モリコーネ 映画が恋した音楽家の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『モリコーネ 映画が恋した音楽家』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『モリコーネ 映画が恋した音楽家』解説レビューの概要
①エンニオ・モリコーネというイタリアの映画音楽家、作曲家のドキュメンタリー
②普通の音楽では使えないような楽器を使う音楽家
③○○○をポイッと投げて、それをリズムとして歌謡曲にする等、変わった音楽を作った
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』町山さん解説の書き起こし
(町山智浩)今日ね実はね、紹介しようと思ってた韓国映画があるんですけど、それ来週公開だったんで、今週公開の映画の話からねしないとなんないんで、ちょっと予定を急に変更します。すいません。
えっとね、まず1本目がね、1月13日から公開の映画で、『モリコーネ 映画が恋した音楽家』というタイトルの映画を紹介したいんですが。これは前に紹介したエンニオ・モリコーネというイタリアの映画音楽家、作曲家のドキュメンタリーなんですよ。前ね、たまむすびでこのモリコーネが亡くなった直後に、まぁこういう人だったんですよっていう紹介をしたんですけど、だから普通の音楽では使えないような楽器を使う。口笛とか、あとは”コウキン(口琴)”って言うんですけど、口に挟んでビヨンビヨンビヨンってやる奴とか、ムチとかですね。そういった物を使ったり、あとピアノのその弦の所に下敷きをかませて。。下敷きって今使わないからね、みんなね。言ってもわかんないね、その板みたいな物を挟んでバシャンバシャンっていう音にしたりとか、そういう感じで普通の楽器を使わないで音楽を作る、非常に奇妙な作曲家の人だったんですけども。
そのドキュメンタリーで、その彼が音楽を当てた『ニュー・シネマ・パラダイス』っていう映画があったんです。もう名作中の名作ですけど。
(赤江珠緒)はいはい。うん。
(町山智浩)あれの監督のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、エンニオ・モリコーネに、あなたの音楽すっごい変なんですけど、一体どうやって作ってるんですかって延々とインタビューしたドキュメンタリーがこの『モリコーネ 映画が恋した音楽家』っていう、ドキュメンタリー映画なんですけど。
あなたの音楽すっごい変なんですけど、どうやって作ってるんですか?
(町山智浩)これやっぱりね、とんでもないんですよ、この人。モリコーネって人はイタリアのもう最高の音楽学院を出た、まぁクラシックの作曲家として勉強して、最高の成績で出るんですけども、歌謡曲をやるようになるんですね、食う為にね。ただ、彼自身は実験音楽家だったんで。普通の音楽を全然作らないんで。例えばこれも前に話したんですけど、空き缶をポイッと投げて、空き缶がガランガランって落ちるのを、それをリズムとして歌謡曲にしちゃったりとか。そういうヘンテコな事ばっかりやって、歌謡曲でもなければ実験音楽でもないし、クラシックでもない謎の世界を作り上げていった人なんですね。
で、途中から楽器を全然使わなくて。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』っていう映画では、汽笛の音とかですね。線路がガシャンガシャンって切り替わる音とかそれだけで音楽を作ったりとか。すごい事をやってた人なんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!うん。
(町山智浩)あと、懐中時計の時計の音とかね。で、この人自身が、実は天才だなって事がわかる映画で、このドキュメンタリーは。作曲する風景が出てくるんですけど、普通作曲ってどうやるんだろうと思いますか?クラシックの作曲って。
(山里亮太)あ〜確かに。
作曲はどうやる?
(赤江珠緒)いやほんとですね。まぁメロディーみたいなのをちょっとワンフレーズ、自分が思い付いた所からちょっとずつ楽器を増やしていく?で、オーケストラだったらそうやって作っていくのかなー?ってね。
(町山智浩)でもオーケストラって色んな楽器があるじゃないですか。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)なんで全部の楽器の曲を書けるの?作曲家って。
(赤江珠緒)そうですよ、確かに。
(町山智浩)ヴァイオリンがあったりオーボエがあったりねクラリネットがあったり。でも全部吹けたり弾けたりする訳じゃないですから。作曲家だからって。それなのに、どうして全部のパートの曲を書けるのか?って。謎だったんですよ僕ずっと。あと1番謎だったのはベートーヴェンが耳が聞こえなくなってからも作曲家を続けてたじゃないですか。
(赤江珠緒)そうですね。確かに。
(町山智浩)どうしてそんな事できるのと。それがね、これ見るとわかるんですけど。このモリコーネって人は、歌も歌わなければピアノも弾かないで作曲するんですよ。で、本人も言うんですけど、俺オンチなんだって言うんですよ。(笑)
(赤江珠緒)えーー!
(町山智浩)それなのに、ピアノもあんまりうまくないんだよねって言うんですよ。いきなり譜面に、いきなりペンで。バーーッと書くんですよ曲を。全部のパートの。それで、プロにそれを渡すと、見事なオーケストラになっちゃうんですよ。
(山里亮太)えーっ!なんで?
(町山智浩)わからない。頭の中で全部曲が聞こえてて。で実際に自分でピアノとかで試さないで、頭の中で鳴ってるのをそのまま書いてくんですよ。全楽器のパートを。
(赤江珠緒)ほぉ〜!
(町山智浩)で、証言する人とか出てくるんですけど、喫茶店で打ち合わせをしてる間になんかやってると思ったら曲書いてて、打ち合わせが終わったら、できたよって言ってそれを渡されたって。
(赤江珠緒)うわっ!すごいですね!
天才作曲家モリコーネ
(町山智浩)何者なんだこのモリコーネって人はっていう。これはやっぱり人間の中でも全然違う才能を持った人で。周りの人も、もう全くわからない、謎だって言ってて。で、そういう人なんですけども、イタリアのクラシックの世界では邪道と言われてて。変な音楽ばっかりやってる、ピストルバンバンみたいな。エッチな映画の音楽とかやってて、あいつはもう、魂を売った、金にね。魂を売った奴だってバカにされてたんですよ。で、もうクラシックの世界ではいられないと。なってたんですけども、途中でね、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』という映画があって、それでジェニファー・コネリー扮するヒロインのために書いた『デボラのテーマ』っていう曲があって。それは今かかってるのかな?
(赤江珠緒)あ、かかってきた。これかな?
〜音楽〜
(町山智浩)これが実はすごく大きくて。そのイタリアのクラシック界の人達がこれを聞いて、初めて実は映画音楽とかそういったものを超えて、素晴らしい音楽をモリコーネは作ってたんだなということで、評価をしたという。これね、ものすごく遅い音楽なんです。
(山里亮太)壮大な感じのね。
(町山智浩)す〜ごい遅いんですよ。でね、これで初めて評価して、それまでずっと学校の友達だったクラシックの仲間が、モリコーネあの野郎!みたいな事を言っていたのが、涙を流して、ごめんなさい!素晴らしい音楽でした!って言う所があって。それはもう完全に泣けるシーンで、本当にね、素晴らしい映画がこの『モリコーネ 映画が恋した音楽家』です。是非、ご覧いただくと結構驚くようなことがいっぱい出てくるんで。本当全然知らなくても面白いですね。はい。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③空き缶をポイッと投げて、それをリズムとして歌謡曲にする等、変わった音楽を作った