プラットフォームの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、『プラットフォーム』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『プラットフォーム』解説レビューの概要
①プラットフォームとは、「台」という意味
②上の階から順番に食料が運ばれてくる
③下の階で食べ物は残っていない。30日間。。
④プラットフォームのこの構造は、○○○を表している
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『プラットフォーム』町山さんの評価とは
(町山智浩)
今日はですね、今週末の1月29日から公開の映画で、『プラットフォーム』というタイトルのホラー映画。を紹介します。
(山里亮太)
はい。ホラー映画。。
(町山智浩)
はい。ホラー映画なんです。これね、『プラットフォーム』っていうのは、”台”の事なんですけど、これ主人公がある日目覚めると、四角い部屋にいるんですね。コンクリートの、何もない・・トイレと水飲み場しかない部屋にいて。で、部屋の真ん中に四角い穴が開いているんですけれども、それで、その穴から下を見ると、ずーっと下に同じような階が、部屋がずーっと下まで続いているんですね。上を見上げるとまたずーっと上の方にも続いていて、で、その部屋には「48」って書いてあるんですよ。48階らしいんですよ。ね。
プラットフォーム=台がエレベーターのように降りてくる
(町山智浩)
で、そうするとプラットフォームが降りてくるんですね。上から。ゆっくりと。エレベーターみたいなもんです。反重力エレベーターみたいなものが降りてきて、そのエレベーターの上にごちそうがいっぱい載ってるんですよ。すごいでかいテーブルにごちそうがいっぱい載ってて。ただね、食べ散らかしてあって残飯みたいになってるんですよ。で、「これは一体なんなんだ?」って、一緒に部屋にいたおじいさんに聞くと、「これはこの上に47個部屋がある。その人達が上からズンズン食べてって、その残りがこれなんだ。」って言うんですよ。
(赤江珠緒)
へぇー。不思議な世界。うん。
プラットフォームには食べ物が載っている
(町山智浩)
みんなが少しずつ食べてったから残飯になっているんですね。で、これを食べないと、また次の翌日まで食べ物がないから食べろって言われるんですね。それで数分経つと・・まあ10分ぐらい経つと、そのテーブルがまた下に降りてって、どんどんどんどん下に降りてって、その食料、を載せたまま降りていって・・まぁ食料を供給しているという施設なんですね、それが。
(赤江珠緒)
部屋には主人公とおじいさんしかいないんですか?
(町山智浩)
その部屋にはいないんですけど、各階に2人ずついるんですよ。であとで分かるんですけど、全部で200階あるんですよ。それで下の方・・1番下の方が200階で、1番上が1階なんですね。だから逆になっているんですよ、階数が。
(赤江珠緒)
あ〜〜。ふん。
『プラットフォーム』という映画の不思議な世界
(町山智浩)
で、各部屋に2人ずついて、1日に1回、テーブルに載った食料が降りてくるという、それが『プラットフォーム』という映画の不思議な世界なんですね。で、これね、主人公は自分の意志で入った事が途中から分かります。
(赤江珠緒)
うん!
(町山智浩)
で、これね、彼はですね、学校の卒業資格が取りたくて、卒業資格を取るためにここに入ったんですね。で、そのおじいさんはちょっとうっかり人を過失で殺してしまって、そこに入ってるんですよ。で、その施設そのものは「垂直自己管理センター」という、なんというか政府組織で。そこに入って、そういう苦行みたいなものを乗り越えて、いつか出られるという所らしいんですね。一種のまぁ、刑務所みたいな物らしいんですよ。でも、目的とかそれはわからないんですよ、最初はまだ。なんでこういう事をやっているのか、これはなんなのか、わからないんですけども。
この施設の目的はわからない
(町山智浩)
これ、上の方から食べ物、ごちそうが降りてって下の方にいくという事は、下の方ではどんどん食べ物はなくなっちゃうっていう事じゃないですか。だからこれ、「下の方はご飯が食べれるの?」って聞くわけですよ、その主人公の男がね、ゴレンっていうんですけども。
そうするとおじいさんが、「私はかつて、下の方にいた。」と。「食べ物は全然なかったよ。」と。「みんな食べ尽くされた後の空の皿だけが降りてきたんだ。」って言うんですね。で、なぜおじいさんが下の方にいたかというと、30日ごとに、その部屋に眠りガスが流れてきて。で、その人達が寝てる間に、別の階に運ばれるっていうシステムなんですね。
(山里亮太)
はーー!
30日ごとに部屋が入れ替わる
(町山智浩)
で、ある日は48階だけれども、ある日は上の方で食べ物はいっぱい食べれるし。目覚めると今度は下の方の階で食べ物が全然ないとか。そういう風になって、30日ごとに部屋が入れ替わると。
(赤江珠緒)
へぇぇ・・どこに行くかは自分で選べるんじゃなくて、勝手に?
(町山智浩)
どこに行くかは選べないんです。寝ている間に勝手に決められるんですよ。で、主人公は眠りガスが来てですね、寝て、目が覚めたら171階にいるんですよ。
(赤江珠緒)
あー!かなり下になっちゃいましたねぇ。。
(山里亮太)
うわぁ。。
30日間、生きられるのか?
(町山智浩)
そしたらやっぱりそのプラットフォームが降りてくるんですね。すると、空の皿しかないんですよ。で、どうするんだ。30日間、生きられるのか?っていうと・・その部屋には各自ですね、1つだけ大事な物を持って入れるんですね。で、主人公はあの『ドン・キホーテ』っていう小説を持って入ったんですけど・・相手のおじいさんは。。相手のおじいさんも一緒に171階に行くんですけども、相手のおじいさんが持ってきたのは、「肉切り包丁」だったんですよ。。
(赤江珠緒)
えっ・・?
(町山智浩)
食べ物はないんですよ。肉切り包丁はあるんです。
(赤江珠緒)
怖い怖いなんか怖い!!
(町山智浩)
食べ物はないんですよ、30日間。
(赤江珠緒)
ええっ?
(山里亮太)
なんかそうなると、ホラーだし・・アレなのかなって思っちゃう。。
(赤江珠緒)
自分が狙われる・・?
(町山智浩)
お互いを食べるしかないんですよ。。という話がこの『プラットフォーム』なんですけど。なんだか全然わからないんですよね。(笑)
(赤江珠緒)
確かに。それで方や、なんで『ドン・キホーテ』の本を持ってるんだっていうね。
なぜ『ドン・キホーテ』
(町山智浩)
そうなんですよ。なんでだ?っていう事なんですよ。なんのための施設なのか。で、ここで、この施設の管理官みたいな女性も途中で出てくるんですね。で彼女はこう言うんですよ。「実は上から送られてくる食糧っていうのは400人分あるんです。」って言うんです。だから、「ここには400人いるから、1人が1人分の必要な量だけ食べれば、全員に行き渡るようになってるんですよ。」って言うんですね。
(赤江珠緒)
はー!
(町山智浩)
でも、「そんな事ないじゃないですか!」って言うんですよ。「下の方のやつは全然食えないよ!」、「それは上の方の人達が食べ過ぎてるからよ。」って言われるんですよ。
(赤江珠緒)
あらららら!そういう事か、うん。
(町山智浩)
これ何の事を言っていると思います?
(赤江珠緒)
いや、なんかそのさっきの、町山さんの話に通じるものを感じますよ。
(山里亮太)
富裕層だけが得をして、みたいな。
プラットフォームのこの構造は、「世の中」を表している
(町山智浩)
そうなんですよ。これ、”世の中”ですよ。この世の中なんですよ。上の方の人が好きなだけ食べて、だから下に届かないんですよ。で、下の方の人達は互いを殺し合うしかないんですよ。
(赤江珠緒)
あぁそういう事か・・。
(町山智浩)
という話らしいんですよね。
(山里亮太)
らしい・・?ほう。
富裕層の税金、アメリカは37%、日本は・・
(町山智浩)
それでさっきね、税金の事を言ったんですけども。今、富裕層の税金が37パーセントって聞いても、ピンとこないでしょ?えっ4割も取られるの、かわいそうだね、みたいに思います?
(赤江珠緒)
うーん・・そうですね。
(町山智浩)
日本も45パーセントですよね、富裕層の所得税。昔って・・僕が子供の頃って何%だったと思います?僕が子供の頃っていうのは、1962年から1970年にかけての日本の富裕層の最高税率って何%だったと思います?
(山里亮太)
あの頃はそういう人がたくさん一杯いたから、そんなに税であげなくてよかったんじゃないの?
(赤江珠緒)
いやぁ・・・。どうだろう。。
(町山智浩)
当てて当てて。(笑)
日本の1962年から1970年にかけての日本の富裕層の最高税率
(赤江珠緒)
日本でしょう?日本?日本は・・いや、もっとむしろ取ってたんじゃない?
(町山智浩)
金持ち税。何パーセント?早く言ってよ!(笑)
(山里亮太)
20!
(赤江珠緒)
70!
(町山智浩)
70!70です!
(山里亮太)
そんなに取ってたの!?
(赤江珠緒)
取ってたんじゃない?やっぱり。
(町山智浩)
日本では1950年から1970年にかけての20年間ぐらい、富裕層の税率は70%でした。だから”1億中流”になったんです。
(赤江珠緒)
そうですよね。日本ではなかなか金持ちにはなれないと言われてたから・・。
”1億中流”
(町山智浩)
なれなかったんです。その代わり中流がすごく一杯あって、みんな幸せになれたんですよ。でアメリカはもっとすごくて、その頃は75パーセントです。
(赤江珠緒)
75パーセント!
(町山智浩)
だから金持ちはいなかったんですよそんなに。だからフォードとか、ものすごい大富豪達は、税金で取られちゃうから。それだったら、給料をいっぱい払おう!寄付をしよう!それで色んな学校とか、色んな人々の施設を作るっていう事にお金を使ったんです!
その頃のアメリカの大富豪は、まぁ日本もそうですけれども、町に金を落とし、働いている従業員達にお金をいっぱい配ったんです!だって税金取られちゃうからたくさん。
(赤江珠緒)
うん。どうせ取られるなら自分がわかっている所にちゃんと落とそうとかね?
(町山智浩)
そう。自分がコントロールできるから、その方がお金が。だから給料をたくさん払った方がいいんですよ、そしたら自分自身も会社も良くなるし。
ところが、80年代に入ってから日本もアメリカも急激に金持ちの税率を下げていきます。で、日本なんかでは2000年代にとうとうその、70パーセントの半分の30パーセント台にまで落ちたんですよね。金持ち税。で、どういう社会になったかっていうのはまぁご存知の通り。極端な金持ちと、貧乏人。要するに7人に1人が貧困層ですよね、日本って。そういう世の中になったんですよ。
(赤江珠緒)
そうね。格差が広がってね。
「格差社会、格差社会」ってみんな言いますけども、税率上げればいいだけ!
(町山智浩)
そう。それはよく「格差社会、格差社会」ってみんな言いますけども、税率上げればいいだけ!なんです!!金持ちへの。法人税と。もうそれで一発で終わるんですよ。それで、さっき、富の集中について言いましたけど、日本の上位2パーセントの富裕層が、日本全体の富の20パーセントを独占しています。アメリカと同じなんです。富の集中は。ね。これはやっぱり、税率を上げるしかないんですよ。(笑)
(赤江珠緒)
そうですね・・!!
(町山智浩)
だからこの『プラットフォーム』という映画の中で食べ物がいっぱい載ってるテーブルっていうのは、食べ物というか、”富”そのものを象徴していますよね。で、30日ごとに場所が変わるんですけれども、実際の人生ってそうじゃないですよね。生まれた時に場所が決まっちゃっていますよね。どの階か!で、高い方の階に生まれた人はいつも豊かで。だから実はこの『プラットフォーム』よりもっと酷い世界なんですよ今現在は。30日ごとの入れ替えがないんだもん!
(山里亮太)
なるほど・・。
(赤江珠緒)
うん・・!!
この映画もっと色々と考えさせられる
(町山智浩)
というような事を色々と考えます。
で、この映画もっと色々と考えさせて、最後の方とかは本当にじゃぁこれは一体何を言ってるんだろう?っていう問いかけをして終わります。それはもちろん、この社会、この世の中についての映画だから、答えはないんですよ。どうしたらいいか。で、この主人公は一体どうすればいいかという事を考えます。このひどい状況どうしたらいいか、だから『ドン・キホーテ』なんですよ。
(赤江珠緒)
はー!
ドン・キホーテ
(町山智浩)
『ドン・キホーテ』は無駄だと分かっていながら金持ちに挑む、バカと言われた正義の味方の話なんですよ。
(赤江珠緒)
風車に突っ込んでいく・・。
(町山智浩)
風車に突っ込んでいくんですよ。無駄だと思いながらも戦い始めます、主人公は。という話がこの『プラットフォーム』で、ただね、今言った事よりも、もっと色んな事が出てきて、「これはどういう意味だろう?」っていう事がいっぱいありますんで、その問いかけをですね、是非楽しんで頂きたいと思います!
(赤江珠緒)
はい。日本では今週末ですね、1月29日から全国公開というスペイン映画『プラットフォーム』を今日はご紹介いただきました!町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)
ありしたーっ!
(町山智浩)
どもでしたー!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
④プラットフォームのこの構造は、「世の中」を表している