ベネデッタの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ベネデッタ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ベネデッタ』解説レビューの概要
①R18映画『ベネデッタ』
②実際に実在した17世紀の修道女の名前
③ベネデッタは○○○という意味
④この映画に関して世界各地で上演反対運動が起きた大問題作
⑤ベネデッタはキリストの夢を見て、聖痕も現れ、一気に修道院長にのぼりつめる
⑥ポール・バーホーベン監督は今までも世界各地で問題に
⑦聖痕を受けた人の87%が女性。なぜなのか。
⑧修道院に入る人達は裕福な人
⑨男尊女卑社会で女性は戦うにはどうしたらいいか
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
問題作『ベネデッタ』町山さんの評価とは
(町山智浩)えっと、この放送を聞いてる人はみんな大人の方ですよね?
(山里亮太)・・はい。
(町山智浩)18歳以上ですよね?
(赤江珠緒)まぁまぁ、そうですね。それ以下の方も聞いてくださる時ありますけども。
(町山智浩)以下の方も聞いてるのか。以下の方は聞かないでください、これから。
(赤江珠緒)あら?ここから何か?R18?
(山里亮太)あれ?
(町山智浩)今日ご紹介する映画は、もうすぐ2月17日から日本公開の映画なんですけれど。あ、今週か、17日って言うと。
(山里亮太)今週ですね。
(赤江珠緒)そうですね、はい。
(町山智浩)今週末ですね、はい。『ベネデッタ』というタイトルの映画で、これ18歳未満は見れない映画です。
(赤江珠緒)あ〜そうなんですね。
R18『ベネデッタ』
(町山智浩)はい。だから18歳未満の人はね、他の部屋に行ってください。(笑)
(赤江珠緒)話もダメ?聞くのも。(笑)
(町山智浩)話はいいのかな、わからない、これ放送法的にはどうなんでしょうか。って、関係ねえか。(笑)はい。『ベネデッタ』という、これ実際に実在した17世紀の修道女の名前なんですけれども、その人に本当に起こった事を映画化したものです。で、当時の歴史的資料から発見されて、それを映画にしたものなんですが。この映画に関して世界各地で上演反対運動が起きました。
(赤江珠緒)へ〜!
(町山智浩)これは神への冒涜であるとか、カトリックの話なんで、カトリックに対する攻撃であるみたいな形で運動が起こってですね。ロシアでは、ロシアはカトリックじゃないんですけども、ロシアでは上映禁止です。
(山里亮太)へぇ〜〜!
世界各地で上演反対運動
(町山智浩)悪い事いっぱいやってるのにね、政府がね。映画ぐらいなんなんだと思いますけど。という大問題作がこの『ベネデッタ』という映画です。これはイタリアが舞台でですね、17世紀に修道院がありまして、そこにベネデッタという修道女が入っていたんですけれども。ある時からですね、最初に入ってきた時からですね、マリア様の木造が彼女の所に倒れて、まぁ子供だったんですけれども。で、マリア様が彼女にキスしようとしたというような奇跡を起こしてるんですよ。
(赤江珠緒)ほうほうほうほう、うん。
(町山智浩)で、その後、歳を取ってからですね、イエス・キリストの夢を見るようになるんですね。で、夢の中で、キリストの妻になると。キリストと結婚する夢を見ましてですね。で、それだけじゃなくて、聖痕が現れるんですよ。
(赤江珠緒)わっ!聖痕。あの手の傷ね。磔になった時の、イエス・キリストの。
ベネデッタはキリストの夢を見て、聖痕も現れる
(町山智浩)そうなんですよ。イエス・キリストがね、十字架に磔になった時に両手のひらを十字架に釘で打たれて、あと足をですね釘で打たれたんで。で、脇腹を刺されて、頭にイバラの冠をかぶせられたんで、その箇所から出血をする事を聖痕と言うんですね。聖なる痕(あと)って書くんですけどね。で、そこから出血しまして、このベネデッタさんが。
(山里亮太)へぇ〜!
(町山智浩)で、彼女は神にね祝福されたんじゃないかという事になるんですね。ベネデッタという名前自体がね、神の祝福を受けたっていう意味なんですよ。ベネディクトって名前の人は結構いるじゃないですか。ローマ教皇とかに。
(赤江珠緒)あぁ、そうですね!
(町山智浩)ねぇ。ベネディクト・カンバーバッチとか、みんな神の祝福を受けたっていう意味なんですけど。で、彼女はそれまでヒラの修道女だったんですが、そこで大騒ぎになりまして彼女がね。神から選ばれたって事で。で、修道院長っていうその修道院で1番偉い人になるんですよ。
(赤江珠緒)えっ、すごい。一気に。
神から選ばれたという事で修道院長に
(町山智浩)すごいんですよ。ただ、本当なのかな?という事になってくるんですね。
(赤江珠緒)あぁ、まぁそうですね夢とかはね、ちょっと言ったもん勝ちみたいな所もありますもんね。
(町山智浩)言ったもん勝ちですからね。(笑)で、取り調べを受ける訳ですよ。その時にローマ教皇が1番偉い訳ですけどローマ教皇の代理の人がいるんですね。ローマ教皇大使というのがいて、その人が裁判官になって裁判を始める訳ですよ。で、色々と追及していって、本当なのかどうかを周りの人の証言とか聞いていて、その書類が全部残ってるんですよ。
(山里亮太)ええ〜!
(町山智浩)で、これが1987年か何かにアメリカの研究家がそれを発見して、こんな事件があったんだっていう風に本にしたのが日本でも翻訳出てるんですけども、これが原作本なんですけれども。で、そこで、実はこのベネデッタという人は、修道女の女性を愛していて、性的関係があって、で、その関係を持つために。要するに修道女っていうのはヒラの人達は部屋がないんですよ。
(赤江珠緒)ほうほうほう。
(町山智浩)で、みんな仕切りがなくて。だからプライバシーが全くないんですよ。ただ修道院長になると個室がもらえるんです。で、その自分の好きな女の子とエッチをする為に修道院長に上り詰めたんじゃないかって疑惑が出てくるんですね。
(赤江珠緒)えっ。動機がそこ?(笑)なるほど。個室が欲しいっていう?
(町山智浩)個室が欲しい!って、子供の頃思いましたけどね。団地住まいとかだったんで。まぁそういう話じゃないんですが。自分の部屋がないと、”ある事”ができない!っていう事で、若い人は悩むと思うんですけど。関係ねぇか。(笑)
個室が欲しいが為に修道院長になった
(山里亮太)はははは!
(町山智浩)ねぇ。そういう話なんですよこれ。で、その時にすごく問題になったのは、聖書には、男は男と愛し合ってはいけないとか書いてあるんですけど、女性の事は一切書いてないんですよ。だから、その女性の同性愛ってものが存在するという事自体が認定されてないんです。男の方はやっちゃいけないって書いてあるという事は、あるって事なんですよ。で、その頃女性には全く性欲というものはないんだと思われたんですよ。
(赤江珠緒)あ〜1600年代、うん。
(町山智浩)最近までアメリカ人はそう思ってました。1950年ぐらいまでね。で、それはじゃぁ、どういう事が起こってるかっていうと、悪魔に取り憑かれたんじゃないかっていう話になってくるんですよ。
(山里亮太)へぇ〜!
(町山智浩)で、大変な事になってくっていうのがこの『ベネデッタ』っていう映画なんですが。これだけだと何故、なんというか世界中で問題になるのか、わかんないじゃないですか。
(赤江珠緒)はい。そうですね。
(町山智浩)これね、監督さんが問題なんですよ。この監督さん、ポール・バーホーベンという名前のオランダの映画監督なんですが、この人の映画で1番有名なのは『ロボコップ』なんですね。
(山里亮太)お〜はい!
(町山智浩)『ロボコップ』っていうのはとんでもない映画でですね、もうとにかく上映する前にアメリカの映倫て言う、MPAAっていうのがあるんですが、そこからあまりにもひどすぎるから、残酷シーンとかが。
(山里亮太)あぁそうでしたっけ!
(町山智浩)カットしろカットしろっていう事で、ズタズタに切られてやっと公開されたのが『ロボコップ』なんですよ。
(赤江珠緒)あぁそうだったんですか!へぇ〜!
(町山智浩)はい。で、そういう事ばっかりやってる人で、この人はオランダでもひどい描写とか残酷なだけじゃなくて、キリスト教をからかうような描写とかですね、そういう性的に、例えば彼の映画に出てくる女の人っていうのは、性的にはバイセクシュアルで男でも女でも全部OKっていう人がいっぱい出てくるんですよ。で、それをオランダでやると、キリスト教が非常に強いですから、オランダにお前はいるなって言われてオランダにいられなくなってハリウッドに行ったのがこのポール・バーホーベンなんですよ。
(赤江珠緒)へ〜!うん。
(町山智浩)で、ドキュメンタリー映画があって。彼がその飛行機に乗ってハリウッドに行く時に、こんなオランダなんか2度と帰るかよ!って飛行機に乗るシーンがあるぐらいの人なんですけど。
(山里亮太)へぇ〜!
(町山智浩)で、アメリカで今度は『スターシップ・トゥルーパーズ』っていう映画を撮ったんですよ。
(町山智浩)それは、宇宙人との戦いなんですね、地球人類との、SFで。で戦艦と戦闘機とか兵隊達が宇宙の怪物と戦う話なんですけれども、そう言うと普通のSFみたいなんですけど、ポール・バーホーベンはそうしないで、地球全体がある軍事独裁国家になって、そこで作られたプロパガンダ愛国映画として作るんですよ、『スターシップ・トゥルーパーズ』っていう映画を。だから、国に命を捧げるぜイエーイ!とか言ってるんですよ、兵隊達が。死んでお国に尽くすぜイエーイ!かっこいい〜!とかって言う、バカ映画になってるんですよ。
(赤江珠緒)あらららら、うん。
(町山智浩)で、要するにまぁそういうものはくだらないっていう意味で作ったんですけど、彼は子供の頃ナチスに侵略されてるんですよね、オランダは。
(赤江珠緒)あ〜!じゃぁ敢えて茶化す意味で?
(町山智浩)茶化してんですよ。ところがこれを茶化してますよっていう風にふざけた感じでギャグで撮ってるのに、やっぱり怒った人がいっぱいいてですね。
(赤江珠緒)うわぁ〜。
(町山智浩)これは右翼映画であると、これはナチス映画であるという事でめちゃくちゃ叩かれちゃうんですよ。こういう事を繰り返してる人がポール・バーホーベン監督で。あと『氷の微笑』っていう映画を覚えてます?
(赤江珠緒)はいはいはい。覚えてます。
(山里亮太)シャロン・ストーン!
(町山智浩)シャロン・ストーンの。シャロン・ストーンがバイセクシュアルの殺人者で、警察に取り調べを受ける時にノーパンで・・
(山里亮太)はい!足組み替えるやつね!
(町山智浩)足を組み替えるんで。(笑)そこで、アレが映ってるんじゃないか?っていう事で、世界中が大騒ぎになったっていうとんでもない映画を撮っている人なんですね。ポール・バーホーベンって。
(赤江珠緒)はいはい!そうなんですか!!
(山里亮太)ありましたね、そのシーン!
(町山智浩)毎回問題を起こしてる人です、この人。
(山里亮太)『ロボコップ』の人ってそんなに危険だったんだ。(笑)
(町山智浩)危険な人なんですよ、この人。元気なおじいちゃんで、82歳ですけどね。で、『氷の微笑』でもそのバイセクシュアルの人が殺人者として描かれてるんで、LGBTの人達が抗議運動をしたりですね。また『ショーガール』っていう映画を撮って、これラスベガスのダンサーの話なんですけども。ヒロインなんだけど、とにかく自分がダンサーとしてのし上がるためだったらどんな悪い事でもするんですよ、周りの人をおとしめていくんですよ。色んな物を利用して。ただそれを、ガッツがあってかっこいいぜ!っていう形で描いているんです。(笑)
(赤江珠緒)なんでなんで?(笑)
(町山智浩)要するに、自分の目指す物の為だったらどんな悪い事をしてもいいんだっていう描き方をしてる人なんですよ。で、それもみんなに叩かれたりして。あと『インビジブル』っていう映画があって、これは科学の力でケビン・ベーコンが透明人間になるんですけど。
(山里亮太)あ〜はいはい!
(町山智浩)透明人間になって何するかっていうと、痴漢をするんですね。はい。
(山里亮太)なんで。(笑)
(町山智浩)そういう映画ばっかり撮ってるんで、ハリウッドにもいられなくなっちゃって。それで、またヨーロッパに帰ったんだけどオランダにもいられないんで今フランスで映画を撮ってるというね、とんでもない人なんですよ。そこらじゅうに喧嘩を売ってる人なんで。で、その人がこの『ベネデッタ』を作ったんで、その同性愛の部分とかも全部露骨に全部出しちゃうんですよ。画面に。
(赤江珠緒)はぁ〜。
とんでもない人が作った作品が『ベネデッタ』
(町山智浩)だから、18歳未満の人は見れない映画になってるんですね。ただ、記録にかなり残ってるんですけど、裁判やったんでね。証言とかで。言えないような事が書かれてる訳ですけど。で、またね、この映画もねすごくて、その自分が好きになった女の子と初めて話をして好きになる瞬間っていうのあって、ベネデッタさんがね。普通だったら、お庭でお花とかを見ながらね、手が触れて。あっ。とかね、そういう感じじゃないですか。そうじゃなくてね、トイレでね、修道院のトイレなんで、間仕切りも何もなくて、2人で並んでするんですよ。2人で並んでしながら話をしてるうちに打ち解けて、愛し合うようになりましたって、いくらなんでもそんな出会い方はねーよなっていう。(笑)それはねーだろって思いますけど。(笑)
(赤江珠緒)ほ〜・・。
(町山智浩)男の人がね、2人で並んでしているシーンで、お前いいもん持ってんじゃねーかとか言って仲良くなる人もいますが。
(山里亮太)いますっけ!(笑)
(町山智浩)これはないだろうって言うね。どこまでフザけてるのか、本気なのかわからないんですよ、この監督は。ポール・バーホーベンさんは。で、それが全編続くんですけど、例えばその、手のひらにね、聖痕ができたって言って、みんなすごい!すごい!って言ってると、そこの元々の修道院長が、なんで手のひらだけなのかしらね。ねぇ。キリストはイバラ7の冠で頭にも傷を負ってるはずなのに頭に傷ないわね。自分でやったんじゃないの?みたいな事言うんですよ。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)そうすると、ムッとして部屋を出てって、部屋の向こうで「ギャー!」って声が聞こえて、ベネデッタの所にみんなが駆け寄ると、ちゃんとおでこから血が出てんですけど。
(山里亮太)や、それって絶対。
(町山智浩)そう。そこにちょっとガラスの破片が落っこってたりするんですよ。
(山里亮太)じゃぁもう・・。
(赤江珠緒)ほうほうほう、じゃぁ描かれ方としてはちょっと、なんか怪しいなみたいな所も?
一体この映画はなんなのか?
(町山智浩)怪しいな、そう。ただ彼女が見るそのキリストと結婚したりするっていうのは、実際に映像として見せますんで。だから、どこまで本当なのかはわからないんですよ。で、一体この映画は何なのか?っていう事なんですよ。
(赤江珠緒)確かに。何を・・。
(町山智浩)何をしようとしているのかっていう事なんですけど。実はこの聖痕を受けた人達ってものすごい数いるんです。
(赤江珠緒)へ〜!
(町山智浩)もうそれこそ何百人もいるそうなんですよ、ヨーロッパで。で、殆どというか、87%女性なんです。何故、女性だけが聖痕を受けるのかっていう事なんですよ。で、殆どが修道院に入ってた修道女の人達なんですよね。記録を調べてみると。なんでだと思います?
なぜ女性が聖痕を受けるのか
(赤江珠緒)なんでだ、確かに。なんかそういう環境でちょっとこう染まって、自分もそういう見た気になるとか?
(町山智浩)ねぇ。まず考えますよね、神様を信じてるからそういうトランス状態で、神がかりになって、無意識のうちにやっちゃったんじゃないかとかね。思いますよね。でももっと実はすごくちゃんとした理由があって。カトリックにおいては、修道女の人、女の人は宗教を司る聖職者になれないんです。
(赤江珠緒)あっ。あ〜でも確かに男性ばっかりですよね、その上のね。
(町山智浩)尼さんって言われたり修道院に入ってるシスターって言われてる人達いるじゃないですか。シスターって言われてる人達は、何の権力もないんです。
(赤江珠緒)はぁ〜。
(町山智浩)カトリックにおいては。彼女達はマザーじゃないんですよ。マザーはマリア様だけなんです。
(赤江珠緒)そうか、はい。
(町山智浩)シスターでしかないんですよ。
(赤江珠緒)そうだ。
(町山智浩)ファーザーは神父なんです。
(赤江珠緒)そうだ。そうね。
(町山智浩)権力を持っているのは神父だけなんです。だから、例えば結婚をする時に神父は結婚の介添人になりますよね。女性はなれないんです、カトリックにおいては。で懺悔を聞いたりとか要するに神と直接繋がる仕事をするのは神父なんですね。神の代理人をするのが神父なんですけど、男しかダメなんです。その中で、修道院に入ってる人達って一体何かっていうと、修道院に入ってる人達ってどういう人だと思います?その頃。
(赤江珠緒)どういう人達。。
(町山智浩)神様の事を信じて神様の近くにいたいから修道院に入ったっていう人達も、最近の人達はそうですけど、中世においてはそういう人達じゃないんですよ。
(赤江珠緒)中世においては、やっぱりちょっとお家が裕福ではなかったとか?
(町山智浩)裕福だったんです。
(赤江珠緒)あぁ裕福な人!?
(町山智浩)裕福な貴族とか、大金持ちの娘で、結婚できない人が投げ込まれる所だったんです。
(山里亮太)へぇ〜!
修道院に入る人達は裕福な人
(赤江珠緒)あぁそっか。
(町山智浩)それで彼女達にお金を大量に乗せて、修道院に預けるんですよ。お金をつけて処分する所だったんです。要するに嫁に行けないから。それで預かってく訳にもいかないから、修道院に入れて、そこで一生暮らせと。ただ、修道院には申し訳ないから、お金をドンとあげるっていう。で、お金がない人は修道院に入れなかったんですよ。お金がない人は修道院の中で下働きをさせられるんです。
(赤江珠緒)あっ、そういう事か。
(町山智浩)そういう事なんです。全然宗教と関係のない組織だったんですよ。だから修道院の多くでは売春とかもあったんですよ。実際。当時。ひどかったんです。本当に。で、このベネデッタがどういう人かっていうと、お金持ちの商人かなんかの娘なんですけれども、商人のその親父がね、自分が神様に何かをしてあげたいと。だったらこの娘をあげますってあげたんですよ。お金をつけて。捨てられたんですよ親に。
(赤江珠緒)そういう事だ。。
(町山智浩)そういうヒドイのが当時の修道院で、そこに自分の意思とあんまり関係なく入る訳じゃないですか大抵。その中でも、中で全部仕切ってるのは男で、中世からずっとそうですけど、神父とか司祭とか教皇とかっていうのはみんな腐敗してて、結婚しちゃいけないって事にはなってるんですけど、たくさん愛人がいて子供もいっぱいいたんですよみんな。で、この映画の中にも出てくる教皇の代理は愛人がいて、おなか膨らんでるんですけどね。そういうデタラメな事を上の方でやってて、下の方の女性達はその下で奴隷をさせられてる訳ですから、それに対する反乱として聖痕を受けるんですよ。
(赤江珠緒)なるほどね!
(山里亮太)へはぁ〜!
(町山智浩)要するに神父よりも上の権力者が神なんですよ。キリストなんですよ。
(赤江珠緒)そうかそうか。自分が力を持つためには。
自分が力を持つために
(町山智浩)そう。私は神と直接繋がったっていう事で、一種のそういう男尊女卑社会における反乱として聖痕を受けるんですよ。
(赤江珠緒)はぁ〜〜そういう事だ。うんうんうん。
(町山智浩)それを描いているのがこの映画なんですよ。
(赤江珠緒)なるほど。
(町山智浩)彼女は確かに嘘つきかもしれないし、そのせいでひどい目に遭う他の修道女の人達もいる訳ですけど、ただそれでも、このひどい社会の中で戦う為だったら、どんな悪い事したっていいじゃないかっていうのがポール・バーホーベンの考え方なんで。彼女は戦ったんだからいいじゃないかっていう撮り方をして、一種のヒーローとして描いてるんですよ。
(赤江珠緒)あぁそれでこの映画をこの題材で。
(町山智浩)題材で。だからこれはすごい内容だなと思いましたね。まぁドギツイんですけどね内容はね。さっき言ったみたいにおしっこしたりしてますから。あと拷問もすごいんですよ、この頃要するに彼女達は魔女とされる訳ですね。悪魔と繋がってるんじゃないかと思われて。この頃の拷問ってひどくて、魔女裁判における拷問って。水審っていうのがあったんですよ。
(山里亮太)すいしん・・?
(町山智浩)で、この水審っていうのは、女の人を縛って水に投げ込むんですよ。
(赤江珠緒)えっ?えっ?死んじゃう、死んじゃう。
(町山智浩)死ななかったら魔女。
(赤江珠緒)えっ?
(山里亮太)あれ、じゃぁ死・・。
(町山智浩)死んだら無実で人間。でも死んでるから意味ないんですよ。
(赤江珠緒)ひどい・・。
(町山智浩)魔女となったら火あぶりになるから、どっちにしても死ぬんです。
(赤江珠緒)わぁ。。
(町山智浩)これがその当時の魔女裁判なんで、まぁそういう時代の中で女性が戦うにはどうしたらいいかって事なんですよね。
(赤江珠緒)はぁ〜そういう事なんですね。
(町山智浩)という、強烈な内容なので。でも歴史的事実なんでね。
(赤江珠緒)そうですよね。ものすごく結構色んな事を意味している、根深い話だし。
強烈な内容だが歴史的事実
(町山智浩)そうなんですよ。でもね、このポール・バーホーベン監督ですから。全然、主人公はいい人として描かれてなくて、自分の邪魔する人はいい人でも殺しちゃいますから、死なせちゃいますから。
(赤江珠緒)この主人公自体も?
(町山智浩)主人公自体が、彼女自身の目的のために巻き込まれて死んでいく無実の人達もいっぱいいるんで。まぁ困ったもんなんですけど。まぁすごい。これもね、発掘した人も女性の研究家なんですけど。ポール・バーホーベンは色々叩かれて、ひどい映画だって言われてね。でも事実なんだ!って。本当なんだからしょうがねえだろ!って言ってる人なんですけどね。82歳ですよ。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)めちゃくちゃ元気でね。こんなにねドギツイ映画もないっていうぐらいにね、もう見てるとクラクラしてくるんですよあまりにも描写がドギツイんで。露骨すぎて。という、でも本当なんですよね。
(赤江珠緒)そうですよね。人間のなんとも言えない、本当ですもんね。なんとも言えないですけど、歴史上でそういう事があって。
(町山智浩)そう。だからすごいなと思ったのは、何でも書類が残ってるんですよ、記録が。だって古代ローマの政治的な争いとか、中国の古代の話とかも全部、書類が残ってて、全部わかっちゃうんですね今ね。昔から。わかんないのは日本だけですからね。
(赤江珠緒)そうですね。(笑)
(町山智浩)オリンピックの会計がどうなっているのかとか全然わかんないんですけど。(笑)
(赤江珠緒)こんな最近なのにね。(笑)そうですね。
(町山智浩)もう1番謎ですよ日本の方がね。という事で、ポール・バーホーベンのとんでもないゲテモノ、だけども非常に宗教的に色々考えさせる映画ね、『ベネデッタ』は2月17日公開です。
(赤江珠緒)はい。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありした!
(町山智浩)どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③ベネデッタは神の祝福を受けたという意味