TOVE/トーベの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『TOVE トーベ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『TOVE トーベ』解説レビューの概要
①ムーミンの原作者のトーベ・ヤンソンという人の伝記映画
②ムーミンのイメージが変わる
③トーベ・ヤンソンはいつも酒を飲みタバコを吸っている
④お子様は見れない内容が多いので注意!!!
⑤ムーミンの殆どの登場人物に○○○○○○○がいる
⑥1番人気のキャラクター○○○○○にも実在のモデルが
⑦スナフキンのモデルは原作者の婚約者アトス・ヴィルタネン
⑧スナフキン(のモデルになった人)には奥さんがいた
⑨ヴィルタネンの離婚後、トーベには女性の好きな人ができる
⑩新しいパートナーもムーミンにキャラクターとして登場
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
ねぇムーミン
(町山智浩)
今日はね、ムーミンについてのお話を、したいんですけども。
(山里亮太)
そうですよね。
(外山惠理)
ムーミンね。「ねえ、ムーミン♪」ってね。ありましたけども。
(町山智浩)
そうです。(笑)あ、今かかってきましたね。
(山里亮太)
これですね!
(外山惠理)
あっ!ほんとだ!
〜音楽〜
(外山惠理)
すぐ出てくるくらいね、この歌おなじみですよね。
(町山智浩)
これは1969年に日本で放送されたアニメの主題歌ですね。
(山里亮太)
はい。
ムーミンの原作者、トーベ・ヤンソンの伝記映画
(町山智浩)
で、僕はその頃なんだ、7歳ぐらいか、小学校低学年でいつも見てましたけど。今回紹介する映画はこのムーミンの原作者の、トーベ・ヤンソンという人のですね、伝記映画なんですよ。はい。『TOVE/トーベ』っていうタイトルなんですが、日本では10月1日、秋に公開される予定です。で、ムーミンって原作ってまぁ、絵本とか漫画とか小説とかいっぱいあるんですが、ものすごい数で書かれてるんですね。
(山里亮太)
あ、そうなんすね!
(町山智浩)
はい。でもアニメしか見てない人も多いと思うんですよ。
(山里亮太)
僕はもう、もろにそれです。アニメだけですね。
(町山智浩)
僕も実はそうなんですよ。
(山里亮太)
ですよね!
映画を見てビックリした
(町山智浩)
原作もちょっとしか読んでなくて、詳しくなかったんで。で、この映画見て結構びっくりしたんですよね。
(山里亮太)
ん?へー!
(町山智浩)
そのムーミンの持ってるその、フィンランドのね、田園地帯みたいな所にムーミン村があって、ムーミン谷があって。みんなほのぼの、のんびり暮らしてる感じっていうのはあるじゃないですか。全然!そういう感じの人じゃないんですね、このトーベ・ヤンソンっていう原作者の人は。
(山里亮太)
えぇっ!それがなんかこの、”これ見るとムーミンの見方が変わってしまうかも”って言われているとこの所以が・・
トーベ・ヤンソンの日常
(町山智浩)
そうなんですよ!僕全然ね、知らなくて、この人自身について。で、まずね、この映画、このトーベ・ヤンソンっていう人はね、とにかくいつもお酒を飲んでるんですよ。
(山里亮太)
えっ!もうそこで驚いちゃった!なんか優しい癒し系の、フワッとした人かな?と思ったら。
(外山惠理)
そうですよね!うんうん。
(町山智浩)
全然違うんですね。常になんか酒飲んでいるんですよ、しかも結構強そうな奴を。であとね、ヘビースモーカーで、ムーミンの絵を描いてる時も必ず左手でタバコ吸ってんですよ。そう。酒とタバコの人なんですね。
(外山惠理)
えー・・。
(山里亮太)
イメージ違う!
(外山惠理)
どっちかっていうとなんか花のサラダとかオーガニックが好きですみたいなアハハハ、うん、イメージ。
(山里亮太)
そうですよね。自然を愛する、優しい人みたいな。
(外山惠理)
ねぇ〜(そんなイメージが)あります。
すごくワイルドな人
(町山智浩)
そんな感じでしょう?僕もそう思ってたんですよ。そしたらすごいワイルドな人なんですよこの人、トーベ・ヤンソンっていう人は。
(山里亮太)
ちょっとギャップがすごいな。
(外山惠理)
すごいですね!
(町山智浩)
すごいギャップで。しかもこれ酒とタバコをやるから子供向けの映画じゃないんですね。お子様は見れないんです、この映画。
(山里亮太)
はえ!?そうなんだ。うわっ!すごっ!
(町山智浩)
セックスの映画なんで。
(山里亮太)
ええっっ!?
お子様は見れないんです、この映画。
(町山智浩)
はい。そういう話なんですよ。
(山里亮太)
ムーミンの作者が!?
(外山惠理)
なんと。
(町山智浩)
でね、ムーミンというのは実は・・このトーベ・ヤンソンの周りにいる人達をモデルにしていて、殆どの登場人物に実在のモデルがいるんですね。
(山里亮太)
それスゴイな・・!
ムーミンの殆どの登場人物に実在のモデルがいる
(町山智浩)
で、この映画でわかるのは、ムーミンパパっていうのは彫刻家だった彼女のお父さんがモデルなんですけど。これね、原作とね、アニメと・・ムーミンパパってキャラがちょっと違うんですよ。
原作のお父さんはね、もうちょっと威張ってるです。家父長としての威厳とかそんな事ばっかり言ってる人で。で、そのくせね、なんか自由になりたくて家族を捨てて時々、家出したりしてる人なんですよ。
(山里亮太)
え〜!いや、アニメでは優しい、本当にお父さん、パパ!っていうかムーミンパパ!っていう感じの・・。
(町山智浩)
そうなんですけど、原作でのムーミンパパってちょっと面倒くさい人なんですよ。
(外山惠理)
へ〜・・パパ・・。
原作と実際のムーミンパパ
(町山智浩)
あと、すごくひねくれてたりして、成功している人を妬んだりするような人でもあるんですよ。
(外山惠理)
へへへへ!ヤダなちょっと!
(山里亮太)
ええっ!?親近感!ムーミンパパ!原作の方・・!
(外山惠理)
ギャハハハハハ!
ちょっと面倒くさいお父さん
(町山智浩)
で、それはこのトーベ・ヤンソンさんのお父さんが彫刻家だったんですけど、あんまりまぁ、お金持ちにはなれなくて。で、そのへんのなんというかね、まぁ面倒くさいお父さんだったみたいなんですよ。
で、トーベ・ヤンソンさんはムーミンとかを描いてたわけですよね。それもね、バカにして。そんなものは芸術じゃねぇ!とか、そういうようなお父さんだったんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜・・。
(町山智浩)
だからその辺の面倒くさい感じがすごくムーミンパパに出てて。原作の方は。
で、ムーミンママはとにかく本当によくできた奥さんで、生活力もあって、頭も良くてっていう、あれは本当のお母さんがそういう人だったらしいんですね。
(外山惠理)
あぁそうなんですか、へぇ〜!
1番人気のキャラクタースナフキンにも実在のモデルが
(町山智浩)
はい。でね、1番ムーミンの物語の中で、原作もアニメも通して1番人気のあるキャラクターって、スナフキンなんですよね。
(外山惠理)
あー!スナフキン!
(町山智浩)
いつも、まぁ旅をしている旅人で。
(外山惠理)
そうそうそう、旅人。
(町山智浩)
そう、たまにしかムーミン谷に帰ってこないんですよ。ね。家を持ってなくて、いつもテントで暮らしてて、すごくなんていうか・・かっこいい、さすらいのヒーローみたいなね、感じの人で。しかも、あんまり喋べらないんですが非常に哲学的な事を言うんですよね。
(山里亮太)
そうですね!はい。
ムーミン、スナフキンの名言
(町山智浩)
例えば、「人生で1番大切なのは、自分のしたい事は何かわかってるかどうかだ。」とかね。そういう、いいセリフをズバッ!ズバッ!と言う人ですよね。で例えば、「僕には故郷とかはないと思っているんだ。でも敢えて言えば、地球かな。」とかね。かっこいいんですよ。すごく。
(山里亮太)
かー!かっこいい!
(町山智浩)
で、この人はね、実はこのトーベ・ヤンソンさんの長年の恋人で婚約者だった人がモデルになっているんですね。
(山里亮太)
へー!
(外山惠理)
そうだったんだ!へ〜!
スナフキンのモデルは婚約者のアトス・ヴィルタネン
(町山智浩)
で、それはアトス・ヴィルタネンという人で、この人は、実際にやっぱり詩人で、作家だった人なんですよ。でしかも、その当時のフィンランドの国会議員です。
(山里亮太)
へぇ〜え!
(町山智浩)
で、その当時奥さんもいた人なんですよ。
(外山惠理)
あらま。。
(山里亮太)
えっ?あぁ、そうなんだ。。
スナフキン(のモデルになった人)には奥さんがいた
(町山智浩)
政治家で奥さんがいたんですけど、そのトーベ・ヤンソンと、まぁ・・あの・・大人の関係だったんですよね。どうしてスキャンダルにならなかったんだろうって思いますよね。(笑)
(山里亮太)
そうですよね。
(町山智浩)
この映画の中では、彼がトーベ・ヤンソンと一晩を過ごしてる時に、朝にその政治家の奥さんから電話かかってきて、”今急ぎだから来てって言って”とか言ってて、その奥さんも納得ずくの関係だった事がわかるんですけど。
(山里亮太)
えーー!!
(町山智浩)
そういう非常に大人の関係なんですよ。すごく。でね、更にこのムーミンっていうのは新聞の連載から知られるようになったんですが、その新聞を発行してた人もこのヴィルタネンという人なんですね。
(山里亮太)
えー!
今だったら大スキャンダル・・?
(町山智浩)
そう。だから今だったら大スキャンダルになってるんじゃないのかなぁ、これ。
(山里亮太)
いや、そうですよねぇ。
(外山惠理)
ほんとだぁ。
(町山智浩)
それはフィンランドっていう国が大人の国なんで、そういう事で騒がないのかもしれないですけど。(笑)で、何回かお互いにプロポーズして、最終的には婚約までするんですね。奥さんと別れて。彼の方が。
(外山惠理)
あ、別れたんですか?はぁ。
(町山智浩)
ヴィルタネンは離婚して、トーベ・ヤンソンと結婚しようとして婚約するんですよ実際に。そう。でもね、その時にね、実はそのトーベ・ヤンソンに別の恋人がいたんで。
(外山惠理)
あー。
(山里亮太)
えっ!
新たな好きな人が
(町山智浩)
好きな人がいたんで、結婚に至らなかったんですね。その好きな人っていうのは、女性なんですよ。
(外山惠理)
へぇ〜〜!
(町山智浩)
それはね、ヴィヴィカ・バンドレルという女性で、この人はムーミンを初めて舞台劇にした演出家なんですよ、舞台演出家。
(外山惠理)
あぁそうなんですか!へぇ〜!
首都ヘルシンキの市長の娘と恋に落ちる
(町山智浩)
しかもね、ヘルシンキの市長の娘。首都の。で、大資産家の娘なんですね、お父さん大金持ちで。で、旦那さんも子供もいたそうです。でもバイセクシャルで、で、トーベ・ヤンソンはそうじゃなかった、女性を知らなかったんですけど、そのヴィヴィカという人にその女性同士のセックスを教えられたという事なんです。
(山里亮太)
はぁ〜そこまで・・描かれてるんだ。
(町山智浩)
だからこれ子供は見れないんですよ!ムーミンを描いた人の話だから見に行こう〜♪って、行くと、そういう話が延々と展開するんですよこれ。
(山里亮太)
それでも、そのパートナーの方も実際にキャラで出てきたりするんですかね?
(町山智浩)
あ、出てるんですよ。
(山里亮太)
ムーミンの中に!?へぇ〜!
新たな恋人にもモデルが
(町山智浩)
いるんですよ。これね、ムーミンの中に、ちっちゃい妖精が出てくるんですね。あの・・トフスランとビフスランっていう妖精が出てきて。で、2人だけで作った、2人だけしか通じない言葉でしゃべり合ってる妖精なんですね。でそれは、ヴィヴィカとトーベ・ヤンソンが、まぁレズビアンというのはその当時のフィンランドでも非常にタブーだったらしくて。
(外山惠理)
あぁそうだったんだ、へぇ〜。
(町山智浩)
そう。それを知られては困るっていう事で、暗号を作って、暗号で喋ってたらしいんですよ。
(山里亮太)
へえ〜!
(町山智浩)
それを元にしたのはそのトフスランとビフスランというキャラクターなんですって。
(外山惠理)
へ〜面白い。
(町山智浩)
そう。ものすごく大人の話なんですよ、ムーミンって。
(山里亮太)
ですね!
ムーミンが掲載されていた新聞は左派系の政治新聞
(町山智浩)
そう。でね、しかもね、ほのぼのとした話でもそうでもなくてムーミンも。というのは、そのムーミンが連載されていた新聞っていうのは、社会民主党の、いわゆる左派系の政治新聞なんですよ。
(山里亮太)
あっ・・そうなんだ・・。
(町山智浩)
そうなんです。で、このスナフキンのモデルになったヴィルタネンという人は、その社会民主党の政治家で、非常にそのなんというか、リベラルで。一種過激な人だったんですね。だから、その辺の政治思想とかも実はムーミンの漫画の中には一種、オブラートに包んだ形で描かれてるそうです。
(山里亮太)
えっ!
(町山智浩)
はい。で、スナフキンは時々そういう事をするんですよ。
(山里亮太)
あ、そうなんですか?
スナフキンの許せない事
(町山智浩)
公園にね、”何とかするべからず”っていう立て札ってよくあるじゃないですか。今の日本の公園ってほら、すごく変で、ボール遊びしちゃいけないっていう公園が結構あったりするんですよね。
(山里亮太)
あ〜、そうなんですよね。
(町山智浩)
ね。だから誰も来ないの、子供達も。遊べないから。そういう公園があって。で、”何とかするべからず”っていうのを見た途端にスナフキンはブチ切れて、「俺は・・僕は本当に自由っていうものを大事にしてて人が何を考えても構わないんだけど、人に”するべからず”と言うやつだけは許せない!」って言って、ものすごく暴れるんですよ、その回だけ。それは、そのヴィルタネンっていう人がそういう人だったからだそうです。ものすごく権力・・政治家なんですけど、ものすごく権力に対して自由を守るために戦う人だったんで、スナフキンはまぁそういう人なんですね。
で、ちなみにスナフキンのボロボロの服っていうのも本当にヴィルタネンっていうそのモデルが被ってた帽子とかが本当にボロボロだったらしいんですよ。(笑)
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
で、それを元にしてスナフキンを作ったという事なんですね。そういう点でね、ムーミンの見方が全然変わっちゃうんですよ、この映画を見ると。
(外山惠理)
変わっちゃいました。
(山里亮太)
いや、変わる!
スナフキンがたまにしか帰って来ない理由
(町山智浩)
ちょっとねぇ、えっ!?っていう感じなんですよね。で、ほら。ムーミンってスナフキンが大好きで大好きでしょうがなくて、いつもスナフキンが帰ってくるのを待ってるじゃないですか。で、たまにしか帰ってこないんですけど、あれはそういう関係だったんですね、2人は。
(山里亮太)
は〜〜〜!
(町山智浩)
ヴィルタネンは奥さんいるから。
(山里亮太)
そうだ。旅に出ていた時は奥さんの所に帰っている時だったんだ。
(外山惠理)
ね〜寂しいな、なんか。
(町山智浩)
という話なんです。で、今度離婚したら、離婚してじゃぁ俺と一緒になろうって言ったら、私もう男の人と恋愛はできない。ってなっちゃうんですね。このトーベ・ヤンソンさんは、ヴィヴィカ・バンドレルと非常に激しい恋をして、そこからはもう男性を男女の関係では愛せなくなるんですね。
(山里亮太)
はー・・すご。
(町山智浩)
これは、全然ムーミンの見方が本当に変わるんですよ。
(山里亮太)
変わりますね。
スヌーピーにも実在のモデルが
(町山智浩)
本当に。ただね結構漫画ってそういう物が多いんですね。チャーリー・ブラウンってあの、スヌーピーの漫画あるじゃないですか。あれも殆ど実話と言われてるんですよ。
(外山惠理)
えー!
(町山智浩)
まぁスヌーピーはいないんですけれど。(笑)チャーリー・ブラウンってチャーリー・・原作者がチャールズ・M・シュルツで、チャールズっていうのが、愛称が”チャーリー”なんですよ。で、お父さんが床屋さんってなってますけど、あれも本当にそうで、チャーリー・ブラウンのお父さんが床屋さんであるように、チャールズ・M・シュルツ、原作者もお父さんは床屋さんなんですよ。で、中にルーシーっていうすごく意地悪な女の子が出てくるじゃないですか。
(外山惠理)
んふふ、ルーシー。はい。
(町山智浩)
あれ奥さんなんですよ。
(山里亮太)
えっ!そのメッセージの出し方!(笑)
(外山惠理)
えぇっ!かわいそう!(笑)それ本人知ってたのかな?アッハッハ!(笑)
(町山智浩)
離婚しましたね。
(外山惠理)
あぁ、そうなんですか。
チャーリーとルーシー
(山里亮太)
気づいたのかな。これ私の事言ってるの?あんたって。
(外山惠理)
こんな事言わないわ!なんつって喧嘩しちゃったり・・へ〜!
(町山智浩)
だからあの辺はものすごく生々しいね、本当の事を書いてるらしいですよ。チャーリー・ブラウンは。
(外山惠理)
え〜なんか、知った方がいいような、知らないほうが・・ウフフフフフ。(笑)
(山里亮太)
でもスヌーピーもほら、色んな刺さる言葉ってね、一杯出てくる事でおなじみだから。
漫画家本人の感情が漫画に出てくる
(町山智浩)
あのね、結局離婚して、違う奥さんと一緒になったんですね、チャールズ・M・シュルツって。でその時に、連載漫画だったんで毎日連載してたんですね。だからそれが出てきちゃうんですよ。で、スヌーピーも恋をしてウキウキになったりするんですよ。
(山里亮太)
本人の感情が乗っちゃうんだ!
(外山惠理)
ねー!おもしろ〜い。
(町山智浩)
だから漫画って結構そういうとこがあって。僕も漫画家の人何人か知り合いですけど、あの、大抵男の人の漫画家の人は書く女の子は、付き合った事がある人、ですよね。
(山里亮太)
へ〜!
大抵の男性漫画家の漫画に登場する女性は・・
(町山智浩)
そう。それは、それ以外の人を知らないから。
(山里亮太)
あっ、なるほどなるほど。
(町山智浩)
動かせないんですよ。付き合った事のある人以外は。
(山里亮太)
じゃぁ、そういう目で見たら結構・・
トーベはヴィヴィカにのめり込んで行くが・・
(町山智浩)
そう。みんな何らかの事実が、こう背景にあるみたいですよ漫画とか、小説とかもみんなそうですけどね。はい。でね、そのヴィヴィカっていう人はただね、ヴィヴィカっていう人にトーベ・ヤンソンはすごく、なんて言うんですかね、女性同士の愛を教えられて、もうのめり込んで夢中になってくんですよ。
ところがこのヴィヴィカっていう人はね、なんていうか、誰でもいい人だったんですよ。(笑)
(外山惠理)
え?そうだったんだ。。あらま。じゃぁちょっと悲しい思いをしちゃったんですか?
(町山智浩)
するんですよ、それで。で、その辺で非常につらい思いをするんですが、アニメシリーズ見た人だったらわかると思うんですけど、途中から”おしゃまさん”というキャラクターが出てきたのを覚えてます?
(山里亮太)
おしゃまさん・・?
おしゃまさん
(町山智浩)
最初の方には出てないんですよ。途中から出てくるんですよ、おしゃまさんって。シマシマの・・白地のセーターに赤い縞の入ってる服を着た女性で、冬の間だけムーミン谷に来る人なんですよ。覚えてませんか?
(山里亮太)
いやわかんな・・いたっけなぁ?
(町山智浩)
あのね、最初の方のアニメには出ていないの。そう。というのは、連載ずっとしてたんですね、このトーベ・ヤンソンという人がムーミンシリーズの。で、かなり後半で出てくるんですよ、連載の中でも。だから日本でアニメ化された最初のシーズンの頃とか、その次のシーズンのやつには出てないんです、おしゃまさんって。
(山里亮太)
なんか見た覚えがないんだよなぁ、おしゃまさん。
(外山惠理)
そうですねー。
途中から登場するおしゃまさん
(町山智浩)
これ、途中から出てくるのは、このトーベ・ヤンソンさんがヴィヴィカさんに失恋して、苦しんでるとこで会った人がモデルになってるからなんですよ。
(外山惠理)
あっ!へー!実際にいたんだ!
(町山智浩)
実在するんですよこの人。で、この人は、”おしゃまさん”ってね、日本語にしちゃってるんだけれども、元々のフィンランド版だと、トゥーティッキっていう名前になっているんですね、この人は。あぁこのキャラクターはね。これは実在のトゥーリッキっていう人がモデルなんですよ。
(外山惠理)
えー!わかりやすくなっちゃいましたね、今度はね。
(町山智浩)
ものすごくわかりやすくしているんですよ。このトゥーリッキ・ピエティラというね、グラフィックデザイナーで、大学教授の女性がいて。で、傷付いたトーベ・ヤンソンと出会って、2人恋に落ちて、あとは一緒に暮らして、最後は亡くなるまでずっと最後まで一緒にいた人なんですね。
(外山惠理)
へ〜。
トゥーリッキは最後までトーベと共に過ごした
(町山智浩)
でね、このトゥーリッキという人は、その”おしゃまさん”とを覚えている人はわかると思うんですけど、色んなものを作るのが得意な人なんですよ。何でも作っちゃうんですけど、それはトゥーリッキっていう人が実際に工芸デザインみたいな事をする人で、本当に作る人だったからそのまんまにしたと。いう事ですね。で顔とかもね、ちょっと似てるんですよ。かなりリアルで、あんまりひねらないでそのまんまモデルを描いたのはもう完全に公認のパートナーになったからなんですね。
(外山惠理)
あ、そうなんですか!
(町山智浩)
それまでの2人は一応秘密でしたからね。(笑)世間的には。スナフキンと、その次のヴィヴィカさんは一応世間的には秘密だったけども、このトゥーリッキさんはみんなが知ってるトーベ・ヤンソンのパートナーっていう事になったんで、かなり露骨に出してる感じなんですよね。
(外山惠理)
じゃ最後は幸せだったんですね?
トーベ・ヤンソンはいつも踊っている
(町山智浩)
幸せだったみたいです、最後。ただ、このムーミンって、アニメ見てるとムーミンてのんびりしたキャラクターじゃないですか。でもね、トーベ・ヤンソンさんっていう人は相当・・全然違うところがあって、このポスターの中で、トーベ・ヤンソンが踊ってるポスターで・・この映画のポスター『TOVE トーベ』っていう映画ね。この人ね、いつも踊ってるんですよ。
映画のポスターはトーベ・ヤンソンさんが踊っているものなんですけども。
(外山惠理)
へ〜、本当だ、踊っててね、ムーミンが影になってる。
(町山智浩)
そうそうそうそう。ものすごい情熱的な人で、で、この映画の中でもいつも踊ってて、それもジャズとか、マンボとか、タンゴで踊るんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
で、今かかってる曲がですね、この映画の中で彼女が好きでレコードでいつもかけてる曲なんですね。トーベ・ヤンソンが実際に好きだったタンゴなんですけど。
〜音楽〜
(町山智浩)
これね、カルロス・ガルデルっていう人のアルゼンチンタンゴでですね、『Por una cabeza』がかかってると思うんですけども、これがもう、彼女を表現する音楽としてこの映画の中で使われていて、この、なんというかタンゴってものすごく情熱が溢れて、止まらなくなるみたいな。音楽ですけど、それがね、トーベ・ヤンソンという人がね、どういう人かがよく分かる音楽として使われてますね。だから常に恋をして。その中で燃え上がって、ってうい人なんで、そう考えるとムーミンって全然違うなって言う。
(山里亮太)
ちがう!
(外山惠理)
ほんと。イメージが全く変わっちゃいました。
(町山智浩)
そう。だからムーミンとスナフキンが2人で並んでいる所には、かつてものすごく燃え上がった恋人同士が、その後もずっとこのヴィルタネンという人とは生涯、友達だったらしいんですよ。
(山里亮太)
へ〜!
スナフキンとムーミンは生涯の友達に
(町山智浩)
今は友情に変わっているというね、感じなんですね、ムーミンとスナフキンって言うのは。だからね、ちょっとね、全然ムーミンの見方が変わる映画が、この『TOVEトーベ』という映画でした。
(外山惠理)
『TOVEトーベ』は10月1日ですね、新宿武蔵野館ほか全国の公開という事で。え〜なんか興味深かった、ありがとうございます町山さん!
(町山智浩)
はい、どうもでした!
(山里亮太)
ありしたーっ!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑤ムーミンの殆どの登場人物に実在のモデルがいる
⑥1番人気のキャラクタースナフキンにも実在のモデルが