ベルファストの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ベルファスト(Belfast)』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ベルファスト(Belfast)』解説レビューの概要
①ウクライナへのロシアの侵略、それと似たような状況の映画『ベルファスト』
②『ベルファスト』はアカデミー賞7部門ノミネートの有力候補
③ベルファストは北アイルランドの首都
④ベルファストで9歳まで育ったケネス・ブラナー監督の子供の時目線の映画
⑤北アイルランドは非常に複雑な所
⑥スコットランド系とアイルランド系が互いに殺し合いを続けるという状況、でも怖い映画ではない
⑦ほのぼのとほっこりと心温まる映画
⑧貧乏な家はトイレが○にある
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
アメリカの現在の状況について
(赤江珠緒)あの後、無事に、スムーズに帰られましたか?
(町山智浩)あぁはいはい。おかげで感染せずに帰れました。アメリカは帰ったらね、コロナが一山越えて、マスクの義務付けとかなくなってますね今。
(山里亮太)だって町山さん、スーパーボウルとか見たら、客席びっしりの人、殆どマスク付けてなかったですよ。
(町山智浩)まぁそれは問題だなと思いますけど。(笑)ただ、日々の感染者数が2万ぐらいに下がってるんで、日本よりはるかに少ないですよね、感染者数が今。
(山里亮太)そうなんすね。
(町山智浩)ただね、一難去ってまた一難でね、なんか、ウクライナですよ。
(赤江珠緒)そうですね。本当にどんどん緊迫してますよね、状況が。
(町山智浩)もしね、戦争をロシアが仕掛けたりすると、これ・・戦争する訳にもいかないしねアメリカもねぇ。これね、ロシアってね世界で第3位の石油の輸出国なんですよ。でその供給量が減ると、また石油の価格が上がって、大インフレが・・インフレにインフレを重ねる事になるんで。これヤバいし、かといって戦争しないでアメリカがロシアのやりたい放題にさせちゃうと、この間アフガニスタンから撤退したばっかりじゃないですか。で、ウクライナでもロシアにやられ放題ってなると、これアメリカは信頼を失っちゃいますよね。するとヨーロッパだけじゃなくて、台湾とか韓国とか日本も心配になりますよね。
(赤江珠緒)確かにねぇ。
(町山智浩)アメリカ守ってくんねえじゃんって話になってね。結構今アメリカはヤバい、どうしようもない状態ですよね。これに関しては。
(赤江珠緒)あ〜そうですかぁ。。
(町山智浩)火曜日にね、株式市場開けるんですけど、恐ろしい事になりそうですけど。というね。
ウクライナへのロシアの侵略、それと似たような状況の映画『ベルファスト』
(町山智浩)で、今日紹介する映画もちょっと、それと似たような状況なんですけど、今ねロシアは戦争する・・ウクライナに攻め込む口実として、ウクライナの東部の、つまりロシアに近い方にロシア人がいっぱい住んでるから、で、彼らがねウクライナから独立しようとしてると。それを守るっていう風な事を言ってるんですよね。まぁウクライナっていうのはずっとロシア帝国時代からソ連時代も含めて、ずっとロシアの属国みたいにされてたんで、その地域にもロシア系の人がいっぱい入植して住んでるんで、それがウクライナから独立するっていうのはまぁロシアの傀儡国家ですよね一種の。だからロシア領にそれを取り込んじゃうっていう形でね、昔の日本軍がやった満州国みたいなもんですけど。そういう事をやろうとしてるんですが、これからお話しする映画もですね。北アイルランドという所が舞台なんですけど、ちょっと似たような感じなんですね複雑さが。
今日紹介する映画は『ベルファスト』という映画です。
〜音楽〜
んっとね、今かかってるのはね、ヴァン・モリソンという歌手なんですけど、この人もベルファスト出身の人なんですね。で、この『ベルファスト』は今ですね、今年のアカデミー賞の7部門。作品賞、監督賞とか7部門にノミネートされている有力候補の1つです。
(赤江珠緒)おお〜。
『ベルファスト』はアカデミー賞7部門ノミネートの有力候補
(町山智浩)で、ベルファストって言うのはね。北アイルランドの首都。首都って言うか首府・・?まぁ北アイルランドっていうのは非常に特殊な所で国じゃないんですけど、あの、アイルランドでもないんですよ。イギリスの領土なんです北アイルランドって言うのは。だからさっき言った、そのクリミアにおけるロシアの人がいっぱい住んでる所と同じような感じなんですよ。で、イギリスという国の正式名称って、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国って言うんですね。
(赤江珠緒)あーそっか。
(町山智浩)はい。で、北アイルランドは非常に特殊な物としてあって。このベルファストという北アイルランドの街で、この映画の監督の、ケネス・ブラナーさんが生まれて、9歳まで育ったんですけど。彼が9歳だった時に、1969年ですね。の思い出を集めた映画なんですよ。
(赤江珠緒)ほう。
(町山智浩)だから、『ちびまる子ちゃん』みたいな感じなんですよね。
(赤江珠緒)おお!
ベルファストで9歳まで育ったケネス・ブラナー監督の子供の時目線の映画
(町山智浩)『ちびまる子ちゃん』っていうのはあれ、さくらももこさんの子供の頃の思い出ですよね。静岡ですよね、確かあれ。そういう感じなんですけど。
(赤江珠緒)じゃあ、『おもひでぽろぽろ』で間違ってはない?
(町山智浩)そうなんです。ただね、この北アイルランドっていうのは非常に複雑な所で、ちょっと説明しないとなんないと思うんで、説明します。
(赤江珠緒)はい。
北アイルランドは非常に複雑な所
(町山智浩)でね、この9歳のケネス・ブラナーが子供だった頃、9歳の頃に彼アパートの前でですね、道端で遊んでるんですけど。そうすると鉄パイプとか持った大人達がワーッと押し寄せてきて、レンガ投げたり火炎瓶を投げたりして。そのアパートとか商店をめちゃめちゃに破壊しながらね、「カトリックは出てけ!」って言うんですよ。で、どうしてそんな状態になったかって言うと、その頃北アイルランドでは、アイルランド系のカトリック教徒と、スコットランド系のプロテスタント教徒が激しく争って。その60年代終わりから、90年代にかけてですね、ものすごい死傷者を出してるんですね。これなんでって言うのがね、ややこしくてすごく、大変なっちゃうんですけども。まず、アイルランドっていう国とスコットランドっていう国がまずあったんですよ。別々の国です。独立した国で。どっちも民族的には同じです。ケルト系という民族で、どっちも宗教的にはカトリックの国だったんですね。ただね、16世紀ぐらいからスコットランドもアイルランドもイギリスに占領されちゃうんですよ。大英帝国に飲み込まれちゃうんですね。で、その間にスコットランドは、イギリスと同じようにプロテスタントに変わるんですけども。で、アイルランドの北アイルランドにスコットランドの人達が、同じ国だから、イギリスの一部だから、両方とも、その間は。入植しちゃうんですよ、スコットランド人が。
(赤江珠緒)言葉も一緒ですし。
(町山智浩)言葉も一緒だしね。言葉はまぁ・・英語じゃなかったんですけど当時は。
(赤江珠緒)あぁ!そうなんですね。
(町山智浩)ゲール語って言うのをしゃべってたんですよ、当時アイルランド人もスコットランド人もケルト系の。ただ、イギリスに教育されて英語化してくんですけども。で、その後100年ぐらいあってからですね、もっとあるんですけど、1920年頃にやっとアイルランドが独立戦争を起こして、でイギリスからアイルランドっていう島が独立するんですけど。その時に北アイルランドはスコットランドからの移民の方が多いから、アイルランドになる事を拒否して、イギリスに残ったんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!うんうん。
(町山智浩)これもまたすごくやややこしいんですけど、スコットランドはその後独立するんですよさらに。(笑)まぁそれはまぁ別の話なんですけど。で、北アイルランドは政府があって北アイルランド政府は全部スコットランド系の方が人口が多いから北アイルランド政府はスコットランド系がリードしてるんですけど。主導権を握ってるんですけども、少数派のアイルランド系の人達は、その南の方のアイルランド共和国と一体化したいんですよね。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)だから北アイルランドのスコットランド系を追い出して、アイランドになりたい。でスコットランド系の人達は北アイルランドからアイルランド系の人達を追い出したいんですよ。で、互いのスコットランド系とアイルランド系のそれぞれがゲリラ。まぁ民兵を組織して、互いに殺し合いを続けるという状況になってるんですね。で、そう聞くと、『ベルファスト』っていう映画は恐ろしい映画なんじゃないかと。
スコットランド系とアイルランド系が互いに殺し合いを続けるという状況、でも怖い映画ではない
(赤江珠緒)そうですね。お互いがお互いを奪い合おうとしている場所、みたいな感じですもんね。
(町山智浩)そう。だから怖い映画かと思うんですけど、この『ベルファスト』っていう映画はかわいい映画なんですよ。
(山里亮太)かわいい・・!?
(町山智浩)ほのぼのとね、ほっこりと、心温まる映画なんですよね。
(赤江珠緒)うーん!?
(町山智浩)それは、その監督のケネス・ブラナーの9歳の頃の視点からだけしか見てないから。子供の目から見てんでカメラの位置がものすごく低いんですよ。子供だから。
(赤江珠緒)あぁすごい。カメラ目線も子供の位置にして?
(町山智浩)子供の位置にしてるんですよ。だから大人とか全部、見上げて話すんですよ。で、このケネス・ブラナーの家はね、プロテスタントなんですけど、貧乏なんで、お父さんはあんまり稼ぎがないので、カトリック系の人の方が貧乏なんですね。北アイルランドでは。で、カトリック系の人がいっぱい住んでる長屋に住んでるんですよ。だからカトリック系と一緒にテロにあったりしてるんですけど。これね、トイレがね、外にあるんですよ。あのねこれね、アメリカとかイギリスの貧乏な家って言うのは、トイレが外にあるんですよ。汲み取り式なんですよ。木の掘っ立て小屋みたいのがアパートの外に建ってる。だからそれ見るだけで貧乏!ってわかるんですけど。僕はあの、ビートルズのリンゴ・スターが育った家っていうのを実際に見たんですけど、やっぱりトイレは外にありましたね。
(赤江珠緒)は〜そうですか。
貧乏な家はトイレが外にある
(町山智浩)貧乏で水洗トイレをつけられないですよ。でね、このケネス・ブラナーっていう人は、そうだ。彼が監督して、名探偵エルキュール・ポアロを演じる映画の、『ナイル殺人事件』がもうすぐ日本公開ですよね。
(赤江珠緒)そうですね。コマーシャルしてるのとか見ますね。
(町山智浩)で、このケネス・ブラナーっていう人はイギリスの、王立演劇学校を出て、王立シェイクスピア劇団から出てきた人なんですよ。
(赤江珠緒)すごい王道な。うん。
(町山智浩)そう。だから僕、ずっとね、何も知らなかったから、なんかお金持ちのエリート、お坊ちゃんなのかなって思ってたんですよ。ところがこの映画を見て、実はその北アイルランドからイギリスに移民した、もう本当に貧乏な労働者の家庭で、本当に苦学してここまで出世した人なんだって事がわかったんですね。だからね、ちょっとイケ好かないヤツかなと思ってたらね、苦労人だった事が分かったんですけど。
(赤江珠緒)そうですか。ケネス・ブラナーさん。
(町山智浩)そう。とにかく9歳だから、ケネス・ブラナー、プロテスタントとかカトリックってなんだかわかんないんですよ。全然わかんないですよ。ただ大人がね、「カトリックは敵だ!」とか言ってっから「そうなのかな〜」とか思うだけなんですよ。でも、色々曲解してて、例えばカトリック信者っていうのは、悪い事をしても教会で懺悔すれば許されるらしいよと。だからあいつらどんな悪い事でも平気でするんだ怖い!とか言ってるんですけど、そういう話じゃないのにとかね。子供だから勘違いしてるんですよ。で、大人達が実際になんで殺し合いをしてるか全然わかんないですけど。でもそれは、実際意味ないんですよ。子供の方が正しいんですよ。
(赤江珠緒)そうですよね。なんでしてるんだって言うね。同じキリスト教でってそもそもね。
(町山智浩)そう。同じキリスト教なだけじゃなくてアイルランド系とスコットランド系は民族的にも同じなんですよ。ケルト系で。どっちもイギリスに占領させてて被害者なんだけど、どうしてお互いに争ってるのかって、大人に聞いてもよくわからない問題なんですけど、子供だからもっと素直にね、なんだかわからない訳ですよ。でも彼にとって1番大事なのは、クラスにキャサリンっていうかわいい女の子がいて。その子に片思いしてるんですね。で、彼女が勉強ができるから、勉強できる子は前の方の席に座れるんですよ。その小学校では。で、一生懸命勉強するんですよ彼女の隣に座れるようにって。ところがね、彼女はカトリックなんですよ。すごく悩んで、それでお父さんに、父ちゃん、カトリックの子が好きなんだけどカトリックの子と結婚してもいい?って聞くんですよ。するとね、この父ちゃんは笑ってね、こう言ってくれるんですよ。彼女がヒンズー教徒だろうと、無神論者だろうと、何でもいいよと。お前達が愛し合ってるならな。って言うんですよ。
(赤江珠緒)あっ、そこはそういう風に言ってくれるんですね。
キャサリンに恋をする
(町山智浩)このお父さん、いい人なんですよ。で、しょっちゅうプロテスタントの民兵から、お前もプロテスタントなんだから俺達の仲間に入ってね、一緒にテロやれ!とか言われるんですよ。いやいや、俺は別にそういう事で争うのはバカバカしいと思うから、やらない!って言うんですけど、そうすると、お前達が俺達の仲間に入らないんだったら、お前は裏切り者だ!って言って、今度は彼はプロテスタントなのにプロテスタントのテロリストから命を狙われ始めるんですよ。
(赤江珠緒)もうどんどんおかしな事になってる。
(町山智浩)そう。これはいわゆる”分断”っていうやつで、どっちかにつけ!どっちにもつかないなら、お前は敵だ!みたいなね。だんだんもう居づらくなってくるんですね。で、お父ちゃんは、こんな所じゃ子供を育てられないと。大きくなったらそれこそテロリストになっちゃうんじゃないかと。
(赤江珠緒)確かに。
(町山智浩)だからもうどこかに移民しようって言うんですね。でもお母さんは、ベルファストで生まれ育って他知らないから。私はそんな事できない、移民なんかできない!って泣くんですよ。で、この9歳のケネス・ブラナーも泣くんですよ。外国なんか怖い怖い知らない!って言って泣くんですね。で、外国行ったら言葉が通じない!って言うんですけど。
(赤江珠緒)そうね。キャサリンにも会えなくなるしね。
(町山智浩)キャサリンも会えなくなるしね。するとね、おじいちゃんがいてね、おじいちゃんがいいんですよこの人が。言葉通じない?大丈夫だよって言うんですね孫に。ワシはもう何十年もおばあちゃんと一緒にいて同じ言葉しゃべってるけど、いまだにおばあちゃんが何言ってるかよく分からんって言うんですよ。(笑)
(赤江珠緒)はははははは!
(町山智浩)でもね、こう言うんですよおじいちゃん。わかろうとする事が大事なんだよ。お前なら外国に行っても一生懸命何かを伝えようとすれば伝わるよ。それでも伝わらないなら、相手が悪いって言うんですよ。相手がわかろうとしてくれないだけだって言うんですよ。これはね、外国に住むと本当に実感しますよ。
(赤江珠緒)は〜〜。
おじいちゃんの良い言葉
(町山智浩)やっぱりね、言葉ができないとダメなんだって思い込む人多いですけど日本の人。でも一生懸命話せばみんな理解してくれますし。一生懸命話しても理解しようとしない人は、心根のいい人じゃないから。そこから立ち去った方がいいですよ。
(山里亮太)なるほど。
(町山智浩)はい。こういう事をね、おじいちゃんが言ってくれて、結構いい話がね、たくさん詰まった、やっぱりねベルファスト版『ちびまる子ちゃん』的なところがあるんですよね、この映画。
(赤江珠緒)本当ですね。へー!
(町山智浩)あとね、この『ベルファスト』っていう映画はモノクロなんですよ。9歳のそのケネスくんの周りはまぁ色がないんですね。これはね色がない方がいいんだと思ったんですけど、バイオレンスがすごいんでやっぱり。。生々しくなっちゃうって言うのがあるんですよね、カラーだとね。ただね、彼がテレビ見たり、映画見たり、舞台でお芝居見たりすると、そこがものすごく色鮮やかなカラーになってるんですよ。
(赤江珠緒)わっ。じゃぁ彼の心がときめいて見た物はカラーなんですね。
(町山智浩)まさにその通りなんですよ!もう現実が殺伐としてるわけですよ。そこら中、廃墟なんでね。火つけられたりしてて。ただ映画で見る、ハリウッドの映画であるとかミュージカルとか、お芝居だけはもう本当に色鮮やかに見えて。あっ、これでケネス・ブラナー少年は将来、お芝居とか映画の道に進む事になったんだなって言うのがね、すごいよくわかるんですよ。
(赤江珠緒)へ〜〜!
(町山智浩)そのへんもね、うまいなと思ったんですけど。あとねこれね、1969年の話なんで。69年っていうと、だからお母さんがね、ミニスカートですね。
(赤江珠緒)ふーん!ツィギーか!
(町山智浩)そう。当時は本当にお母さんもミニスカートを履いていた時代なんで。いい時代でしたよ、本当に。(笑)
(赤江珠緒)はははははは!
(町山智浩)であとね、アポロ11号がロケットでね月に着陸するんですよ。でね、空前の宇宙ブームだったんですよその頃は。僕も覚えてますけど。とにかくオモチャとかもテレビも何もかも宇宙の事ばっかりなんですね。
(赤江珠緒)そうでしょうねぇ、うん。
(町山智浩)すごかったですよ。だってその頃はみんな宇宙に行けると本当に思ってたからね。いくらで行けるんだとか、そういう話になってましたよ。まぁ今も大金持ちは行けるみたいですけども。
(赤江珠緒)行けるようになんかなってきますけど。(笑)
宇宙に憧れがあった時代
(町山智浩)で、このケネス少年もね、宇宙SFのテレビの『スター・トレック』とか、『サンダーバード』とかそういうのを見て憧れて真似っ子とかしてるんですけど、でもそういう宇宙SFって『スター・トレック』なんかは特にそうですけど、未来にね。地球がひとつになって、国境とかそういうものはなくなった世界の話なんですよ。テレビ見るとそうなのに、自分の身の回りを見ると、同じ顔した人同士が宗教が違うってこう争い続けてるというね。子供心になんだこりゃって思うんですよね。そういうところもうまいって言うか、まぁ実感なんでしょうけどね。このね、どっちにつくんだっていうのはね、僕も子供の頃に体験してるんですよ実は。うちの親父はまだ朝鮮がひとつの国だった頃に日本に来た人だったので。その後もう、北朝鮮と韓国どっちにつくんだって言ってくる人がよく家に来てましたよ。
(赤江珠緒)あ〜〜そうですか!
(町山智浩)はい。日本にいる在日の人って殆どが南側、韓国出身の人なんですよ。でもその後、政治的に選択をして北朝鮮籍を選んでるんですよ。だから政治的にどっちを選ぶんだっていう事でね、問い詰められたりしてて、うちの親父はそういうの全然興味ないから、わかんねえ!みたいな事を言ってておかしかった事ありますけど、そういうのは結構どこにでもあるんだなと思いましたね。
(赤江珠緒)そうですね・・!そして宗教ってなんなんだろうって思っちゃいますね、こうなるとね。平和の為にって始まっている事がなぜこんな争いを起こすんだって言うね。
(町山智浩)そう。同じキリスト教でね。で、結局ね、ずっと爆弾テロとか延々と続くんですけど、僕がね80年代にロンドンに行った時はロンドン市内でアイルランド側の爆弾テロありましたね。
(赤江珠緒)わ〜〜・・そうですか。。
(町山智浩)ただ、ずっともう30年ぐらい続いてて、1990年代の終わりにやっと和平合意がなされて。
(赤江珠緒)最近ですもんね。
(町山智浩)最近なんですよ。それから今までは、20年ぐらいはあんまり激しい戦闘がないんですけど。でもね、その30年ぐらいの・・まぁ殆ど内戦だったんで、3500人から4000人ぐらい死んでるんですよ。だからこの映画は、その間に亡くなった人達に捧ぐっていう字幕が最後に出るんですけど。でもね、EUからイギリスが独立したでしょう?Brexitってやつで、EUから出たじゃないですか。それで、どうなったかっていうと北アイルランドだけ出てないんですよEUから。
(赤江珠緒)あ〜〜!そうでしたね!
(町山智浩)そう。だから北アイルランドとアイルランドの間の国境は、自由に行き来できるようになったんですよ。同じEUの中に入ってるから。ね。あれだけ戦争してたのに今は全然ないんですよそれが。ところが、北アイルランドはEUに残ったから、北アイルランドからイギリスに行く時は、普通に外国に行くように税関があって、通らなきゃなんないんですよ。北アイルランドとイギリスの間が国境ができちゃったんですよ、それで。
(赤江珠緒)そうか。そうね。EUから離れたしね。
(町山智浩)離れたから。でも今度はスコットランドの方が独立してEUに入ろうって言ってるんですよね。
(赤江珠緒)もうなんか、訳わからない事になってますね、このあたりも。
(町山智浩)でしょう?だから国境とかって一体なんだろうと思うんですよね。そういうのね、本当に子供の目から見ると逆に、それってバカバカしいんじゃない?っていう事をね、教えてくれる映画がこの『ベルファスト』ですね。これアカデミー賞を取りそうなんでね。もう是非ご覧なっていただきたいんですが、3月25日から劇場公開ですね。
(赤江珠緒)はい。今日、ご紹介いただいたのは『ベルファスト』でございます。3月25日から日本でも劇場公開、見る事ができます。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありした!
(町山智浩)どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑧貧乏な家はトイレが外にある