若い頃は元気で人気のある男性に惹かれがちですが、歳を重ねるにつれ、どこか憂いを帯びた笑顔の少ない難しそうな男性がなんとなく気になったりします。本作はそんな男性をホアキンフェニックスが見事に演じきっています。
多くを語らず、授業を淡々とこなし、人との関係は最小限。そんな主人公にどんどん惹かれていくエマストーンがかわいい。好奇心いっぱいで哲学に対しても真剣に取り組んでいるしとにかくキラキラしています。同じ哲学を学ぶ者でありながら、この両者は真反対とも言える性格です。
そんなに真面目に考えて答えを出さなくても生きていけるのに、哲学を研究する者としてはそれは許されなかったんでしょうね。主人公の考え方と実生活のズレがおそろしい発想を生み出してしまいます。
起きてることは重大な事件なのに、そこはウディアレン、実にコミカルにしてくれています。慌てる様子や嘘を隠している様子が、演出がいいのか演技がいいのか、とにかく秀逸です。
私が1番笑ってしまったのがラストシーンです。大声で「えっ⁈」と言ったあとに笑ってしまいました。あんなに難しく考えて考えて生きてきた人間のラストをすぱっと終わらせるウディアレンの潔さに拍手です。