クリント・イーストウッド監督ありがとう
2021年1月6日 12時33分
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総合評価:
5.0
公開当初にこの映画を見た時は戦争の悲惨さだけに目が行って辛かったです。上官の命令とはいえ「なぜ自決するんだよ」「なんてバカなことを」と。そしてちっぽけな島を守るためになぜ大勢の兵士を動員する必要があるんだ?日本の司令部は何を考えているんだ?と、怒りが沸き上がりました。
その後、硫黄島が落ちたら日本全土が米軍の容赦ない空襲に晒されることを知り、どういう想いで兵士の方々が戦ったのか目に焼き付けるため改めて鑑賞しました。
押し寄せる米軍を撃退できると考えていた兵士は現場にはいなかったでしょう。自分達が1日でも耐え抜けば愛する家族だけでなく大勢の国民が疎開できると戦い抜いたんだと思います。
アメリカで作られる映画ではアメリカに敵対する国や組織はとんでもない悪者に描かれることが少なくありませんが、この映画では日本側の栗林中将やその部下である兵士達からの目線で描かれており、この映画には「悪者」はいません。(少しだけ「こいつクズだな」と思える兵士もいましたが)
敗戦色が濃厚になってきた時代に、武器弾薬だけでなく食料や水さえも足りない中、米軍の想定をはるかに超える驚異的な粘りで戦い、犠牲となった兵士の方々に我々は感謝しなければなりません。あの方々の犠牲がなければ我々は生まれていなかったのかもしれないのだから。
日米のいずれかに偏ることなくフラットに描いてくれ、戦争の悲惨さだけでなく、それぞれの人の想い、そしてあの兵士の方々から頂いたであろう自分の命の大切さ、それらに気付かせてくれた監督にも感謝です。