人公の「ヨシカ」を演じるのは、今作が初主演作となる松岡茉優。「イチ」を演じるのは若手俳優・北村匠海さん。そして通称「ニ」を、ロックバンド黒猫チェルシーのボーカル・渡辺大知が演じている。監督は、松岡茉優とは三度目のタッグとなる、いろいろオムニバスのやつとか、TUBEのミュージックビデオとか諸々でタッグ。で、今回の作品が三度目のタッグとなる、大九明子さんでございます。

ということで、この「勝手にふるえてろ」をもう見たよ、というリスナーの皆様、ウォッチメンからの監視報告・感想をメールなどでいただいております、ありがとうございます。メールの量は、多い! 先週の「バーフバリ」に引き続き、大量到着しております。非常に見てハマッてる人がめちゃめちゃ多い作品という評判は聞いておりましたが、多いということで。

そして賛否の比率は、もちろん「賛」が9割。熱気があるということです。

引用:IMDb.com

「勝手にふるえてろ」一般の方の鑑賞した感想・評価

*マルバさん
これは、私だ! 顔面を除いて、ほぼ完全に私だ!

(宇多丸)
というように、主人公ヨシカに自分を重ね、「これは私の映画だ!」とそのまま自分語りを始める長文メールが多数到着。お前の話じゃねえか!っていうね。いいんですけどね、そういう。また、

*イタさん
松岡茉優をずっと眺めていられるのは幸せ。しかし、体験としては地獄。

(宇多丸)
など、そのイタさ、ヨシカさんというキャラクターがいろいろとイタい言動を取るという、そのイタさに悶絶している人も多かった。女性からの投稿が目立ったが、しかし男性からの共感メールも多数、ということでございます。一方、否定的意見は「キャラクターが嫌い」「前半と後半のギャップがなくてつまらない」などがちらほらございました。代表的なところをご紹介いたしましょう。

*東京都30代女性
やっと出てきた。よくいる普通の女性がちゃんと描けている邦画。こういう作品をずっと待っていたんです。最高のボンクラ処女映画でした。「イチ」への感情や突発的な行動の数々は全く理解できないものの、愛好するものに対して果てしない執着を見せたり、上司に「フレディ」とあだ名をつけたり。

(宇多丸)
あそこで、ドンドンパーン!って、あそこで笑っちゃいますけど。

*東京都30代女性 続き
腹立った時に「ファック!ファック!ファック!ファック!」と絶叫したり、「タモリ倶楽部があるから飲み会に行きたくない」とか、同性の女の子をかわいいと思う気持ちとか。これ、私たちの日常まさにこれ!非リア充のオタ女子とくくられがちな「ヨシカ」というキャラクターですが、友達が多くても、彼氏と上手くいってても、普通の女の人ってだいたいこんな感じなので、血肉の通った人間がちゃんと描かれていると感動しました。いままで邦画を見てきて、せめて1人ぐらいリアリティのある普通の女性キャラがいてもいいのになーと不満に思っていたストレス全てを吹き飛ばしてくれました。大九監督も松岡さんもすごい!ありがとう!こういう映画が見たかったよ!

(宇多丸)
という感想でございます。
あと、ちょっとダメだったという方、代表的なあたり。

「勝手にふるえてろ」の批判的な感想・評価

*ねこまたさん
「勝手にふるえてろ」を見てきました。正直、退屈に感じてしまいました。妄想と現実を行き来する話なのでそれが爆発してすごいものが見れるのでは、と期待したのですが、それがなかったのが残念です。たしかに松岡茉優さんの演技にハッとさせられる瞬間もあったのですが、正直テンポが悪いのでだんだんどうでもよくなってしまいました。

(宇多丸)
というご意見でございました。ありがとうございます。

「勝手にふるえてろ」、私もヒューマントラストシネマ渋谷で2回観てまいりました。非常に入ってましたね。これまで当コーナーでも、例えば2016年5月14日に評しました「ちはやふる -下の句-」での非常に大好演。これ、2016年度この番組がやったシネマランキングの途中でやる「ゴールデンタマデミー賞 ベストガール部門」こちらを勝手に捧げさせていただきましたし。そこから改めてさかのぼっての、2012年9月15日やりました「桐島、部活やめるってよ」。大名作ですけども。あの「桐島、部活やめるってよ」全体のクオリティーアップ、あの緊張感、ちょっと嫌な感じが、ずーっとこう、ピーンと張った緊張感。あれの全体のクオリティアップにも大きく貢献していたのではないか、改めて。といったあたりも、やっぱり素晴らしい、「桐島、部活やめるってよ」でもやっぱりすごく好演を残していたなというあたり。とにかく、松岡茉優さんはすごいというのは、ちょいちょい言及してまいりました、この番組でも。

引用:IMDb.com

松岡茉優さんはすごい

しかも、そんな若手実力派女優ナンバーワン的な立場でありながら、同時に、非常にハードコアな「モーニング娘。」のファンであったりとか、バラエティ的なしゃべりのセンスも異常に抜群だったり。そういう意味でも我々的にはもう、松岡茉優最強なんじゃねえか?説。これが非常に定説となりつつあったのが昨今と、言わねばならぬのが現状。こういう感じだったんですけど。そんな中での、満を持しての初主演映画。意外にもというべきか、やっぱりちょっと脇を固める感じで今まで、それでもすごく強烈に印象を残す、という感じでやってこられた松岡茉優さん。意外にも初主演映画。

松岡茉優さん以外は考えられない

そしてそれがまさに松岡茉優さんの実力と魅力全開な、逆にいうともはや彼女主演以外はちょっと考えられない一本にしっかりなっている、というあたり。非常に素晴らしい初主演映画なんじゃないでしょうか。実際、主人公のヨシカというキャラクターは、これ、下手な人がキャスティングされていたら、そのこじらせ感とかイケてない感とか、そういうオタクな女の子感みたいなのを強調しようとするあまり、例えばあざとさばかりが目立ってしまったり、あるいは本当にただ地味で共感しづらいだけのキャラクターになってしまったり、とかっていうことになってしまいかねないところを、これはやっぱり松岡茉優さんならではの。例えばああいう、こう「は!?」「あ!?」「はあ!?」的な、会話の中ににじみ出る絶妙な険悪な感じとか、とにかくちょっとしたセリフ回しの間とか表情で、非常に豊かなニュアンスを表現できてしまう、あの技量とセンス。

引用:IMDb.com

圧倒的なチャーム。

と同時に、やはり見るものを引きつけてやまない圧倒的なチャーム。要はストレートにしっかりかわいくもある、みたいな。それを両立させているという。まさに「今」の松岡茉優という優れた女優さんいてこそのマジックが、今回の主人公ヨシカさんにはかかっているんじゃないか。だからこそ、非常に観客の記憶に残る、本当に名キャラクター、なってるんじゃないかというふうに思います。これ、元の綿矢りささんの原作小説、ちなみに綿矢りささん、この作中で「タモリ倶楽部見るから」とか言って、僕、奇しくも綿矢りささんと「タモリ倶楽部」の収録ではじめてお会いしているという。同じ早稲田出身同士ということで。そこにちょっとなんとなく勝手な、俺は個人的な因縁を。「俺、タモリ倶楽部出てるけど!」みたいな感じで。ちょっと劇中のヨシカに自慢してみたくなってしまいましたけど。「宇多丸、マジ神!」って言ってほしい、っていう。

綿矢りささんの原作小説

綿矢りささんの原作小説の方は、基本主人公の内面の独白でずっと進んでいくつくりなわけです。で、ずっと主人公の内面で思っていることが地の文で続いてくつくりだとよりはっきりするんですけど。この主人公のヨシカさん、たしかに自意識過剰で、いろいろこじらせてて、物語の後半ではわりと言い訳不能の、でもちょっとした暴走っていうのをしてしまったりするんですけども、僕は彼女を、これさっきの30代女性の方のメールと同じで、僕も、別にそこまで変な人、極端に変な人っていうわけじゃなくて、ある意味誰でもこのぐらいの鬱屈や屈折、いびつさは抱えているものでもある、特に20代半ばぐらいならこれぐらいの右往左往、七転八倒はしてて当然、というふうに僕は思いました。だから、いやこれは普通の人、女性ですよ、っていうふうに僕は思った。

ただむしろ先ほどのメールにもあった通りだけど、そういう普通にいびつなぐらいの女性というか。要するに、普通なぐらいのいびつさを抱えた普通の女性みたいなものこそ、エンターテインメントの中で、特に日本映画の中で、なかなか描かれる機会はなかった、みたいなことは本当に確かにそうかもしれません。で、それこそが、それをエンターテインメントに落とし込むことこそが難しいのかもしれませんけど。とにかく、わりと実はヨシカさんは普通の人だというふうに僕は思う。

引用:IMDb.com

映画版は、脚本・監督の大九明子さん

ただ、今回の映画版では、脚本・監督の大九明子さんという方が、さっき言った原作小説の内面の独白というのを、映画でそのまま、例えば普通に内面のモノローグ、それをナレーションで流す、そういうやり方も当然あります、思ってることをナレーションで流す、みたいにやってもオイシくない。それだとちょっと綿矢りささんの言葉の、小説だと活きる言葉のキレみたいなのがちょっと軽くなっちゃう、安くなっちゃうんじゃないか、みたいな感じで判断して。で、どうしたかっていうと、小説だとやってる内面の独白をまとめて、ヨシカさんが特に映画前半部における、ヨシカさんが街の人々にひっきりなしに話しかける会話というのに置き換えてるわけです。

中盤にどんでん返し的な仕掛け

で、さらに中盤には、あるどんでん返し的な仕掛けがあって。で、そこから始まる、やはりかなり大胆な映画的演出っていうのが用意されていたりして。要は、このヨシカさんというキャラクターが、原作より若干エキセントリックな人に見える、ということを含め、映画的にかなり弾けた、ポップなアレンジを施しているということだと思います。それによって、後半彼女が後生大事に守り続けてきた内面ていうのと現実っていうのの、否応なしの軋轢というのが、より痛々しく際立つような感じになっていると。僕はこれはやっぱり、大九明子さん、その原作小説の見事な映画化、まさにアダプテーションの仕方として、見事に成し遂げているなというふうに思いました。

引用:IMDb.com

大九さんの作品

この大九さんの作品、僕過去作すべてを拝見してるわけではないんですけども、ガッキーの「恋するマドリ」とかいろいろ撮ったりしていますけど、このタイミングで遅まきながらいくつか拝見した中では、特に長編映画としてはこの前作にあたる2015年の作品「でーれーガールズ」っていうのが、言っちゃえばこれ、見てみたら完全に日本版「サニー 永遠の仲間たち」だなっていう。「サニー 永遠の仲間たち」この番組では2012年7月7日に評させていただきましたけど、的な話だった。過去の自分と現在の自分。その現在の自分が過去の、特に非常に仲がよかった友人との思い出に、ある意味ケリをつけていくという。それが並行して語られていくという話。

あと、妄想に逃避してきた少女が、現実の異性と初めて対峙することになってとか。それが、その日常と妄想がシームレスに映像的に表現されている感じとか。あともちろん女の子同士のちょっとヒリヒリした友情のあり方とか。いろんな意味で今回の「勝手にふるえてろ」と非常に通底するものが多く感じられる、この「でーれーガールズ」。非常に胸にしみる良作でございました。これ、機会があったらぜひ見ていただきたいと思います。この機会に見れてよかったです、とても。

大九明子さんの監督デビュー作「意外と死なない」

ただ、今回の「勝手にふるえてろ」は、大九明子さんの監督デビュー作「意外と死なない」という1999年の作品。これ、ソフト化もされてなくて、僕、申し訳ない、これすごく見たかったんだけど、見れてないんです。不勉強で申し訳ないんだけど。劇中セリフでも、「意外と死なない」つってセルフ引用的に出てきましたけど。その「意外と死なない」に通じるものがある、というふうにご本人がおっしゃってるぐらいで。これまでのフィルモグラフィーの中でも、本当に、今までの最近の商業作品というか、いくつかの中でも本当に好き放題、活き活きと暴れまわっている感が本当に明らかで。本当に一皮むけた、ブレイクスルー的な一本となっているんじゃないでしょうか。なのでこれだけいろいろと評判を呼んでるんじゃないかと。

引用:IMDb.com

こじらせ女子

いろいろ語り口、切り口はあるんですよ、素晴らしい部分。僕すごい印象に残った、素晴らしいなと思った部分。例えばこの主人公ヨシカさんが着ている服というのをひとつ見ても、要はヨシカさん、ちゃんとおしゃれでかわいくて。つまり要は、こじらせ女子、オタクっぽい女子だからって、「投げた人」ではない。わかります? 僕の表現でいう「投げた人」。格好には気を遣ってないとか、そういう人ではなくて。要は単にちゃんと自分の世界、価値観をちゃんと持っている人で、っていうのがちゃんと描かれてる。要は、オタク女子だからこういう感じでしょ?っていう感じじゃなくて、ちゃんとかわいい、ちゃんとおしゃれとかちゃんとしている人として描いている。これは好ましいと思ったし。

おしゃれの演出

ただ同時に、例えばそのヨシカさん、おしゃれはしてるんですよ、してるんだけど、足元が何度か映されるんだけど、基本やる気ない時は、やっぱちょっと靴をね、汚く、だらしなく履いてる。このあたりにこう、やっぱそういうとこで、おしゃれもしてるし投げてるわけじゃないけど、なんか根本のとこで何か、何かゆるいっていうか、何か自分に甘い感じがする、とか。自分を律しきれてない感じのあたりとか。あと、そんな彼女がついに、さっきまでモカシンをすごいだらしなくボヨーンと履いてた人が、ついにピカピカのパンプスをまさに「装備」して、意気揚々と出かけていく局面。それがついにだから、キターッ!と。ピカピカのパンプス、彼女にとってのやっぱりお姫様なんでしょうね。ピシッとして出かけていくという局面がキターッ!というその高揚感。それをその靴の対比で示しているし。と同時に、なおかつ、あのピカピカのパンプスを履いて出かけてったその日。帰ってきた時の彼女の痛々しいこと。あんなに意気揚々と出かけてったのに、っていうあたり。これでも誰でもある一日、あると思うんです。出かける一日は、今日は俺の人生の最良の一日になるぞ!って出かけた日にドヨ〜ンとして帰ってくる、とか。

引用:IMDb.com

「そんなに異常だと思わない」

あともうひとつ、さっき「そんなに異常だと思わない」っていうのは、中学の時とかにさ、好きだった子をずーっと10年間想い続けて。それはもちろん褒められた精神状態じゃないんだけど、俺なんかあれですよ、だって中高6年間男子校だったから、小学校の時に好きだった子の、その瞬間とかしかねえんだから。あと、予備校でちょっとすれ違った子に、プリントを渡した瞬間にニコッと、ニヤリかもしんねえけど。あの笑った瞬間の、その瞬間を膨らますしかねえんだから!しようがねえだろ!だから、分かるんですよ、すごい。

とにかく、そういうあたりとか。あと、デートなんだけど、「お前、部屋着の上にコートを羽織っただけだよな?」とか、そういう感じ。やる気ない時との差がすごい激しい感じとかが、とにかくヨシカさんの着る服とか履く靴とか、そういうディテール全体、セリフとかストーリーだけじゃなくて、ディテール全体を通した演出が、とにかく細やかだし、楽しい。例えば、ある文房具を使った、非常にフレッシュな心理描写であるとか。それもよかったですし。なんですね。で、そういう周りの演出がきっちりできてるからこそ、これはおそらく大九明子さん、もともと人力舎でお笑いちゃんとプロとしてやられていた方なだけに、やはりセリフの応酬、ちょっとした間とかニュアンス豊かなセリフの応酬の醍醐味。これがやっぱりすごくめちゃめちゃ生きてくるというあたりです。

爆笑の名ゼリフ満載

もちろん松岡茉優さん、さっき言った通り、そういう、なんていうのかな?言ってみればバラエティ、お笑い的なセンス、スキルも抜群だから。ちょっとしたセリフ回しだけで、爆笑の名ゼリフ満載ですよ。「はい、出た、正直〜。私それ大嫌い!」。でも「はい、出た、正直〜。」で爆笑しながら、「私、それ大嫌い!」ってその叫びに、なんかすごいちょっとやっぱこう、笑いながら「あっ、イタい!わかるわかる!」っていう感じとかがたまらないあたりだったりする。こんな感じで、実はそういう笑えるセリフの一個一個にも、ちゃんとお話と、もっと言えば作品のテーマとリンクした重みがちゃんと一個一個仕掛けられてるあたり。非常に見事な脚色だと思いますし。

引用:IMDb.com

最後の言い合いシーン

例えば最後の言い合いシーン。言い合い a.k.a はじめての真正面からのコミュニケーションシーンとか。要は、二という、彼女が好かれてはいるけど、見下げてきた男が言う、意外と真っ当なコミュニケーション倫理の話とか。非常に実はとっても大事な、いい話をしているっていう感じだと思うんです。で、ここから次第に浮き上がってくる、自分と話してるみたいだから好きっていう好きになり方と、わからないことだらけだから好きっていう好きになり方。この「好きになり方」の2つの対比っていうのも、非常に鮮やかにここでまた浮かび上がってくるし。

黒猫チェルシーボーカルの渡辺大知さん

ちゃんとここにきて、しっかりそれなりにかっこよく見え出す。それまでは、「悪いやつじゃないんだろうけど、まあね、これ好きじゃないものは無理ですよ」っていう感じが、ものすごい説得力で体現できている黒猫チェルシーボーカルの渡辺大知さん。これ、本当にこれ以上ないほど、つまり「二」感っていうかね。「悪い人じゃないし、この人から好かれていることそのものはありがたく思いますが、でも好きっていうか恋愛はできない」っていう感じ。でも最後にちゃんと、非常に真っ当に向き合うことで、「あっ、こいつになら心の玄関一歩入れても・・・」。しかも、家に絶対入れなかった人が、家に人を入れることで、心の結界が崩れる感覚。私、詳しくは言いませんけど、そういう感覚を味わったことありますから。主にピエール瀧さんに無理やり入られたってことなんですけど。という感じです。

引用:IMDb.com

1個だけ気になったのは

あえて言えば、この二にまつわる描写で僕ちょっと1個だけ気になったのは、エレベーターに無理やり乗ってきちゃうところ。あれ、あそこだけは、要は、彼がちょっと、何ていうのかな、現実からちょっと、現実離れしすぎちゃったコミカルさっていうか。たしかにでも、あそこは「イチ」と「二」と「ヨシカさん」が唯一一堂に会する3ショットのところだから、ぜひその3ショットの面白さを見せたかった、っていうのもあるだろうから、わかるんだけど、というのはありますけど。でも、シーンとした爆笑でしたよね。やおらリップクリームを塗りだすくだりとか、本当に最高なんですけど。その、イチくんを演じる北村匠海くんの、本当にミステリアスな感じなんだけど、そこからの残酷な逆転感とかも。ちなみに彼のあの学生時代の感じ、僕はBase Ball Bearの小出祐介くんそっくりだ、というふうに思いましたけど。だから小出くんみたいに、自意識としてはどっちかというとそういうこじらせ系の人も、こっちから見ればオージー(18:52)に見えるかもしれない。だから、要は人それぞれ、人を見る見方っていうのが、またズレがあるっていうあたり。俺だって学生時代いじめられてたじゃん。そのあたりもすごい、「過去振り返りあるある」っていうか。過去を振り返ることによって何かがこう、分かんなかった何かが、浮かび上がってくる何かとかも、すごく見事だなというふうに思いまして。これは、やっぱ綿谷さんの小説の部分ですかね。

映画的な部分

あと、映画的な部分でいうと、女子社員達が昼食をとった後なんですかね、ちょっと仮眠をとる場面っていうのが2回ぐらい出てくるんです。その場面の、これ原作でも出てくる場面なんだけど、そこをすごい、大九明子さんがとっても、眠る女性社員達っていうのを愛おしく、綺麗に、でもなんかこう、そこで一時こう、何ていうのかな、会社っていう言っちゃえば割に男社会だったりするんでしょうか、そういう社会の中でちゃんと頑張ってる女の子たちが、一時息を抜いて眠ってる、静かな静寂がおとずれて。でもそこをスマホがブーッとそれぞれ鳴り出して、目覚ましが鳴り出して、起き上がってまた立ち上がって外に出ていくっていう。あそこをすごく愛おしく撮ってる感じとかが、とっても、なんか大九明子さんの「でーれーガールズ」とかにも感じた、女性映画っていうか、女の子映画の撮り手としての素晴らしい目線というのを感じました。

いろいろヨシカの言動に言いたいことが出てくるとこも含めて、最高。俺に言わせれば、そんなお前、10年会ってないんだったら、このぐらいは覚悟しとけよ!と。チャンスじゃないか!と。こっから積み上げてけばいいじゃないか!とか文句言いたくなる。観終った後、「あそこさー!」「いやいやでもそこは。」とかいろいろ言う感じも含めて、本当に観終った後、実際の人物の人生を語り合うように語り合いたくなるような。確かに大切な、これは俺の話だ!っていうふうになる人もいっぱいいるのも分かる!大変素晴らしい作品でございました。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

<書き起こし終わり>


○○に入る言葉の答え

「②なかなか描かれる機会のなかった”普通なぐらいのいびつさを抱えた普通の女性”」でした!

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