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引用:IMDb.com

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月25日更新
ストレートに、シンプルにいくのを怖がる最近の映画の、だから「盛りすぎる」という最近の娯楽映画のいろんな傾向、問題点も入ってる作品じゃないでしょうか、ということでございます。 とはいえ、僕は、やたらとかっこつけてるくせに、結局割とバカっぽいというそのバランスをもかわいく取れる程度にはなってきました。かわいい!ということでございます。(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、ザック・スナイダー監督作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」解説レビューの概要

①宇多丸さん辛口批評!作り手の本音と大人の事情とは・・・
②本作最大の問題は「○○」が1つも起こらないことにある!
③本来の効果を発揮していない「ヒーローの相対化」
④スーパーマンを巡る「神 対 人間」というテーマについて
⑤思わず「バカっぽいな」と思ってしまった数々のストーリー展開

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

映画「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)
映画館では今も新作映画が公開されている。一体誰が映画を見張るのか。一体誰が映画をウォッチするのか。映画ウォッチ超人「シネマンディアス宇多丸」が今立ち上がる。その名も、「週刊映画時評 ムービーウォッチメン」。

毎週土曜夜10時から、TBSラジオキーステーションに生放送でお送りしている「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」。ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと「シネマンディアス宇多丸」がウキウキウォッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーでございます。

ちなみにこのコーナーの元になってる「ウォッチメン」、今日の監督のザック・スナイダーも監督しておりますし。テーマ的にも、スーパーヒーローが我々を守るとしたら、そのスーパーヒーローを監視する奴は誰なんだ。誰がウォッチメンをウォッチするのか。テーマも通じるとこありますし、実際、今回の作品の後ろの落書きにラテン語でそれの意味のことが書いてあるなんてことも、なんかに書いてあったりしました。

みたいな感じで、今夜扱う映画は、先週ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画!「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」。

アメコミを代表するヒーロー、スーパーマンのリブート作である2013年の映画、「マン・オブ・スティール」の続編。同じくアメコミを代表するヒーロー、バットマンとスーパーマンが対決する。主人公のクラーク・ケントことスーパーマンを演じるのはヘンリー・カビル。ブルース・ウェインことバットマンを演じるのはベン・アフレック。また、イスラエル出身のガル・ガドットがワンダーウーマンに扮している。監督は「マン・オブ・スティール」に続いてザック・スナイダー、ということでございます。ということで、この映画「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」を観たよというリスナーの皆さん、ウォッチメンからの監視報告、メールでいただいております。ありがとうございます。

やはり、非常に大作というか注目作でございますので、メールの量は非常に多いです。今年最多クラスでございます。言いたいことがいろいろ出てくるっていうのがあると思いますけど。賛否でいうと、「賛」が2割。「まあまあ」が3割。そして残り半分が否定的な意見ということでございます。「とにかく画面がかっこいいし、ヒーローたちの造形もばっちり」「アメコミファンとして大満足」「前作『マン・オブ・スティール』からつながるテーマ設定がいい」などが主な褒める意見。対して、「いくらなんでも長すぎる」「冗長、退屈」「登場人物全員バカだし暗い」。「登場人物全員バカだし暗い」キレがいいですね。などの否定的な意見はこういうような感じが多数を占めた。ただし、多くの人が「ワンダーウーマンは良かった」ということ。正直、「ワンダーウーマン」出すって聞いた時に、「えっ、大丈夫か?ワンダーウーマンなんか出して」って思ったんですけど、そのあたり非常に好評的な意見が多いということでございます。代表的なところをご紹介しましょう。

引用:IMDb.com

映画「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」を鑑賞した一般の方の感想

*マーベリックさん
「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、大阪のレーザーIMAXで2回、新宿のIMAXで1回と、ドルビーアトモスを1回、オリジナルバージョンの4DX吹き替え、立川の極上爆音で観賞してきました。所見時は口ぽかーん状態でしたが、2度目に観賞したときに、ヒーローたちの葛藤と、アクションシーンの迫力、IMAXカメラで撮影したシーンをフルサイズで観た衝撃、ワンダーウーマンの格好よさが相まって、僕が今まで観た映画の中でオールタイムベストが更新されてしまいました。大好きだ。物語もテンポよく進んでいてとてもよかったですし、「ジャスティス・リーグ」への布石も完璧だと思います。ザック・スナイダー万歳、バットマン万歳、ワンダーウーマン万歳!

(宇多丸)
スーパーマンは入っていないという。ダメだったという方。

映画「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」批判的な意見

*テラペインさん
前作が、超人がくよくよ悩んで地元の悪い先輩とケンカしてみんなに迷惑をかけるだけのヒーロー映画として、全くカタルシスが感じられない作品だったので・・・

(宇多丸)
「マン・オブ・スティール」ね。

*テラペインさん つづき
本作は前作に見られなかったスーパーマンのヒーローとしての覚醒編を期待していました。しかし結果として裏切られました。バットマンの登場で前作より暗くなり、本来は「陰」と「陽」の対決なのに、「陰」と「陰」の対決になって、全く対称的なヒーローが同じ世界に存在するというワクワク感がありませんでした。バットマンも、前作ラストでスーパーマンが行ったヒーローとしてあるまじき行為を劇中幾度となく行い、感情移入がどちらにもできませんでした。展開も、マーベルが・・・

(宇多丸)
マーベル、DCコミックスに対するもう一方のアメコミの雄。

*テラペインさん つづき
マーベルがしっかり各キャラのソロ作品を積み上げてアベンジャーズを積み上げたのに対して、こちらは急ごしらえ感がハンパなく、次回作の「ジャスティス・リーグ」が不安です。ザック・スナイダーは一度超低予算映画を作って、ストーリーテリングを学んでから「エンジェル ウォーズ2」でも作ってろ。

(宇多丸)
僕はサッカーパンチ好きですよ。「エンジェル ウォーズ」。ということでございます。あと、こんなメールもございます。

*ダースレイダーさん
最近体調が悪く、特に血圧を上げてはいけないと医者に通達されてはいるのですが、昨夜、自分で体感できるレベルでみるみる血圧が上がるのが分かりました。「バットマン vs スーパーマン」を観た。ブルース・ウェインの・・・

(宇多丸)
これいろいろ文句言って。で、だんだん血圧が上がってきちゃって。要するに、彼は非常に不満がどんどん募ってったと、観てて。

*ダースレイダーさん 続き
2時間半後に、エンドロールと同時に、僕は前のめりに崩れ落ちたのです。死んだかと友人に心配されました。その後アメコミに詳しい友人に質問責めして情緒は回復したのですが。この映画、ちょっと作りへたくそなのではないでしょうか。

引用:IMDb.com

「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」宇多丸さんが鑑賞した解説

(宇多丸)
ということで、苦痛のおすそわけです、という。要するに、映画を観て、あまりの、ちょっと気に入らなくてぶっ倒れてしまったという事件でございました。以前、鼻血出した人もいましたもんね、怒りのあまり。町山さんだっけ?ありましたね。

ということで、いってみましょう「バットマン vs スーパーマン」。私もTOHOシネマズの2D字幕、あとバルト9の2D字幕と109シネマズ二子玉のIMAX3D観てまいりました。「マン・オブ・スティール」、このコーナーでも2013年9月29日にやったのの直接的続編にして、いわゆる、こう呼ぶことになったみたい「DCエクステンデッド・ユニバース」。映画界においては、もちろんコミック界においてはDCの方が先輩なんですけど、映画界においてはマーベルが先に進んだ、「マーベル・シネマティック・ユニバース」が先行して大成功させたのと同種の試み。

DCコミックスのヒーローたちを個々の単体で映画化するだけではなくて、互いにクロスオーバーさせて、集結・大集合映画とかを作って、「アベンジャーズ」的な作品世界に広がるスケール感を持たせて、さらに大ヒットで大儲けしたいという計画の、今回の「ジャスティスの誕生」というやつから、本格的スタートでもあるということです。もちろん、コミックでは「ジャスティス・リーグ」の方が先なんです。DCの方が先輩にあたるわけなんですけど。映画では、ちょっと後塵を拝してると。

原題だと「BATMAN V SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE」

で、原題だと「BATMAN V SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE」ですけど。タイトルがある意味、全部言っちゃってる。バットマンとスーパーマン、言わずと知れたDCコミックス二大ヒーローが、あれでしょ?いろいろあって、対峙・対決せざるを得なくなるんでしょ?と。で、世紀の対決を経て、とは言えお互いヒーロー同士だから、いろいろあって、まあ和解するんでしょう。なんかあって、和解するんでしょう。で、最終的には、後に「ジャスティス・リーグ」。映画界においてはマーベルの「アベンジャーズ」みたいなもんだと思ってください。「ジャスティス・リーグ」の方がコミックでは先なんだけど、「ジャスティス・リーグ」、スーパーヒーローチームが結成されるきっかけが生まれるんでしょ?そういう話なんでしょう。タイトルがそういうタイトルですから。で、実際、本当にそういうだけの話です、ということなんです。

引用:IMDb.com

クリストファー・ノーランの映画じゃございません

もうちょい細かくいうと、こういうことです。監督のザック・スナイダーさんはじめ、作り手のみなさんとしては、特にザック・スナイダーの思いとしては、本当は本音を言えば、フランク・ミラーさんという方、ザック・スナイダー、以前「300」というフランク・ミラーの作品映画化、見事なアメコミというグラフィック・ノベル作品の映像化としてひとつの正解みたいな見せてみせた、「300」という見事な作品がありましたけど。フランク・ミラーによるアメコミ史上最高傑作とも言われている「ダークナイト・リターンズ」という、これ「ダークナイト」とついてるから勘違いしないで欲しいんだけど。クリストファー・ノーランの映画じゃございません。むしろ、ノーランを含めて、ティム・バートン版も含めてですけど、「ダークナイト・リターンズ」、ティム・バートン版以降全ての映像化バットマンに多大な影響を及ぼしているアメコミの名作中の名作を、「ダークナイト・リターンズ」を本当は映画化したいはずなんです、多分、本当は。そのまんましたいんです、「ダークナイト・リターンズ」を。それが本音なんだけどおそらく。ただ超大作商業映画としての企画上マストな条件っていうのがやっぱありまして。ザック・スナイダーも大人ですから、そこは。「私も大人ですから」っつって。要は、「マン・オブ・スティール」の続編であることです。つまり、「『マン・オブ・スティール』に出てきたスーパーマン」が出る話じゃないといけない。「ダークナイト・リターンズ」のスーパーマンをまんまやろうとなると、あのスーパーマンとは同一人物ではいられなくなってしまうという件があるのと、あと、さっき言った「DCエクステンデッド・ユニバース」。具体的には「ジャスティス・リーグ パート1」へのブリッジ。そこにつなげるような話に。これからいろんなスーパーヒーロー出てきますよ、というようなことをちゃんと予告するような内容にしといてね、というこの2つの条件は外せないわけです。映画を作るにあたって。

「ダークナイト・リターンズ」まんまだなというところを要所要所に残しつつ

なので、観てて、ああ、ここはもろに「ダークナイト・リターンズ」まんまだなというところを要所要所に残しつつ、例えば、おなじみのブルース・ウェインがバットマンになるきっかけ。両親が殺されてしまう場面の描き方とか、映画館から出てきて、っていうところ。映画館のポスターが、ゾロのポスターがあるわけです。ゾロっていうのはもう、まさにバットマンのルーツにあるようなキャラクターで。だからこそ、原作でもゾロのポスターが貼ってある。今回の映画だと、時代的な設定上、1981年ということですから。「ジョン・ブアマンの『エクスカリバー』が次週水曜日から上映」みたいなのが看板についてたりする。で、「エクスカリバー」の映画のラストが今回の「バットマン vs スーパーマン」のラストのとある結末を暗示してたりもするんですけど。とにかく、「ダークナイト・リターンズ」を踏まえた展開。あるいは、お母さんが撃たれて真珠がボーンと散る。あれはもう、コミックも「はい、『ダークナイト・リターンズ』やりたかったのね。よかったね、よかったね。ザック・スナイダー、よかったねー。」。あと、核ミサイルでスーパーマンがしなびちゃうっていう展開とか。

引用:IMDb.com

今回のバットスーツのデザイン

で、もちろんスーパーマン vs バットマンの戦い。特にアーマードをつけたバットマンの戦いっていうのは、結構かなり、流れも含めて結構まんまだったりするんですけど。そもそも、今回のバットスーツのデザイン。後ほど言いますけど、ちょっと角ばった感じのバットマンのデザインがもうすごく、フランク・ミラーのコミック寄りだなというような感じになってるというのがあると。なんだけど、それを要所要所に、元は「ダークナイト・リターンズ」をやりたいんだろうな、ほとんど「ダークナイト・リターンズ」が原作と言ってもいいぐらいなアルフレッドのセリフとか、まんまのところもありますし。

ファンが見ても明らかに唐突な、幻視シーン

なんだけど、同時にさっき言った条件、DCエクステンデッド・ユニバースに向けた布石として、じゃあワンダーウーマン出しましょうと。あと、後の展開を暗示する、正直これはどんだけのファンが見ても明らかに唐突な、幻視シーンというか、幻というか、未来の予言を見てしまうようなシーンがあるわけです。ダークサイドっていう悪役が出るのかな?ダークサイド軍団のあれなのかな?っていうのが、バシャーッと空からやって来てとか。フラッシュなんでしょうね。「俺、速すぎた?」っていう。説明的だなっていう。「俺、速すぎた?」っていう、フラッシュっていうまた別のヒーローがタイムリープ能力みたいなのを活かして、みたいな。フラッシュ・ポイント的な展開なのかな?みたいなのは見せつつと。

引用:IMDb.com

「マン・オブ・スティール」っていうのはゾッド将軍

あと、もちろん「マン・オブ・スティール」の続きなので。「マン・オブ・スティール」っていうのはゾッド将軍っていうのを出しちゃってるわけです。前のリチャード・ドナー版というか、クリストファー・リーブ版だと、2作目でやったゾッド将軍との戦いを1作目でやっちゃってるんで。ゾッド将軍っていうのはスーパーマンと同等の力があるわけですけど。ゾッド将軍より強い敵っつったら、もうこいつぐらいしかいないだろうっていう。で、名前を出すだけでちょっとネタバレになってしまう、ある敵が今回のラスボスとして出るんだけど。で、このラスボスを出るってことは、当然戦いの結果はこうなるしかないという、あるオチがつくわけです。人によってはあれ、衝撃的なオチっていうふうに思っちゃうかもしんないけど、もうそのキャラクターが出てきた瞬間に「はいはいもう」、っていうか出るって聞いた瞬間に「はい、じゃあそういうことになんのね」っていう、ある展開があるわけです。名前を言うだけでもうちょっとネタバレになっちゃうんで言いづらくてすいません。そういう諸々の要素。とにかく、いろんな諸要素をがんばって全部入れ込んでみましたっていう作品なわけです。

今後にそこそこワクワクできたりする要素が多い

で、その結果、なので良くも悪くもそういう諸々の事情を改めて汲み取ってる、汲み取ることができる、なんなら、汲み取る気満々なアメコミファンとか、アメコミヒーロー映画ファンは「ああ、まあそういうことがやりたいのね。そう来るのね。次回作以降はこういう流れなのね。」っていうふうにそこそこ納得したり、今後にそこそこワクワクできたりする要素が多い。そういう要素が、要素としては多い作品になってるのは間違いないと思います。なので、ある程度満足したっていう人がいるのは当然だと思う。

引用:IMDb.com

予想の範囲を超えるような事態が、1個も起こらない

ただ、本作最大の問題は、僕が今言ったような諸条件、諸要素から事前に予想がつくというような範囲っていうのがあるわけです。さっき言った「ラスボスで敵が出てくるなら、ケツはこうなるだろう」とか。「バットマンとスーパーマンの戦いが『ダークナイト・リターンズ』に則しているのであれば、っていうかスーパーマンを倒すのであれば、当然クリプトナイトを使うのであろう」とか。そういう予想の範囲を超えるような事態が、1個も起こらないんです。割に、良くも悪くも「神話的な」語り口。これ、多分、そこにすごく「深遠なテーマを語ってる」とか言う人いますけど。いや、違うでしょ。テーマとして深遠なものを語っている風なことと、作品そのものが深遠であることは別なんで。多分これ、ザック・スナイダーとか、特に脚本のデヴィッド・S・ゴイヤーさん。クリストファー・ノーランの「バットマン」シリーズとか、コミックの方も手掛けられたりしてますけど。脚本のデヴィッド・S・ゴイヤーさんたちにとって、単純にアメコミ グラフィック・ノベルにおけるかっこよさっていうので、画的なかっこよさっていうのがあるわけです。ザック・スナイダーが一番得意としているところです。グラフィック・ノベルを画的に完全に映像的に再現しました!と同じように、グラフィック・ノベルのかっこよさを示す大事な要素として、神話的、なにか重々しい語り口、みたいなのがある。つまり、超かっこいいキメ画と同レベルで神話的な語り口っていうのが俺はあると思ってるんです。例えば、スーパーマンがアメリカの議会の公聴会に呼ばれてくるってあの画づら、「キングダム・カム」っぽくね?「キングダム・カム」っぽくて、かっこよくね?みたいな。そういう割と無邪気な動機から来てることだと思うんです。

比較的想像通りのことしか起こらないのに、ダラダラ勿体つける

で、とにかくいちいち語り口が重々しいため、事前に想像がつくストーリー展開のまま進んでいくだけなのに、ほぼ、やたらと尺は長くなる。つまり、比較的想像通りのことしか起こらないのに、ダラダラ勿体つけるっていうことで、率直に言えば、やっぱ退屈な場面が多いんです。というのが最大の問題だと思います。しかもその大仰なテーマ風なことは掘り下げる気あんまりないどころか、最終的にはものすごくグダグダ、うやむやにされていくというあたりも、あーあというあたりじゃないでしょうか。

引用:IMDb.com

まず「マン・オブ・スティール」の続編ということで

順を追って見てくと、まず「マン・オブ・スティール」の続編ということで。僕もその時、この番組のムービーウォッチメンの時評で言いましたけど、クライマックス、メトロポリスという都市でスーパーマンとゾッド将軍、同じクリプトン星で生まれた人なので、力は同じ、どっちも。しかも、向こうの方が数は多いというような。ゾッド将軍、仲間たちみんな死んだ後で、ゾッドと一対一の戦いがあるわけですけど。スーパーすぎる戦いがあるわけです。もう人間的物理法則を、地球の物理法則を完全に無視したすさまじい戦いで。あんまりスケールがデカすぎて、「この後バットマンと戦うって、無理でしょ?」って誰もが思うようなすさまじい戦い。で、僕はそん時に、最後に「人命を救うために」なんとかみたいなことを言うんだけど、いやいやいやいや、これどう考えてもさっきの戦いの背景でむちゃむちゃ人死んでるでしょ!って指摘しました。で、実際、多くの観客からそういう指摘や批判が多かったみたいなんです、前作「マン・オブ・スティール」は。で、明らかにそれを踏まえた作り。今回の物語の発端はまさに、そのドッカンドッカン、ゾッドとスーパーマンが人間なんか関係ないやのレベルの戦いを繰り広げてる、その背後ではこんなことがあったという、視点の転換が今回の物語の発端になってる。

発想として非常に近いのは、「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」

で、これ、発想として非常に近いのは、ズバリ、1999年日本映画「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」です。ガメラの場合は1作目でガメラがギャオスという怪獣と戦ったその戦い。それは非常にヒーロー的な戦いをするわけですけど、前の作品でのヒーロー的な活躍のその裏側では、こんなに犠牲者が出てた。で、その犠牲者の視点から、要はこういうことです。ヒーローを相対化するという、そういう仕掛けの作品でした。「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」は。加えて、この「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」、ここも近いんだけど、後に最大の敵としてガメラに立ちはだかるのが、前の作品で倒した宿敵ギャオスの血脈と通じるような化物と、あとヒーローであるガメラへの怨念にとらわれた人間とが融合したやつなんです。それが邪神(イリス)なんです。しかもそいつは、外からの攻撃を吸収してどんどんバージョンアップしていくっていう、そういう設定まであるんです。これ、完璧に今回の「バットマン vs スーパーマン」のラスボスのアイツ非常に重なると思います。作り手が直接的にこの「ガメラ3」を参考にしたという証拠は何もない。そんな発言もないんですが。ただまあこの間の、ハリウッド版「ゴジラ」が完全に平成「ガメラ」1作目風だったのを考えると、ちょっと見比べてみると興味深いものがあったりするかもしれません、と思ったりしました。

引用:IMDb.com

ヒーローの相対化

とにかく、いいです、目の付け所自体は悪くないです。ヒーローの相対化。特に、前作でヒーローがやったことの相対化。ただそれは、こういうヒーローの相対化みたいなのが効果的なのは、ヒーローのヒーローらしさが十分描かれた後だからこそ、ショッキングだったり問題提起として意味があるテーマであって。「マン・オブ・スティール」は1作目の中ですでに、ヒーローの相対化っていうのをさんざんやっちゃってる作品なんです。なので、僕、ヘンリー・カビルが演じるスーパーマン自体はすごい好きなんですけど、なんかこの人、相対化ばっかされててかわいそうっていう。全く颯爽としたところがない。ようやく今回、中盤で、ある種シンボリックな「神話的な」描かれ方ではあるけども、普通にいわゆる人命救助を、僕はヒーローものは必ずやった方がいいですよという、普遍的善としての人命救助してる場面が出てきたりするので。そこは「ようやくよかったね。ようやくいいことをしてるところ出たね!」みたいな感じなんですけど。なので、ちゃんとそういうのを描いてから、こういうのを相対化ってやんないといけないのに、「マン・オブ・スティール」ってそういう映画だっけ?と。

「神 対 人間」という、「テーマ」

プラス、同じく劇中何度も重々しく語られる「神 対 人間」という、「テーマ」です。そのテーマの置き方自体は分かります。スーパーマンっていう存在を突き詰めてくと、当然神にも近い存在と人間っていうテーマになっていくのも分かる。神にも等しい力を持つ存在に対して、知恵を武器に、つまり、人間の存在証明として知恵を武器に、神殺しに挑む人間たち。特にその中で、ジェシー・アイゼンバーグが今回、現代IT長者風というか、はっきり言ってADHD風というか、のレックス・ルーサー演じて言う通り、「ゼウスとプロメテウスだ」と。プロメテウスが神の火を手にして、神は怒って雷を、神はひどいぞって。プロメテウス的なテーマであるとか。あるいは、アポロ VS オデュッセウス的なというか。いろいろとにかく例えはできると思うんですけど。実際「ダークナイト・リターンズ」、さっきから何度も言ってるフランク・ミラーの原作はまさにそういうテーマ。「ウォッチメン」とも通じますけど。「神にも等しい存在って言うけど、お前を誰が抑止するんだよ?」という問いかけ。この問いかけとかテーマ設定自体は妥当性があると思います。興味深いと思います。

引用:IMDb.com

「マン・オブ・スティール」の続編として真面目に考察

ただ、まずその「マン・オブ・スティール」の続編として真面目に考えていくと、僕、「マン・オブ・スティール」も何度も見直しましたけど、前作の結末って、神話なりそういうような話っていう、あ、ちなみにその神話的っていうと、今回ご丁寧にロンギヌスの槍とか出してきて、結末はモロに完全にキリストっていうような終わりだったりするわけなんですけど。「マン・オブ・スティール」のこと考えてください。じゃあそのキリストっていうなら、バイブル、聖書的な話をするなら、前作の結末ってあれは、じゃあカインとアベルなわけじゃないですか。同族殺しなわけです。カインがアベルを殺して、人類最初の殺しをしてしまうという原罪。罪を背負ってしまう。つまり、スーパーマンが同族殺しをすることで、むしろ人間的なものに相対化されてしまう。人間的原罪を背負ってしまう。スーパーマンが人間になるという着地の話だと思うんです。

スーパーマンが人間になるという着地の話

好き嫌いとか評価するしないは別にして、間違いなくそういう話でしょ、「マン・オブ・スティール」の結末は。だし、普通に考えても、スーパーマン単体で地球上でワーッて活躍してたら、それは神のごとく振る舞うものとして、そういうふうに置いてもいいかもしんないけど。でも、そういうふうなのを一般大衆が目にするはるか手前の時点で、もういきなりあのゾッド将軍の軍団が来ちゃってるわけです。つまり、エイリアンがいっぱい来ちゃって。で、エイリアン同士の内輪揉めを始めるわけです。人類が見てんのはそれなんです。だから、スーパーマンは単にエイリアンの生き残りじゃないですか。だからその、神的な単一性、唯一性みたいな、もうすでにないはずなんですよ、普通に考えて。だから、少なくともさっき言った理由も含めて「マン・オブ・スティール」の流れで考えると、あんまり単一の神性みたいなところの議論に乗せる流れだっけ?みたいな感じはしちゃうわけです。

引用:IMDb.com

「神にも等しい男」という存在感に改めて前提を立てなおしての今回の話

百歩譲って、本作の中ではそういう、ある意味本来のスーパーマンらしさ、スーパーマンの存在意義にも近い、「神にも等しい男」という存在感に改めて前提を立てなおしての今回の話です、っていうなら、じゃあわかった、それでもいいけど。でもだとしたら、ここです。例えば今回、クライマックス。バットマン 対 ホニャララ戦。バットマンが絶体絶命のその瞬間、ハンス・ジマーとジャンキーXL、師弟コンビによるこんな音楽流れだす!これ、シーラ・Eとかいろんな名ドラマーたちを何十人も集めて結集さした「ドラムオーケストラ」。ダーンダーンダーン!もう超熱いドラムオーケストラ。これ、前回の「マン・オブ・スティール」でもサントラ使われてましたけど。と、ちょっとこのメロディーがレッド・ツェッペリンの「移民の歌」を連想させる、ギターかと思いきや、エレクトリック・チェロという楽器らしいんですけど。このテーマ曲、超燃えるテーマ曲に乗って、ワンダーウーマンがバーン!って、助っ人に参戦するわけです。これ、ガル・ガドットさん。「ワイルド・スピード」出てました。ハンっていうアジア系のキャラクターと恋仲になる。で、彼女が死んじゃったからハンは東京に隠居するという。で、すっごくキレイだなと思ってたんだけど、今回もう本当に素晴らしい存在感。キレイな人で、最高なんです。イスラエルの人で、イスラエルで兵役行ったことあって、一児の母って、どんだけワンダーウーマンなんだっていう。で、間違いなくとにかくこのワンダーウーマンがバーン!出てくる。キターッ!本作の白眉です。間違いなく、誰もが一番いいとこ、アガるとこだと思うんです。やったー!

すごくアガるんだけど、同時に残念っていう瞬間でもある

でもみなさん、冷静に考えてください。この瞬間、少なくともスーパーマンを巡る「神 対 人間」っていうテーマは全部吹っ飛ぶよね。なぜなら、ワンダーウーマンもまた神様みたいなもんだからです。えっ、さっきまでのあれ、じゃあもう、なし!なし!っていう。だからすごくアガるんだけど、同時に残念っていう瞬間でもあるという。事実、さっきから言ってる「抑止不能な力を野放しにしてとくと危険だ」っていう、それ自体はそれなりに説得力がある、「誰がウォッチメンをウォッチするのか?」という、それなりに説得力のあるバットマン側の当初の言い分。最後は、完全にウヤムヤになってます。「オレは考え方を変えた」とかも言わない。「オレが間違ってました」とかも言わない。なんか、すげーしれっと方向を180度転換してるんです、あいつ。俺、だからあの、「いや、チーム集めようと思うんだよね」ってとこで俺ワンダーウーマン蹴っ飛ばしていいと思うんだよ。てか、なんでお前が?っていう。

深遠なテーマ風に見えるもの

そういう深遠なテーマ風に見えるものは、さっき言ったようにかっこよさの一部なんだとしても、それが結局燃えるヒーロー大集合に吹っ飛ばされるというこの流れも、それはそれで痛快でいいじゃねえかってことなんだとしてもです。じゃあ、そうだとしよう。だとしても、今回の「バットマン vs スーパーマン」、ところどころお話や登場人物の行動がいくらなんでもアホらしすぎ。なにこれ?っていうとこが多すぎる。例えば、ブルース・ウェインがレックス・コープから情報を盗むっていうとこがあるんですけど。こんなにザルな会社は見たことないという。まず、大事なサーバー室みたいなのが厨房横みたいなとこにあって。で、コネクターみたいのがむき出しであって。そこにすごい雑な装置くっつけて。しかもそこで「はい、あんた、はいなに?なにやってんの?」見咎められてるのに、その装置は放置されたまんま。で、いったん離れて戻ってきたら、「うわー、取られちゃった!」って言うんです。で、取ったのはワンダーウーマンなんだけど、ワンダーウーマン側も「いや、でも取ったのはいいんだけど、なんかちょっとファイルがロックかかってて、見らんなかったから返すわ」って。なんだ、お前ら!コンピューター音痴の中学生同士のUSBのやり取りか!?みたいな。ザック・スナイダーはつくづく、コミックを再現することには情熱を燃やしても、スパイ映画とかマジ興味ねえんだなっていうのが分かる雑なシーンでございました。

レックスがスーパーマンを倒すためのクリプトナイトを輸入した

あと、例えば、レックスがスーパーマンを倒すためのクリプトナイトを輸入した。で、それがバットマンを奪おうとするくだり。バットモービル大活躍のシーンなのはいいけど、その車に発信機取りつけてるんです。で、その結局行く先は、いいですか?レックスが輸入したってわかってるものに発信機つけたその車の行き先は、レックスの研究所なんです。ああ、そりゃそうだろうねっていうとこにしか行かないんです。そうだよねっていう。しかも後から、その研究所から強奪するんです。石を。え?ってことは、さっきの途中のカーチェイス、丸ごといらないじゃん?っていう。なんで、発信機意味ねえじゃん、お前、途中でワーッてやってさ。超警戒するよね?

せっかくその対照が面白い置き方なのに

で、そもそもバットマンとレックスが、本来立場的にも思想的にも非常に近いとこにいるところでスーパーマンに反感を抱いてるんだから、せっかくその対照が面白い置き方なのに。だから、途中で協力しあうとか、そういうのがあるのかな?と思ったら、お互いどう思ってるのかよく分かんないまま話が進むため、例えば議会であるテロ事件が起こるんですけど、犯人が誰かもバットマンは知ってるのに、まだスーパーマンが悪い、悪いっていう説に取り憑かれてるのが、なんか不自然すぎてバカにしか見えないっていう感じにもなってる。

肝心の対決シーン

で、肝心の対決シーン。「ダークナイト・リターンズ」に近い感じで、そういうのはいいんだけど。「スーパーマン冒険編」のオマージュもあったり。だた、あと、バットマンの、スーパーマンが力返ってきて「あっ、あっ、ああー、ちょっと待って、待って」あそこも笑えて。楽しめるんだけど。まず、バットサイン出せばスーパーマンが来るって、で雨の中待ってるんだけど、いつ来るかわかんないよ!てか、来るか分かんないよ。だし、スーパーマンは対話する気だから来るのはいいとして、でも本気で戦う気のバットマンがああやってやってたら、本当にスーパーマンがやる気だったら、上からドーン!でお終いじゃん、みたいな。なんなの、お前?っていう感じがありますし。

スーパーマンがレックスに、敵に、屈する理由

あと、スーパーマンがレックスに、敵に、屈する理由が「えっ、お前、意外と割とこういうことで簡単に屈するんだ」みたいなのもありますけど。しかもそれ、後でバットマンがひとりで解決できる程度のことだった、みたいなのもありますけど。で、その後、バットマンがスーパーマンへの怒りを鎮める理由が「えっ?お母さんの名前、一緒なんだ?」っていう。これ、みんなずっこけたと思うんです。お前も人の子かっていうのは理由としては分からないじゃないけど。で、その後、いわゆるロンギヌスの槍。スーパーマンを殺せる槍が捨てたり拾いに行ったり溺れたりのグダグダしたくだりとか、本当にイライラすると思うんですけど。

バットマンのデザイン

で、いろいろあるんだけど、よかったところ、バットマンのデザイン。割とコミック寄りというか。今までもなんか似たような、ヒーロー似たような感じであったり表面テラテラしたあれじゃない、フランク・ミラー風のデザイン、あれはよかった。トレンチコートのスタイル、あれもよかった。とか、ワンダーウーマンもよかったとか。ヘンリー・カビルのスーパーマンはいつも悪くないんだけど、みたいなこともあります。あのロイスを救出するシーン、クライマックス前に。で、サーッと一瞬2人で、一瞬のランデブーしますよね。ああいうとこをもうちょっと入れてほしいですよね。あれはすごく美しいショットだったなと思います。ということでございます。

ワンダーウーマンの参戦シーン

あのワンダーウーマンの参戦シーンがグッと来るのは、やっぱりアメコミヒーローもの、堂々とやっぱ、ぬけぬけとこれをやるんだっていう瞬間にグッと来るところがあるんで。やっぱりちゃんとやった方がいいんじゃないかなと思ったりいたします。ストレートに、シンプルにいくのを怖がる最近の映画の、だから「盛りすぎる」という最近の娯楽映画のいろんな傾向、問題点も入ってる作品じゃないでしょうか、ということでございます。

とはいえ、僕は、やたらとかっこつけてるくせに、結局割とバカっぽいというそのバランスをもかわいく取れる程度にはなってきました。かわいい!ということでございます。ぜひぜひ、劇場でウォッチしてください。

書き起こし終わり。


○○に入る言葉の答え

「②本作最大の問題は「予想の範囲を超えるような事態」が1つも起こらないことにある!」でした!

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