私のはなし 部落のはなしの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』（https://www.tbsradio.jp/tama954/）で、『私のはなし 部落のはなし』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『私のはなし 部落のはなし』解説レビューの概要
①被差別部落についてのドキュメンタリー映画
②日本の○○を丸ごと見つめて学びほぐす
③基本的な被差別部落についての歴史や問題や現在の状況や、未来が全部この3時間でわかる
④基本的に全部一人称。「僕は」「私は」という話で語っていく
⑤なぜ差別されるのか？理由はなかった
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『私のはなし 部落のはなし』町山さんの評価とは
（町山智浩）今日はですね、映画を紹介するんですが、『私のはなし 部落のはなし』という映画を紹介します！
（山里亮太）はい。
（町山智浩）これ5月21日から既に公開されてるドキュメンタリー映画で、タイトル通りですね被差別部落についての映画なんですが、宣伝文句はですね。日本の差別を丸ごと見つめて学びほぐすって言う。
（赤江珠緒）学びほぐす？
（町山智浩）学びほぐす。これね、本当に3時間もある映画なんですけれども、基本的な被差別部落についての歴史や問題や現在の状況や、未来が全部この3時間でわかるようになってます。
（赤江珠緒）ふーん！
日本の差別を丸ごと見つめて学びほぐす
（町山智浩）で専門家の先生達も次々と出てくるし、1番すごいのは、この”私のはなし”ってタイトルになってるように、部落問題の当事者の人達、つまり”私”達がですね”私”達としての、それぞれの立場で話をしていくんですよ。
（山里亮太）なるほど。
（町山智浩）だから外側から見た研究だったりしないんですね。基本的に全部一人称なんです。「僕は」「私は」という話で語っていくんですよ。
（赤江珠緒）うん。
（町山智浩）だからこれはすごく画期的で。普通、今言った”すべての事を勉強する”っていう部分と”私のはなし”っていう非常に個人的なそれぞれの物語って別々の映画になっちゃうんですね。それを1つの映画にまとめあげてて、なかなかすごい力作なんですけども。監督はね、1986年生まれ、非常に若いですね。35歳の満若勇咲さんという人で、この人は学生時代に食肉センター。つまりあの牛や豚の屠場ですね。食肉処理をする所のドキュメンタリーを撮って、それを公開しようとしたら部落解放同盟の人から批判されて、結局公開を諦めたという経験があって。
（赤江珠緒）うーん。
食肉処理センターのドキュメンタリー映画の公開を諦めた経験がある
（町山智浩）普通そこで諦めちゃ・・わないんですね、この人の場合は。諦めないで、じゃあ徹底的にやってやる！という事で、その自分に抗議をした部落解放同盟の人達にも話をどんどん聞いてって食い込んでいって、で、基本的には落とす所がないように全てを描こうとしている映画ですね、はい。
（赤江珠緒）おー・・。
（町山智浩）で、この中でとにかく、なんで差別っていうものがあるのか？なぜ差別されるのか？という話をですね、やっていく訳わけですが。基本的に、なんで差別しているのか、理由がないんですよ。
（赤江珠緒）うんうん。
なぜ差別されるのか？
（町山智浩）歴史的な根拠を探ってもですね、ハッキリしないんですね。実は。で、そのまぁ色んな職業の人が昔いたと言われていて、例えばその食肉加工であったり、皮革加工であったり、あとは処刑に関わってる人であったり、あとはゴミ処理とかですね。そういった物に関わってる人達であったりって言うそういう職業の人達が差別されて”部落”と呼ばれてたりした訳ですけども、それは昔そういう差別があっただけで、今なぜその人達を差別するのか、なぜその人達の子孫を差別するのかっていうのには、理由がないんですよ。
（赤江珠緒）そうですよね、うん。
（山里亮太）確かに。
（町山智浩）でも差別は続いてる訳ですよ。で、その理由は、あの人達は差別されてるから。以外にはないんですよ。
（赤江珠緒）変な状況ですよね。本当。突き詰めるとね。
（町山智浩）そう。差別があるから差別しているって言う。ちょっと待って、その差別はどこからで、どんな理由なの？わからない。って言う。。そんな事がね、見えてくるんですよ。突き詰めていくから。これはね、途中でこの”私”って言うのは、差別されてる人だけじゃなくて、差別する側の”私”も何人か出てくるんですよ。
（山里亮太）おお〜。
「なんで差別するんですか？」
（町山智浩）で、その人達に「なんで差別するんですか？」って聞くんですね。60代ぐらいのおばあさんかな。そうすると、「それは昔から、伝統で差別されてるから」って言うんですよ。「いやだからなんで、今現在はなんで差別してんですか？」「いや昔からしてるから」って言うんですよ。
（山里亮太）はぁ〜なるほど、そういう事なんだ。
（赤江珠緒）そこはもう思考停止なんですな、うん。
（町山智浩）そう。その人自身の中には理由はないんですよ。だから本当にね、なんと言うかですね。みんなあんまり突き詰めて考えない問題ですよね。で、やっぱり、「面倒くさい」と思う人もいるし。あと「タブーだから」っていう人もいますよね。で、テレビとかメディアでも殆ど扱われない。それは下手にやると抗議があるから。とかね、そういう理由だったり色々とする訳ですけども。この監督はたった1人、殆ど1人の個人映画に近い形でどんどん、本人がインタビュアーとして話を聞いていくんですけど、それで3時間で実は出来る事だったんですね。
（山里亮太）へ〜！
（町山智浩）みんなが何十年も手を付けないで来た問題だったのに、この人は殆どもう予算が殆どない状態で、この監督自身が1人で頑張って出来た事なんですけど、今まで誰もしなかったんですよ。殆どね。
（赤江珠緒）いや最初ね、町山さんね、学生時代に映画を撮ろうとした時も、その時もその差別を何とかっていう思いで撮られようと思ったと思うんですけど、その時は部落解放同盟の人から批判されてるじゃないですか。
（町山智浩）はい。
（赤江珠緒）それで後に今、今回作られた時にも、その部落解放同盟の人達もどんどん食い込んでいって、インタビュー出来たっていう事なんですか？
（町山智浩）そうです、だから「どこが問題だったんですか？」って聞いていったんですよ。
（赤江珠緒）ねぇ。そこまで踏み込んで。
基本的な所は全部この映画で勉強できる
（町山智浩）で、全部言ってもらってるんです、その理由とかを。で、とにかく皆さんこういう問題については考えないようにしてる人も多いと思うんですけど。これ、この3時間見れば大丈夫ですから。とりあえず。基本的な所は全部勉強できるんで。それも、教科書的なね、項目だけがどんどん出てくるっていうんじゃなくて、それぞれ、当事者の人達の言葉として。その人達の顔も出して、描かれていくので。非常にリアリティーのある物になってますね。はい。
（赤江珠緒）へぇ〜！
（町山智浩）で、あと、なんというかですね。すごく僕が感動したのは、20代の人達が出てくるんですね。そういうまぁ被差別部落にルーツを持つ人達が。で、その若者達が、ブルーハーツの『青空』という歌を歌うんですよ。
（赤江珠緒）うん。
（町山智浩）これ、ご存知だと思うんですけど。
（山里亮太）はいはい！
（町山智浩）歌詞がね、”生まれた場所や皮膚や目の色で、いったい僕の何がわかるというんだろう？”っていう歌詞なんです。
（赤江珠緒）今、流れてますね。
（町山智浩）はい。この歌をね、さっき言った60代のおばあさんの、「いや、なんだかわかんないけど昔から差別されてるからしてるのよ」って言ってるインタビューにこの歌をぶつけてくるんですよ。
（山里亮太）おおぉ〜！
（町山智浩）まぁそこは本当に素晴らしいなと思いましたね。もう感動しました。という事で、この映画がとりあえず1本目ですけど今日紹介するのは。『私のはなし 部落のはなし』ですね。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②日本の差別を丸ごと見つめて学びほぐす
