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引用:IMDb.com

ちはやふる 上の句のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月25日更新
諸手を上げて「完璧だ!」とは言いませんが、そういうのはとりあえず置いといても、僕はこの手のジャンル映画としてこのレベルまで達していれば、申し分ない。今の基準から言ったら、なんなら「傑作」って言い方してもいいぐらいの出来だと思うっていうぐらい、僕は大好きになっちゃいました。すいません。はい。超面白かったっす!すごい楽しかった。(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、小泉徳宏監督作「ちはやふる -上の句-」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん「ちはやふる -上の句-」解説レビューの概要

①小泉監督はコメディー向き?今までのフィルモグラフィーとは段違いの完成度
②青春映画はこれが大事!キャスティングの妙
③とにかく広瀬すずがすげえ!
④野村周平もいい!実は「持たざるもの」である凡人側の視点
⑤これができていない作品が多い!本作最大の魅力は、○○!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

映画「ちはやふる -上の句-」宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)
映画館では今も新作映画が公開されている。一体誰が映画を見張るのか。一体誰が映画をウォッチするのか。映画ウォッチ超人「シネマンディアス宇多丸」が今立ち上がる。その名も、「週刊映画時評 ムービーウォッチメン」。

毎週土曜夜10時から、TBSラジオキーステーションに生放送でお送りしている「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」。ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと「シネマンディアス宇多丸」が自腹で!ウキウキウォッチング。自腹で!資料とかも全部自腹で!ウキウキウォッチング。赤字になることもいとわず、そして自分の残高がどんどんコーナーをやればやるほど減っていくのもいとわず、その監視結果を報告するという血のにじむような!映画評論コーナーです。

今夜扱う映画は、先週ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画!「ちはやふる -上の句-」。

そうです。エンディングに流れるのが、このPerfumeの「FLASH」という曲でございました。競技かるたに打ち込む高校生たちの青春を描いた大人気コミック「ちはやふる」を実写映画化。二部作の前編となる本作では、主人公・綾瀬千早が競技かるた部を設立し、大会に出場するまでを描く。出演は広瀬すず、野村周平、真剣佑。真剣佑、すごい名前です。千葉真一さんの息子さん。びっくりしちゃいました。監督・脚本は「ガチ☆ボーイ」とかいろいろあります、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の小泉徳宏さんということでございます。

引用:IMDb.com

映画「ちはやふる -上の句-」を鑑賞した一般の方の感想

ということで、この映画をもう観たよというリスナーの皆さま、ウォッチメンからの監視報告メールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、多め!ああ、そうですか。評判が、やっぱり結構高いという。賛否では、8割以上が褒めている。「原作を読まずに行ったけど、まさか泣かされるとは。」「青春映画の傑作。熱いし、泣ける。」「広瀬すずのアイドル映画としてもすごい。」など、熱い賞賛の言葉の言葉が並ぶ。とにかく「軽い気持ちで観に行ったら予想以上によかった」という人が多かった様子。

否定的な意見としては、「コメディーっぽい演出がダサいし、話もキャラもありきたり。」という意見がいくつかあったということでございます。代表的なところをご紹介いたしましょう。

*ゲゲゲのおやじさん
原作未読ですが、評判を聞いて会社を半日休んで行ってきました。結果、今年暫定一位。いろいろ言いたいことはあるけれど、総合得点として最高でした。前半、感情移入しにくいイケメン金持ち設定の男、コメディータッチの演出、喋りすぎのいわゆる昨今の日本映画演出に頭を抱えたのですが、後半、物語はまつげ君・・・

(宇多丸)
今、イケメン金持ち設定といいましたけど。机くんというガリ勉キャラがいるわけです。

*ゲゲゲのおやじさん
軸に動き出した途端、弱くて卑怯で、今までやらない、神様に見放されたと諦める、人とかかわらずに生きていくことを選んだ俺たちが、やらない方を選んできた俺たちが、やることを選ぶストーリーになり、魂がふれました。この話、ロッキーじゃないか!

(宇多丸)
これ説明が必要です。つまり、荻昌弘先生解説によるロッキーじゃないか!

*ゲゲゲのおやじさん 続き
運命がそうだったとしても、取りに行くんだよ!来ないなら取るまで!クライマックスの素振りシーン、その後の大団円に号泣でした。

(宇多丸)
素振りのとこありましたね、そういえば。

*ゲゲゲのおやじさん 続き
他にもかるたを取るときにチームみんなが同時に腰が浮く演出や、前半と後半で千早と太一が同じカット、セリフをつなぐ山登りの・・・

(宇多丸)
山登りのあるカットなんだけど、クライマックスであるカットがあって、というあたり。

*ゲゲゲのおやじさん 続き
非常に気が利いていて、細かく計算された良い作品だと思いました。

という褒めのメール。褒めてる方もう一通ご紹介しましょう。

*フジセロックスさん
初めて投稿させていただきます。私は普段、テレビアニメのアニメーターとして働いているのですが、以前放送されていたアニメ版「ちはやふる」で、原画と作画監督補佐をしたことをきっかけに原作を知り、それ以来かかさず単行本は買い続けています。今回実写化と聞きつけ観に行ったところ、感想としては相当面白くできてるんじゃないかと思いました。

(宇多丸)
という。で、役者さんのこと褒めたりとか。

*フジセロックスさん 続き
今作を観るにあたって気になっていたのが、試合のシーン。想像以上に激しく繰り広げられる選手たちの動きを、観客が混乱することなく丁寧に、そしてちゃんとアガるように、アニメ版に負けず劣らず演出されていたように思います。

(宇多丸)
アニメ版もすごい気を遣ってやっていたんだけど、ということです。

映画「ちはやふる -上の句-」批判的な意見

*フジセロックスさん 続き
ただ、アニメ版では原作以上に丁寧に描かれていた千早以外の部員たちの入部に至るまでの過程が、ものすごい勢いで端折られていたのは残念。

(宇多丸)
2本に分かれているとはいえ劇場版との、メディア的な差によるちょっと不満なんかも書いてある。でも、「上映後もかるたの素振りをしながら劇場を後にする方々が多かったです。」って。これいいですね。やっぱ、素晴らしいことなんじゃないでしょうか。ダメだった方もご紹介しましょう。

*ゴールデンメロディーさん
面白くありませんでした。まず小学時代の3人のやり取り・・・

(宇多丸)
雪合戦してるところある。

*ゴールデンメロディーさん 続き
小学生って、あんなくさい青春ドラマみたいなセリフ言わないと思います。

(宇多丸)
という、子役の演技気になる。

*ゴールデンメロディーさん 続き
ここで劇場を出たくなりました。

(宇多丸)
その後も乗れずにいっちゃったと。

*ゴールデンメロディーさん 続き
なんかもうちょっとやりようがあるんじゃないか。登場人物のキャラがステレオタイプだと思いました。

(宇多丸)
と、面白くなかったという。ちょっと乗れなかったという方のご意見もございました。

「ちはやふる -上の句-」宇多丸さんが鑑賞した解説

ということで、「ちはやふる -上の句-」。私もTOHOシネマズ日本橋で2回、観ました。特に1回目は、なんか会場全体から自然に笑いがあちこちから漏れる感じで、とてもいい雰囲気の劇場でございました。ざっくり言って、いわゆる「がんばれベアーズ」型です。「がんばれベアーズ」型チームスポーツもの映画。もう、ひとつの明快なジャンルです。弱小チームががんばって勝ち上がっていくという、定番ジャンルです。プラス、特に日本映画界では、近年、さらにもうひとつ要素が加わって。そのスポーツが世間的には比較的マイナー競技だっていうこういう要素込みで。元はやっぱり学生相撲の「シコふんじゃった。」であるとか、男子シンクロの「ウォーターボーイズ」あたりの成功以降、割と定番化してった、完全にジャンル化してる。「がんばれベアーズ」型プラス、そのスポーツがマイナースポーツであるというのが日本映画界ではジャンルとして定着してる。この番組でも前に扱った「書道ガールズ!!」なんかもまさにそうです。

引用:IMDb.com

チームスポーツもの映画。定型化したジャンルの難しさ。

ただ、ジャンルとして、今やすっかり定型化した分ということなんでしょうか。正直僕、このジャンル、上手くやればすごく普通に面白くなるはずなんです。いろいろ物語上の定石がいっぱいあるわけなんだけど、定型化した分、正直安易な作品も多いなというふうには思っていてです。ということで今回の「ちはやふる」、どうなのかということなんですが。プラス、今回の「ちはやふる」は漫画映画化。で、二部作公開っていう、これまた最近の日本映画界流行りのフォーマットを取ってることも含め、正直言って僕はやっぱ事前には全くノーマークでした。申し訳ないけど。いろいろ観る映画がある中で、割と後回しにしちゃうタイプの映画にはなってたと思うんです。期待もしてなかったんすけど。

この手のジャンル映画としての評価

ただ、結論からいうと、もちろん映画として何かとても新しいことをしているとかじゃないです。もちろん、競技かるたを扱うというのは新しいにしても、何か新しい表現がありますよとか、そういうことではないですし。後でちょっと言うかもだけど、ところどころ僕の好みに合わないというか、今時の日本映画にこういうとこは多いなという瞬間もあるはあるんだけど。だから諸手を上げて「完璧だ!」とは言いませんが、そういうのはとりあえず置いといても、僕はこの手のジャンル映画としてこのレベルまで達していれば、申し分ない。今の基準から言ったら、なんなら「傑作」って言い方してもいいぐらいの出来だと思うっていうぐらい、僕は大好きになっちゃいました。すいません。はい。超面白かったっす!すごい楽しかった。

原作漫画を読まなくても、「ちはやふる」はOK

で、1回目は僕、原作漫画全く読まずに観に行ったんですが、全く何の問題もありませんでした。全く何の問題もなく理解できるし、入り込めるという作りにもなっていましたし。原作漫画を30何巻出てるんですけど、今回の映画で扱われてるようなぐらいのところまで読んで。9巻目。もうちょっと前かな?でも9巻目まで読んだんですけど。すごく面白くて、やっぱし。その後もめちゃくちゃ読みたくなっちゃったんですけど。素晴らしいと思います。漫画もね、さすが。原作を読んでから、もう1回観たら、今度は、ああ、なんて見事に再構築してんだろう、原作を。原作のいろんな要素であるとかセリフとかを上手く意味的に生きるように置き換えてたりとか。あと、ここも見事だなと思ったのは、今回前編・後編、2本公開なわけです。今、非常に多いフォーマットってさっき言いましたけど。今回の「ちはやふる」は、ちゃんと今回の「上の句」、前編のみで1本の物語的な起承転結とカタルシスがある作品として、きっちり成り立たせる構成になってて。とかも含めて、ああ、すっごくよく出来た脚本。すげえ構成がちゃんとしてるな!というふうに、改めてうならされたという感じでございます。

引用:IMDb.com

監督の小泉徳宏さん

監督の小泉徳宏さん、いままでこの番組ちょっと作品を扱ったことはなかったですけど、ロボット所属の監督さん。劇場デビューは歌手のYUIさんの「タイヨウのうた」ってありました。後に、沢尻エリカさんでテレビドラマやりましたけど。とか、「ガチ☆ボーイ」とか「FLOWERS -フラワーズ-」とか「カノジョは嘘を愛しすぎてる」とか、まあ正直、僕は積極的に評価するタイプの作品ではないフィルモグラフィー続いて。特に今回の「ちはやふる」と「ガチ☆ボーイ」を比べると、学生プロレスをマイナースポーツというところに置くならば、その題材に対するアプローチの誠実さみたいなのがちょっと段違いというか。「ガチ☆ボーイ」はそういう意味で僕、ちょっとすごく難がある作品だと思ってるんですけど。今回の「ちはやふる」は、この小泉徳宏さん自ら脚本を手がけられてることも非常に大きいのかもしれません。とにかく、今までのフィルモグラフィーの中でも段違いです。段違い。生き生きしてるし、完成度も高いです。一皮むけたというか、多分ご本人的にも相当手応えがある作品なんじゃないかな?ということだと思います。

映画にとって非常に大事なポイント

で、じゃあどっから褒めようかなっていうのをちょっと迷うぐらいなんですけど。どの映画でも、映画にとって非常に大事なポイントだけど、特に青春映画はここ大事というところで、やっぱり、キャスティングのマジック起きてるかどうかというところで。誰もが言うところでしょうけど、このキャスティング、主人公千早こと広瀬すずと太一という、一応イケメン役ですけど野村周平さんだけ事前に決まってて、後はオーディションで決まったということなんだけど。まず、誰もがもう、この映画に関しては、「強えな、圧倒的だな!」、これはもう、ちょっと理屈じゃない部分ですけど、言わざるを得ないのがやっぱり広瀬すずでしょう。「海街diary」の、すずちゃん役も非常に良かったですけど。

圧倒的、広瀬すず

「海街diary」はあれはやっぱり、なんて言うんですか、内側に秘める役柄でしたけど、あれとは全く違った、一言で言えば「抜けのいいバカキャラ」っていう。さっき「書道ガールズ!!」って出したけど、その時同時にやった「武士道シックスティーン」で、桜庭ななみさんがやったキャラがちょうどこういう抜けのいいバカキャラだったなっての思い出したりしましたけど。すっごい美少女なんだけど、まだちょっと性的に未分化な感じを残してるというか。まだ少年っぽいとこも残してるというような感じ。そのバランスを、ちょっとこれ以上ないほど振り切った、本当バカ演技で。最初に、リスナーメールで来たやつも、「広瀬すずの度を越したバカ演技」ってあって。「どういうことなんだろう?」って思ったけど、これ本当で。振り切った演技で、非常にパーフェクトに。ともすると、実在感「すごい美人なのに色気はない」とか、ともすると非常にこう、なんて言うんですか、欺瞞に満ちたキャラクターになりかねないところを、嫌味なくパーフェクトに体現する広瀬すず。今の広瀬すずの勢いがあってこそじゃないでしょうか。

引用:IMDb.com

広瀬すずのお姉さん、広瀬アリス

この広瀬さん。お姉ちゃん広瀬アリスさんっていう、やっぱり女優さん、モデルさんで。今回も一瞬、表紙に写ってらっしゃいましたけど。「銀の匙」なんかも、非常によかったですけど、お姉さん。お姉さん、皆さんコンタクトレンズのコマーシャルで、この広瀬アリスさん、お姉さんがすごい美少女なのに、目が悪くてすっごい人相が悪くなるというCM。コンタクトレンズのコマーシャル、記憶されてる方もいると思いますけど。あれ見て、あ、すげえ、こんなに美人だからこそ、やっぱりこういうコメディーセンスある人がやるとめっちゃ面白いな!と思って見てたんですけど。まさにあのお姉ちゃん譲りの目のコメディエンヌ・センス。特に、美少女ゆえの目を使ったギャグ。今回、観た人は分かりますけど、とにかくあの白目ネタ。あの見事な白目ネタ、最高。白目をむいて動かないのって、結構大変なんですけど。白目ネタ、最高。最高バカっすね、あいつ。あいつ、最高バカっす、本当。これ、褒めてますけど。あと、スカートの下にジャージ履いている時の、「あっ!あーあ」っていう。「どこの業者の方ですか?」って、あれもよかったですけど。熊谷さんのセリフも。ああいう時の「パッと見て美少女だけど残念」みたいなのが嫌味なく体現できる。これはなかなか、ないことだと思うんです。

ちゃんと笑わせてバランスを取るというような確かなコメディーセンス

この映画全体に、ちょっとお話というか空気がウエットな方に行き過ぎそうになると、すかさずそういうちょっと超くだらないギャグとかやり取りを含めて、ちゃんと笑わせてバランスを取るというような確かなコメディーセンス。映画的コメディーセンス非常に確かなものがある。それが本作の大きな魅力となってると思います。多分、小泉徳宏さんが、もともと多分コメディーが向いてる人だったんじゃないか?っていう。だから、今までのちょっと、割とウエットな作品を職業的に受けられてましたけど。コメディーセンスある人だっていうことなんじゃないかなと思いました。

広瀬すず抜群のサッカーセンス

あと、広瀬すずに関しては加えて、「海街diary」で一部観客をもう騒然とさせた、抜群のサッカーセンス、見せてましたけど。然り、基礎的な身体能力は多分この人、めっちゃ高いんです。あと、動きのセンスとか、めちゃくちゃいいんです。体技的なこと。体がもういいわけです。動きが。ということで、競技かるたというのが非常に激しいスポーツである。「畳の上の格闘技」と言われるような「畳の上の格闘技ってそれ、柔道だろ!」っていう感じするけど。でも柔道的にバーン!ってこう、受け身取ったりする。スポーツとしての競技かるた。その真剣度。なんなら、殺気です。殺気さえ帯びてるようなその真剣度っていうのを、この広瀬すずが最初のところやってみせる。そこで彼女が「ウラーッ!」っていうところのバーンッ!っていう一発で納得させる説得力がやっぱり、体技含めてあるわけです。あそこがショボかったら、もう全部成り立たないです。

引用:IMDb.com

競技かるたという題材をしっかり描く

とか、もちろん、他のキャストを含めてしっかり事前のかるた訓練ちゃんと積ませて、競技かるたという題材をしっかり描くという。さっき言った、マイナースポーツ版ベアーズというジャンルでここ、絶対外しちゃいけないとこ。勘所なのにもかかわらず、ここを適当にやってる作品も少なくない。あるスポーツを描こうっていうのに、そのスポーツをちゃんと描く気ないでしょ?っていうふうになっちゃってる作品が多い中で、当たり前なんだけど、競技かるたをちゃんと演者たちに叩き込んで。で、完全に上手いとこまで持ってってやるという、当たり前だけど日本映画でできていないのも多いですよというようなことをちゃんとやってる。これも本当に大きいあたりだと思います。先ほどちょっと苦言を言った「ガチ☆ボーイ」という作品が、そもそもプロレスっていうものを錯誤してないか、この話は?っていうのに対して、もう雲泥の差だと思います。これは、アプローチは。

今の広瀬すずがすげえ。とにかく、神がかり的魅力

とにかく、今の広瀬すずがすげえ。とにかく、神がかり的魅力。これ、ちょっと言いすぎだっていう方いらっしゃるかもしれませんが、僕、今の広瀬すずは、「10代の頃の宮沢りえ」の陽性の部分と、「10代の頃の薬師丸ひろ子」の陰性の部分を併せ持つ、ちょっとデカいタマ、来たよ!ちょっとこれ、大きいタマ来たよこれ!っていう感じになってると思います。とにかくその広瀬すずの、説明不要です。とにかく説明不要の、説明不要の魅力です。すいません。もう、女優の魅力ってこれ以上言葉にできません。説明不要の魅力が中心として真ん中にドスンとある。

切ない思いを抱えてる太一というキャラクター

で、物語的にはむしろその千早っていうのは中心にある、太陽的なというか、資質的にも天才なわけですから。少なくともこの「上の句」では一応、無意識過剰な天才としてドンといる。なんだけど、物語上は千早の幼なじみ。で、さっきイケメン金持ちなんだけど、実は非常に切ない思いを抱えてる。千早に対しても切ない思いを抱えてるし、かるたの才能ということに関しても切ない思いを抱えてる太一というキャラクター。これ、野村周平さん演じてる。この彼の視点から見るという構成にしてる。で、彼や他のサブキャラクター。特にその机くんって、ガリ勉のキャラクターが、彼女という中心的な太陽を通して少しだけ成長するという話として話を再構成。この前編は構成してる。これも大正解だと思います。野村周平さん、太一演じる、内藤瑛亮監督の「パズル」でニキビをプチプチつぶしてた子だ、とか。あと、入江悠監督の「日々ロック」の主演の子です。

引用:IMDb.com

太一演じる野村周平さん

こっちこそ、本当抜けがよすぎるバカ役じゃないですか。全然、毎回違うように見える。非常に芸達者な方なんだなと思います。今回、その太一というのが原作よりちょっとだけ親しみやすい目線。つまり、やっぱりさっき千早を中心にすると、結局彼はイケメンで金持ちだっていうんだけど、実は「持たざるもの」、凡人サイドなわけです。凡人側の視点としての太一像っていうのを上手く、いいバランスで演じられてるんじゃないかと思います。個人的には、細かいところなんですけど、寝てしまった千早、広瀬すずをおんぶして帰る夜道で、「あ、あそこマンション建ったんだ」ってボソッと言うじゃないですか。こういう瞬間を自然に切り取ってるだけで、青春映画として、「ああ、これはいい映画だな」っていうふうに確信する瞬間だったりします。

ミステリアスな存在感、「新」

で、それに対する、「上の句」今回では前編ではあまり出番が少ないんですけど、それゆえにミステリアスな存在感、「新」という、こちらは本当に天才の役でございます。真剣佑さん。千葉真一さんの息子さん。これ、まだちょっと分かんないですけど、存在感の、端正だけどミステリアスな、でも何か持ってんだろこいつ、みたいな。とっても体現されてて、これもいいチョイスなんじゃないかなと思いますし。あと、他のかるた部員3名。3名とも、見た目はちょっと原作とかと設定とか、だいぶ違うんだけど。今回の映画の中では完璧にハマッてるなとは思う。むしろ、多分アンサンブル的なところを生かしたのかもしれませんけど。「舞妓はレディ」の上白石萌音さんとか、今回はコメディーリリーフに徹してましたけど西田という役をやってる矢本悠馬さん。

ガリ勉的なキャラクターを演じてる森永悠希さん

あと、何しろ今回おいしいのは、机くんという、ガリ勉的なキャラクターを演じてる森永悠希さん。これも原作とちょっと、バランスは違うんだけど、非常に納得のバランスというか。彼のエピソードの、サブキャラクターでサブエピソードなんだけど、持たざるものの成長っていうのがさっき言ったメインキャラクター、事実上の今回の「上の句」の主人公・太一の目線と重なって、非常に比重が大きい、おいしいキャラクターなわけですけど。特にやっぱり、彼が落ち込んだところから復活する時にある回想をするわけですけど。その回想のショットが、先ほどメールにもあった通り、ある場面を彼の視点、つまり彼はその時こう見えていたっていう彼からの視点で、ある場面を別のショットでパッと出してくる。そのポンッとショットの入れ方が不覚にも、「おっ!」って来る。「上手い!虚を突かれた!」っていう。ていうのは、山登りの場面なんですけど、そこで彼が手を伸ばしてもらって手をつなぐ時に、彼側の視点、「あ、カット変わんのかな?」って思わせるような間というか、あれがあるんです。「あ、変わんないんだ」っていう。やっぱ観客は無意識でそれを覚えてるから。その後で、彼が見ていた光景っていうのをポンッて見せられると、ドン!ってこう来るという。映画というのはやっぱり前に起こったことを思い起こして、「ああ、そうか」って思い起こした時に感動するという、そういう機能がございます。どんどんいかないといけない!

引用:IMDb.com

「ドSのS」の須藤。清水尋也さん

あと、ライバル校の2人もよかった。「ドSのS」の須藤。清水尋也さん。これ、特に「ソロモンの偽証」で一番おいしいとこ持ってった方です。今回も、見た目も漫画とそっくりだし、ドS似合います。あと、あの首から肩のラインの、あの年頃の男の子にしかないラインがいいんだよな。あれな。あと、今回は名前も呼ばれてなかったけど、ヒョロくんっていうキャラクター役をやってる坂口涼太郎さんですか。今回は役として決して多くはない。セリフも出番も多くはないのに、しっかり存在感残してる。非常に素晴らしい。あと、最近の青春映画、大人の比重が非常に低いのは今っぽいけど、國村隼さん。抑えめだけど非常にいい感じだったんじゃないでしょうか。ということで、ちょっと役者さんの名前並べすぎちゃいましたけど、青春映画においてはやっぱりこの、「あいつら」っていうのが確かにそこにいて、その時間を過ごしたんだという実在感。これが本当に大事なんです。だからこそ、「あいつらにまた会いたい、あいつらどうしてるかな?」っていう、こういう考えが湧く。その意味で、今回は若い役者さん同士のアンサンブル。相性含め、もちろんそれを生かすように確かな演出をしてることも含め、これが最高にうまくいってるんではないかと思います。

百人一首と物語のシンクロのさせ方。脚本。

あと、やっぱり脚本がとてもよくできてる。百人一首と物語のシンクロのさせ方。原作とは違うところ、違う場所にあるんだけど、とてもハマッてる。あの「うっかりハゲ」っていう使い方とか、まあちょっと私は若干イラッとしつつ、二度目にそれが出てきた時、「あっ、うまいな!うまいハメ方するな」みたいな。一事が万事、百人一首のシンクロのさせ方もうまいですし。

試合の勝敗に常に明快なロジックがある

あと、これもうひとつ。これがいちばん大事なところ。本作最大の魅力は、試合の勝敗に常に明快なロジックがあるということです。これができてない作品が本当に多い。競技かるた、勝負は一瞬なために、ハイスピード撮影であるとか、ある種の説明ゼリフ、心理独白ナレーションみたいなのに頼らなきゃいけないのでバランス取りは難しかったと思いますが、やりすぎないように気をつけつつ、特にクライマックス。最後の最後の勝負は、先ほど言った、かるたに関してはむしろ持たざるものである太一のドラマ的なところの着地にもなるわけですけど。彼が自分の見出した勝つためのロジックで自らの運命を切り拓いていくという展開。これが、さっき「千早をつかみ取るんだ」という、二重のドラマ的、和歌とドラマのシンクロという、試合のロジックとドラマのロジックの二重の重なるのがあって。しかも、その決着が意外かつ、やっぱり「ああ、なるほど!」と膝を打つ、見事な決着の付け方を含め、対する敵のヒョロくんのナイスな、もう見事なリアクションも含め、本当にグッと来る名場面になってると思います。

引用:IMDb.com

上手い子役の使い方って諸刃の刃だな

あえて言えば、例えばしんみりした場面の音楽演出とか。これ、別にこの映画に限らず、最近の日本映画はなんかピアノが「ポロン」みたいな。なんか単調で他のやり方ないのかなとか。あと、やっぱり先ほどのメールにもあったけど、やっぱり上手い子役の使い方って諸刃の刃だなとか。そういうことは思わなくもなかったが、ただあんまり全体としては文句つける気がしないぐらい、魅力的な、旬のキャストの相性、最高のアンサンブルと、かるたシーンの本当に真剣な本物の体技。体の力、体の魅力。そして巧みにロジカルに構成された脚本と、絶妙な笑いのセンスなどなど、全てがこのジャンルムービーとして申し分ないレベルではないでしょうか。

最後に「下の句」。この続編、後編の映像が付くんだけど、僕はもう早くあいつらに会いたい。「えっ、もうそんなに早く会えんの?てか、次会ったらもう終わり?」ぐらいの感じになっちゃってます。「下の句」の出来次第ではあるけど、これは意外と日本青春映画史上に残っていくことになる作品かもしれないと。それぐらい、なかなかの出来でございました。「ちはやふる -上の句-」、おすすめです。ぜひ、劇場でウォッチしてください!

書き起こし終わり。

 

○○に入る言葉の答え

「⑤これができていない作品が多い!本作最大の魅力は、”試合の勝敗に常に明快なロジックがあること”!」でした!

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