ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』解説レビューの概要
①"PFOA”という物質についての映画
②PFOAはフライパン等のテフロン加工をする時に出る物質で2021年に販売や制作が禁止された
③台所に行ってフライパンに○○○表記がなかったら使わないほうがいい
④PFOAが危険だという事を突き止めた人を主人公にした映画
⑤ハルクを演じたマーク・ラファロ主演。
⑥マークが映画化権を買い取り自分で出演して製作をした映画がこの『ダーク・ウォーターズ』
⑦存在自体も知られてなかったPFOA
⑧デュポン社はPFOAの毒性に気付いていた
⑨デュポン社は自社の社員で人体実験もしていた
⑩主人公のビロット弁護士はPFOAの被害者達と集団訴訟の為PFOAの毒性を証明する必要が生まれる
⑪気の遠くなるような作業で証明していく
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
PFOAとは
(町山智浩)
今日はね、"PFOA”という物質についての映画をですねちょっとお話ししたいんですが、PFOAって聞いた事あります?
(赤江珠緒)
ないんですよ。
(山里亮太)
ない・・ですねぇ。
(町山智浩)
あぁそうなんですか。これね、フライパンとかのテフロン加工をする時に出てくる物質で、これ実は2021年だから・・今年の10月22日から販売とか製作、一切禁止になったものなんですよね使用とか。
(山里亮太)
あぁ最近だ。
フライパンのPFOA FREE表記をチェック!
(町山智浩)
これだから、すぐ台所に行ってフライパンを見て、”PFOA FREE”つまりPFOAが入っていないと書いていない場合は、もう使わない方がいいと思いますよ。
(赤江珠緒)
あっそうですか。結構身近なものですよね、そうなるとね。
(山里亮太)
えぇ。そうねだってね、つい最近ですよね問題視されたのは。
(町山智浩)
そう、2019年に国際的に問題になってですね。全世界で禁止されていって、とうとう日本でも禁止されたという物質なんですが、このPFOAという物質は・・まぁテフロンってすごく強いですよね?でも、剥がれたりはする訳ですよ、剥離したりね。それが体内に入った場合に、一生出ていかないんですよ。
(山里亮太)
ほう。蓄積されていくんだ。
(町山智浩)
そう。それで体内を循環していって、体内を傷つけていくんですね。それでガンとか白血病とかそういった物の原因になっていくと。いう物質で、これが危険だっていう事が分かったのはつい最近2000年代に入ってからなんですよ。
(赤江珠緒)
えーっ!
PFOAが危険だという事を突き止めた人を主人公にした映画
(町山智浩)
はい。で、これが危険だという事を突き止めた人を主人公にした映画が12月に公開されます。『ダーク・ウォーターズ』という映画なんですね。これ主人公は弁護士なんですけど、演じるのはえマーク・ラファロという人で、この人は『アベンジャーズ』シリーズで緑の巨人のハルクを演じている人ですね。
(赤江珠緒)
うん!
(山里亮太)
はいはい!
(町山智浩)
あの普段は非常に・・まぁなんと言うか憂鬱そうなね、非常に大人しい静かな科学者なんですけれども、怒るとぶち切れて何もかも破壊して、もうハルクになると敵も味方も全部ぶっ潰しちゃうという、最も危険な存在なんですけども。それを演じているマーク・ラファロさん自身もね、非常にその、大人しい人なんですよね、俳優として。この人ね、あんまりハリウッドの華やかな生活が合わないんで、ハリウッドを出て田舎のちっちゃい町に引っ越したぐらい、そういう地味な人なんですよ。
(赤江珠緒)
あーそうですか。へぇ〜。
マーク・ラファロが映画化権を買取
(町山智浩)
で、ただこの人がですね、新聞記事、ニューヨーク・タイムズの記事を読んで、このPFOAの有害性を突き止めた弁護士の記事を読んで、自分でこれを演じてみたいという事で映画化権を買い取って、自分で出演して製作をした映画がこの『ダーク・ウォーターズ』なんですね。
(赤江珠緒)
すごい熱意ですね。自分で買い取って製作も?
(町山智浩)
そうなんです。だからそれだけの内容なんですよ。これ、PFOAという物質は実は1950年代から、ずっとフライパンとかの加工の間にですね、デュポンという世界でももうトップクラスの化学(ばけがく)企業がある訳ですけども、それが1950年代からずーーっと、そのPFOAを含む排水を垂れ流し続けてたんです。もう何千トンもの量を。で、まずこれ主人公はですね、これ実在の人物で、ロブ・ビロットという弁護士なんですね。で、この人が弁護事務所で勤めてるんですけど、そこに田舎の・・ウェスト・バージニアというアメリカの中で最も貧しい田舎の州ありまして。そこのパーカーズバーグという田舎の町から来た、畜産をやってる・・牛を育てている農家のおじさんが来ましてですね、ウィルバー・テナントっていう人が来て、牛が次々と変死してるんだと。言うんですね。で、なんで俺ん所に来たの?って聞いたら、その町の、パーカーズバーグというところに住んでいたのがおばあさんだったんです、そのビロットという弁護士の。で、孫が弁護士になったっていうだけで大変な話題になるような田舎だったんですよ。で、それしか知らないから、弁護士を。このテナントっていう農家のおじさんはね。だから頼って来たんですよ。
これ原因がわからないんだけど調べてくれないかと。牛がどんどん死んでいくんだと。ところがですね、このビロットさんが勤めていた弁護士事務所は、まさにデュポンとかですね、そういった化学企業の弁護をする会社だったんですよ。
(赤江珠緒)
あーーっ。。それじゃちょっと都合が悪いね。
(町山智浩)
都合が悪いんですよ。ただ、まぁとりあえず行ってみようって事でその町に行ってみたら、どうも町の人達の様子がおかしいんですね。歯が真っ黒なんですよ。
(赤江珠緒)
えっ・・。
(町山智浩)
真っ黒なんですよ。テフロン加工されちゃってるんですよ。
(赤江珠緒)
ええっ?
(町山智浩)
これはおかしい!っていうんで、まぁ原因が分からないですけど、それでまぁ牛とかも調べると、牛の肝臓とかがパンパンに膨れ上がってたり、もう先天的な奇形があったり、めちゃくちゃな状態になってるんですね。
で、上流の方に・・川の上流の方にデュポン社が何かの廃棄物を捨てている事が分かるんですよで。それを調べ始めるとさっき言ったPFOAという物質が浮かび上がってくるんです。ところがその、ビロット弁護士はPFOAって名前を聞いて、調べても何も出てこないんですよ。この頃インターネットは・・あ、そうだ、その訴えがあったのは1998年なんで、インターネットとか、もう始まってる頃なんですね。それで調べても、殆ど出てこないんです。その頃、全く話題になってない、存在自体も殆ど知られてない物質だったんですねPFOAというのは。
(赤江珠緒)
うん。
存在自体も知られてなかったPFOA
(町山智浩)
で、調べてくうちに、科学者の1人が「似たような物資だったら知ってるよ」っていう風に教えてくれて。それがなんかどうもおかしいんじゃないかなと。「PFOSなら知ってるよ」って言われるんですよ。で、それは非常に危険な物質なんだと。いう事で、結局そのデュポン社に対して裁判を起こして、このビロットさんは。資料を全部出せという請求をするんですね。ところが、それが認められて、きた資料というのがですね、なんと・・段ボール箱で何10箱もあって、全部で11万ページもある資料だったんですよ。
(山里亮太)
うわ〜。
(赤江珠緒)
えーっ!
(町山智浩)
で、その中のどこかに何かが隠されてるっていう事がわかるんですけど。(笑)ただそれは何かわからないんですが、この映画、弁護士が主人公にも関わらず、法廷シーンが殆どないんです。
(山里亮太)
えーっ。
(町山智浩)
普通、弁護士さんの話っていうと、例えばまぁ『リーガル・ハイ』みたいにね、こうなんていうか口のうまい弁護士が法廷である事ない事言ってね。で勝つっていうのがみんなの弁護士のイメージじゃないですか。
(赤江珠緒)
論破するみたいなね。うん。
(町山智浩)
そうそう。とにかくあぁ言えばこう言ういうみたいな、橋下徹さんみたいなイメージじゃないですか。
(赤江珠緒)
・・はい。(笑)
論破系弁護士ではなく・・
(町山智浩)
で、このビロットさんはすごく大人しくて、滑舌があんまりよくないですよ。マーク・ラファロ自身もそうなんですけど、あんまりしゃべりがうまくなくて、ただ、ひたすら資料を調べるんですよ。もう1人で全ての仕事を断って、この11万ページの資料を徹底的に調べてくんですよ。
(赤江珠緒)
11万ページ・・果てしない。
(町山智浩)
そう。この映画のクライマックスはそこなんですね。で、調べていくうちにとうとう恐るべき事がわかるんですよ。まずこのデュポン社は、このPFOAっていう物質に毒性があるって事にもう既に気付いてるんですね1950年代に。
(赤江珠緒)
えっ。そんな前に気づいてる?
(町山智浩)
そうなんですよ。1954年に既に気付いてるんです。
(赤江珠緒)
えっ。。
デュポン社はPFOAの毒性に気付いていた
(町山智浩)
で、社内の動物実験で1961年に、色んな動物がですね、それでガンになる事をもう既に発見して確認するんですよ。
(赤江珠緒)
えっ?
(町山智浩)
これ1998年に初めてそのPFOAっていうものをこの弁護士が知るのに、実はそれよりも何十年も前からデュポンでは知ってたんですよ。
(山里亮太)
えっ。知ってて・・。
(町山智浩)
これは大変な事なんですよね。で、これは前に話した水俣がそうだったんですよ。チッソは水俣病が訴えられたりする前から、その廃棄していた有機水銀が、先天的な異常とかそういった物を引き起こすという事を既に動物実験で知っていた!けどもそれを隠してたっていうのが水俣病事件でしたけども。殆ど同じなんですよね。年代も同じ頃ですよ、だから。大体。ただチッソよりも恐ろしいのは、このデュポン社はですね、人間に対しての生態実験もやったんですよ。
(赤江珠緒)
えっ!そこまでしてたんですか?
(山里亮太)
どういう人・・?
(町山智浩)
はい。PFOAを入れたタバコを社員に配ってたんですよ。
(山里亮太)
うわ〜〜〜。
なんと自社社員を使って人体実験をしていた
(赤江珠緒)
え・・社員で人体実験みたいな事をしてたって事?
(町山智浩)
自社の社員で人体実験もしてたんですよ。
(赤江珠緒)
じゃぁそれは社員も知らずにやってた?
(町山智浩)
そう。やってて。社員がすごい大量にガンとか・・あと女性もいまして、先天性異常が子供に出てるんですよ。
(赤江珠緒)
えーーっ。。
(町山智浩)
すごい事件なんですよ、これ。
(赤江珠緒)
それはひどすぎるな。
(町山智浩)
ひどすぎるんですよ、これ。で、それを発見するんですね。このビロット弁護士は。で、とうとうですね、裁判で集団訴訟する事になって、2001年に集団訴訟をするんですよ。ただですね、この時に1番問題なのは、さっきPFOAっていうのは何もデータがないっていう話をしたじゃないですか。PFOAが人体に危険を及ぼすという事を知ってるのは、デュポン社だけなんですよ。それしか実験データが存在しないんです。だから敵側のデータしかない訳ですよね。これを本当に客観的なデータで、本当に医学的にこのPFOAがガンとか先天性異常を引き起こすという事を証明しなきゃならなくなるんですよ。
(赤江珠緒)
うーん。。
(町山智浩)
で、ここからまた気が遠くなるような長い戦いが始まるんですけど。で、その地域に7万人住んでるんですね。その水を飲んだり、水の下で暮らしている人達が。で、この人達7万人の血液を検査するんです。
(赤江珠緒)
ほぉ〜。。
気の遠くなるような作業
(町山智浩)
これ、ものすごいですよ。血を集めるだけで大変なんですが、もっと大変なのが、それを全部検査しなきゃなんないんですよ。
(赤江珠緒)
そうですよね、分析するって事ですもんね。
(町山智浩)
分析しなきゃなんないんですよ。だからもう、いつまでたっても科学的な分析結果は出てこないんですよ。で、その間、デュポンはさっき言ったみたいに世界でもトップクラスの化学企業なんで、色んな事をしてですね、政治的にも動いて、何とかこの裁判を潰そうとしてくんですね。で、それやってる間に最初にあの、牛農家のおじいちゃんがね、訴えてきたんですけど、その人は死んじゃうんですよ。ガンで。その奥さんもガンで死んじゃうんですよ。集団訴訟なんですけど、その被害者の人達はもう裁判があまりにも長いから、どんどん死んでくんですよ。これ、すごい戦いなんですよ。で、それをずっとやってる間、ビロットさんお金が入んないんですよ。
(山里亮太)
えっ。あ〜そうか・・えっ。
(赤江珠緒)
そりゃそうですよね、裁判が続いてる間ねぇ。
(町山智浩)
裁判続いてる間。ねぇ。だからお金もなくなってくるんですよ。で、子供がいるんですけど、その奥さんと生活を切り詰めてって、子供の学校とかもいい所に入れられないしね。で、奥さんも段々おかしくなってくるんですけど・・アン・ハサウェイが演じてるんですが。でもこれは戦わなきゃなんないんだって事で戦ってると今度は、さっき言ったみたいに彼の弁護士事務所が化学企業側の弁護士事務所だから、四面楚歌になってくんですよ。今度。
(山里亮太)
敵になっちゃうんだ、みんな。
(町山智浩)
て言うか、彼に給料を払う事自体が払えないよっていう話になっていくんですね。で「やめろ」みたいな話になっていって、もう周りが全部敵になってくんですよ。その中でも戦い続けるんですよ彼は。
周りが全部敵に。その中でも戦い続ける
(赤江珠緒)
ねぇ、だって実際にそうやって被害も出てるし・・。
(町山智浩)
被害が出てる、そう。
(山里亮太)
敵がデカすぎる・・。
(町山智浩)
敵がデカすぎるんですよ。で、とうとうこのビロットさんは倒れちゃうんですね。これ虚血症というやつで、脳に血がいかなくなって倒れちゃうですよ、全身がしびれて。これね、原因はストレスなんですよ。ストレスで死にそうになっちゃうんですよこの人。というね、まぁすごい映画がね、この『ダーク・ウォーターズ』なんですけれども。で、やっぱり奥さんもね、文句を言いながらもね、ここでバンッと出てきてね、この弁護士事務所の上司をどやしつけたりする所がかっこいいんですけど。
ただ彼が、「俺は戦わなきゃなんないんだ。」と。「どんなにひどい目にあっても、結果がなかなか出なくても、戦い続けなきゃなんないんだ」と思うのは、その町に行った時にガソリンスタンドである若者を見るんですよ。その若者、顔がこう歪んでるんですよ、目とか鼻とか。ぐにぐにに。先天性障害の人なんですよ。
(赤江珠緒)
あぁ。。そうか。。
(山里亮太)
なるほど。。
実際にPFOAの被害者も出演
(町山智浩)
で、彼は特殊メイクじゃなくて、この映画に出てるその人は本当にPFOAの被害者のバッキー・デイリーさんなんですよ。で、彼を見て、「こういう人がいるんだから俺は戦わなきゃいけないんだ」って決意して、戦っていくんですけども、調査を始めてから7年経った2011年にやっと科学者の調査結果が出始めるんですよ。もうその間、ほとんどこの人は収入ないんですよ。
(山里亮太)
な、7年・・。
(町山智浩)
これ、大変なね〜戦いなんですけれども。で、それからやっと、要するにまぁこのPFOAのせいで人体に異常が出てるんだと。という科学者の調査結果が出たんで、ここから裁判ですよ。
(山里亮太)
やっと・・。
(町山智浩)
賠償を求める裁判ですよ。長い長い。で、2017年にやっとね、裁判所がデュポン社に対して6億7000万ドルの賠償支払いを命じるんですね。これは史上最大規模なんですよ。
(赤江珠緒)
765億円。。770億円ぐらい。
(町山智浩)
そう。大変な事で。これデュポン社もこの裁判の過程で会社自体を維持できなくなって、会社の形態変わっちゃうぐらいだったんですよ。チッソもそうでしたけどね。
(赤江珠緒)
それはそうでしょうね。というかでも、でもデュポン社はわかっていた時点で内部で止めようという動きがなかったんですか?
(町山智浩)
なかったんですね。莫大な利益を上げてたんですよ、このテフロン加工って。で、このマーク・ラファロっていう人はね、その前に出た映画で『フォックスキャッチャー』っていう映画があって。それではね、デュポン社の御曹司の、全く働かないで親の遺産だけで食ってる男の下で、そのオリンピックのアマレスの選手として養成されていくうちに、最終的に殺されてしまうっていう役を演じてるんですよ。デュポンと2度に渡る戦いをしてるっていう人がこのマーク・ラファロなんですけども。もうね「ハルクになればいいのに」と思いましたよ見てて。(笑)
ハルクになればいいのに!
(山里亮太)
ははは!裁判所でみんななぎ倒していって。(笑)
(町山智浩)
ねぇ。裁判所でガーッとやればいいのにって思いましたけども。で、この後も裁判がね、ずっと続いてて、まだ続いてて。
(赤江珠緒)
まだ続いてる?
(町山智浩)
そう、デュポン社だけじゃないんですよやってたのは。でまぁ、色んな事が続いてるんですが、最近も、今年に入ってからもまた新しい判決が出たりしてるんですけどもね。はい。で、これで初めてこの人の・・ビロットさんの戦いのおかげでPFOAの危険性が確認されて、全世界で禁止になったんですよ。だからこの人の戦いはその地元の1人の農家のおじさんからの訴えで、それもたまたまの訴えだったのに、全世界を変えるすごい大きな判決を勝ち取ったんですよね。
(赤江珠緒)
そういう事ですね。
(町山智浩)
これすごいのは。弁護士の仕事ってなんか、法廷で本当にね、なんか口八丁でやればいいと思ってる人はね、それは違うんだっていう。こんな地道なね、戦いがあるんだと。もうこれだって、20年ぐらいですよ、これ。20年以上だね。こういう弁護士さんもいるんだなというね。ただね、それで一応、PFOAは禁止になったんですけど、最近日本で垂れ流し事件起こったんですよねこれね。
(山里亮太)
えっ?
最近日本でもPFOAの垂れ流し事件が
(町山智浩)
これね、PFOSというPFOAに非常に似た物質があって、これは化学消火剤に使われているんですよ。よく化学消火って泡をほら、使うでしょう?あれに含まれてるんですよ。でそれをですね、沖縄の米軍基地で廃棄したんですよね。大量に。
(山里亮太)
えっ。
(赤江珠緒)
大量に・・?
(町山智浩)
海にね。はい。で、これはニュースになりまして、まだ持ってるんですけど、残った廃液をまどうするかと。日本政府と米軍のどちらがその廃棄のね、負担をするんだっていう事になってるんですけど、まぁ今決めてるみたいなんですけど。これね、PFOAとかこの物質の一番恐ろしい所は、永遠になくならないんですよ。
(赤江珠緒)
もう自然界の中でも消えていかない?
(町山智浩)
消えていかないんですよ。だから、作っちゃいけないものを作っちゃったんですよ。人類が。
(赤江珠緒)
そういう事ですね。結局、人間が作っちゃってるんですけどね。消えていかないのか。
(町山智浩)
消えていかないんですよ。だから例えば海に流れていく訳でしょう?細かいそのテフロンの粉みたいなものがね。するとそれは、あらゆる生物に入ってくんですよ。
(赤江珠緒)
んー・・。
体に蓄積されていく
(町山智浩)
で、体内に蓄積されてくんですよ。その、例えば魚であるとか、魚を食べるアザラシであるとか。その魚を食べる大きな魚、ねぇ。マグロとかそういったものね。で、シロクマとかウミガメとか、あと魚を食べる鳥?そういった物の中にも全部入ってくるんですよ。それで今現在、調査すると、全世界の殆ど全ての生物の中にPFOAがある事が分かってきてるんですよ。
(赤江珠緒)
そうなんだ。じゃあ当然我々の中にもありますね?
(町山智浩)
あるんですね。フライパンから入らなくても、そういった魚から入ってたりする訳ですよ。大変な物を人類は発明してしまったなというね。
(赤江珠緒)
そうですね・・。
(町山智浩)
これ、大変な事なんですよ。
(赤江珠緒)
ねぇ。発明しただけじゃなくて、そのわかった時点でも止めなかったというね・・。罪ですね。。
(町山智浩)
わかった時点で止めなかったんですよ。企業っていうのは恐ろしい物だなと思いますよね。で永遠に残るんですよ。地球が爆発しても残るんですよ。こんな馬鹿げたものがというね。という事で、まぁせめてね、口から直接取らないように、古いフライパンとかはなるべく破棄して、PFOAが入ってないって書いてある奴をね、買い換えるといいと思いますけどね。
(赤江珠緒)
そうですね。わかりました。
(町山智浩)
という事で、『ダーク・ウォーターズ』の公開は日本では12月ですね。
(赤江珠緒)
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』は、12月17日からTOHOシネマズシャンテ他でロードショーでございます。
(町山智浩)
この映画がすごいのはとにかく全部実名っていう事なんですよ。
(赤江珠緒)
実名!?
(町山智浩)
これ裁判してる最中なんですよ?これ。劇場で公開されたのはアメリカ。その辺のアメリカの映画人の勇気というものは日本も本当に見習わなければいけないなと思います。
(赤江珠緒)
完全に告発でございますねこれはね。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)
ありしたーっ!
(町山智浩)
どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③台所に行ってフライパンにPFOA FREE表記がなかったら使わないほうがいい