由宇子の天秤の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『由宇子の天秤』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『由宇子の天秤』解説レビューの概要
①町山さん的2021年映画のベスト!(2021年9月時点)
②主演の瀧内公美さんはこの映画でスターになるだろう
③由宇子という主人公は映画の最初から最後まで殆どずっと写っている、堂々たる主役
④主人公の由宇子は制作会社のディレクター
⑤田舎で起きた女子高生と教師の自殺事件を追う
⑥とにかくいい番組を作りたい由宇子が、○○○。
⑦映画タイトルの天秤は、彼女自身の中にあるモラルや人生が色々載っている天秤、これが絶えず揺れ動く形。
⑧ドキュメンタリーを撮っている人が主人公だが、実際はこの映画は○○○
⑨ドキュメンタリーとか報道という事の正義はどこにあるのか
⑩この映画は音楽を全然使わない、理由は○○○
⑪『この世界の片隅に』との繋がり
⑫主人公と全く同じ気持ちで鑑賞できる撮り方になっている
⑬悪者を作りあげてしまうワイドショーや報道の姿勢を問う映画
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『由宇子の天秤』町山さんの評価は2021年ベスト!
(町山智浩)
今日紹介する映画はね、今の所ね今年見た映画の中でベスト!です。
(山里亮太)
えー気になる〜!
![](https://eiga-pop.com/files/image/25819/image_25819_i645d5f1ae55ae.jpg)
春本雄二郎監督の長編2作目映画
(町山智浩)
ベストワン・・と言っていいと思います。まだ結構ありますけどね、今年がね、残ってますけど。日本の映画なんですが、『由宇子の天秤』というタイトルの映画ですね。これ監督さんはですね春本雄二郎さんという人で、この映画が長編2作目というまぁ、新人ですよね。で、主演の瀧内公美さんという人もですね、『火口のふたり』という映画で注目されたりしてるんですが、そんなに知られてない人なんですよ、テレビとかそんなに出てないって言う。。瀧内公美さんはね『凪のお暇』とか・・
(宇賀神メグ)
あぁ、TBSドラマの。。
瀧内公美さんはこの映画でスターになるだろう
(町山智浩)
はいはい。あとはジェーン・スーさん原作の『私達がプロポーズされないのには、101の理由があってだな』て言う。(笑)めちゃくちゃ長いタイトルのドラマとかにも出てた方らしいんですけども。この映画でスターになるだろうなと思いましたね。
(山里亮太)
あれで拝見しました、あの『日本で一番悪い奴ら』の!道警の、あのポスターの婦警さんですよね?
(町山智浩)
あぁ・・僕全然覚えてないですね、ちょっとすいませんね、はい。
(山里亮太)
そうですか、それで綾野さんが調子いい時だけ、近付いて来て。。綾野さんの調子の悪い時は離れていくあの・・!
(町山智浩)
あぁ!いましたね!はいはいはい!
(山里亮太)
はい!たぶんあの婦警さんじゃないですか、これ。
(町山智浩)
あの、軽い役でしたよね、あの役ではね。
(山里亮太)
そうですね、本当に・・ちょっとした役です。
由宇子という主人公は映画の最初から最後まで殆どずっと写っている、堂々たる主役
(町山智浩)
そうですよね。今回はね、この由宇子という役なんですが、『由宇子の天秤』の。映画の最初から最後まで殆どずっと映っているっていう、すごい・・堂々の出演ですね。あの、普通の映画ってこう・・色んなシーンに行って、その人がいないシーンっていうのがあるじゃないですか。
(宇賀神メグ)
はい。
(町山智浩)
殆どないんですよこの映画。
(宇賀神メグ)
へぇ〜!
主人公の由宇子は制作会社のディレクター
(町山智浩)
最初から最後までこの由宇子さんが、画面に殆どいます。だからもう、こんな主演はないなっていうぐらいすごい主演なんですけども。で、この映画主人公の由宇子さんっていう人が・・瀧内公美さん演じる由宇子さんっていう人がテレビの外注しているね、制作会社のディレクターなんですね。で報道部の依頼を受けて事件を追っているんですけども、3年前に起こった田舎の方で、教師と女子校生が関係を持ったと噂されて、その女子高生がいじめられてるうちに自殺してしまって、それで関係を持ったとされる教師も自殺をしたという事件のその後を追ってるんですね。
(宇賀神メグ)
はい。
田舎で起きた女子高生と教師の自殺事件を追う
(町山智浩)
それで、調べるうちにその生徒と、その先生の間に本当に関係があったのかっていう事も段々、疑わしくなってくんですよ。で更にその遺族の人達に話を聞いてくと、非常にスキャンダラスに報道されてしまった為に、自殺した女子高生の両親も先生のですね、母親とかその兄弟とかもどんどん巻き込まれて、その町にいられなくなってると。いう事がわかっていくんですね。で、そういったその報道被害みたいなものをテーマに、その由宇子さんは番組を作ろうとするんですけども、それはテレビの・・まぁテレビはお偉いさんがいる訳ですね、テレビ局というのはね。に、自分が撮った素材を見せると、「こんな物使えねぇよ!」とか言われるんですよ。
(山里亮太)
はぁ〜なるほど。
「うちの娘は報道に殺されたんです。」
(町山智浩)
というのは、その遺族の父親がね、「うちの娘は報道に殺されたんです。」って言うシーンがあるんですね。「報道に殺されたとかこんなん使えねぇだろう、放送できねぇよ!」とか言われて、「こんなのカットカット!」っていう感じなんですよ。で、この辺がすごくリアルなんですけども。それでもこの由宇子さんは、真実を撮ろうとして遺族に食らい付き続けるんですね。ただ、彼女自身がその”ただいい人”という事ではなくて、とにかくいい番組を作りたいっていう人なんで、その向こうの弁護士から、この建物の外見とかね、特定されると遺族に被害が及ぶんで撮らないで下さいって言われてるのに撮ったりしてる。。ような所もあるんですよ。
(宇賀神メグ)
あ〜・・手段を選ばない感じですね。
とにかくいい番組を作りたい
(町山智浩)
そうなんです。その辺はね、ものすごく・・なんと言うかチャレンジングな人で、喋り方とかも「うるっせんだよぉ!」みたいな感じでもうバリバリやってくんですね、男勝りで。で、ただ彼女は家に帰ると、お母さんはもういなくて、60がらみの光石研さん演じる父親と2人暮らしで、でお父さんは町の学習塾の経営者をしています。で、由宇子さん自身もその塾で先生を時々やったりしてるんですけども、その学習塾に通う女子校生が、ある日、妊娠してる事がわかるんです。で、この由宇子さん自身も彼女が追っている事件と同じような物の中に巻き込まれていくっていう話なんですね。
(宇賀神メグ)
あ〜・・!
映画タイトル『由宇子の天秤』の意味
(町山智浩)
はい。で、この映画ですね、タイトルが『由宇子の天秤』となってるんですけども。この天秤というのは彼女自身の中にあるモラルとか、しがらみとか、家族とか、自分自身の人生や他の人の人生やそういったものが色々載ってる天秤なんですね。で、これがずっと映画を見てる間、絶えず揺れ動く形なんですよ。で、大体ね、この映画見てると5分ぐらい毎に、全く新しい事実が出てきてですね、それまで観客とか由宇子さんが信じてたストーリーが次々と覆されてくんです。
(山里亮太)
・・すごい・・!
(町山智浩)
この天秤が揺れ動くんですよ、絶えず。だからまず最初、彼女は最初の事件を調べてる時に、これは無実の先生と生徒が勝手に噂を立てられて、その学校側によって糾弾されて、マスコミによって叩かれていじめられて死んだんだって言う悲劇として追ってるんですが、それもだんだん怪しくなってくるんです。
(山里亮太)
ほぉ〜。。
何を選んだらいいか分からない状況に追い詰められていく
(町山智浩)
で、それ自体を追求してく彼女自身も殆ど同じようなケースに巻き込まれていくんですね。でその時に、何を守らなければいけないのか。その関係者の生活なのか、自分自身のドキュメンタリー作家としての作品を作るという事なのか、正義なのか、そういった事が次々と出てきて、何を選んだらいいか分からない状況に追い詰められていくという話なんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
これはね、話としては非常に地味なんですけれども、ものすごく面白いんですよ、見てて。で、それは撮り方なんですね。これね、152分というすごい長尺なんですね。
(宇賀神メグ)
わ〜大作なんですね。
152分というすごい長尺映画
(山里亮太)
しっかりと、2時間半。
(町山智浩)
2時間半もあるんですけども、こういった非常に重い素材であるにも関わらず、ものすごいスピード感なんですよ。
(山里亮太)
えー!
(町山智浩)
というのはね、殆どが、カメラの・・ですね、手持ちカメラで撮ってて、主人公の由宇子さんをずっと追っかけ続けるんですね。で由宇子さんは常に何かをしているか何か移動してるんですよ。何かをしてるから、画面が全く止まらないんですね、殆ど。で、どんどんどんどん展開していって、話が先にどんどん進んでいくんで、まっぁアクション映画に非常に近いんですよ、見てて。
(宇賀神メグ)
へぇ〜!
実際はこの映画は彼女のドキュメンタリー
(町山智浩)
で、もう次々とどんでん返しがあるんで、まぁジェットコースターに乗ってるような感覚を観客が味わっていくと言うですね。「えぇっ!?」みたいな。「えっそうなの!?」みたいな。もう、驚きの連続なんですね。それをまたね、これだけ地味でも撮り方。話がかなり重い物でも撮り方で完全にエンターテイメントにする事はできるんだって事がわかるんですね。それともう1つは、彼女自身がドキュメンタリーを撮っている人なんですけども、実際はこの映画は彼女のドキュメンタリーなんですよ。
(宇賀神メグ)
はは、面白いですね!
(町山智浩)
はい。だから入れ子構造になってるんですよね。ドキュメンタリーの中にドキュメンタリーがあって私達はそれを見てるっていう形になってて、でいつも人を追っかけてる由宇子さんが、この映画のカメラに追われてるという形になるんですね。その辺もね、すごくよく出来てて、テーマはやっぱりその、ドキュメンタリーとか報道という事の正義はどこにあるのかっていう事と、1つの事件があっても見方によって全く違う物になるんだという事なんですね。
ドキュメンタリーとか報道という事の正義はどこにあるのか
(町山智浩)で、遺族に焦点を当てれば遺族の被害の話だし、報道という問題に変えると報道はどこまでやっていいのかって話だしって言うものがあって、そのカメラの置き場所、撮り方によってこれだけ話が違うんだって事が、非常にこの映画そのものの構造で分かるようになってるんですよ。
で、この映画はね、非常に海外で高く評価されてるんですけども、それはね、これはベルギーの映画監督でダルデンヌ兄弟っていう人がいるんですね。日本でも『少年と自転車』とか『ロゼッタ』とかですね、色々とヒット作も・・ヒット作って言うかまぁ評価された映画があるんですけども、この人達はいつもそのベルギーの貧困層の生活を撮り続けてる人なんですけども、ダルデンヌ兄弟って言うのは。そしたら非常に地味な映画になっちゃうじゃないですか。でも、すごく面白いんですよ。
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(山里亮太)
へぇ〜〜見せ方だ・・!
見せ方、例えば『ロゼッタ』という映画
(町山智浩)
見せ方なんですよ。常にカメラが主人公を追っかけ続けてて、例えばこういう話があるんですね。
『ロゼッタ』っていう映画があって、それは非常に貧しい母親、母子家庭で暮らしてるその18歳ぐらいの女の子が仕事を探しに行くんだけど仕事が全然見つからないっていうだけの話なんですよ。
ところがその、仕事をもらうために駆けずり回って、そのお母さんがアル中でお母さんをぶっ叩いて部屋に入れて、お母さんがね、また酒目当てで売春とかしてるから、そこ行ってバンバンぶったりしてですね、もう苦労して回るのを、ずーっとそのカメラが追っかけ続けるって言うね、まるでその場にいるみたいな感覚で見せるのがダルデンヌ兄弟なんですね。
(宇賀神メグ)
より臨場感が出るんですかね。
(町山智浩)
臨場感があるのと、このね、ロゼッタっていうそのヒロインが「撮らないでよ!」って感じなんですよ。
(宇賀神メグ)
へぇ〜!
この映画は音楽を全然使わない
(町山智浩)で、この由宇子さんも、すごくカメラから逃げてる感じがするんですよ。こう、嫌がってる被写体に、ドキュメンタリーとかテレビってっのは追っかけてくでしょう?その感覚を見てる人は味わうんですよ。嫌がってる被写体を追っかけてる感じなんですよ。それともう1つね、音楽を全っ然使わないんですよ。
(山里亮太)
へーえ!
(町山智浩)
これね、ダルデンヌ兄弟の映画は音楽はもう一切出てこないんですよ。で、この『由宇子の天秤』もね、音楽はなかったと思うんですよ。で、音楽って・・映画における音楽って、まぁテレビとかでもすごく音楽を使いますけども、あれって、何だと思います?
(山里亮太)
なんかこう、演出でね、誘導していくというか。
(宇賀神メグ)
そうですね。盛り上げるとか。
報道は物語を作り上げている
(町山智浩)
まさにその通りなんですよ。つまりこの映画は、『由宇子の天秤』っていうのは、テレビの報道っていうものは物語を作り上げてるんだと。ね。撮り方とか、音楽とか、テロップの字の書き方とかで・・。
(山里亮太)
いやそうですね。
(町山智浩)
この話は、この事件はこういう風に見て、この人は悪役なんです!っていう風に、作っちゃう訳じゃないですか。
(山里亮太)
はいはい。
(町山智浩)
ね。それは、やらないっていう事なんですよ、この映画は。
(山里亮太)
はー!なるほど。
プロデューサーは『この世界の片隅に』の監督の片渕須直
(町山智浩)
ねっ。音楽で、ジャジャジャジャーン!みたいなのを入れてくと、ここは邪悪なシーンなんだ、とかね、楽しい音楽入れるとここは楽しいシーンなんだとか・・そんな誘導はしないよっていう事なんですよ。だから、一般のテレビ番組であるとか映画に対するアンチテーゼともなってるんですね。そういう点でね、非常にこうなんて言うか、色んな事を訴えかけていく映画ではあるんですけども、これね面白い事にね、プロデューサーがね『この世界の片隅に』の監督の片渕須直さんなんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
片渕須直さんアニメーションの監督ですよね? で、『この世界の片隅に』というのは第二次世界大戦の時の、軍港だった呉に嫁入りした若妻の話なんですよ、ご覧になりました?
![映画「」のポスター](https://eiga-pop.com/files/poster/186/poster_186_w320_650446a3e60f4.webp)
(山里亮太)
見ました見ました!
(宇賀神メグ)
はい!
『この世界の片隅に』との繋がり
(町山智浩)
すずさんというね、若い、まだ10代か。のね、お嫁さんの話なんですけど、それとこの映画はどう繋がりがあるのと思うじゃないですか。『由宇子の天秤』って。・・撮り方なんですよ。あの『この世界の片隅に』という映画も、すずさんという若妻にカメラがずっと密着してて、殆ど全部のシーンで彼女が映っているんですね。
(宇賀神メグ)
はい・・!確かに・・!
(町山智浩)
で、彼女が出てこないシーンって言うのは殆どないんですよ。ちょこっとあるんですけど。この映画もそうなんですね、『由宇子の天秤』も。だからものすごく構造が似てるんですね。で、そのやり方をやるともう1つは観客はその由宇子さんないし、すずさんにくっついてるから、彼女達が知らない事は知らないんですよ、観客は。
(宇賀神メグ)
あ〜、そっか!
(山里亮太)
うん、そうだ。
主人公と全く同じ気持ちで鑑賞できる
(町山智浩)
そう。だから、次々と彼女が驚く衝撃の事実に出会っていくのを全く同じ衝撃を受ける事ができるんですよ観客は。なんか結構、映画とかってそうなんですけども、こっちで何かの事件があると、その裏では別の所でこの人はこういう事をしてましたって見せちゃうじゃないですか。
(宇賀神メグ)
確かに知った状態で見ますよね。
(町山智浩)
そうそう。それをやってないんですよ。由宇子さんが次々と彼女自身の天秤を揺るがされていくのを、観客は全く同じように体験していくと。言う所で、非常にジェットコースター感覚の強い映画になってますね。
(山里亮太)
なるほどな、そっか。一緒に驚けるんだ。
(町山智浩)
一緒に驚けるんですよ。だから今回ね、僕はいつも、こうなってああなってっていう話をするんですけど、この映画に関してはその説明ができないんですよ。(笑)
(宇賀神メグ)
そうですね、確かに。
説明が難しい映画
(町山智浩)
それやったらもう、台無しにしちゃうんですよこの映画を。
(山里亮太)
なるほどな〜。
(町山智浩)
すっごい難しくて、これね、本当にみんな苦労してると思いますよ。
(山里亮太)
伝える事に関して?
(町山智浩)
そう、紹介する事がね、非常に難しくて。言ったら面白くなくなっちゃうんですよね。
(山里亮太)
でも見たら152分間だけども、ずっとこうドキドキしながら、揺さぶられ続けながら・・。
是枝裕和監督が撮った『三度目の殺人』という映画について
(町山智浩)
そうです。どこに本当があるのかっていう事がもう分からなくなってくるんですよ、どんどん。で、これね是枝裕和監督が撮った『三度目の殺人』という映画もありまして。
![映画「」のポスター](https://eiga-pop.com/files/poster/600/poster_600_w320_6504ac8e653dc.webp)
それが福山雅治さんが演じる弁護士が、ある事件が冤罪であるっていう事でもって裁判を担当するんですが、次々と新しい事実が出てきて、どれが事実だかもうどんどんわからなくなるんですが、その裁判における弁護士っていうのは報道と全く同じで1つの物語を作らなきゃならないんですよ弁護士は。
この人は悪くなくて、こうなってこうなってこうなったから、こういう事件なんですよという物語を弁護士は提出しなきゃならないんですよ。でもそれは、1つの事件に対する1つの見方でしかないんですよね実際は。それと同じ事なんですね、この映画も。だから、すごく今、色んな報道があって特に日本はワイドショーがすごいじゃないですか。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
ね。で、1つの物語を作って悪役を作っていくじゃないですか。でも、見てる人達はその人達を悪役にした物語なんて、もう見た後で忘れちゃうんですよね、2年経ったら。1年経ったら忘れますよね。
(山里亮太)
なるほどな〜そっか。
ワイドショーが悪者を作る
(町山智浩)
ねぇ。でも何年経っても、何十年経ってもそれで悪役にされた人達はずーっと悪役のままの人生を背負わなきゃならないんです。その罪というのはものすごく大きいですよね。
(宇賀神メグ)
重いですね。
(町山智浩)
はい。重いですね。それで、今、例えばほら、小室さんとかもすごい・・なんかもう、はっきり言って悪役にされてるじゃないですか、ワイドショーで。
(山里亮太)
まぁ・・そうですね。
(町山智浩)
ああいうものに乗っちゃいけないんですよ、やっぱり。
(宇賀神メグ)
一マスコミの人間として、考えさせられるというか。。はい。
マスコミ、報道について考えさせられる
(町山智浩)
でも、それを他の局がやるからうちもやんなきゃっていう事で、あっちはもっどひどくやっているぞ、じゃぁこっちはもっとやるんだっていう事でエスカレートしていくんですけども、それがいかにひどいかって言うのは、それを作ってる人がその目に遭わなきゃわからない訳ですよ。で、この由宇子さんはでも、そういう人じゃなくて本当の真実を知ろうとする非常に誠実な人だからこそ、どんどん逆に追い詰められてくんですよ。
(山里亮太)
なるほどな〜!
(町山智浩)
これがね、要するに、何でもいいんだよこんなん、あいつを悪い奴にすりゃいいんだよみたいなテレビマンだったら、こんなに彼女は追い詰められないんですよ。ここにいる人達みんなの為に、弱い人の為に頑張ろうと思うからこそ追い詰められていくという話なんですね。結構厳しいね、すごい厳しい話ですけど、非常に今の日本で作られるべき映画だし、見るべき映画だし、で、面白いんですよ。
(山里亮太)
しかも、面白いって言うのがあるから、ちゃんと。
(町山智浩)
そう。でね、特にずっとカメラ手持ちで撮ってるって言いましたけど、その1番ラストのショットっていうのが、すごい長回しをやるんですけど、その長回しは本当にまさに息を飲むとしか言いようがない、戦慄すべき長回しなので、そこに至るまでの2時間半をですね、もう本当に緊張の中でね、楽しんでもらえるといいなと思いましたね。
(山里亮太)
見たい!これ!
(宇賀神メグ)
見た〜い。
(町山智浩)
これはすごい、ですね。9月17日から渋谷ユーロスペース他で公開ですね、『由宇子の天秤』です。
(宇賀神メグ)
『由宇子の天秤』。
(山里亮太)
これ朝の情報番組とかで紹介するのはなかなか難しそうな。。(笑)
(町山智浩)
朝の情報番組でやるべき、ワイドショーとかでやるべきなんですよ!(笑)ワイドショーの人達、みんな見てね、感想を言わなきゃダメだね、はい。
(宇賀神メグ)
いやほんとに、伝える側としてこれは見なくちゃいけないなと思いました。
(町山智浩)
そう。そうです。そう思います。あぁそうだ、ワイドショーやってるんだもんね!
(宇賀神メグ)
そうですね、見ましょうこれ。
(町山智浩)
『スッキリ』の人も見た方がいいと思いますよ!(笑)
(山里亮太)
ちょっと友人の天の声に伝えておきます。
(宇賀神メグ)
町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)
どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑥とにかくいい番組を作りたい由宇子が、追っている事件と同じような状況に追い込まれていく
⑧ドキュメンタリーを撮っている人が主人公だが、実際はこの映画は彼女のドキュメンタリー
⑩この映画は音楽を全然使わない、理由は、映画における音楽は意図的に盛り上げたり誘導する効果があり、報道も物語を作り上げてしまう、それはやらないという事