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引用:IMDb.com

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカのライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月25日更新
でもよくまとめた1本なのは間違いないですし、文句なしに楽しい1本。求められてるものにほぼ全て完璧に応えてるのは間違いないと思います。ルッソ兄弟、続投も当然じゃないでしょうか「インフィニティ・ウォー」に。(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ監督作「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」解説レビューの概要

①ようやくガチャ当たりました!マーベル映画の中でも物語的な芯をなす「キャプテン・アメリカ」の物語
②本作は「アメコミ映画」としても「映画」としても非常に高い完成度の作品だ!
③ルッソ兄弟の「交通整理力」と「組立」の上手さとは
④マーベル映画が常に気遣っている「見やすさ」ということ
⑤実はあの「○○」に通ずるところがある!?

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

映画「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)
映画館では今も新作映画が公開されている。一体誰が映画を見張るのか。一体誰が映画をウォッチするのか。映画ウォッチ超人「シネマンディアス宇多丸」が今立ち上がる。その名も、「週刊映画時評 ムービーウォッチメン」。

毎週土曜夜10時から、TBSラジオキーステーションに生放送でお送りしている「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」。ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと「シネマンディアス宇多丸」が毎週自腹でウキウキウォッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーです。

今夜扱う映画は先週「ムービーガチャマシン」を回して当たったこの映画。本日、光岡先生もそこにいるし、アメコミ大好きPUNPEEも「楽しみにしてます」とか言ってプレッシャーをかけてきて、本当にやりづらい!「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」。

マーベルコミック原作の「キャプテン・アメリカ」シリーズの第3作。マーベルヒーローが集結した「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」の1年後を舞台に、キャプテン・アメリカとアイアンマンという二大ヒーロー同士の戦いが描かれる。監督はアンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ。主演はクリス・エヴァンス、ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソンらというか。枚挙にいとまがないというか、オールスターキャストでございます。ということで、ようやく当たったということで、皆さん「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」をご覧になった方も非常に多いでしょうけど。実際、この番組で扱ってくれという声も本当に多くて、この映画を観たよというリスナーの皆さま、ウォッチメンからの監視報告、メールなどでいただいてるんですが、とにかくメールの量が本当に多い!本当に、正真正銘、今年の最多かもしれません。賛否でいうと「賛」が8割。「普通とダメ」が2割。「マーベルシリーズが積み上げてきたものが結集したシリーズ最高傑作。」「対決する2人のヒーロー、どちらの言い分にも納得できる。あと、アクションがとにかく最高。」「たくさんの要素をシンプルにまとめていて見やすかった。」など絶賛の声、多し。一方、「キャラクターが多すぎてそれぞれが薄まってしまった。」「ストーリーがあんまり進まない。」「キャプテン・アメリカが行動する動機に納得ができない。」などの否定的意見もございました。

代表的なところをご紹介いたしましょう。

引用:IMDb.com

映画「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」を鑑賞した一般の方の感想

*タンタンさん
ムービーウォッチメンで「シビルウォー」を取り上げると聞きましてメールしました。実はこの「シビルウォー」がアメコミ映画初体験だったのですが・・・

(宇多丸)
アメコミ映画全体!「マーベル・シネマティック・ユニバース」どころじゃないです。

*タンタンさん 続き
めちゃくちゃ面白かったです!一番驚いたことは、アメコミ映画はストーリーが単純で勧善懲悪だと思っていたのですが、全然違ったこと。ヒーローもそれぞれ考えがあって、複雑なんだなあと楽しめました。みんないろいろ考えているんだなあ。あと、キャラクターがたくさん出てくるので、お気に入りのキャラクターができたことも楽しめた一因だと思います。ヴィジョン、ホークアイかっこいい。

(宇多丸)
いいですね、これ。これほんとでも大事なこと。ヒーローものはかっこいい!ですよ。それは、一番大事なことです。アイドル映画「かわいい」が大事なのと同じですから。

*タンタンさん 続き
アメコミファンの友人からは、これまでのシリーズを観てない人が楽しめるわけない、と言われていたのですが、観てればなんとなく今までのシリーズの内容も分かって、置いていかれる感じもなく楽しめました。バッキーがどういう人物なのか・・・

(宇多丸)
などなど。ちょっとネタバレ含むあれがあったので、飛ばしますけど。ということでございます。そうなんです。なんかどうしても、もはや俺、いわゆる「知らなかった状態」には戻せないってやつで。やっぱこういうフレッシュな意見はほんといいです、やっぱ。気持ち分かんないんだよ。もう、何にも分かんない状態で観るというのは。

一方ダメだったという方。

映画「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」批判的な意見

*フクイさん
シビルウォー観ました。ずっと仲間内のケンカを見させられてるようで楽しめませんでした。

(宇多丸)
まあ、そりゃそうなんだよね。

*フクイさん
ヒーロー達とアクションを見せれば満足するだろう、と言われてるような映画というか。肝心の「戦う際市民が巻き添えになるのどうすんの問題」が全然進まず、映画の始まりと終わりでストーリーが進行してない印象を受けました。関係ない人々まで巻き添えにしてしまう戦い方が問題になってるので、空港で乱闘、飛行機など派手に壊して、また怒られるのは頭悪いと思います。

(宇多丸)
人は死んでいないですが。人払いしてますから、ということですけど。論点途中から、っていうのはあるかもしれないですけど。

引用:IMDb.com

「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」宇多丸さんが鑑賞した解説

ということで、「シビルウォー/キャプテン・アメリカ」、ようやく当たりました。なかなかガチャ当たらずで、公開規模だいぶもう縮小してからようやく。ずっとガチャのカプセルに入れてたんですけど。もちろん、カプセル当たる前に私は観てたんですけど、「当たったらまた観よう」とか思ってボケッとしてる間に、IMAX3Dとか上映終わっちゃったりして。結局字幕2Dでしか、でも3回一応観てまいりましたけど。でも、すいません。IMAX3D観てないのは痛いな。IMAXで撮ってる場面とかありますから。

ということで、先週ようやくリスナーメールで当たりました。で、リスナーメールでも、「童貞はお嫌いですか?」という非常に厳しいご指摘、お叱りの声をいただきましたけど。嫌いじゃないです。「マーベル・シネマティック・ユニバース」。もう、この「マーベル・シネマティック・ユニバース」の説明はいいです。とにかく、好き嫌い、評価とか別にしても、間違いなく現行、エンターテインメント映画の世界の中ではもう台風の目っていうとこまで来ました。のちほど、光岡先生をお招きしてのアメコミ映画特集で詳しくその辺も伺えると思うんですが。

シビル・ウォー、やっとガチャで当たった!

なんだけど、とにかく「マーベル・シネマティック・ユニバース」の作品群、結構他はガチャでも割と当たって。「アイアンマン」なんか全部確実に全部当たってるし、「アベンジャーズ」も2作とも当たってるし。「ソー」は当たってないけど。って感じなんだけど。「キャップ」こと「キャプテン・アメリカ」。今回の「シビルウォー」入れて3作。これまでの2作は全然当たってなくて。今回も下手すると3作とも当たんないことに、確かになりかねなかった。でも実は、やっぱ確かにメールのご指摘そうで、「マーベル・シネマティック・ユニバース」の中でもこの「キャップ」、「キャプテン・アメリカ」の物語ってある意味背骨っていうか、結構重要な芯になってます、今や。

引用:IMDb.com

キャプテン・アメリカが最もアメコミヒーローらしいヒーロー。

っていうのも、そもそもキャプテン・アメリカ。彼こそがマーベル、アベンジャーズとかのいろんなメンツの中で一番、最もアメコミヒーローらしいヒーローっていうか。アメコミヒーローのちょっと原型的な形に近いというか。DCでいえば「スーパーマン」的なというか。で、1作目。「ザ・ファースト・アベンジャー」。ともすると、キャプテン・アメリカっつって、もともとは戦意高揚的なキャラクターですから。ただ時代錯誤的にもなりかねない、正統派アメリカンヒーローを、2011年の映画版1作目「ザ・ファースト・アベンジャー」は、映画のスタイルとして、第二次大戦の戦争アクションものみたいな感じで、適度に現代的再解釈を加えつつ、でも割とストレートかつ現代風にちゃんとやる、あの再解釈は適度にやり過ぎず入れてて、僕はすごい「キャプテン・アメリカでこんなちょうどいい着地があるんだ」っていうぐらい感心しました。非常に好きな1作目なんですけども。

脚本は3作通じて同じコンビ

ちなみに脚本は1作目から今回の「シビルウォー」に至るまで、3作通じて同じコンビ。クリストファー・マルクスさんとスティーヴン・マクフィーリーさん。この人たち、いろいろ書いてんだけど。僕のマイケル・ベイ最高傑作、「ペイン&ゲイン」の脚本もやってますけど。で、そのキャプテン・アメリカ、もともとは正統派アメリカンヒーローだったんだけど、時代の変化によって彼自身の思想、信条みたいなものはブレていなくとも、というよりは、彼自身はブレていないからこそ、ある意味時代の変化によって180度立場の転換を余儀なくされていくっていうのが、2作目にしてマーベル映画史上でもトップクラスの傑作なのは間違いないでしょう、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」。この1個前です。2014年。と今回の「シビルウォー」に至る流れ、というのがあると思います。本来だったら政府側の意向に沿って活動してるはずのキャプテン・アメリカが、アメリカの理想というところに忠実であると、今度は政府と敵対する側になっていく、というあたりです。つまり、そのキャプテン・アメリカの歩みっていうのはそのまま、ある種アメコミヒーローのあり方の変遷史っていうか。もともとは結構無邪気、それこそさっきのメールにもあったように、無邪気に勧善懲悪してたんだけど、もうそうもいかなくなってきた、という流れをキャプテン・アメリカ自体体現してるということです。

引用:IMDb.com

マーベル映画の中でも非常に物語的な芯をなしてる

その意味でも、さっき言ったようにマーベル映画の中でも非常に物語的な芯をなしてるという。1個芯が通ってるとしたら、キャプテン・アメリカの物語であろうと。で、特にやっぱり今言ったように、とにかく「ウィンター・ソルジャー」っていう作品が素晴らしすぎてっていうことです。監督に抜擢されたアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟という方。いろいろ撮られてたりするんだけど、おそらくは、テレビシリーズ的な群像劇のパズルをうまくまとめあげて演出できる手腕を買われたっていうことだとは思うんだけど。まあジョス・ウィードンとかもそうなわけですけど、「アベンジャーズ」の。言うまでもなく、テレビシリーズ的な群像劇のパズルっていうのは、今マーベル映画をはじめ多くの「スターウォーズ」の今後のフランチャイズもそうでしょうけど、間違いなくそうなってくだろうけど、今後どんどんエンターテインメント映画はそっちに振れてくであろうという流れ。これ自体がいいことか悪いことかっていう判断は今、この時間では置いときますけど。その手腕を買われたんだとは思うけど。長編デビュー作になるのかな。この「ウェルカム・トゥ・コリンウッド」っていう犯罪映画も、まあコーエン兄弟風群像劇というか、感じではありましたけど。

監督の素晴らしい点

この兄弟、なにが監督として素晴らしい、特に「ウィンター・ソルジャー」手がけて素晴らしいって、後ほど詳しくまた言いますけど、アメコミ原作ものとして求められるツボに割ときっちり応えてくと。で、ある種ジョス・ウィードン的な「交通整理力」です。この要素とこの要素とこの要素を入れ込んで、このキャラクターを立てて、ってそういう交通整理力、ジョス・ウィードンは半端ないですけど。そういう力に加えて、それらをしっかり、とにかく「映画」にしていく。ものすごい映画にしていく力があるんです。例えば、やっぱりアクションシーンの設計、見せ方です。本当に上手いという感じだと思います。特に「ウィンター・ソルジャー」は、ロバート・レッドフォードのキャスティングにも表れてる通り、全体としては70年代、硬派なポリティカルサスペンス風タッチなわけです。それが、さっきちょっと言ったルッソ兄弟のサスペンス、アクション演出に加えて、物語上最終的に浮かび上がる、敵であるヒドラ党っていうのが、非常に現代的なファシズム像に進化を遂げてると。それが、大人が見てアホらしくない敵像ってちゃんと描けてる、「ウィンター・ソルジャー」。確かにっていう感じが、本当に全体のルッソ兄弟の演出の硬派なタッチ・硬質なタッチとはまってて、本当によかったと思います。

引用:IMDb.com

「ウィンター・ソルジャー」

という意味で、「ウィンター・ソルジャー」は「アメコミ映画」としても「映画」としても、非常に高い完成度に達していたということだと思います。この「アメコミ映画として」っていうのと、「映画として」っていうのが分離してるから即ダメっていうことではないんです。例えばそれが分離してるタイプに、ザック・スナイダーという人がおりまして。ザック・スナイダーさん。これ、ダメだって言ってるんじゃない。ザック・スナイダーさんはやっぱり、アメコミ的な「キメ画」、限りなく「止め画」です。キメ画の連なりがやりたい。だから、動きの連なりじゃないわけです。つまり我々が日本のマンガと違う、アメコミのコマの連なり感があります。アメコミのコマの、あの動きの感じを映像にそのままトレースしたのがザック・スナイダーの映画なため、まあアメコミの映像化っていう意味では、これが忠実なんです。だから、彼にとってはやっぱりあれは正解なんだよ。きっと。なので、どちらが偉いと決めつけてるわけではありませんが、とにかく対照的です、本当に。同じ今回の、それこそ一般市民に被害が出ちゃったからなんとかしましょう、なんていう物語の発端は本当に似てるんです、「バットマン vs スーパーマン」と。問題設定は似てるんだけど、非常にやっぱアプローチは対照的。

ルッソ兄弟

ルッソ兄弟はあくまでやっぱり、例えばアクションだったらキメ画の連続で、間はまあまあまあみたいな。はっきり言って、ザック・スナイダーは止めた画がちょっとぐーって動いてるとか、そんぐらいがやりたいんだよ、多分。それに対して、ルッソ兄弟はアクションシーンを「動き」と「空間の連なり」として、つまり映画的に絶対構築していくわけです。それをシーン全体として構築していく。そうするとやっぱり、あくまでこれは映画としての評価に差が出るのは、これはしようがないよねっていうことです。目指してるとこが違うんだから、ということだと思います。

引用:IMDb.com

前作に比べて、処理しなきゃならない要素が何倍かに増えてる

ただ、その意味では今回の「シビルウォー」。「ウィンター・ソルジャー」前作に比べて、処理しなきゃならない要素が何倍かに増えてる。今考えれば、「ウィンター・ソルジャー」はすごくシンプルな話で済んだわけだけど、今回は「ウィンター・ソルジャー」の続編というだけではなくて、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の事実上の続編でもあると。なんたって、その「エイジ・オブ・ウルトロン」っていうのは、前の評の時は、名前ポスターにまだ出てなかったので伏せましたけど、ヴィジョンっていうキャラクターを有りにしちゃった、ちょっと一線踏み越えた1作だなと僕は思ってて。アメコミキャラ、モロ漫画!みたいなキャラクターを有りにしたという作品の事実上の続編でもあり。さらにはそっから続く次の「インフィニティ・ウォー」二部作っていう、間違いなくマーベル映画のクロスオーバー、いろんな人が混ざるという「アベンジャーズ」以降の、完全に極限です。これ以上は多分無理っていうやつの二部作へのブリッジでもあると。それを満たさなきゃいけないため、処理要素今言っただけでもめちゃめちゃ多いわけです。キャラクターも多いし。「ウィンター・ソルジャー」に比べてもう倍どころの話じゃない。もう数倍になってる。なので、ぶっちゃけ「ウィンター・ソルジャー」よりは、単体の映画としては、当然のことながら多少ガッチャガチャはしてます。単体の映画としての完成度が、っていう映画じゃない。その多少のガッチャガチャと、それでもそれを可能な限りスマートにまとめあげる驚異的手腕。つまり、祭りとその祭りをまとめあげる手腕を楽しむタイプの、だから「アベンジャーズ」的な楽しみ感もやっぱり当然含まれるということです。

ルッソ兄弟のアクションシーンの組み立て方に感心

とはいえ、今回もやっぱり僕が何より感心したのは、ルッソ兄弟、アクションシーンの組み立て方。特に、空間の使い方本当に上手い。例えば、キャプテン・アメリカ、キャップがかつての友人だった、今はウィンター・ソルジャーという暗殺者となってしまったバッキーの部屋に行く。そうすると、そこに特殊部隊が襲いかかってきて、からの逃走劇。そこに、今回はじめて出る新しいヒーロー、ブラックパンサーという、バトルケニアとバルパンサーを混ぜたような系のかっこいいやつが出てくるわけです。ちなみにこのブラックパンサーの単体作監督はあの!あの名作「クリード」のライアン・クーグラーということで、本当に超期待してるんですけど。とにかく、ブラックパンサーが絡んでくるという一連のシーンがあります。途中で。最初、そのバッキーの部屋に2人がいる。で、そこに襲ってくる。暗く狭い室内。狭い空間での、まずぶつかり合いバトル。これ、「ウィンター・ソルジャー」の中のエレベーターの中のバトルがありました。あれにも通じるような、狭い、で今回は暗いっていうとこで、前回のエレベーターともちょっと差別化ができてる。そのバトルからの、今度はボーンと表に出て、階段とその吹き抜け。縦の、パイプ状の空間を使った今度はアクションに移っていく。

引用:IMDb.com

ルッソ兄弟のアクションの見せ方

からの、今度は戸外にポーンと飛び降ります。最初にバッキーがポーンとリュック投げるんで、そこでまず意識がそっちに行ってるところに向けてポーンと飛んで。まず、上から下への動き、からの屋上にそのブラックパンサーがいて、軽く格闘してからの、今度は高速のチェイス、高速での追っかけっこになっていくと。つまり、横方向の今度は速い動きになってくっていうふうに、ルッソ兄弟のアクションは常に非常に「視覚的にこういう特徴がありますよ」っていう分かりやすい空間を、効果的につながった見せ方、それをポンポンポンポン重ねてくっていうやり方をいつもしてて。これがやっぱ、映画ですよね、映画しかないっていう感じの見せ方ですし。しかも、そのアクションの連なりの中で、それぞれのキャラクターの立ち位置とか個性のようなものを、時にギャグとか込みで入れ込んだり。あるいは、なんらかのストーリー的な進行を、例えば追跡劇だのなんだ、そういうのに直接リンクさせてったり。とにかく、語り口の効率がむちゃくちゃいいんです。語り口のテンポがいい。無駄がない。アクションシーンの間、お話が止まってしまうタイプの映画っていうのもすごく多いんだけど、ちゃんと映画が止まらないように気を遣って作ってるアクションシーンです。

ルッソ兄弟の上手さの集大成のような名シーン

で、そういうルッソ兄弟の上手さの集大成のような名シーンが、間違いなく今回の「シビルウォー」のほんと白眉でしょうけど、みんなこれが見たくて観てるってことでしょうけど。閉鎖された空港内での集団ヒーローバトル。松山市でも喧嘩祭りっていうのがあったみたいですけど、ドイツでもヒーロー喧嘩祭りをやってるぞと。喧嘩祭り、えーい!っていう。「デストラクション・ベイビーズ」。デストラクションしてます。まず、マーベル作品ってとにかくこういうキモになるシーン。大抵、真っ昼間なんです。ちゃんと晴天下でやってくれるから、まずヒーロー同士の戦いっつっても、あんま陰惨にならないっていうのはこれ、晴天なのもあると思うんです。カラッと晴れてる、カラッと見れるって。先ほどもちょろっと言いましたけど、原作というか原案のコミック版の「シビルウォー」と違って、ヒーローの管理を巡る思想的決裂っていう面は、実はそんなに引っ張られないんです。そんなにそこは焦点にならないので、ここ人によってはちょっと「え?」って物足りなくなるあたりだろうし、「焦点ズレてない?」っていうあたりかもしんないけど。少なくとも気楽に見るには結構いいことになってて。

引用:IMDb.com

見やすさに気遣い

で、その見やすさっていうのをとにかくマーベル映画は常に気遣ってて。映画としての見やすさ。「アイアンマン」の1作目の評でも僕、言いましたけど。例えば、位置関係であるとか。その前の、空港でまずバトルが始まって、スパイダーマンとファルコンとバッキーの、構内の横のパイプ状空間を使ったバトル。あれも空間の使い方の上手さは言うに及ばずで。今回なんか特に、お互い揃ってチーム同士全員正面衝突してバーン!って乱戦になる。なってからは、画面上、例えばマイケル・ベイだったらこれ間違いなく、どこがどこやらなにがなにやらになってしまうのは、もう必至じゃないですか。おかしくない。誰がやっても、そういうふうになってもおかしくないような場面なのに、ここはやっぱ上手いのは、とにかく最初に、あの格納庫までたどり着くっていう。つまりA地点にキャップチームがたどり着けばキャップチームの勝ち、それを阻止できればアイアンマンチームの勝ちっていう、ほとんどアメフト的な、ものすごーく単純化された位置関係とルールが最初に設定されるんです、そのバトルの手前のところで。

本当に見やすい工夫

しかも、ご丁寧にぶつかり合う前に、ヴィジョンにこうフーッて、「はい、一線ひいて。はい、スポーツ、前ね。はいはいはーい!」って感じで。「はい、こっから出ないでね!」みたいな。そんなことまでやるので、本当に見やすい工夫がされてると。なので、どれだけグルングルンと、ショットごとではグルングルンカメラが動き回ろうが、何がいま争われてるのかということ。あと、途中にもちろんこれネタバレしないようにしますけど、途中であっと驚く大仕掛けとかがあっても、やっぱり混乱しない。何が今争われてるのかっていう。これ言ってみれば、僕の造語、「映像的論点」「映像的争点」が明確な見せ方を常にするわけです。もちろんこれ「アベンジャーズ」以来ずっとそうですけど。例えば、あるキャラクターのアクションから次のキャラクターのアクションが要所要所でひとつのショットの中で流れで扱われるので、動きや空間がちゃんと繋がって感じられるし、チームとしての連携感、もしくはバトルロイヤル感、今回でいえば「シビルウォー」もちゃんと感じるっていうのは、これはやっぱ「アベンジャーズ」以来、マーベルのクロスオーバー作品は本当に上手い見せ方だし。

引用:IMDb.com

アメコミ的キメ画ショット

そして、前回の「ウルトロン」から顕著になりましたけど、アメコミ的キメ画ショットもちゃんと押さえるべきところはちゃんと押さえてる。2人、全員がワーッて並んでるショットとか。例えばアイアンマンとキャプテン・アメリカが向い合ってガーッて対峙してるとか、そういうほしいショットはちゃんと押さえてる。なんだけど、やっぱこれもルッソ兄弟の場合、止め画的な扱いはしないんだね。やっぱり走ってるとか、アクションの一環とか、必ず動きの一環として見せる。本当に映画的な資質っていうことだというふうに思うんですけど。ラストバトル。例えば、キャップとバッキーの無言の連携プレー。もう盾をボンボンってやりあって。無言の連携プレーだけで、やっぱ1作目からの流れから考えると、あの連携プレーだけでちょっと泣けてくるみたいなのが本当に上手いなと。アクションでキャラクターを描くのが上手いなと思いました。あるいは、一方、普通の会話シーン。例えばファルコンとバッキーのある種の恋の鞘当て。どっちがキャップを取るかみたいな。あと、あの3人の男の子感みたいなのとか。今回で言えば、ヴィジョンのちょっと純情な感じ。コミックだと、スカーレット・ウィッチとくっつくっていうのがありますから。短い時間の中で、しっかりキャラクターごとの機微を、あと新しいスパイダーマンだよね。ちゃんと「アイアンマン」の世界観側の方にポップにフィットさせたっていう。わざわざ、おじさんが死ぬとことか見せないで本当によかったっていう。「COP CAR/コップ・カー」のジョン・ワッツさんが監督ですから、次の「スパイダーマン」の。本当に楽しみですけど。ということで、本当に手際鮮やかだと思います。キャラクターのことを短い時間で立ててくのは。

「超・手の込んだ罠もの」

ちょっと話の順番が前後してしまいますけど、その「ウィンター・ソルジャー」譲りの硬派サスペンスタッチみたいなのもちゃんと引き続きあって。前作がさっき言ったように70年代ポリティカルスリラータッチ。「大統領の陰謀」とか「コンドル」とか。今回は、途中でトニー・スタークのセリフにもありましたけど、「影なき狙撃者」とか、あとドン・シーゲルの「テレフォン」とか。催眠暗示テロリストものっていう、ちょっとしたサブジャンルがありまして。そういう設定からの、これは監督たちもインタビューで出しまくってるので言っちゃっていいと思うけど、実は「セブン」的な、サイコホラーっていうよりは、「超・手の込んだ罠もの」っていうことだと思うんですけど。

引用:IMDb.com

イデオロギー同士のぶつかり合い

なので、今回の映画版だと、先ほどのメールの不満にもあったとおり、ソコヴィア協定ですか、超人管理法ですよ、コミックでいう。そういうイデオロギー同士のぶつかり合い。まさに、だから、シビルウォー、南北戦争なわけだけど。という面は、実はそんなに作中では掘り下げられるわけではないっていうことです。で、「ウルトロン」で、起こった騒ぎは本当に実質トニー・スタークの責任多すぎなので、お前は本当に反省した方がいいぞっていう。一方、「キャップが勝手に見える」っていうのは、今回の作品だけだとそう見えるかもしんないけど、「ウィンター・ソルジャー」からの流れだと、「組織なんて本質が腐敗もしてしまうんだ」みたいなのが、結構納得が、流れでちゃんと続編として見ると納得できるようになってると思います。

トニー・スタークのお父さん、ハワード・スターク

罠もこの手のものとしてはちゃんと手順がロジカルに考え抜かれてると思うけど、ただ惜しいと思うのは、トニー・スタークのお父さん、ハワード・スターク。非常に重要なあれですけど、ジョン・スラッテリーさんっていう人が「アイアンマン2」と「アントマン」でも出てきますけど、演じてんだけど。「キャプテン・アメリカ」のタイムラインでは1作目も2作目も、ドミニク・クーパーが演じてて。まあ年齢的な差があるとしても、同一人物に全然見えねえよ!っていう。これ、トニーの、キャプテン・アメリカのお父さんを挟んだコンプレックスっていうのが非常に物語上キーになってるだけに、うーんちょっともったいないな。おそらく「ウィンター・ソルジャー」の時点では、今回のオチは考えていなかったっていうことだとは思う。あと、ドミニク・クーパーのギャラがたぶんテレンス・ハワードと同じようにモメたっていうことかもしれませんけど。これ、ちょっと惜しいなと。

2時間半が長く感じる瞬間

で、それはいいとしても、トニー・スタークさん。「お前、この野郎!」ってなるその人に責任能力がないことは一応知った上でなんだから、やっぱりその、まんまとっていう感じが。「バットマン vs スーパーマン」でも、まんまと感がちょっと若干ガキっぽく見えなくもないかなっていう感じはしましたけど、なんだと思います。とにかく、あとやっぱり2時間半が長く感じる瞬間ではあります。刑務所に寄って、ファルコンと話するだけの場面なのに、刑務所がズバーンと海から上がってきた瞬間、確かに画としてはすごいけど、こんなすごいとまた時間かかる!みたいな。刑務所寄るだけ!話的には刑務所寄るだけ!みたいな、とか。その割に、ロンドンからウィーンが、次のカットでもうウィーンにいますみたいになってたりとか。そういうところが雑っていうのはちょっとあるんだけど。

でもよくまとめた1本なのは間違いないですし、文句なしに楽しい1本。求められてるものにほぼ全て完璧に応えてるのは間違いないと思います。ルッソ兄弟、続投も当然じゃないでしょうか「インフィニティ・ウォー」に。とはいえこのクロスオーバーインフレ、次が限界だろうなという一種の危うさも感じる1本ではありましたけど、僕的には。ということで、お時間になってまいりました。ぜひぜひ、劇場でウォッチしてください!面白かったです!

書き起こし終わり。

 

○○に入る言葉の答え

「⑤実はあの「セブン」に通ずるところがある!?」でした!

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