こんにちは、私のお母さんの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『こんにちは、私のお母さん』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『こんにちは、私のお母さん』解説レビューの概要
①今年、世界で1番稼いだ映画とは
②世界で1番稼いだ映画は2本とも○○映画
③『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が元になっている話
④母親を交通事故で失った40歳女性が過去にタイムスリップしてお母さんに自分を産まないようにさせる
⑤実際に主人公を演じるジア・リンさんのお母さんも交通事故で亡くなっている
⑥元々テレビでやっていたコントを映画化した
⑦中国とハリウッドの興行収入の差は・・
⑧しかし、中国映画の市場は未来がない
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
今年、世界で1番稼いだ映画とは
(町山智浩)
今年、世界で1番稼いだ映画って何だか?っていう話をしたいんですよ。これ、世界で1番稼いだ映画はハリウッド映画じゃないかと思うじゃないですか、普通。
(赤江珠緒)
そう思いがち。
(山里亮太)
はい。マーベルとかね。
(町山智浩)
それが違うんですよ。世界で1番稼いだ映画は、2本とも中国映画なんです。
(赤江珠緒)
は〜・・そうかぁ。
(山里亮太)
へぇ〜。
世界で1番稼いだ映画は2本とも中国映画
(町山智浩)
で1本はコメディです。中国の女性コメディアンのジア・リンさんが脚本・監督・主演した、『こんにちは、私のお母さん』という映画が、上半期にですね、大変な金額で・・900億円、稼ぎまして。
(赤江珠緒)
うーわー・・900億?
(町山智浩)
そう。ハリウッド映画の、まぁたくさんありますけど・・『007』の新作であるとか、『デューン』とか、ねぇいっぱいあったんですけど、『ブラック・ウィドウ』とか。全てを超えて、この映画がトップだったんですよ。
(山里亮太)
へぇー!コメディが!
(町山智浩)
コメディが。普通の人情コメディなんですよ!しかもそれが。これね、見たんですけど。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が元になってる話で。
(山里亮太)
えぇっ?
(町山智浩)
ジア・リンさんという今現在40歳ぐらいの女性コメディアンの本当にあった話らしいんですね。で彼女は20歳の時に、お母さんが交通事故で瀕死の重傷を負ってしまうんですね。ただ彼女は、ジア・リンさん自身は、あんまり勉強ができなくて。で、見た目もあんまり良くなくて。ちょっとなんて言うか・・ズングリした感じの女性でね。でお母さんにとっては私は恥なんだと思ってる訳ですよ。
(赤江珠緒)
ふんふん。
(町山智浩)
しかもその交通事故にもその娘さんが、ジア・リンさんが関わってたんで。
(赤江珠緒)
あらららら・・。
(町山智浩)
私は本当になんてひどい事したんだ!って。しかもお母さんは頭がよくて美人なんですよ。で、すごく悩んでたらタイムスリップして、彼女は今40歳ですから、20歳の時だから2001年が舞台なんです、この映画は。『こんにちは、私のお母さん』は。
で、そこから20年前にタイムスリップして、彼女が生まれる前の結婚する前のお母さんに会うんですよ。だから1981年にタイムスリップするっていう話なんですね。で、だから『こんにちは、私のお母さん』っていうタイトルになってるんですね。で、これがすごいのは1981年の中国なんですよ。すげえ貧乏なんですよ。
(赤江珠緒)
あ〜・・うん。
1981年の中国
(町山智浩)
何もない世界なんですよ。で、このお母さんはくじ引きで当たったんで、白黒テレビを買う事ができたっていう所から始まってくんですね。
で、白黒テレビでそのチャンネルが1個しかないので。みんなでその白黒テレビの周りにバーッと集まって、その中国のバレーボールの。女子バレーボールをみんなで見たりする所があるんですけども。で、この過去に戻って自分が生まれる前の、その自分の母親に会ったジア・リンさんは何をするかっていうと、自分が生まれないようにするんですよ。
(赤江珠緒)
えっ?・・・あれ?『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とそこはなんか、逆のような?
(町山智浩)
逆なんです。つまり、自分は出来の悪い娘だから。自分のような娘を持つのは本当お母さんにとって本当にもう申し訳なかったから。
(赤江珠緒)
あぁ、そういう事で。
(町山智浩)
そういう事なんですよ。それで、お金持ちのハンサムな男と結婚させようとするんですよ。
(山里亮太)
あーうっわ!すっご!
(赤江珠緒)
うん。じゃぁお父さんんじゃなくて、違う人と?
(町山智浩)
そう。で、一生懸命お金持ちのボンボンと、その自分のお母さんをくっつけよとして、まぁ色々ドタバタするっていうコメディなんですよ。
(赤江珠緒)
ふーん!
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が元になってるが内容は真逆
(町山智浩)
すごい、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が元になってるんだけど、完全にひっくり返していて。すっごく面白いんですね、そのへんがね。で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と似ていて、あるパーティーというか、まぁ学芸会みたいなね、中国の共産党の中でやってる訳ですけれども、そこで2人が結ばれれば自分が生まれないで済むからお母さんが幸せになるっていう、自分の命を賭けてお母さんを幸せにしようとする話なんですよ。
(山里亮太)
いい話・・!
(町山智浩)
これね、実際にこのジア・リンさんのお母さんは、ジア・リンさんが20歳の時に交通事故で亡くなってるんですよ。
(赤江珠緒)
あぁそうなんですか・・うん。
実際に主人公を演じるジア・リンさんのお母さんも交通事故で亡くなっている
(町山智浩)
だから本当にお母さんを幸せにしたいっていう気持ちで、その20年後に作ったコントがあって、テレビでやってたネタなんですねこれ。それを2時間の映画にしたというね、非常に変わった映画なんですけど。
(赤江珠緒)
へぇ〜!それがそんな大ヒット!?
(町山智浩)
これが900億円ですよ。(笑)
(赤江珠緒)
すごいな・・。
(町山智浩)
でどういう事かと言うと、これ中国の・・それももう、中国の人しか知らないんです、このジア・リンさんって人。テレビのお笑いの人なんですよ。その人達が見に行くだけで、全世界の映画の興行を抜いちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
やっぱり国内のその・・ねぇ、人工の・・。
(町山智浩)
そう。中国の映画興行の市場、マーケットはもう世界で1番巨大な物になっていて、ハリウッドが到底追い付けないスケールになっちゃってるっていう事なんですよ。
(赤江珠緒)
ハリウッドでその・・大成功って言うか、収入・・大ヒットって言って、どのぐらいなんですか?収入で言うと。
中国とハリウッドの興行収入の差
(町山智浩)
今までですか?で、この3位につけているのが『Fast & Furious』っていう、『ワイルド・スピード』の新作なんですよ。それがすごく儲けたけど、まぁ8億ドルいってないか・・いくかいかないかっていう感じなんですね。だから800億円に達してないぐらいなんですよ。そう。で、それより下はずっと半分ぐらいですよ。ハリウッド映画はみんな。4億ドル台なんですよ。全世界でね。
(赤江珠緒)
全世界でね。
(町山智浩)
全世界ですよ。だからこの中国のその映画のスケールのデカさ。市場の。これはとんでもない、太刀打ちできない世界なんですよ。
(赤江珠緒)
そうですね・・!
(町山智浩)
ちなみに、そのだから製作費がそれに影響される訳ですけど。日本映画で最近の映画で最も製作費が高かった映画って言うのは『キングダム』ですね。それ10億円ぐらいなんですよ制作費が。10億円ってこの間アレック・ボールドウィンさんが西部劇の撮影中に拳銃に本物の実弾が入っていて死者が出ちゃったという事件があったんですが、あれは超低予算だった為に銃の管理が甘かったと言われてるんですが。超!低予算映画で8億円なんですよ。
(赤江珠緒)
あぁ、そうかぁ・・。
(町山智浩)
日本は超大作で限界まで、もう今の日本映画界の限界が10億円なんですよ。
(山里亮太)
う〜わ、それは大変だぁ・・。
(赤江珠緒)
切ないなぁそれは。
(町山智浩)
これは切ないですよ。これまぁ、円安っていう事もあるんですが、これたぶん日本の映画監督、どんどん外国に、中国やアメリカに引き抜かれていくでしょうねこのままだと。市場規模がちっちゃすぎて。もう製作費もかけられないのでね。大変な事になる・・ただね今東宝が、Netflixと提携して東宝で今ね、Netflixの映画を撮ってるんで、そうすると市場がNetflixだから全世界なんで、もうちょっと製作費はいくだろうと思うんですけれどもね。まぁこの、中国とのスケールの違いがあまりにもすごいので。(笑)
(山里亮太)
この映画、その設定とかで面白いから、予算とんでもなく使うって事もあんまなさそうな・・。
(町山智浩)
これね、いくら使っても大したお金にはならないんですよ。だから1981年の中国っていうのは貧乏だから、すごく安く再現できちゃうんですよ。だからお金がかからない。(笑)
(赤江珠緒)
そうね、衣裳費がかかるとかそんな感じもしないもんね。
(山里亮太)
しないね、なんかCG、フルCGで!とかないでしょ、たぶん。。
(町山智浩)
そうそう。かけようと思っても、かけられないんですよ。
コスパの良い映画
(赤江珠緒)
ものすごいコスパだよね。そうなるとね、この映画ね。
(町山智浩)
そう。でまたね、この映画を見るとその、40年前ですよね中国のね。40年前いかに貧乏でなんにもない状況だったかっていうのがよくわかるんですけど。この映画のタイムスリップする前の、つまり2001年の段階でもそんなに金持ちじゃないんですよ中国って。2001年の時は、中流と言われる人が、中国全体の4%以下だったんですね。殆どは貧困層だったんですよ、その当時の中国ではね。今現在がどうかっていうと1億円以上の資産を持つ人が500万人くらいいるんぐらいですね中国って。日本て、120万人もいないのかな?そんなもんぐらいですね。これもう、全然ケタが違う訳ですよ中国。確かに貧富の差は大きいんだけれども、やっぱりすさまじいんですね中国のお金の持ち方っていうのはね。それもね、すごく81年と比較する事で感じられるんですけど。ただこれだけ市場がデカくなっても中国の映画市場、映画にはあんまり未来がないんですねもうね。
(山里亮太)
えっ!
(赤江珠緒)
なんでですか?
しかし、中国映画の市場は未来がない
(町山智浩)
もちろんね、不動産バブルが崩壊したっていうのもあるんですけど、1番大きいのは中国政府が、映画の内容の検閲をすごく厳しくし始めちゃったんですよ。ついこの間から。そう夏ぐらいから。でね、この『こんにちは、私のお母さん』を抜いて中国の今年の興行収入のトップに来たのがですね、どういう映画かというと、『長津湖』っていうタイトルの映画なんですが。これね完全な国策映画なんですよ、中国の。これがねぇ、朝鮮戦争の時にアメリカ軍を中国人民解放軍が撤退させたという話がありまして。つまりアメリカ軍が途中でその、仁川に上陸して、そのままずっと38度線の上の方に北朝鮮軍を押し上げていったんですけど、でそのまま押し上げていくと中国国境に近付いちゃうじゃないですか。で、押し上げて上の方まで押し上げた時に、中国人民解放軍がガーッと南の方に下がってって、アメリカ軍と直接対決したんですね。その時の戦闘がその”長津湖の戦い”という戦闘なんですけども。それを英雄的に描いた映画がその『長津湖』って言う・・まぁ大ヒットしてる映画なんですね。で、これがどうすごいかと言うと、まず製作費が222億円という中国史上最大の製作費。
(赤江珠緒)
わ〜桁が・・ええっ?
(町山智浩)
222億円ですよ。はい。ね、あの、さっき言った日本の超大作10億円ですからね、製作費ね。しかも222億円で、中国は人件費が安いから、その何倍もの価値がある訳ですよこの200億円っていうのは。
で、しかも監督が、チェン・カイコーという昔あの、『覇王別姫』というすごい大作を作った人で、ハリウッドでも活躍してた映画監督ですね。チェン・カイコー。それとツイ・ハーク。この人も、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』とか、香港でもう大活躍していた映画監督ですね。であと、ダンテ・ラム。この人はずっと中国の国策映画を撮っている香港映画の人なんですけども。
この3人の監督、もうトップ監督。しかも香港の人も混じってる人達が監督してて、チェン・カイコーなんて昔あの中国の共産党を批判するような映画まで撮っていた人なのに、この人達が国策映画に協力したっていうのは完全に、なんていうか、ある程度屈服した感じですよね。うん。
だからこれはね、大変な事でね。しかもこの映画の内容がですね、中国人が2万5000人死ぬんですよ、その戦闘で。殆ど寒さで死ぬんですよ。ものすごい寒さで、零下40度だったから。だからこれ自殺的な行為で、戦争として完全に間違ってる行為なのに、それを英雄的な勝利として描いているという非常に大問題な映画なんですけど。
(赤江珠緒)
あぁそういう映画。。
(町山智浩)
そう。これがまた当たっちゃって、しかも中国政府は、中国政府と思想の異なる映画人の映画を作らせない、ないし上映禁止にするっていう方向に出てるんですよね。
(赤江珠緒)
うわぁ〜・・。
中国政府がくだした決断
(町山智浩)
だから非常に良くない傾向になっているなぁ〜と。いうところでね、ヴィッキー・チャオっていう女優さんがいて日本でもすごい人気のあるかわいい子で・・かわいいと言っても45歳ですけど今。『少林サッカー』でマルコメちゃんをやってた子。覚えてます?
(山里亮太)
はいはい!ムイだ。はい!キーパー、最後になった。
(町山智浩)
はい。彼女中国ですごい大人気のスターだったのに、中国政府と仲が悪くなって今完全どっかに消えちゃってるっていう状況があったりね。非常に怖い世界が始まっていて。芸能人締め付けとかですね。中国の映画状況は世界一なのにも関わらず、ちょっとね行き先があんまり良くないなぁという所で。ただね、『こんにちは、私のお母さん』はすごい泣けるオチが付いてるんで、ぜひご覧ください。はい。全くプロパガンダではありません。
(赤江珠緒)
はい。これは来年1月から全国公開という事で日本でも見る事ができます。すごいななんか・・。
(町山智浩)
これは泣くわと思いましたよ。はい。と言うね。
(赤江珠緒)
じゃぁ母に捧げた映画だったんですね。
(町山智浩)
はい。そうなんです。言えませんが、もう号泣です。
(赤江珠緒)
町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)
ありした!
(町山智浩)
どもでした。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②世界で1番稼いだ映画は2本とも中国映画