ワース 命の値段の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ワース 命の値段』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ワース 命の値段』解説レビューの概要
①ワースは英語で○○という意味
②2001年の911テロで死傷した方達の遺族、約6000人に賠償金を支払うためにその計算をした弁護士が主人公
③911テロの賠償は、○○○○○○がする事になった
④損害賠償請求は、年収とその時の年齢が基本的な数字になる
⑤世界貿易センタービルで働いている人は、年収何億円の人から数百万の人まで様々
⑥75億ドル、期限3年以内に解決しなければならない
⑦賠償金の提案を拒否した人達を組織化する弁護士も登場
⑧ファインバーグが考えた命の計算式は、1人大体2000万円、最大は13億円。
⑨最後までなかなか示談に応じなかったのは○○○
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
町山さん『ワース 命の値段』の評価とは
(町山智浩)これから公開される、今週末かな?に・・あ、違うこれは・・今週公開される作品です。
(赤江珠緒)日本だと2月23日ですね。
(山里亮太)明後日だ!
(町山智浩)はい。に公開される映画で『ワース 命の値段』と言う映画です。これね、≈。I’m not worthyとか言うと、私にはそんな価値はございませんて言うような謙虚な言い方で。これは、911テロと言うのが2001年にあったんですが、その時に怪我をしたり死んだりした方々が6000人ぐらいいた訳ですが、その人達全員に賠償金を支払うために、その賠償金の金額を計算した弁護士が主人公の話です。
(赤江珠緒)えっ、全員を、その弁護士の人が?
(町山智浩)やったんです。
(赤江珠緒)へぇ〜!
2001年の911テロで死傷した方達の遺族、約6000人に賠償金を支払うためにその計算をした弁護士が主人公
(町山智浩)で、6000人ぐらいいたらしいんですけど、死傷者の。あ、6000人と言うのは遺族の人達ですね、ごめんなさい。死傷者はもうちょっと少ないんですけれど。その遺族6000人の計算を、全部やらなきゃならなかったんですよ。これはこのケン・ファインバーグ、ケネス・ファインバーグと言う弁護士がやったんですけれども、これどうしてかって言うと、アメリカ政府。その当時ブッシュ政権なんですが、から頼まれたんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)まずこれがどうしてかって言うと、賠償を請求する場合は、たぶん飛行機会社に行くだろうと。で、アメリカン航空とユナイテッド航空の飛行機が2機ずつハイジャックされたんですね。それが世界貿易センタービルに激突して、あとはペンタゴンに激突したんですが、その飛行機に乗っていた人達と、そのビルにいた人達がみんな亡くなったんですが、それと、そこに救出に向かった消防士の人、警察官の人も亡くなった訳ですよ。
(赤江珠緒)そっか・・。
(町山智浩)で、この場合にそのハイジャックを許した航空会社に対して賠償を請求する可能性があると。そうすると、たぶん航空会社はその賠償金だけで両方とも倒産するだろうと。
(赤江珠緒)まぁそうですよね。航空会社が払える額ではない規模になっちゃいますよね。
アメリカ政府が介入しないと、航空会社が潰れてしまう
(町山智浩)はい。それはどうしてかと言うと、世界貿易センタービルと言うのはビジネスビルだったんですね。で、中にいた人達の多くが、亡くなった人達の多くが証券マン、金融会社の人、投資家、銀行家、弁護士といった人達が多かったんですね。
(赤江珠緒)うーん。
(町山智浩)で、彼らの年収は1億円とか2億円とかザラなんですよ。
(山里亮太)んー!
(町山智浩)で、損害賠償請求をする場合って言うのは、これは日本でも同じ事で計算されてるんですけど、年収とその時の年齢が大体基本的な数字なんですね。
(赤江珠緒)あ、そうか、なるほど。うん。
年収とその時の年齢で損害賠償金額を計算するのが基本
(町山智浩)年収2億円の人があと10年働けるとすると。と言う事なんですよ。で、少しずつ年収も上がっていってって計算すると、その人の価値は20億円以上になりますよね?もっとですねもっといきますよね、実際はね。で、そこでまた同時に、そこで働いてる人達、ビルで働いてる人達は、掃除の人達もいる訳ですよ。そう言う人達はニューヨークだから少しはいいんですけれども、300万円とか400万円ぐらいの年収なんですね。で、ものすごい差がある訳ですよ。
(赤江珠緒)そうですね、うん。
(町山智浩)でも、同じ命ですよね。これ命に値段をつけるという大変な事態なんですよ。で、これでまず賠償請求をその年収1億円2億円とか、3億円4億円とかそう言う人達が普通に計算をして飛行機会社に賠償請求すると、飛行機会社は倒産するんですが、そのアメリカンとユナイテッドの2つが倒産するとどうなるかって言うと、アメリカの航空は完全に滅びるに近い状態になるんですよ。
(山里亮太)ほぉ〜そっか・・!
(町山智浩)ユナイテッドがね、次々と飛行機会社を吸収していって、アメリカンも吸収したりしたんで、飛行機会社ってアメリカは大手は、3つ4つぐらいになってるんですね、この当時ね。だから殆どアメリカの飛行機産業が滅びちゃうんですよ。
(赤江珠緒)あぁそうか。それはちょっとアメリカとしては由々しき事ですよね。
(町山智浩)いやそしたらもう、アメリカと言う国は機能しなくなっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)ほんとねぇ。。
(町山智浩)それと、そこで働いてる人達はものすごい人数なんですよ。
(赤江珠緒)うん。あっ、航空会社にね。
賠償金はすべてアメリカ政府が肩代わりする
(町山智浩)航空会社で働いてる人達が。もう大変な事になっちゃうと。アメリカと言う国の経済がガタガタになると。そしたらこれ、テロリスト達の思うツボですよね。だから、これはアメリカ政府としては、この賠償金を全額、アメリカ政府が肩代わりすると言う事になる。でこれに関しては議会で通るんですよ。
(赤江珠緒)まぁそう・・でしょうね。これはちょっと納得する感じしますね、皆さんね。
(町山智浩)共和党も民主党も通って、アメリカ政府から出せる金額と言うのが、75億ドルぐらいが予算として通るんですね、議会を。で、この枠の中で賠償してくれって言われるんですよ。このファインバーグって弁護士が。で、これどうなるかと言うと普通に金持ちの、ものすごい収入のある人の分も計算しちゃうと、そのわずか15%のすげぇ金を稼ぐ人達が、この賠償金のうちの殆ど、90%近くを取ってっちゃう事になっちゃうんですよ、ものすごい落差があるから。これは許せないと、これだと何のための保障にしたのかわからないと言う状態になりますよね。だから、上限と下限を付けるんですよ。で、どんなに収入が低い人でも、ここで亡くなった人には、1人大体2000万円ぐらいを出すと、言う風に決めて。その代わり、ものすごくどれくらい稼いでた人でも、最大は13億円ぐらいしか出せないと。言う風な形で上と下を決めて、その中で何とか払う計算式って言うのを出すんですね、彼らが。で、これで全部解決してくれって政府から頼まれて、このファインバーグさんやるんですけども、全然うまくいかないんですよ。これね、早くやらないと大変な事になるんですよ。その人達はだって収入がなくなっちゃってる訳ですから、その遺族の人達は。特にその奥さん達がいる訳ですけど、そこで働いてた人達の。消防士とか警察官の奥さん達は子供をたくさん抱えてですね、それで働き手がいなくなっちゃったんで、それで消防署とかからお金が出るんですけれども、かなり苦しい状態になりますよね?
(赤江珠緒)そうですね。モタモタは、してる訳にいかないですね、これね。
(町山智浩)いかないんですよ。で、これをなんとか3年以内に全部解決しろって言われるんですよ。ところがタイムリミットがどんどん迫るのに、みんなね、それに応じないんですよ、その示談の申請に。
(赤江珠緒)そうね、これ難しいな。
75億ドル、期限3年以内に解決しなければならない
(町山智浩)難しいんですよ。で、応じない理由って言うのは1つは大金持ちの人達、ものすごく収入がある人達は普通に裁判をした方がたくさん取れるから。
(山里亮太)なるほどなぁ・・!
(町山智浩)上限付けられて。もっと稼げるはずだからもっと取るぞって言ってて。ものすごい優秀な弁護士をつけて、集団訴訟をしようとしてるんですよ。彼らは応じないんですね。それと、あと中産階級よりも下の人達は、こう言う計算で人の命の価値を決められて、で金持ち達よりも何百万分の1しかもらえないって言うね。それで金払って、はい、これでおしまいですよって言うのは、あまりにもひどすぎると。言う事で拒否するんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。わかるねその気持ちも、本当。
(町山智浩)で、その拒否した人達って言うのは、例えばその弁護士とかその裁判の事かがわからない人達がかなり多いんですが、ただムカムカしていると言うだけの人も多かったんですけれども、それを組織化する弁護士が出てくるんですよ。
賠償金の提案を拒否した人達を組織化する弁護士も登場
(赤江珠緒)ほうほうほう。
(町山智浩)この政府の側の基金で賠償金を支払うと言う案に応じない人達の集団訴訟をしようと言う形で彼らを組織化する弁護士が出てきまして。その人はチャールズ・ウルフって言う人なんですけれども、この人は奥さんが世界貿易センタービルにあった、北タワーの97階にあった弁護士事務所で働いていたんですね、このウルフさんの奥さんは。
(赤江珠緒)えぇ、うん。
(町山智浩)で、97階って言うのは、飛行機が突っ込んだまさにその場所なんですよ。
(赤江珠緒)あー・・そうか、うん。
(町山智浩)で、最初の段階で即死してるんですね。で、もう全く遺体も何も出てきてないです。で、そう言う事で非常に衝撃を受けているのに、このファインバーグって弁護士はみんなを集めて公聴会をやるんですけれども、こんな感じで計算したので、これにサインしてくれれば裁判しないでお金払いますよ〜みたいな感じなんで、あまりにも人の心がなさすぎると。
(赤江珠緒)そうですよね。こんな理不尽な死に対してのまず怒りが、ものすごく皆さんあるのに。そこで計算式って言われてもなぁ。
人の命の計算式
(町山智浩)そうなんですよ。ねぇ。人の命をこんな事でね、話もろくに聞かないで計算しておかしいじゃねぇか!って事で、不満を持つ人達を組織化しちゃうんで。もう全然この賠償金の申請に応じる人が全然増えないんですよ。で、タイムリミットを超えて、集団訴訟とかになってしまうと、本当に飛行機会社も潰れてしまうという大変な事態になってしまうと。でもタイムリミットがどんどん迫ってくるって言う話なんですけど。これはこのね弁護士を演じる、ファインバーグと言う弁護士を演じた人はマイケル・キートンと言う俳優さんで、この人は初代バットマンの俳優さんですね、映画版の。90年ぐらいに作られた最初の大作『バットマン』で、バットマンを演じてた人なんですけども。本当に素晴らしい俳優さんでね、この映画ね最初ね、負け知らずの弁護士って事で頼まれてですね、どうせ勝つよみたいな感じで、やるしかないないみたいな感じで気楽に始めるんですけども。
(赤江珠緒)えー!
(町山智浩)やってみるとうまくいかないし、本当にお前は人間じゃない!みたいな事を言われる訳ですよ。それでもね、やっぱりエリート弁護士で、現在75歳で、その時も結構なお年で。超ベテランで、政治的な権力を持ってるから、あんまりその人の文句を聞かないんですね最初。で、自分の部下の人達、アシスタントの人達に文句を言ってきた人達に会わせる仕事は全部アシスタントに振っちゃってるんですよ。だから、彼の部下達は、まぁものすごい人数がいる訳ですけど、1人1人に、抗議してきた人達に会って、その人達の訴えを聞くんですね。でも大抵は、こんな感じなんですよ。
100階ぐらいのところに夫はいました。みたいなね。携帯で電話かけてきて、もう下で燃えてて、もう下には降りられないと。子供達をよろしく頼む。それが最後の電話でしたとかね。そう言うのを、何千人も聞くんですよ。これね、アシスタントの人達みんなメンタルおかしくなってくんです。段々。
(赤江珠緒)・・!そうでしょうね・・!
1人1人の話
(町山智浩)こんなお金の計算なんかしないでください!お金なんかいりません!とか言われる訳ですよ。1人1人全部聞くんですよ。でもこのファインバーグはなかなか聞かないんですけども、途中でこのチャールズ・ウルフと言う弁護士とやり合ううちに、これはやっぱり、1人1人聞くしかないんだと。何千人いようと、全部聞くしかないんだと。話を。計算じゃないんだと。1人1人の痛みを知らなければいけないんだって言う事で、駆けずり回るようになるって言う話なんですよ。
(赤江珠緒)あっ、そんなベテラン弁護士の人が?
(町山智浩)そうなんです。
(赤江珠緒)ちょっと今までのやり方も変えて、みたいな。
(町山智浩)変えて、本当に会いに行くんですよ。飛行機に乗って。そこらじゅうにいる遺族の人達に。て言う映画なんですよ。これはすごいな〜と思いますよ。で、ただ彼自身は善意から始めてるんですね。
(赤江珠緒)そうですよね。だってどう考えても難しい仕事である事は間違いないですもんね。それを受けるっていうだけでもなって思いましたけど。
(町山智浩)このファインバーグ弁護士と言うはこれをね、プロボノでやってるんですよ。
(赤江珠緒)うん?
プロボノ、無料で弁護をしている
(町山智浩)プロボノと言うんですが、無料でやってるんですよ。
(赤江珠緒)ええっ!!!
(町山智浩)プロボノって言うのは、公共善のために非常に自分の高度な知識であるとか、スキルを使う事をプロボノって言うんですね。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)アメリカの弁護士は年間50時間以上をプロボノで働くべきと言う風に言われてるんですよ。
(赤江珠緒)え〜!
(町山智浩)でもそうしないとほら、貧しい人の裁判をやる人いないじゃないですか。金になんないからって言って。でもこれをやれって言う風に言われてるんですよ、アメリカの弁護士は。で、彼はやるんですけども、これだけの負け知らずの力を使って、アメリカって言う国が経済的に崩壊するのを救う事ができれば、それはもう自分が生まれてきた意味だからと言う事で、この仕事を引き受けるんですけども、彼はでも本当は、苦しんでる人の気持ちがわからなかったって事を、自分が段々わかっていくって言う話なんですよ。これはねすごい話でね。それぞれに個別に問題があるんですよね。例えば、事実婚の人をどうするかって話になってくるんですよ。事実婚の相手に補償をするのかどうかって事で、その事実婚の中には同性の人がいる訳ですよ。ゲイの人で男同士で一緒に暮らしてる人ね。事実婚状態の人。ただ、この当時はまだアメリカは同性婚と言うのは認められてないんですよ、連邦政府の方で。
(赤江珠緒)そうですねぇ。
(町山智浩)州ごとに違う状況だったんですよ。そうすると、ニューヨークだったら一応認める方向でいってるんですね。事実婚状態だったならば、夫婦と同じようにその賠償金であるとか、遺産とかの相続権利があるって言う事をニューヨークでは認めてるんですけど、バージニア州だと認めないとか、南部の方はもう全然認めないとかあって。ただ、この911テロの被害者って言うのはもうアメリカ全土に広がってる訳ですよ。飛行機が飛んだ訳ですからね。で、その場合はどうするのかとかね。そういった事が次々と起こってくんで。やっぱりそれは計算式一発では決められないんだと。それぞれみんな違うから。家族は違うから。あと、国籍のない人って言うのもいるんですよね。アメリカ国籍がない人。にも全て補償するんですよ。
(赤江珠緒)そうですね、うん。
(町山智浩)アメリカ政府のお金で。だって、そうじゃないとおかしいじゃないですか。
(赤江珠緒)そりゃそうですよね、うん。
(町山智浩)で、特にその掃除をしていた人とかアメリカ国籍を持ってない人がかなり多いんですね。で、その人達にも支払うと言う。でも、2000万円って言うとみんな貧しい人達はOKするんですけど、金持ちは最後までね、なかなかね応じないんで、さぁどうなるかって。タイムリミットは迫ってくると言う映画がこの『ワース 命の値段』です。まぁ面白いし、色々考えさせますね。
(赤江珠緒)実際にね、我々も本当に記憶に残っている事ですもんね。
(山里亮太)そうね。
(町山智浩)命の値段って言うのを付けなければならないって言うのは、これはどう言う事なんだと。
(赤江珠緒)ねぇ。起きた事自体も悲劇でしたけど、その後にもまたこういったね、事があったんですね。
(町山智浩)誰にでも命の値段って言うのは実は、あるって言う事なんですよね。ただそれは、どう言う風に考えられるべきかと言う話ですね。はい。
(赤江珠緒)『ワース 命の値段』は2月23日、日本公開となります。はい。今日も町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)ありしたっ!
(町山智浩)どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
①ワースは英語で価値という意味
③911テロの賠償は、アメリカ政府がする事になった
⑨最後までなかなか示談に応じなかったのは金持ち