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引用:IMDb.com

ナイスガイズ!のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月18日更新
私が好物じゃないわけがないっていうね。むちゃくちゃ面白いですよ、それは。はい。「映画楽しいよな、やっぱ楽しいよな」っていうふうにつくづく思う、僕はもう大好物に決まってる1本です。ぜひぜひ映画館で普通に声出して笑って、ウォッチしてみてください!(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、シェーン・ブラック監督のアクションコメディ「ナイスガイズ!」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん『ナイスガイズ!』解説レビューの概要

①メールの量はちょっと少なめ。ただし圧倒的高評価!
②バイオレントな事態に不謹慎な○○漂う、シェーン・ブラック監督の作風。
③全ての要素を暗示するオープニングが最高。
④ライアン・ゴスリングが安い笑いを嬉々として取りにいっている感じが好ましい。
⑤本筋のストーリーと直接関係ないディテールも大きな魅力。
⑥要所要所に苦み、鋭さを含み、”魂”のある映画になっている。
⑦「続編が見たい」「映画って楽しいよな」とつくづく思う1本。

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

映画「ナイスガイズ!」宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)

毎週土曜夜10時からTBSラジオをキーステーションに生放送でお送りしているRHYMESTER宇多丸のウィークエンドシャッフル。
ここから11時までは劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人ことシネマンディアス宇多丸が毎週自腹でウキウキウオッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーです。
今夜扱う映画は先週ムービーガチャマシーンを回して決まったこの映画「ナイスガイズ!」。

ライアン・ゴズリングとラッセル・クロウが共演し、「アイアンマン3」のシェーン・ブラック監督がメガホンを取ったバディムービー。
シングルファーザーで酒浸りの私立探偵マーチと腕っ節の強い示談屋ヒーリー。
2人が失踪した少女の捜索に乗り出すと、やがて思いもよらない巨大な陰謀が顔を覗かせる、ということでございます。

さあ。ということで、一部好事家の間で非常にですね、「面白い、面白い」と評判になっておりました「ナイスガイズ!」。
これを見たよーとリスナーの皆さんからメール、ウォッチメンからの監視報告、メールなどでいただいております。ありがとうございます。
メールの量は・・ちょっと少なめではございます。
まぁちょっと公開規模がね、ちょっと少なめでございますので、しょうがないあたりもありますが。。
ただし、賛否の比率は、圧倒的高評価!ということでございます。

・とにかく笑った。
・今ライアン・ゴズリングを見るなら「ラ・ラ・ランド」よりこっち・・”より”って言っていいかわかりませんけどね・・「ラ・ラ・ランド」よりこっち。
・ライアン・ゴズリングの娘役アンガーリー・ライスがめちゃくちゃかわいい。
・ギャグは不謹慎だが、主人公たちの行動にはモラルがあり笑えるだけじゃない。

など多くの人が映画を楽しんだ様子。否定的意見はほぼ、ほとんど見られなかった、といったあたりでございます。
代表的なところをご紹介いたしましょう。

引用:IMDb.com

映画「ナイスガイズ!」を鑑賞した一般の方の感想

ラジオネーム「ステアカウント」さん。
「ナイスガイズ!」公開初日に見てきました。
私の今作の評価を申し上げますと、最高です!!
久々にずっと映画の世界に浸っていたい、と思わせる映画で、早くも私の今年ベスト級です。
冒頭のシーンからこの作品にはやられっぱなしでした。

あ、これはちょっと後ほど僕もこの話したいんで・・はい。ちょっと置いときますね。

今作はしっかり笑えるコメディでありながら、傷ついた男たちが良心を貫くことを描く映画だったんです。
それがちょっとオープニングのあるシーンにちゃんと表れてますよ。
ラッセル・クロウとキム・ベイシンガーの共演ということで、「L.A.コンフィデンシャル」を思い起こしますが、私がこの映画を見て受けた印象も、監督が脚本をした「リーサル・ウェポン」ではなく「L.A.コンフィデンシャル」や「チャイナタウン」のような映画でした。

まぁ、ノワールですからね。

単なる懐古主義的な70年代を舞台にした映画ではなく、コメディアクションといわれたようなアプローチで「チャイナタウン」のような歪んだアメリカ社会を見事に描いた傑作だと思います。

ということございます。
一方ダメだったという方。

映画「ナイスガイズ!」批判的な意見

「ダニエルデイギカイジュウ」さん。
スター共演のバディものということでしたが、期待外れでした。
とってつけたような展開とギャグが乗れませんでした。

確かにあの関係ない・・関係ないくだりが多いんですけどね。

ギャグ満載で最初は笑っていたのですが、途中からギャグのシーンになると流れが完全に止まり、それが続いたのでムズムズし始め、最後にはこいつらが生きようが死のうがどうでもいいわ、となってしまいました。
登場人物が、見終わった後に「これからどうなるんだろう」と思えない映画は、致命的だと思います。残念でした。

というね。乗れなかった、という方でございます。

「ナイスガイズ」宇多丸さんが鑑賞した解説

はい。ということで、皆さんメールありがとうございます。
私も「ナイスガイズ!」バルト9で2回見てまいりました。
当コーナーでは前作「アイアンマン3」を2013年5月18日に取り上げました、シェーン・ブラックさん、この名前をね、もし覚えていない方いたら、覚えて帰ってくださいね。
シェーン・ブラックさん脚本監督、最新作でございます。

なんといっても有名なのは、先ほどメールにはありました脚本デビュー作「リーサル・ウェポン」1987年。
以降は、例えば「ラスト・ボーイスカウト」であるとか「ラスト・アクション・ヒーロー」であるとか「ロング・キス・グッドナイト」であるとか、ですね。
こう並べるだけで何となくこうイメージが、なんか連なるイメージが浮かぶと思いますけど、80年代後半から90年代にかけてのアメリカ製アクション映画、一つの潮流を作った一人でございます。

引用:IMDb.com

バイオレントな事態にもどこか不謹慎なユーモアが漂う

まぁ大雑把に言えば、こんな感じ・・とてつもなくバイオレントな事態にもどこか不謹慎なユーモアが漂う、と。
要は、「人を殺して捨て台詞」系譜ですね、の作品。
で、そのユーモアを漂わせるっていうのを際立たせる意味でも、バディものが多いというね。
要するに、凸凹コンビが激しい戦闘の最中にしょーもない言い合いをしているとか、まぁそんな感じを思い浮かべてください。
こんな感じが彼の作風だという、そんな説明を「アイアンマン3」評の中でも私いたしましたが。。
ちなみにこの方、それ以前から俳優としてもね活躍していらっしゃいまして、「プレデター」とか出てたんですけど、そのシェーン・ブラックさん、今はですね、なんと2018年公開予定の「プレデター」のリブート作品の脚本監督を手がけてる。
こちらも今回と同じくジョエル・シルバー製作となっておりますが。ね。

監督デビュー作「キスキス,バンバン」

はい。とにかくそのシェーン・ブラックさん、2005年に「キスキス,バンバン」というね、監督デビュー作がある。
これ、ロバート・ダウニー・Jrとヴァル・キルマー主演。
ヴァル・キルマーは・・ちなみに、今回映写技師の若者の役で出てるジャック・キルマーさん、なんとヴァル・キルマーの息子だということですけどね。

まぁ、オフビートなノワール、フィルム・ノワールっていうね、さっき「チャイナタウン」ってところを挙げてましたけど、フィルム・ノワールという1ジャンルがあって、それのコメディトーンのノアールコメディ。
で、LAが舞台で、チャラい男と無骨なタフガイのバディもので、映画業界とかも絡んできてってことで、
もう完全にこの「キスキス,バンバン」今回の「ナイスガイズ!」ともう連続した世界と言っていい感じなんですけど。

今のマーベル・シネマティック・ユニバースの大成功の礎を築いた

とにかくその「キスキス,バンバン」で監督デビューしたこのシェーン・ブラックさん、この「キスキス,バンバン」でですね、ロバート・ダウニー・Jr、好演がですね、実はこれがこれが後の2008年「アイアンマン」トニー・スターク役のですね、起用につながっていく。
ご存知の通り、まぁ今のマーベル・シネマティック・ユニバースの大成功の礎を築いた。
まずこのロバート・ダウニー・Jr=トニー・スタークってこのキャスティングが非常にマジックを生んだということなんですけど。
当初はやっぱりですね、ロバート・ダウニー・Jr演技派で、しかもいろいろスキャンダルも起こした後でしたから反対もあったのを、「アイアンマン」監督ジョン・ファヴローが反対意見を押し切って起用したという。
でその大きなきっかけの一つが「キスキス,バンバン」のロバート・ダウニー・Jrだったということなんですよね。はい。

引用:IMDb.com

そういう経緯があったからこそ、「アイアンマン3」でジョン・ファヴローが監督から降りた

ということで、そういう経緯があったからこそ、「アイアンマン3」でジョン・ファヴローが監督から降りた。
後を受けて、シェーン・ブラックさんが起用された。
そもそもそのトニー・スタークは「キスキス,バンバン」のロバート・ダウニー・Jrだったんだから。そこをうまく演出したあの人を呼んでくればいいじゃんという。
ということで、実際「アイアンマン3」はどちらかというとトニー・スタークが生身でドッカンドッカン暴れまくる、90年代アクション的な色が非常に濃い1作となったという、あたりでございます。

「リーサル・ウェポン」以来のコンビ

で、今回の次作「ナイスガイズ!」最新作「ナイスガイズ!」。
久々にジョエル・シルバー製作、もちろんね「リーサル・ウェポン」以来のコンビでございますけど。
ジョエル・シルバーの製作で、まぁ、こういうことかな。
ちょいアナクロ風味なアクションもの・・で、しかも、それねLAが舞台で、汚職とポルノ産業が絡んでくるような、まぁさっきから言ってるフィルム・ノワールであり、で同時に死さえ不謹慎に笑いのネタにするオフビートなコメディものでもあり、そしてチャラ男とタフガイの中年バディーもの、に加えてそれこそ「ラスト・アクション・ヒーロー」とか「アイアンマン3」もそうでしたけど、利発な子供相棒って、そういう要素まで加わっている。
要するに、これまでのシェーン・ブラックさんのですね、フィルモグラフィーを並べてみた時に彼の得意技全部入ってるっていう。。
彼が一番好きで一番得意なとこは全部入ってるって・・そう、それは面白いに決まってるよね、って、そういう一作なんですね。

ナイスガイ、実際どうだったかというと

でまぁ、実際どうだったのか?と。。
私が好物じゃないわけがないっていうね。むちゃくちゃ面白いですよ、それは。はい。
言ってみれば、こういう感じですね。
こちらもまぁ大きな意味でノワールジャンルだと思いますけど、トマス・ピンチョン原作、ポール・トーマス・アンダーソン監督「インヒアレント・ヴァイス」を、ものすごくポップに料理するとこういうふうになる。
ちなみにポール・トーマス・アンダーソン、彼の出世作「ブギーナイツ」1990年・・「ブギーナイツ」はまさに今回の「ナイスガイズ!」と全く同じ時代、同じ時期、同じ世界の話ですよね。ポルノ業界の話でね。はい。

引用:IMDb.com

オープニングが素晴らしい

で、まず今回の「ナイスガイズ!」、なにしろね、この映画が好きになった人、みんながとりあえず持ってかれたところだろうけど、やっぱオープニングが素晴らしいですね。
オープニング、最高。
ある意味この映画がその先に語っていくこと、その全ての要素がこのオープニングのシーン一連の流れに全部集約して暗示されているという、非常に見事なオープニングのシーンじゃないでしょうか。
まずこうね、まだボロボロのままだったハリウッド看板、あれは1977年、これはまだまだボロボロのままだったですね。
それを裏からこうやって、要するにあのボロボロなのを見ることで「あっ、ちょっと前の話だな」。
で、そのLAの夜景が映るんですけど、77年。
まぁなんかスモークでモワンとしてるというね。
当然それはその後の話とも関係してくるわけですけど。。

最近あまりないオープニングショット

もちろんここ、時代設定と合わせるためにガッツリVFXね、CGとかいっぱい使ったショットではあるんだろうけど、でもこういうその街の全景の空撮、空から撮ったショットからその中にあるその街中の入った、だんだんだんだんこうカメラが寄ってって始まるっていう、こういうオープニングショット。
なんか最近あんまりないっていうか、やっぱその、うーん、なんかちょっと前までの映画館っていうか、僕は逆に「こういうのが映画の始まりだよな」っていう感じがして、それだけでもうちょっと嬉しくなっちゃうというね、感じです。

で、どこにそのカメラが寄っていくかっていうと、ある、もう何の変哲もない家ですね。
犬ちゃん飼ってるっていうような何の変哲もない家へ寄っていくと、寝静まったその両親のベッドの下からポルノ雑誌を盗み出して一人でこっそりほくそ笑みながら見ている。
少年というのが、まぁ10代、ローティーンでしょうね、ローティーンの少年が出てくると。
すると、その少年がこのエロ写真をこうニヤニヤしながら見ていると、その背後、窓の向こうの崖から自動車がボーンと飛び出すのが、この時点では音は聞こえないまま観客だけにはこう見えてるっていう絵面があって、で少年がこう移動しかけたところで一瞬後にその車がドーンと家の中に突っ込んでくる。
ま、この一連の流れがあるんですけど。

高低差のある空間でその空間を生かした見せ場がある

まずね、この一連の流れのようにですね、要は少年がエロ本を読んでる、その後ろの窓越しに、要するにずっとこう少年の家よりは上の位置にある崖のところから車がボーンって来るんだけど、
こういうふうに高低差のある空間の中で、何かもしくは誰かが落っこちたり落っこちてきたり、もしくはその高低差の距離があった状態で何かやり取り、会話があったり撃ち合いがあったりって、とにかくそういう高低差のある空間で落下を始めその空間を生かした何か見せ場があるというのは、実はこの「ナイスガイズ!」という映画全体でこの後も何度も何度も繰り返し出てくるわけです。
なので、まずこの少年のところで窓の向こう側からボーンって来てからその車がここにゴーンって来るっていうその空間感覚みたいなの、まずこの映画全体のその空間感覚みたいなのを、まず暗示していると。

引用:IMDb.com

シェーン・ブラック監督の得意技

シェーン・ブラック監督、これ多分得意技ってことだと思うんですね。
高低差を生かしたアクションなり見せ場の作り方ってのが。。
そういえば「アイアンマン3」の屈指の名場面も、落下ですよね。
もう「アイアンマン3」っていうか、あれはもうMCU全体でも屈指の名場面。落下高低差、そして落下をやることこれが得意な監督だということは、ちょっと覚えていただきたい。

非常に倒錯的な空気

その落ちてきたその車、少年が見に行ってみると、なんとさっきまでグラビアでヌードを見ていたまさにその女が事故によってまぁその服がばっとはだけて、というか脱げてほぼ裸の姿で横たわっている、と。
もちろんそれはもう、死にかけているわけですよね。死にかけているんだけど、死にかけている、でも裸の女が、要はさっきまで見てた女が目の前に裸でいて、しかもちょっと謎めいたエロい言葉言うんですね。
これはまぁ、実はその後の話の伏線になってるんですけども。
要は、死にかけている人なのに、何かこうエロい感じが・・非常に倒錯的な空気が、ここは非常に醸し出される。

全体の物語の謎解きのキーワード

まさにこれ、フィルム・ノワールですよね。はい。
例えば、その「ハリウッド・バビロン」からJ・G・バラード「クラッシュ」というね、この流れに至るような、要は巨乳セクシー女優が交通事故に遭ってっていうのは、そういうハリウッドね、そういう呪われた歴史の記憶も当然ここで刺激されつつ、そこで彼女が口にする言葉はさっきも言ったように全体の物語の謎解きのキーワードともなってる。
ずっと見てると、「あ、最初に彼女が言った言葉は、これのことだったんだ」っていうのがわかるし、さらにその後少年が取るある行動、これ先ほどのメールでもね、指摘があったあたりでございます。
具体的にどういう行動を取ったかは、ちょっと映画を見ていただきたいんですけど。
死にゆく者を前にしてどう行動するか、つまり善き人であろうとすることってどういうことなのかっていうまさにこれ「ナイスガイズ!」っていうタイトルにも呼応する作品テーマときっちりここ、それも暗示してるわけです、ね。はい。

ということで、先ほども言った通りですね、この「ナイスガイズ!」という作品をですね、まずは最初にドキッとするフレッシュな、こう見せ方、アイディアで、掴みはバッチリでやりつつですね。
そういう、こう全体のトーンとかテーマなどを最初にまずきっちり全部提示してみせる、本当に見事なオープニングだな、というふうに思います。

で、そこからいかにもこう、70年代的な、というかですね、負け犬アンチヒーロー型主人公2人がバディとなっていくまでを、キャラクター紹介込みで見せていくわけですけど。

引用:IMDb.com

オイシイのはライアン・ゴズリング

まぁ今回はなにしろもうね、オイシイのはライアン・ゴズリングです。
ライアン・ゴスリングが演じる、悪徳と言っていいでしょうね、悪徳私立探偵ホランド・マーチ。
これが本当にね、楽しいっていうか、本人が何しろ楽しそうなんだよね、演じていて。
もちろん「ラ・ラ・ランド」含めですね、カッコ良くて演技も上手い名優、ね。としてのライアン・ゴスリングっていうのを我々は知ってるわけですけども。
今回の「ナイスガイズ!」に限っては、これ構成作家古川耕さんの表現を借りますと、あえて安い笑いを嬉々として取りにいっている。安い笑いを嬉々として取りにいける。この感じがすごくいい。

特にやっぱり今回は声

要は(笑)こういうことですね。面白い顔をしたり変な声を出したりして笑いを取りにいくと(笑)。
特にやっぱり今回は声ですね。
もう何週間か前から私この当番組でですね、低みコーナー、タイトルコールの際に指摘しております。ライアン・ゴズリングはですね、コミカルな役の時、ここぞという時に、裏声を必殺技として放り込んでくる。
だから僕は「低み!」ってこう言ってるわけですけど。

「マネー・ショート」

例えばその「マネー・ショート」。素晴らしい映画でしたね。
「マネー・ショート」の証券マン、最終的に読みが当たってきた時に、「んもう!シンボー※×★&!」こうやってトイレで叫ぶ場面ありますよね。
カッコ悪っていう(笑)・・あの感じですよね。
今回はあれを、多分あれで味をしめたんですよ。あれが多分超面白かったから、味をしめてですね、もう全面的に俺の十八番ギャグみたいな、一発ギャグみたいなって、全面的に放り込んで何かっていうと「シッ!」「ジーザス!」なにかっていうと裏声(笑)・・とにかく情けない、カッコ悪い。
やっぱね、カッコ良さって声のトーンだなって改めて思いましたね。

引用:IMDb.com

ラッセル・クロウ演じる示談屋

あと極めつけは最初にラッセル・クロウ演じる示談屋、非常に乱暴な示談屋ジャクソン・ヒーリーと出会い、ちょっとどうかと思うほど酷い目に遭わされるシーンでですね、まあ確かにかなりこれをやられたら痛かろうと思われることをヒーリーにされるわけですね、ホランドは。
そこで、こんな痛い目に遭って、どんな声上げんのか、と思ったらですね、ライアン・ゴスリング、「キャーーーー!」って言って、悲鳴を上げてしくしく泣くんですよ(笑)。
もう声一発でこんな笑わせにかかるってね、今回のライアン・ゴスリングはもうね、とにかく安い笑いをあえて取りにいってるといったあたり、非常に好ましいあたりじゃないでしょうか。

爆笑のシーン

あとそのちょっと前のシーンでですね、ある家に忍び込もうとした、そのね私立探偵ホランドはですね、これフィクションではよくある描写ですよ、まずガラスをバリーンって割ってから内鍵を外すって、これはよくありますよね。
それをやろうとしてドアのところでガラスをバリーンって割って、そこからちょっと目も当てられない大惨事になるっていう(笑)。
爆笑のシーンが、もう何度見ても爆笑しちゃうシーンがあって、ここんとこも最高でございます。

「あんた、そのままでいけんだろう」っていう役柄

対するラッセル・クロウはですね、善人であろうとはしてるけど、いかんせん暴力以外のコミュニケーションの仕方を知らないというがさつで無骨な男というのは、はっきり言ってラッセル・クロウには、もう別に「あんた、そのままでいけんだろう」っていう役柄ですよね。
ちょっと前ならニック・ノルティとかがやったような感じですね。
途中ね、あの回想、一瞬の回想ショットで、妻から思わぬ告白を受けで水をぶこーって吹き出したまま、「えっ、なんだって?」ていう(笑)あの回想とか、俺、ラッセル・クロウでこんな笑ったの初めてですね。
なんかかわいいんですよね、なんかね。あの不器用な感じが。

引用:IMDb.com

大惨事のシーン

で、その回想シーン、一瞬の回想シーンとか、さっきのガラス割って大惨事のシーンとかですね、
あとは例えば本当にちょっとしたシーンですけど、娘の誕生会の、ボーリング場で娘の誕生会やってんですけど、そこで娘の友達がボウリングの球を真後ろにドターンって投げちゃうって・・これストーリーと何の関係もない、とか、
途中で少年に聞き込みをするんですけど、その少年が妙に自分の巨根を自慢し見せたがるっていうくだり(笑)とかですね。
あと、そのポルノ業界のパーティーに忍び込むという場面のいろんなそういう扮装のディテール、ばかばかしい ディテール。
ちなみにあのパーティーやってるそのロケ地は、なんとあの音楽プロデューサー、ダラス・オースティンの家を使っているということらしいんですけどね。
はい。えぇということで、本筋のストーリーと直接関係ない、ちょいちょい放り込まれるオフビートなおかしみのある描写、ディテールっていうのが、これに、だから要は関係ねえじゃねえかってイライラし出したら、そりゃそうかもしれないんだけど、やっぱそこにおかしみを味わうのも僕は本作の大きな魅力だと思うんですよね。

ちゃんとストーリーテリングの構造になってる

ただ一方で、例えば、大気汚染に抗議する代議員止めて、死んだフリしてやる抗議活動の若者たちはしょうもない言い合いをする、これまた爆笑の場面があって、これもさっきからのそういう関係ない面白ディテールかなと思いきや、ちゃんとこれはお話の伏線になってたりというあたり、油断はできない、ちゃんとねストーリーテリングの構造になってる。
とにかく笑わせ方が・・ただしこれだけは言える、いちいち軽薄で不謹慎(笑)これは言える。
ただ要はですね、フィルム・ノワールっていうのは、元々腐敗した世界の中を生きている人たちを描くジャンルなので、元々腐敗している、腐りきった世界なんだから、笑っちまうよなっていうのは、実は合ってるわけ・・不謹慎な笑いは非常に合うわけです。

今では結構珍しいタイプの映画

まぁここまで堂々と人の死を笑いのネタにするってのもね、今では結構珍しいタイプの映画。
ぶっちゃけここで引く人、ここで怒ってる人がもっといてもいいかなって思ったぐらいですね。はい。
例えば、実はロバート・ダウニー・Jrが演じているらしい、ある死体を主人公2人が「やべ。この死体隠そうぜ」。
まずこれがもう主人公の行動としてどうかなんだけど、「この死体隠さなきゃさ」つって、ドーンって捨てるその先は・・って、これ本当にひどいネタがあったりとかですね。
なにしろ最終的に「いやー、でもね、なんだかかんだ言ってみんな無事でよかったよ」「結構人死んでんだけど」「いや、でも即死だったからまだよかったよ」って(笑)。
なんだそれは・・っていうね、こと言ってゲラゲラっていうそういうね。。

引用:IMDb.com

ドラマ的モラル的なシーンをそれでも1本通す役割を果たしているのが・・

ただね、ともすると単に露悪的なだけに終わりかねない、そういうコメディのトーンにこれ本当にメールでも書かれている方多かった通りですね、ドラマ的モラル的なシーンをそれでも1本通す役割を果たしているのが、ホランド、悪徳探偵ホランドの13歳の娘ホリーというキャラクター、とそれを演じるアンガーリー・ライスさんの非常にどっしりした演技と力量ということだと思います。
さっきも言った善き人であろうとすることの意義、例えば人の死を前にしてどう振る舞うべきなのかというようなところを要所要所に、実はちゃんと意外と倫理的なバランスちゃんと取ってるお話的には、最後にはきっちり感動もさせられてしまう、というあたり。

”魂”はある映画にちゃんとなってる

あるいは、汚れちまった負け犬たちが、それでもなけなしの善意と勇気を振り絞って、ほんのささやかなごくごく稀にしかない勝利を手に入れるというような物語としても、ちゃんと要は”魂”はある。
露悪的なだけじゃない、”魂”はある映画にちゃんとなってると思いますね。
あと、例えば自動車産業を巡る政治劇としてのオチも、とても普遍的な苦さ、鋭さ含んでいると思う。
そこで、あそこで一番の黒幕だったワルがぬかす理屈に対して・・あれはすごく、我々も今でもよく聞く理屈じゃないですか、でそれに対して、ねホランドが気の利いた返しでね、嫌味を言って返すとかね。。
あのあたり、非常に僕はやっぱ鋭さを含んでて素晴らしいと思います。

加速度的にスラップスティック・コメディー化していく

ただもちろん、そこに至るまでに例えば特にクライマックス、自動車ショーのねクライマックスなんですけど、そこのくだり、加速度的にですね、スラップスティック・コメディー化していくというね、これも事実でございます。
だって今時ね、滑って転んで気絶ってダメ(笑)、見ます?これ褒めてますけどね。
で、その滑って転んで気絶とかそういうのがね、まぁどんどんどんどん加速してって、そこからまさに、まさにですね、高低差のある空間を生かした落下と追跡が連続していくスラップスティック・アクション、このたたみかけ、ほとんどバスター・キートン、ジャッキー・チェンの系譜っていうような、「えっ。そこまで落ちる?」みたいな(笑)ね、連発落ちのアレなんか、こんなの楽しいに決まってる場面ですしね。

引用:IMDb.com

全編セブンティーズ音楽、特にやっぱディスコクラシック

あえて言えば、あれだけ無双に見えたあの殺し屋が意外とあっさりグロッキーしちゃったのは、ちょっと拍子抜けかなって気もしなくもないけど。
いやそこで、あえてこれ以上は盛らないっていう感じがこれシェーン・ブラックさんのデビュー以降、つまり80年代90年代アメリカアクションと70年代アメリカアクションを隔てるのは、この最後にもう1個盛らないっていう感じだと思うのね。
なので、本作はこのぐらいでいいっていうことなのかな、とも思います。はい。
全編ね、セブンティーズ音楽、特にやっぱディスコクラシック、当然ノリノリでまぁかかる、これもうホント最高ですし。
最後ね、誰からも褒められることはないんだけど、ほんの少しだけ人生の誇りを取り戻せた2人の今後っていうのをにおわせて、最後にこのアル・グリーンのこのね「Love and Happiness」かかって、余韻が残る。

「いやー、この2人で続編お願いしまーす」

これ僕は完全に「いやー、この2人で続編お願いしまーす」って感じでしたけどね。
実際この企画ですね、元々テレビシリーズとして企画されたものが映画になってったものなので、確かにこの調子で軽くていいし、出来不出来あっていいから、あと12話とか余裕で見たいっていう感じですね。はい。
1回見ていろんなことの面白みがねわかった上で、友達とかと一緒にゲラゲラ見直すのも楽しそうだし。
例えば今やってるあの日本語タイトルが「バッドガイズ!!」っていうあのマイケル・ペーニャとアレキサンダー・スカルスガルドさんが出てる「バッドガイズ!!」これと例えば2本立てで見るとか、そういうこともしてみたいし。。
とにかくまぁ、「映画楽しいよな、やっぱ楽しいよな」っていうふうにつくづく思う、僕はもう大好物に決まってる1本です。ぜひぜひ映画館で普通に声出して笑って、ウォッチしてみてください!


○○に入る言葉のこたえ

②バイオレントな事態に不謹慎なユーモア漂う、シェーン・ブラック監督の作風。 でした!
 

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