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東京自転車節の町山智浩さんの解説レビュー

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2021年09月16日更新
ここでそのUberEatsっていう物が一体どれだけ、過酷な仕事なのかが彼の体験から描かれるんですよ。(中略)まぁ、すごい映画でした。で、これラストショットに、非常に僕は身震いするような感動を覚えましたんで、是非そこまで見て頂きたいなと思います。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『東京自転車節』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『東京自転車節』解説レビューの概要

①監督が1人でUberEatsで働くスタガを描く自撮りドキュメンタリー
②UberEatsっていう物が一体どれだけ、過酷な仕事か
③映画をエンターテイメントにする人柄は○○○○○○に近い
④全て自己負担で保証なし。非正規雇用の現実。
⑤ついに彼はホームレスになってしまう
⑥経済的にも厳しく人との接点もない

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

監督が1人でUberEatsで働くスタガを描く自撮りドキュメンタリー

(町山智浩)
今日紹介したい映画はですね、もう既に公開されてから大分経ってた、7月公開だったんですけども、ちょっと僕見損なっていて、是非皆さんに見てほしい映画があるのでご紹介します。青柳拓監督という監督の、『東京自転車節』という映画なんですね。これね、監督が1人でUberEatsで働いて、それをですね、自分でスマホとGoProってありますよね、小っちゃいカメラ。あれで撮った自主制作?自撮り映画なんですよ。自撮りドキュメンタリーと言うんですかね?なんですけども、これ、2020年でコロナで最初の緊急事態宣言が起こった時にですね、彼は自分の生まれ故郷の甲府で働いていたんですけど、山梨県の。そこで運転代行業をやってたんですね、監督を目指しながら。で、全て、まぁ閉まっちゃったんで、甲府で仕事がなくなったんで、自転車こいで東京まで来てですね、何かとにかく仕事がないと困るっていう事でUberEatsで働き始めるんですよ。で彼ね映画学校に行った時の学費の550万円がねまた借金になっていて、大変なんですね、返さなくちゃなんなくて。

(赤江珠緒)
うんうん。

UberEatsっていう物が一体どれだけ過酷な仕事か

(町山智浩)
で、ここでそのUberEatsっていう物が一体どれだけ、過酷な仕事なのかが彼の体験から描かれるんですよ。ただ、そうすると非常に厳しい社会派ドキュメンタリーのように思うかもしれませんけど、コメディですこれ。

(赤江珠緒)
コメディ?

(町山智浩)
コメディです!はい。これね、監督自身が非常に明るくて。なんかね、ホンワカさせられる所があるキャラクターなんですよ。だから”私は大変です!”みたいな感じじゃないんですよ。いやーもう本当みんなと仲良く仕事ができるといいと思いま〜す、とか言う人なんですよ。(笑)

(山里亮太)
憎めない。(笑)

(町山智浩)
そういう人なんですよ。明るくて柔らかい所がすごくこの映画をエンターテイメントにしてるんですよね。優しい人なんですよ。だからね、チャップリンの映画に非常に近いですね。

(山里亮太)
ふーん!

映画をエンターテイメントにする人柄はチャップリンに近い

(町山智浩)
チャップリンの映画というのは非常にまぁ、殆どホームレスに近いチャップリンが一生懸命働く話が殆どなんですね。『モダン・タイムス』であったり、ね。『キッド』であったり、『街の灯』であったりね。みんな、殆ど仕事のない貧乏なチャップリンが一生懸命働く話が多いんですよ、チャップリンの映画というのは。

映画「モダン・タイムス」の画像引用:IMDB.com

それに非常に近いです。で、まずUberEatsっていうのは個人事業主として契約するんですね。これは前に紹介したケン・ローチ監督が撮った、宅配便をやる家族の話で、『家族を想うとき』という映画に非常によく似てますね。だから自転車は全部自己負担。で、運ぶバッグも5000円もするんですけど自己負担。

(赤江珠緒)
バッグも!?

自己負担だらけのウーバーイーツ

(町山智浩)
え?バッグも自己負担なんですよ。で、自転車やスマホが故障しても自己負担で、事故や盗難にあっても自己負担なんです。

(赤江珠緒)
そこがね本当ね・・そんな、保険とかもね、効かないとなるとキツイですよね。

ウーバーイーツの配達料の平均額

(町山智浩)
そうなんです。何も効かないんですよ。労災も何もないんです。で、1回の配達料が大体平均550円って言われてるんですね。じゃぁそれをね、1時間に2本の配達があれば、10時間で結構稼げるじゃないか、8時間でも結構稼げるじゃないかと思うんですけど。1時間に1本ぐらいしかないんですよ、配達が。それはねやっぱり、仕事を失った人が多くてUberEatsにみんな仕事を求めて来ちゃってるんで、少ない注文に対して多くの配達員がハイエナみたいに奪いあっている状態なんですね。で、その1日10時間ぐらい頑張って粘っても、平均で6000円ちょっと・・6000円ぐらい稼げるか稼げないかなんですよ。

(赤江珠緒)
うーん。。

(町山智浩)
これだと、土日も休みなく毎日働いても月収18万円に届くか届かないかですよね?

(赤江珠緒)
うわぁ。。

(町山智浩)
これね、時給が東京のその当時の最低賃金が1013円なんですけど完全に時給を切っちゃってるんですよ。最低賃金以下で働かせるのはもちろん、犯罪なんですが、この場合には個人事業主だから最低賃金以下で働いてる状態なんですよ。

(赤江珠緒)
いやぁ〜・・。これは。。

非正規雇用の現実

(町山智浩)
これが非正規雇用の現実なんですね。

(赤江珠緒)
本当ですねぇ。。

(町山智浩)
で、しょうがないから東京で住む場所がないんでね、友達の家を転々としたりで、ネットカフェに泊まったりもするんですけど、まぁ背中を伸ばせないんで疲れてくるんですね。で、1日仕事を求めて10時間も12時間も、ひどい時は14時間も働いたりして限界に挑戦していくんですけども、でもベッドで寝たい誘惑に負けて、アパホテルに泊まるんですよ。するとね、1泊2500円で安いと思うんですけど、1日6000円稼げるか稼げないかなんで、2500円1泊で使ったらもう赤字になっちゃう訳ですよ。

(赤江珠緒)
そらそうですねぇ。

(町山智浩)
だってお金貯める為にやってるはずだから。で、とうとう彼は道端に段ボールを敷いて寝て、ホームレスになっちゃうんですけどね。

(赤江珠緒)
うーん・・。

ホームレスになってしまう

(町山智浩)
まぁそういうね、大変な、殆どの人に知られてないホームレスになってしまうまでのね、話が描かれていて。で、しかもこのギリギリでやってると、それこそ洗濯したり服買ったりなんかあり得ない訳ですよ。

(山里亮太)
あ〜なるほどね。。

(町山智浩)
だからもう服もどんどんボロボロになってきます。で、雨がすごい降るんですよね。でも着替えなんか持ってないし、買うお金もない訳ですよ。ドロドロになってきますよどんどん。で、最近すごく有名なコピーライターの先生が、”UberEatsの人の自転車や服装が汚い”っていう風にツイートして、問題になりましたけど、これを見ると、そんな事言ってられない状態なんですよね。

(赤江珠緒)
そうですよね。社会がそのシステムを良しとしてるって言う事態でね、うん。

(町山智浩)
そうなんですよ。これがね、もし正規雇用だったら、最低賃金で1000円いくらもらって、それで、暇な時もとにかく店にいれば必ず時給が支払われる訳ですからね。で、注文がない時はUberEatsは一銭にもならない訳ですよ。と、ちゃんとした正規雇用だったら8時間働くだけで8000円ぐらいになる訳です。8000円ちょっとになる訳です。でも、ならないんですよ。彼が8000円を稼ぐ為には13時間、14時間、頑張るしかないんですよ。

(赤江珠緒)
ねぇ。ましてその、健康で常にいられるかとかね。なんか事故に遭ったりとか、そういう保険が一切ないって言うのは。。 

経済的にも厳しく人との接点もない

(町山智浩)
そう。自転車がパンクしたらそれで大変だしね。スマホ壊れしたり・・それでもしケガをしたりしたらどうするのかって。ケガしたり車にはねられたりね、する可能性もある訳です。それで雨の中でも毎日走ってるから風邪ひくかもしれない。でもその補償も何もないんですよ。だからこれは大変な事だなと思いましたね。でね、ただね、彼は優しい人なんですよ。で、こんな状況になっても仕事をくれるお店の人、それに仕事をくれる注文をしてきてくれた人に対して感謝したいって事で、必ず「ありがとうございました!本当にありがとうございました!」って言うんですよ、笑顔で。ところが、もうみんなコロナだから、そのお客さんに顔を見られる事もないんですよ、置き配なんですよね。

(赤江珠緒)
あぁ、そうか。

(山里亮太)
確かにそうだ。。

(町山智浩)
だから、その人間関係すらもない。で、頼んだ人は誰が届けたのかも知らない。これもう人間関係も、もう本当に薄く薄くなっていって、非常に孤独な仕事なんですよ。だから、この青柳監督は、話し相手もいないから。でその間に誕生日を迎えるシーンがあるんですよ。すると鏡に向かって、自分に誕生日おめでとうって言ったりするんですよ。

(山里亮太)
わ、せつない。。

(町山智浩)
それで、どうしても人の肌が恋しくなってデリヘルを頼むシーンもあるんですよ。

(山里亮太)
おお!

(赤江珠緒)
んー!

デリヘルを頼むが

(町山智浩)
で、それがまた悲惨な事に終わるんですよ・・。

(山里亮太)
えぇっ!?

(町山智浩)
そう。もうね・・。で、どんどん話し相手がいなくなってくるから、自分の腕の血を吸ってる蚊に話しかけるんですよ。

(赤江珠緒)
えー!

(山里亮太)
すご!

蚊にも優しい監督

(町山智浩)
で、どんどんと蚊がね、血を吸ってくのを見ながらね、「お前も必死なんだな生きる為に。」って言うんですよ。「俺もだよ。だからもう、思う存分吸っていいよ。」って血を吸わせるんですよ彼は。

(山里亮太)
優しい・・。

(町山智浩)
でも彼はそんな蚊の事を心配するんですけど、彼の事を心配してくれる人なんて誰もいないんですよ。こういう非正規労働者の人達の血を本当に吸っている奴らっていうのは誰なんだ?っていう気持ちになりますよね。

(赤江珠緒)
そうですねぇ。うん。。

(町山智浩)
まぁ・・これね、本当に違う人が撮ったらすごく悲惨で強烈で強い怒りの映画になると思うんですけど、この監督は非常に飄々としてて。

(赤江珠緒)
へぇ〜。

(町山智浩)
さっきみたいにねぇ。蚊にねぇ、「いいよ。頑張って血、吸っていいよ。」とか言う人なんですよ。だからこう涙が出てくるんですよ、見てるとね。

(赤江珠緒)
そうですねぇ〜。

(町山智浩)
でもね、全然お金が貯まらないんだこれ、どう見ても。

(赤江珠緒)
いやぁ・・この働き方のシステムは・・もうこれが当たり前になってはいかんですね。本当にね。

ラストショットは身震いする感動を覚える

(町山智浩)
そうなんですよ。それでも彼はね、限界まで働こうとして、最後に70配達チャレンジというのを行うんですよ、命がけで。70配達すると、賞金がもらえるシステムらしいんですよね。それもまたひどいと言えばひどいんですけど。。まぁ、すごい映画でした。で、これラストショットに、非常に僕は身震いするような感動を覚えましたんで、是非そこまで見て頂きたいなと思います。

(赤江珠緒)
あ〜そうですか。

(町山智浩)
で、今これはですね、東中野のポレポレ東中野という映画館で今週のですね、終わりまで、10日までしかやってないんですね。

(赤江珠緒)
そうですね。その後、全国順次ロードショーという事ですが。東京はポレポレ東中野で9月10日まで。

(町山智浩)
はい。それがね、毎日ね22時からしかやってなくて、1回しか。(笑)ただですね、今ね、ニコニコ動画で有料で見れます!これもね、10日まで見れます。ネットで見れます。1500円でニコニコ動画で見れますんで、是非そのネットでですね、ニコニコで見て頂きたいと思います。『東京自転車節』です。

(赤江珠緒)
『東京自転車節』。今日ご紹介頂きました。町山さん、アフガニスタンの『生きのびるために』も見ましたよ。

(町山智浩)
あっ。すごい内容なんですよね、あれもね。

(赤江珠緒)
あれもね、なんか理不尽で、あまりにも・・っていう話ですけども。

(町山智浩)
でもあれも絵がかわいいから見てられるんですよね。

(赤江珠緒)
絵がかわいいんですよね、素敵なんですよね。

(町山智浩)
この『東京自転車節』もキャラクターが、キャラクターがって事じゃないけど、監督がね。非常にかわいいので。非常に娯楽作品にもちゃんとなってますから。

(赤江珠緒)
はい。わかりましたー。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)
ありしたーっ!

(町山智浩)
どもでした!

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

③映画をエンターテイメントにする人柄はチャップリンに近い

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