MEN 同じ顔の男たちの町山智浩さんの解説レビュー
記事内に商品プロモーションを含む場合があります
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『MEN 同じ顔の男たち』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『MEN 同じ顔の男たち』解説レビューの概要
①イギリスの田舎に、ロンドンから女性が1人で泊まりに来る
②そこで出会う人達が、皆見た目は違えど○○○をしている
③受動性攻撃性みたいな物が形となって襲ってくる
④監督はエクス・マキナで注目されたアレックス・ガーランド
⑤エクス・マキナのまるで裏返しのストーリーになっている
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『MEN 同じ顔の男たち』町山さんの解説書き起こし
(町山智浩)で、もう1本の方がですね。これは『MEN』というタイトルなんですけども。これね、『同じ顔の男たち』という副題が日本でついてるんですが、これは12月9日から公開ですね。これ舞台イギリスなんですけど、イギリスの田舎のすごく、本当にのどかなカントリーサイドにですね、ロンドンから1人の女性が泊まりに来るんですよ。で、イギリスの地方に行くとカントリーハウスといって、昔の貴族とかお金持ちが保養に来る家があるんですね。石造りの立派なね。そこを借りて、彼女はそこで週末を過ごそうとするんですけども。段々ちょっとおかしな事になってくんですね。彼女はまず1人でそこにロンドンからわざわざ泊まりに来たのは、すごく嫌な事があって、それから逃れようとして自然の中に入ってくんですけど。自然の中に入っていくと昔の教会とか昔の遺跡とかがあるんですね。イギリスの。で、そこにね、グリーンマンというね、体が葉っぱでできている男の彫刻があるんですよ。これは実際にイギリスとかヨーロッパ各地に行くと、結構あるんですよ。
(赤江珠緒)へ〜、うん。
イギリスの田舎に、ロンドンから女性が1人で泊まりに来る
(町山智浩)でね、今も謎とされてるんですよ。なんだかわからないんですよ。キリスト教以前の神らしいんですけどね。体が葉っぱでできて、葉っぱのおばけみたいな男が彫刻とか絵で書かれるんですよ。ヨーロッパ各地に行くとね。で、それがいくつもあって、それを見てものすごく怯えるんですね、その彼女は。主人公の。で、あんまり人口がないんですけど教会に行って、そこで牧師さんに会ったり神父さんに会ったり、まぁ居酒屋に行ったりするんですけど、途中から見てる人がなんだろう?と思うのは、みんな見た目は違うんですよ、中年の男がいたり少年がいたりね。おじいさんがいたり。でも、よ〜く見ると、みんな同じ顔してるんですよ。
(赤江珠緒)そこにいる人達が?
そこで出会う人達が、皆見た目は違えど同じ顔をしている
(町山智浩)そこにいる男達がみんな。最初ね、ちょっと年齢とか違うし、服装が違うからわかんないんすけど、よーく見ると同じ顔なんですよ全員。で、一体これはなんだろうっていうね、映画がその『MEN 同じ顔の男たち』という、もうタイトルがそのままやんけっていうね。(笑)そこまで言わなきゃいいのにって思いますが。そういうタイトルのホラー映画なんですけども。これ途中からその主人公の彼女の、ロンドンから逃げてきた理由がわかってくるんですよ。それが離婚したんですね。ただ、その夫の方が非常になんと言うかですね、難しいんですが、恨みがましいというかね。何て言うんだろうな。君がいなくなったら僕は自殺しちゃうよ!みたいな事をやたら言うんですよ。で、暴力も振るったりするんですけど、君が殴らせたんだって言うんですよ。
(赤江珠緒)うわうわ、タチが悪いね、うん。
(町山智浩)タチ悪いんですよ、すっごいタチ悪いんで、彼女は別れるんですけども、別れたら、君がいなくなったら自殺しちゃうよって言った通りの事になっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)えっ!自殺しちゃったの?
タチの悪い元夫
(町山智浩)そういう展開でね。でこれ、すごく嫌なのは、彼女はもう一生その傷から逃げられないですよね、それやられると。で、これ典型的なね、英語で言うとね、”Passive-aggressive”っていう暴力性で。日本語だと”受動性攻撃性”というね、非常に矛盾した一種の暴力性なんですけど。例えば、1番端的な例は、ハッキリと、この野郎!みたいにして怒らないで、はぁ。。っていう、ものすごく大げさなため息をついてみせる人。
(赤江珠緒)あーあ!みたいなね。
(町山智浩)で、どうしたの?って言うと、いや、なんでもないって言うんですよね。何か不満があったら言って?って言うと、いや、別に。。とか言うの。すっげえ嫌!
(赤江珠緒)うわ〜〜、扱いづらいね!ちょっと腹いせ的にそういうふうに言っちゃう人か、自分の感情を押し付けてくる。
(町山智浩)そう。で、もう常に被害者ぶるんですよ。
(赤江珠緒)あらららら。
(町山智浩)そういう夫だったんですよ。もう本当に嫌な嫌な夫で、そこから逃れてきて、1番そういう所から遠い所に来てみたら、そういうものが襲ってくるんですよ。
(赤江珠緒)いや。。こっちのホラー・・これもホラーですもんね?
(町山智浩)これ、怖いというかですね、最後にそういうさっき言った受動性攻撃性みたいな物が形となって襲ってくるんです。
(赤江珠緒)えー!
受動性攻撃性みたいな物が形となって襲ってくる
(町山智浩)なんとも言いようのないですね、その男のいやらしさみたいな、被害者ぶりっこみたいな物を具体的に生物学的な形にしたものが襲ってきます。
(赤江珠緒)どういう事になるんだろう?
(町山智浩)これは映画史に残る化け物ですよ。ものすごい複雑な特撮、特殊メイクとCGを使って表現してるんだと思うんですけど、気持ちの悪いこと悪いこと。悪夢としか言いようがないものがズルズルと襲ってくるというのがクライマックスになってまして。わーーーっというね、とんでもない映画になってますね。これね、監督はアレックス・ガーランドという人で、この人は『エクス・マキナ』という映画で非常に注目された監督なんですけど。
(町山智浩)そっちの方はね、今回の映画の裏返しみたいな話で。コンピュータ会社に勤めてるオタクの男がですね、社長に呼ばれて社長の別荘に行くと、そのオタク青年の理想の美少女がそこにいるっていう話なんですよ。で、よく見るとロボットなんですね。これはその、このオタク青年が、ずっとコンピュータでずっと色んな物見てる訳ですよ。画像とかね!ふふふ、動画とかね!そのデータ全部取られてたんですね。で、彼の好みからね、作り出した人造人間がそこにいたっていう話で。
(赤江珠緒)あらー!だからもうドンピシャ!理想と。
(町山智浩)ドンピシャ!でもそれは現実に存在しない女性なんですよ。で、そういった物を妄想してるからまぁ罰が当たっていくんですけども。
(赤江珠緒)え〜〜!
(町山智浩)っていう話のまるで裏返しですね、今回の『MEN』っていうのはね。
(赤江珠緒)は〜〜!いや、どっちも見たくなる感じですね。
(町山智浩)どっちもね、なんていうか、お化けとかそういった物じゃなくて、怪物とかよりも本当に怖いのは人間なんだという話ですね。
○○に入る言葉のこたえ
②そこで出会う人達が、皆見た目は違えど同じ顔をしている