ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』解説レビューの概要
①”ファイナル アカウント”というのは”○○○○○”という意味
②ドイツがナチス政権だった頃を知ってる人達へのインタビュードキュメンタリー
③イギリス人の監督の母親がユダヤ系。その母親の両親がホロコーストで殺されてしまった
④ナチスは知的障害や不治の病の人を○○○にしていた
⑤武装親衛隊の仕事は、殆どがユダヤ人の虐殺
⑥戦争を知らない世代と、実際にした世代で考え方にギャップがある
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
ドイツがナチス政権だった頃を知ってる人達へのインタビュードキュメンタリー
(町山智浩)今日紹介する映画はですね、『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』というタイトルのイギリス映画なんですが、はい。”第三帝国最後の証言”という副題がついてまして、”ファイナル アカウント”というのは”最後の証言”という意味なんですね。これですね、ドイツがナチス政権だった頃を知ってる人達がもう、お歳なので、かなりね。亡くなる前に話を聞いとこうという企画なんですね。で、どうでしたかっていう事でインタビューを集めて、まぁ200人ぐらいの人にインタビューをしていったらしいんですけど、亡くなる前に最後に、ナチス時代にあなたがした事はどうでしたと。聞いていくというインタビュードキュメンタリーですね。
これはね、『SHOAH ショア』というドキュメンタリーがまずありまして、ドキュメンタリー映画の傑作と言われている1985年の映画なんですが。これはフランスでですね、ナチスの収容所に入れられて、殺されそうになったユダヤ系の人達が、そのホロコーストを生き残った体験をインタビューしていくという映画なんですね。それはやられた側のインタビュー集なんですけれども。こっちの映画、『ファイナル アカウント』の方はやった側に聞いていくという話なんですね。
ユダヤ系の人達ではなく、”やった”側に聞いていく
(赤江珠緒)いや〜〜・・これはなかなか集めるのが大変なインタビューですね。
(町山智浩)大変だったと思います。だからこれ10年ぐらいかかってるんですよ、映画を1本作るのに。90分ぐらいしかないんですけど。で、これはね監督はイギリス人のねルーク・ホランドという人で、この人ね、お母さんユダヤ系の人で、第二次大戦中にオーストリアからイギリスに逃げてきた人なんですね、お母さんが。で、国に残ったお母さんのお父さんや、お母さんはホロコーストで殺されてしまったと。
(赤江珠緒)あ〜・・。
(町山智浩)はい。で、その息子であるルーク・ホランドさんは、もうとにかく何があったのかという事を検証するまで頑張るという事でやってたんですけれども、この映画の完成と同時にですね71歳で亡くなって、この映画が遺作となっています。で、これね。今、生き残ってるナチス時代を知ってるドイツの人達ってもうね、その頃に子供だった人達なんですよ。
(赤江珠緒)うん。まぁそうですよね、うん。
ルーク・ホランド監督の遺作
(町山智浩)はい。だから、ちっちゃい頃に、お父さんやお母さんが選挙でナチス党に投票するのを見てたという記憶なんですね。今生きてる1番年上の人達でも。せいぜい。という事でその頃ドイツは第一次大戦に負けた後でですね、インフレがひどくて。景気が悪くて、物価が高くて、賃金が上がらなくてですね、どこかのなんか極東の国みたいな状態になってまして。
(赤江珠緒)ほんとだなぁ、うん。
(町山智浩)はい。そこに「景気を良くしますよ!」と言って出てきたのがナチスだったんで、そのお父さんお母さん達が投票したという風に証言するんですね。で、ナチスは、景気が悪いのはユダヤ人が悪い事をしてるからだと。いう風に言って、ユダヤ人を憎むようなプロパガンダをしていったんですね。で、このインタビューを受けてるね、おじいちゃん達はヒトラーユーゲントというヒトラー少年隊に小学校の頃に入ってた人達なんですよ、小学校・中学校の頃に。で、ボーイスカウトみたいなもんですね、半ズボンを履いてね。で、何をするかというと、ボーイスカウトと違うのはですね。ユダヤ系の人達がやってる商店に行って嫌がらせをする。
(山里亮太)うわ〜・・。
(赤江珠緒)うわ〜子供達が。
(町山智浩)そう。で、いっぱい嫌がらせをすると愛国少年として尊敬されると。
(赤江珠緒)わー・・。
子どもたちがユダヤ系の人たちに嫌がらせ
(町山智浩)”ユダヤ人お断り”と書いたね、プラカードを持ってお店の前に立ったりするらしいんですよ。で店に入ろうとする人に「この店はユダヤ人の店だから入るな!」って言ったりね。ちっちゃい子なのにね。であとね、ユダヤ系の墓地に行ってね、墓石をね破壊したりっていうね、ダジャレかっていうね、そういう事をやっている訳ですけど、そうすると褒められるというね、という中で彼らは自分達がいい子であって優等生だと思いながら、信じながらユダヤ人に対する嫌がらせをしてたんですけどね。で、インタビューの中で出てくる人で、実はおばあちゃんがユダヤ人だったんですよっていう人も出てくるんですよ。
(赤江珠緒)えっ?うん。
(町山智浩)だから自分自身もユダヤ系なんだけど、あんまり悩まないでユダヤ人差別をしてたみたいなんですよ。
(山里亮太)ええっ?はぁ〜・・。
(町山智浩)本当におかしな精神状態になってたみたいなんですけど。ただすごく大きな転機になったのがですね、ユダヤ系の人よりも先にですねナチスがやった事って言うのは、知的障害のある人とか、不治の病の人達を集めて安楽死させたんですよ。で、その中で証言してる人はクラスに1人知的な障害がある男の子がいたんだけど、ある日突然学校に来なくなって。安楽死させられたって言うんですね。
(赤江珠緒)はぁ〜・・。
知的障害や不治の病の人を安楽死に
(町山智浩)自分の同級生が。これでナチスはですね、ナチスはっていうかその頃まぁ、1万4000人ぐらい安楽死させられてるんですよ。
(赤江珠緒)ひえぇ。。
(町山智浩)で、これがね恐ろしいのはねナチスが無理やりやったりした事だったり、コッソリやった事じゃなくて、大々的なキャンペーンが行われて、国民が率先して賛成してやったんですよ。
(赤江珠緒)これはどういう事なんでしょうね、本当ねぇ。
(町山智浩)これはね、ただねやっぱり途中で、おかしい!って事になって中止してるんですけど、最初の段階ではもうみんなでやってるんですよ。
(山里亮太)へぇ〜・・!
(町山智浩)これはひどい要するにまぁ生きる価値がないんだって言って、彼らには。彼らは税金を無駄遣いしてるとかいうキャンペーン、ポスターを貼ったりしてね。
(赤江珠緒)あぁそういう事か。
(町山智浩)そういう事をやったんですよ。そっちが先だったんですよ。でその後、1938年にクリスタル・ナハトという事件が起こるんですね。これは聞いた事あるかと思うんですけれども、ユダヤ系の人がやってるお店とか、ユダヤ系の教会とかを焼き討ちしたんですね。民衆が。
(赤江珠緒)うわぁ・・。
(町山智浩)普通の人達が。で、この中でその時の写真やフィルムが出てくるんですよ。そうするとユダヤ人教会が燃えているとこで消防士の人達がニヤニヤしながらそれを見物してるんですよ。
(山里亮太)あっ・・。
消防士はユダヤ人協会の消火をしない
(町山智浩)消さないんですよ。焼かれるに任せてて。あと、ユダヤ人の商店を破壊してる写真が出てくるんですけど、子供も参加してて。みんなニヤニヤ笑ってるんですよ。
(赤江珠緒)怖いですね〜、うん。
(町山智浩)怖いんですよ。で、それに参加した1人のおじいちゃんは、今思うとどう考えても犯罪行為で許されない事なんだけど、あの頃はなんとも思わなかったんだって証言するんですね。
(赤江珠緒)すごい。。むしろ、いい事をしてるとみんな思っている訳ですね。
(町山智浩)いい事をしていると思ったんですよ、その時にね。で、彼らはですね、その間に青年になっていくんですね。子供だったけれども。で、彼らの憧れが、バッフェンSSというですね、武装親衛隊という物に入る事だったんですよ。これはね、普通のドイツ軍とは違う軍隊で、国民軍っていうのがあるんですけど、国防軍と言う。それは普通に戦争して敵の軍隊と戦う軍隊なんですけど。この親衛隊ってのはヒトラーのための軍隊なんですよ。
(赤江珠緒)ん〜・・。
(町山智浩)だから、なんていうの、アイドルの親衛隊っているじゃないですか。
(赤江珠緒)はいはいはい。
(町山智浩)あれと同じですよ。ヒトラーの為だけの軍隊なんですね。で、それがエリートだと思われたんで、それになるのがもう子供達の憧れで。で、英雄になれると思って入ったんですけど、ところが武装親衛隊の仕事っていうのはですね、敵の戦車隊とかと戦うような事じゃなくて、殆どがユダヤ人の虐待と虐殺だったんですよ。
(赤江珠緒)うわ〜。。
武装親衛隊の仕事は、殆どがユダヤ人の虐殺
(町山智浩)それと、ヒトラーに逆らう人達。を、駆り集めて殺すと。いう仕事で、全然英雄でも何でもないんですけど。で、この頃にドイツ各地に収容所が作られて、ユダヤ系の人達の。で、ユダヤ人の収容所というのはアウシュビッツじゃなくて、まずドイツ各地に作られたんですよ。で、そこで収容したユダヤ人の人達に対して、すぐに殺すんじゃなくて、人体実験とかをしてたんですね。
(赤江珠緒)そうですね・・。
(町山智浩)有名なね、体に傷をつけて腐敗をするのを見たりとかですよ。凍傷を負わせて体が壊死するの見るみたいな事をやってたんですけど。で、それに参加してた人達、その頃16歳ぐらいで参加してた人達がこのインタビューに出てくるんですね。
(山里亮太)うお〜。。
(町山智浩)これね、ちょっとすごいんですよ、これ結構。これね、女の子も参加してるんですよ。
(赤江珠緒)ええっ・・。
(町山智浩)これね、1人の女の子はマルガリーテっていう名前の女性が出てくるんですが、おばあちゃんですけど。私は14歳ぐらいにそこの収容所でお手伝いをしてたんですと。ユダヤ系の人達がいっぱい入ってて、歯医者さんがいたんで私は歯が悪かったんで、ユダヤ系の歯医者さん、そこの収容所に入って人にタダで治してもらったんですよって言うんですよ。
(赤江珠緒)え?うん。
(町山智浩)で、その14歳のその女の子は、私は子供だったんで仕事はそこに入れられたユダヤ人の子達の面倒を見たり遊んだりする事でしたって言うんですよ。かわいかったですよって言うんですよ。で、みんな殺されましたって言うんですよ。
(赤江珠緒)いやいやいやもう、その文章の脈絡がもうおかしい・・。
(町山智浩)脈絡がおかしいんですよ。えっ!?っていう。そこで感情がなんか、アレないの?みたいなとこで。そういう自分達がやった事なんで事実なんだけれど、それを今だにこう、おじいさんおばあさんになって整理できてない状態っていうのがよくわかるんですね。
(赤江珠緒)うん。
何年経っても整理できない
(町山智浩)で、そこでですね、クルト・ザメトライエルっていうおじいちゃんが出てきてですね、すごい事を言うんですよ。戦後のドイツ人達は、収容所で何が行われていたのか知らなかったと。みんな言ってると。ユダヤ人の虐殺とかはこっそりナチがやってた事で、私達知りませんでしたってみんな言ってるでしょう?それ全部嘘だからって言うんですよ。みんな知ってたよって。
(山里亮太)そっか・・。
(赤江珠緒)こんなに大々的にね、やってる訳だしね。
(町山智浩)そうなんですよ。そこらじゅうに収容所が建ってたんですね。で、そこにはユダヤ系の人だけじゃなくて同性愛者の人とかね。あとヒトラーに反対する政治家。あとね、カトリックの神父達もかなりそこに行って500人ぐらい殺されてるんですよ。
(赤江珠緒)ええっ、カトリックの方も?
カトリックの神父達も殺されていた
(町山智浩)その、ナチのやってる事は神の教えに反してるからって反対した人達がいてポーランド系の人とか。それをみんな・・すごいでしょ神父さんを殺してるんですよ500人ぐらい。だから知らない訳ないよねっていう風に言うんですよ。で、中で1番すごかったのは、この監督がね、オーストリアの老人ホームに行くんですよ。で、インタビューをして、あるおばあさんに、収容所でどういう事をしてたのか、知ってましたか?って聞くんですね。するとそのおばあちゃん、私は何も知りませんでした。戦後に知って驚きましたみたいな事を言うんですよ。
(赤江珠緒)ほぉ〜。
(町山智浩)すると、そこにいるもう1人のおばあちゃんが、嘘よ!って言うんですよ。みんな知ってたでしょう!だって収容所の煙突から毎日煙が出てて人の焼ける臭いがしたじゃないって言うんですね。
(赤江珠緒)う〜ん。
(町山智浩)そうすると、それを言われた最初、知らなかったって言ったおばあさんが、だって収容所にアメリカ兵達が来て、その収容所の中身を見た時にみんな怒って、周りの村とか町に行ってお前たちは知ってたのか!ってやったんで怖かったから、私達は何も知りませんって言ったのって言うんですよ。
(赤江珠緒)(ため息)
(町山智浩)これはすごいインタビューでね。これはね、この監督さんが、ずっとねドイツ人とかオーストリア人が、ホロコーストに関して、私達は知らなかったとずっと言い続けてると、戦後。なわけねーだろって事を暴くのが目的だったと言ってるんですね。これはね、フランスでもねこういう映画が作られてるんですよ。『悲しみと哀れみ』っていう映画があって、それはフランスはドイツに占領されて、仕方なくナチスの言いなりになってたって、ずーっと戦後のフランス人達は言ってたんですね。でもそんな訳ねーだろって言って。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)実はフランスが積極的にそのユダヤ人狩りに協力っていうか参加というかですね。積極的にそれ自体を主導していたっていう事を暴くドキュメンタリーがあるんですよ。それはずっとフランスが隠してた事で、フランスはそのナチに協力してた人達が戦後、その政治家に戻ったんですよ。全然罰せられないまま。
(赤江珠緒)あー・・。
(町山智浩)そう。だから、そういう事を暴くのは結構ね、あるんですね映画の中でね。で、これは監督がもう本当に人生の最後に暴きたくて作った映画なんですけれども。ただね、やっぱりすごくそれを体験したおじいさんおばあさんによってですね、態度がかなり違うんですね。1人は全然私は恥じていないと。ドイツの為に私は戦ったんだ!って言うんですよ。私は親衛隊として戦ったんだ!って言うんですよ。でもそれはね。彼が言うのは実は親衛隊はウクライナに攻め込んでるんですよその頃。アインザッツグルッペンという皆殺し部隊を率いてですね、ウクライナにいたユダヤ系の人達を片っ端から殺してるんですよ。それ、戦争じゃないから。敵と戦ってる訳じゃないから。そういうことをしてるんですけど。しかもそのウクライナから撤退する・・ウクライナとかソ連の方から撤退する時に焦土作戦をやってですね。つまり、ソ連がドイツに向かって来る訳じゃないですか。そうすると、彼らが途中で補給ができないように、ドイツに向かって撤退する間にそこらじゅうの街を徹底的に焼くんですよ。
(赤江珠緒)はー・・。
焦土作戦
(町山智浩)で、食料を全部略奪するか、焼き尽くすんですよ。そうやってドイツに戻ってったんですけど。そういう事をしてた人達なんで。国外で戦ったって言っても、やってた事はそういう事だったんですね。ただ、そうじゃなくて、やっぱり「俺はとんでもないことをした」ってずっと恥ずかしく思っている人がいて。その人はハンス・ゲルクさんっていうおじいさんが出てきて、彼がですね、ナチスの高官たちが、ユダヤ人達を最初どうするか、彼らはあんまり決めてなかったんですよ。で、収容所には入れてたんですけれども、どうしたらいいかわからなくて、で、特にウクライナの方に行った時に兵隊達に銃とかを使って、ユダヤ系の人達を殺させてたら、殺してたドイツ兵達がみんな、発狂しちゃったんですよ。何百人も殺してたんで。おかしくなっちゃって。
(赤江珠緒)人としてね、うん。
(町山智浩)精神が破壊されてしまって。これはダメだと。人間にはこんな虐殺はできないんだってわかったナチスが、じゃあ、これはガス室で、機械的に全部抹殺しましょうって計画を立てるんですよ。これがアウシュビッツなんですね。要するに人間には出来ないからって事ですよ、あまりにもひどすぎて
(赤江珠緒)それだけひどいと言うね。
(町山智浩)それだけひどくて。やった人が狂っちゃうんだから。で、その決定をした場所っていうのが今も残ってて。その会議をした。ユダヤ人をもう全部殲滅するというね、計画を立てた場所が残ってて、そこにハンス・ゲルクさんが行って、現代のドイツの若者と話し合いをするというシーンがあるんですこの映画の中で。で、ハンスさんが、自分がやった事。自分も親衛隊だったから、反省して、本当にドイツは恥ずかしい事をしたと。本当に罪深いんだ、という風に言うと、若者たちが、そんな事を言っちゃ良くないんですよって言うんですよ、そのハンスさんに。それはドイツの恥ですと。なんでそれを世界中に言うんですかと。言うんですよ。
(赤江珠緒)う〜ん。
(町山智浩)これは結構よくある事ですよ。どこにでも起こってる事ですね。
(赤江珠緒)本当ですね、うん。
戦争を知らない世代と、実際にした世代
(町山智浩)そこでね、ハンスさんがね、すごく怒るんですよ。そのハンスさんの事を反独だ!って。要するにドイツに反してるっていう風にね、言った若者に対して、本当の恥というものは我々がやった事だし、それを反省しない事なんだ!って言うんですけど、この辺でね、すごくその戦争を知らない世代と、実際にした人達との間にものすごいギャップがあるんですよね、はい。で、最後にですね、この監督はものすごく究極の質問を聞いて回るんですよ。「あなたには、戦争責任があると思いますか?」って聞くんですよ。その一人一人のおじいさんやおばあさんにね。そうすると、仕方がなかったんだって人が多いんですよね。逆らえなかった。みんなやってたから。止められないよって言う人達がすごく多いんですよ。でも、そんな事ないんですね。そんな事ないんですよ。ね。自分達がやんなきゃよかったんですよ。
(山里亮太)確かに。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)一人一人やらなきゃよかったんですよ。ただやっぱり、何が何でも止めるべきだったって言うおじいさんやおばあさんもいるんですよね。
(赤江珠緒)この人間の心理が時代を超えても、どこの国でも同じ構造が見えますね、これね。
(町山智浩)そう。見えるんですよ。で、1番大きいのは、あの時は仕方がなかったんだと。言う人は、たぶん仕方がない状況になればまたやるんですよ。だから仕方がないっていうのは絶対に言い訳にはならないんですよ。
(赤江珠緒)なるほど。
(町山智浩)何が何でも止めなきゃなんなかったんですよ。
(赤江珠緒)そうだなぁ〜・・。あのこの間ね、亡くなったね町山さん、小田嶋隆さんがね、『災間の唄』っていう本の中で書かれていた事で、両極端の意見を持ってる人は、それぞれがカッチリした意見を持ってるから、あんまり混じり合わないし、それがどっちかに動く事って滅多にないんだけれど、その間ぐらいの、私は普通だ、なんとも思ってないっていう人が大多数なんだけど、その人達が殆どどっちかに流れる事で決まるし、その時の常識も決まってしまうから、だからその実はその私は普通だと思ってる人が動かしてるっていう事を書かれてたんですけど。
(町山智浩)全くそうなんですよ。その他大勢の人達がね。この映画もね最初にねプリーモ・レーヴィというホロコーストを生き残ったユダヤ系の人の言葉が引用されてて、「怪物のような凶悪な人っていうのは確かにいるけれども、ほんの一握りしかいないから、その人たち自身は殆ど何もできないんだと。だから彼らが暴れるのは、彼らに、彼らの事を疑わずに、言う事を聞いてしまうその他大勢の人達なんだと。という引用がされてるんですけど。まぁこれね、この『ファイナル アカウント』は8月5日に日本でTOHOシネマズシャンテ他で公開されるんですけど、8月5日というのはねまた広島の日とかですね、終戦記念日に近い時なんでまぁ是非見に行って頂きたいなと思いますけど。
(赤江珠緒)そうですね。人間だからもうそういう心理になるのはこれ、私もそうだし誰しもそういう事はあるんだろうな、でもそういう構図があるだなっていう事は理解する為に知っておかなきゃいけないですね。
(町山智浩)そうですね。7月10日にね、今度参議院選挙ですけども。いつも、参院選とか投票率低くて、半分の人も投票しないんですけれども、まぁ本当にね、後から反省してもどうしようもない事なんで、本当に投票だけは行ってほしいなと思いますね。はい。
(赤江珠緒)『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』は、8月5日からTOHOシネマズシャンテ他で公開です。はい。町山さん、ありがとうございました!
(町山智浩)どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
①”ファイナル アカウント”というのは”最後の証言”という意味
④ナチスは知的障害や不治の病の人を安楽死にしていた