スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』解説レビューの概要
①スパイダーマンって実は色々いる
②今作は、1番のオリジナルであるピーター・パーカーが主人公の物とは違うシリーズ
③今作は”スパイダーバース”いわゆるマルチバーストいわれる○○○○モノ。
④3部作中の2作目
⑤ここがすごい!キャラによって○○が違う
⑥今作はスパイダーマンが○○○人出ます!
⑦敵のスポットの描き方がすごい!
⑧関わったアニメーターの数がすごい!
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』町山さんの評価や解説
(石山蓮華)あの今日、番組の中でリスナーの方にアンケートを取ったんですが、町山さんは映画を見る時に、字幕と吹き替えどちらが・・お好きですか?
(町山智浩)・・難しいですね。
(でか美ちゃん)おぉ、難しい!ほうほう。
(石山蓮華)難しいですか!
(町山智浩)難しい。すごい難しいですね。まぁ字幕だと俳優の本当の声が聞こえるんですけど、吹き替えだと画面に集中できるんですよね。
(でか美ちゃん)そうなんですよねー!
吹き替えか字幕か
(町山智浩)難しいな〜。ただね、セリフはね実は吹き替えの方が元の英語に忠実ですね。
(でか美ちゃん)へ〜そっか!
(石山蓮華)なんかこう字数制限が字幕だとあるって聞いた事があります。
(町山智浩)そうそうそう。そうなんですよ。ただやっぱり元の英語でなんて言ってるのかっていうのは聞こえないのでね。難しいな。(笑)
(でか美ちゃん)そうか、字幕も翻訳する方の解釈っていうのが入りますもんね。そういやそういや。
(町山智浩)そうなんですよ。ろくでもない字幕翻訳者もいますんでね。(笑)
(石山蓮華)ちょっと深掘りしないで次に行きましょうか。(笑)せっかくなんでねぇ今日も、楽しくやっていきましょう。そして町山さん、今日は?
(町山智浩)はい。今日はね、『スパイダーマン』の話をします!
(石山蓮華)やったー!
(町山智浩)音楽どうぞ!
(でか美ちゃん)あ、町山さんノリノリだ、ははは!
(石山蓮華)町山さんがあの・・。
(町山智浩)やすらぎ捨てて、すべてを捨て〜て♪
(でか美ちゃん)はははは!町山さんの歌声って超レアじゃない?めっちゃ嬉しかった今。
(町山智浩)これはね、本当に泣ける歌なんですけどね。これご存知ですか?『スパイダーマン』の歌。
(でか美ちゃん)聞いた事・・なんかであるかもぐらいの、なんか思い出がそこにあるとかでは正直ないですね私は。
(石山蓮華)石山は初めて聞きましたこの曲は。
(町山智浩)ですよね。これ1978年の、日本のテレビ版の『スパイダーマン』の主題歌なんですよ。
日本のテレビ版のスパイダーマンがあった
(でか美ちゃん)へ〜!めちゃめちゃ初歩の初歩みたいな感想言いますけど、日本版の『スパイダーマン』があったんだとすら思いました。
(町山智浩)あったんです!元々最初の日本版『スパイダーマン』は、僕が小学校の頃に、1970年ですけども少年マガジンに連載されていた池上遼一さん版『スパイダーマン』が最初の日本『スパイダーマン』ですね。
池上遼一さんは『男組』で知られてる劇画家なんですけど。マーベルコミックスっていうのが最初に『スパイダーマン』を1962年、僕と同い年なんですが、に連載を始めて、それの日本版がその8年後、だから僕8歳だったね。に少年マガジンで連載が始まって、『タイガーマスク』とかですね『バロム・1』とかと一緒に連載されてたんですよ。
(でか美ちゃん)へ〜そうなんですね。全然知らなかった。
(町山智浩)だから僕の世代、60歳ぐらいの人達は少年マガジンで『スパイダーマン』を読んでた世代なんですね。
(石山蓮華)へ〜漫画でなんですか!
(町山智浩)日本の漫画雑誌でね。で、主人公は、原作はね、ピーター・パーカーというニューヨークに住む貧乏なですね高校生が蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになるんですけれども、日本版では東京に住んでいる小森ユウくんという高校生がスパイダーマンになるんですよ。
(でか美ちゃん)へぇ〜!
(町山智浩)で、78年のTV版では主人公は大人でですね、山城拓也という人が主人公で、スパイダーマンって実は色々いるんですよ。
スパイダーマンって実は色々いる
(でか美ちゃん)ね。なんか私はやっぱこうアメリカの、マーベルとかで作られてるイメージがすごく強くて。色々あったんですね、高校生が主人公とかサラリーマンとか。
(町山智浩)元々高校生が主人公なんですけど、一番最初のオリジナルはね。ピーター・パーカーという。で、今日紹介する、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』というシリーズは、そのピーター・パーカーのオリジナルとはまた違うシリーズなんですよ。
(石山蓮華)えっ、また違うんですか?ほう。
(町山智浩)違うんですよ。ピーター・パーカーっていうのは恐らくユダヤ系の少年なんですけど、白人なんですね。で、こっちの『スパイダーバース』シリーズでは、主人公はこれプエルトリコとアフリカ系の・・お母さんがプエルトリコ系でお父さんがアフリカ系、黒人ですね。の、高校生のマイルズくんというのが主人公なんですよ。これは後から始まったシリーズなんですね。これね、後から始まった理由も色々あって、ピーター・パーカーがどんどん本当に歳を取っていって、結婚して、スパイダーマンになって色々苦労するっていう話になって行き詰まっちゃったんですよ。
(でか美ちゃん)へぇ、そんなこうちゃんと物語の中で歳重ねてたんですね、しっかり。
(町山智浩)そうなんですよ。で、スパイダーマンだから結婚しているのに、要するに夜な夜な部屋を抜け出して、悪者退治してるもんだから夫婦生活うまくいかなくなるとかそういう展開になって。
(でか美ちゃん)そうか、そういう問題が出てくるんだ。
(石山蓮華)家庭に影響ありそうですもんね。
(でか美ちゃん)ありそうありそう。
(町山智浩)ありそうなんですよ。おっさんになっちゃったから、ピーター・パーカーが。その若者版として、しかも今現在ニューヨークで人口が多いのはプエルトリコ系の人とかアフリカ系の人が多いですから。その人達の話にして、マイルズくん版を新しく始めたんですね『スパイダーマン』は。で、すっと・・あ。『スパイダーマン』シリーズって映画見た事あります?
スパイダーマンシリーズで見た事があるのは?
(石山蓮華)あります。あの実写で・・でもどれだったかっていうのが正直たくさんあって。
(でか美ちゃん)そうそう!私も全くおんなじ状態。
(石山蓮華)でもなんかラブストーリー、よかったな〜みたいな。
(町山智浩)全部ラブストーリーなんで!なんかヒントないですか?
(石山蓮華)えっとですね、20年ぐらい前だったと思うんです、20年、10年くらい前。
(町山智浩)20年ぐらいだと、それは最初のトビー・マグワイアくんが主人公のピーター・パーカー物だと思うんですよ。
(石山蓮華)ですかね〜。
(町山智浩)3回実写版があって、主人公変えて作り直されてるんですよ。すごくたくさんあって。
(でか美ちゃん)そうですよね。だからこんなにあるんだっていう事自体ね。びっくりだし。
(町山智浩)でしょ?すごくいっぱいある訳ですよ。例えばインドにもインド版『スパイダーマン』ってあるんですよ。
(でか美ちゃん)あっ、もう色んな・・世界中で愛されてるんですね。
インド版スパイダーマン
(町山智浩)そうなんです。インドで出版されてました。『スパイダーマン・インディア』っていうのがね。で主人公の名前がね、パヴィトル・プラパカールっていうすごい名前でね。(笑)
(でか美ちゃん)なんかね、ニューヨークが舞台だからスパイダーマンとしてこう這う事が出来るんですよ建物を。
(石山蓮華)高い建物をビュンビュン飛んでいくみたいなね。
(でか美ちゃん)インドではどうなるんだろう。
(町山智浩)いや、インドはね、ムンバイとかねすごい大都会があって高層ビルが一杯あるんで、スパイダーマン活躍できるんですよインドは。
(でか美ちゃん)そうかそうか。色んな国の見てみたいけど、今回はアニメーションという事ですよね?
(町山智浩)そうなんですが、この『スパイダーバース』シリーズっていうこのアニメーションのシリーズは、『スパイダーバース』というのは、いわゆるそのマルチバースと言われている多元宇宙というものなんですね。で、今言った色んなスパイダーマンがいる訳じゃないですか。色んなスパイダーマンが全部出てくるんです、この『スパイダーバース』シリーズは。
(でか美ちゃん)え!超楽しいじゃないですか!そんなの。
(町山智浩)楽しいんですけど、
(石山蓮華)えっ、じゃぁ日本版の・・。
今作は”スパイダーバース”いわゆるマルチバーストいわれる多元宇宙モノ。
(町山智浩)ものすごいややこしくて。で、これ2作目なんですよ、『スパイダーバース』シリーズの。で、1作目は『スパイダーマン スパイダーバース』っていう、”スパイダーバースに入る”というタイトルで、これが2作目で実は3部作で。
(石山蓮華)えっ。
(町山智浩)これは真ん中の作品です。今回公開されるのが。もうすぐ、6月16日公開ですね。
(でか美ちゃん)じゃ次作もあるという前提で見に行くというか。
(町山智浩)前提です。そう。3部作ですから、2作目なんですけど。で、1作目ではそのマイルスくんの住んでいる世界に、他の世界のスパイダーマンが入ってきちゃうっていう話だったんですよ。
(石山蓮華)ほ〜お。
(町山智浩)で、例えば、豚のスパイダーマンがいたりするんですよ。
(石山蓮華)ぶたのすぱいだーまん?
(町山智浩)豚が蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになっちゃったっていう、スパイダー豚が出てきたりするんですよ。
(石山蓮華)じゃぁヒヅメから糸を出すって事ですか?
(町山智浩)いや、どっから出すんだろう?ちょっと集中してなかったんでわかんないですけど。(笑)
(でか美ちゃん)でもスパイダーマンファンにはたまらないですね。
(町山智浩)で、それはその豚くんは、アメリカのバックス・バニーとかね、要するにミッキーマウスみたいな漫画があるんですけどご存知ですか。あのタッチで描かれたスパイダー豚なんですよ。あの、絵柄が違うんです。
(でか美ちゃん)へ〜!でもなんかそれって違和感出ちゃいそうな気ぃしません?
キャラによって絵柄が違う
(町山智浩)違和感ものすごくあります。絵柄が違う人達が、1つの世界に集まっちゃうんですよ。だからさっき言った、そのアクロスザスパイダーバースシリーズのマイルズくんの世界っていうのは、最近のアメリカの、アメコミの絵の塗り方で描かれた世界なんですよ。で、どういうものかっていうと、昔のアメコミってのはなんとなく印象あると思うんですけど、すごい太い主線というもので輪郭線を描かれていて、その輪郭線と輪郭線の間を色が塗られているっていうのが昔のアメコミの絵なんですけども。90年代終わりぐらいから輪郭線がなくなっていったんですよ、アメコミから。
(石山蓮華)あっ、そうなんですか。知らなかった。
(町山智浩)だから要するに油絵みたいなタッチになっていったんですけど、そっちの絵なんですね、この『スパイダーバース』シリーズのマイルズくんの絵は。で、そこにバックスバニーみたいないわゆる昔なアメリカのアニメのキャラクターが入ってきちゃうんですよ。で、それだけじゃなくて日本のアニメあるじゃないですか美少女アニメ系のやつね。も、入ってきちゃうんですよ。日本アニメ系のスパイダーマンの女の子も出てくるんですよ。
(石山蓮華)えー!美少女スパイダーマンっていう事ですか?
(町山智浩)そうなんですよ。絵柄違うじゃん!っていう。絵柄が違う人達が一斉に同じ場所に集まって話をしてるというね。
(でか美ちゃん)あっでもマルチバースだからそういう事なのか。
(町山智浩)そうなんですよ。
(でか美ちゃん)あー!なるほど!
(石山蓮華)おもしろそう。
(でか美ちゃん)すごい表現の仕方ですね。
(町山智浩)描いた人が違うじゃんっていうね。感じなんですよ。
(でか美ちゃん)実際違うんですか?
(町山智浩)実際に違う人達、ものすごいたくさんのアニメーターの人達に一斉に発注して作ってるんですね、この『スパイダーバース』シリーズは。で、1作目が当たってアカデミー賞も取りましたんで。で、今回の『アクロス・ザ・スパイダーバース』。2作目ではもっとひどくしようという事で、240人スパイダーマンが出ます!
(石山蓮華)えーー!すごい!
スパイダーマンが240人出ます!
(町山智浩)ものすごくちっちゃく映っている人までいるんですけど。
(でか美ちゃん)じゃぁこれファンからしたら、マニアからしたら何回も見に行って見つけたいですね240人を。
(町山智浩)そうそうそう!一瞬でね、通り過ぎるからわかんないんですよ。だから何回も見なきゃなんなくて、そこにちょっと一部絵が送られてると思うんですけど、色んなスパイダーマンがいるでしょう?
(でか美ちゃん)ね!資料いただきましたけど、猫のスパイダーマンもいますね。かわいいんだ。
(石山蓮華)あと、女性のスパイダー・・
(町山智浩)猫だけじゃなくてね、馬とかね、色んなのがいますよ。
(でか美ちゃん)ね。女性もいるし・・。
(町山智浩)馬スパイダーマンって・・すごいのが出てきて。で、絵柄がね。例えばこれ全然絵柄が違うじゃないですか、それぞれのスパイダーマンのキャラクターが。描いてる人が違うから。(笑)
(石山蓮華)なんかこう、余白を残している絵もあれば、すごく3Dでリアルな猫ちゃんっていう感じのもありますし。
(町山智浩)そうなんですよ。インド系のスパイダーマンの彼が出てくるのは、ムンバイとマンハッタンが合体したムーンバッタンという、インドかアメリカがわからないような所でインド系のスパイダーマンが戦うんですけど、その時の背景は、キッチリと背景の絵の線を描いていない、手書きでラフに殴り書きしたみたいな背景なんですよ。これ見るとわかるんですけど。だから背景も違うの全部。
(でか美ちゃん)これが作画の分だけあるってことですよね?
スパイダーパンクというキャラクター
(町山智浩)そうなんです。で、左の下の方にねあるね、スパイダーパンクというキャラクター出てくるんですけど。
(でか美ちゃん)スプレーアートのような?
(町山智浩)そうそうそう。
(石山蓮華)あっギターを。エレキギターを抱えてますね。
(町山智浩)そうなんです。
(石山蓮華)あっしかも靴がブーツですね。
(町山智浩)ブーツなんです。安全靴なんですね。これだから1970年代のロンドンパンクのスパイダーマンなんですよ。
(でか美ちゃん)これだけいっぱい出てくるんですね。画風も違って。
(町山智浩)で、このスパイダーパンクの絵ね、これねパンクファンだったらわかるというか、その頃のパンクのそのレコードとか同人誌っていうのは、コピー紙だったんですよ。昔、コピーマシンってあったでしょう?ヴーって光るやつ。ゼロックスとか。あれで作ってたんで、切り抜きとかしてコラージュして。それの絵柄になってて、スパイダーパンクは。
(石山蓮華)ZINEっぽいってことですね。
(町山智浩)そうそう!よくわかりましたね!ZINEですZINE!MAGAZINEの”ZINE”なんですけど、同人誌の事ですね。アメリカとかイギリスでね。そのデザインになってるんで、他のスパイダーマンが3Dなのに、スパイダーパンクだけは完全な切り抜きとコラージュなんですよ。で印刷の網目とかも出ちゃってるんですよ。コピーの荒れとか。
(でか美ちゃん)絵柄が本当に色々あるから、それこそ最初に聞いた質問じゃないですけど、吹き替えの方が見やすいかもですね。もしかしたら。ね。
(町山智浩)そうそうそう。字幕を読んでる暇がないですね。情報量がすごくて。
(でか美ちゃん)あと、超しょうもない質問していいですか?私、蜘蛛が結構苦手なんですけど、見れると思います?(笑)
(町山智浩)ははは!
(石山蓮華)でか美ちゃん蜘蛛苦手なんですよね。
(でか美ちゃん)めちゃめちゃ苦手で。(笑)
(町山智浩)すごいよね、ヒーローなのに蜘蛛っていうのがね、また斬新だったんですけど。まぁそういう気持ち悪い所はないから大丈夫ですよ。
(でか美ちゃん)安心!安心です!これで見に行けます。(笑)
蜘蛛が苦手でも大丈夫!
(町山智浩)大丈夫ですよ。でまたね、敵がすごくて。敵はスポットっていう敵なんですけど、この彼は次元に穴を開ける事ができるんですよ。で、このスパイダーバースがいくつもある所をもう自由自在に通り抜けていく敵なんですけど、このスポットのキャラクターの描き方がすごくて、未完成なんですよ。アニメーションなんだけど。
(でか美ちゃん)未完成・・?
(町山智浩)未完成っていうのはね、コンピューターで絵を描いた事がある人だったらわかると思うんですけど、下絵をね、青い鉛筆で線描くんですよ、コンピューターでアニメを描く時って。
(石山蓮華)はいはい。この骨格から取ったりするん・・。
(町山智浩)その鉛筆線とかが残ってるんです。
(でか美ちゃん)えー!
(町山智浩)でね、完全に色も塗ってなかったりして、適当な未完成のまま敵が襲ってくるんですよ。絵柄が。
(でか美ちゃん)確かになんか、制作途中の3Dみたいなデザインですもんね。
(町山智浩)そうそうそう。下書きみたいなやつが襲ってくるの。
(でか美ちゃん)すごい不気味ですもん。これが。
(町山智浩)すごいなと思って。だからこれ、ものすごく斬新で。ありとあらゆることをやってて、あとね。グウェン・ステイシーというキャラクターがいまして。その人はピーター・パーカーの世界だと、ピーター・パーカーの恋人なんですけれども、死んじゃうんですよ。ところが、グウェン・ステイシーの世界というのがあって。そこでは逆にピーター・パーカーが死んで、グウェン・ステイシーが女性スパイダーマンになる世界なんですね。
(石山蓮華)うわっ!見たーい!
(町山智浩)それがね、すごいきれいなの。その子の世界が。
(でか美ちゃん)でも確かにビジュアルのね、いただいた資料を見る限り、糸の出し方とかが圧倒的に美しいですもんね。もう飛ぶように、翼のように。
(町山智浩)そう。特にこのグウェン・ステイシーの世界は、アメコミじゃなくて、水彩画というか、印象派の絵みたいな絵で描かれてるんですよ。全部。
(石山蓮華)やわらか〜い感じ。
(町山智浩)やわらかい絵で。で、全てがにじんで溶けているような流れるような絵で。しかもこのグウェン・ステイシーが寂しくなると、寂しい色になるんですよ。
(でか美ちゃん)わ〜絵で見たい。
(町山智浩)で、怒ると真っ赤になるんですよ。すごい事をやってて、で、これだけやるには一体どのくらいのアニメーターがいたのかって事になりますよね。
何人のアニメーターが参加したのか
(石山蓮華)えっ。スパイダーマン達が全部で240人出るんですよね。
(町山智浩)そう。で、背景とかも6のパターンの絵柄があって、6つのパターンがバラバラの絵柄なんですねさっき言ったみたいに。
(石山蓮華)背景もバラバラ。
(町山智浩)で、殆どの色を塗る時に、要するにアニメーションというのは素体という人間の軸になる、何も絵が描いてない人物が動くんですけれど、それに色を塗る訳ですけど、普通はコンピュータで自動的に色を塗るんですね。そうじゃなくて手書きしてるんです。手塗りしてるんですよ。
(石山蓮華)ええっ!いま?
(でか美ちゃん)なぜ!って思っちゃうけど。
(町山智浩)これはそのタッチを楽しむんですよ。その筆でこすったみたいなタッチってあるでしょう。
(でか美ちゃん)だし、その作品でね、マルチバース描くならそうした方がいいですもんね。絶対。
(町山智浩)そうなんですよ。だからやっぱりアメコミの手作り感っていうのを生かすために手塗りにしてるんで、多くのシーンを。アニメーター何人でしょう?
(石山蓮華)えー!じゃぁ〜今日手元に別のコーナーで使ったクイズ用のマシンがあるので。これ、入れますね。ピンポーン!
(でか美ちゃん)蓮華ちゃん。
(石山蓮華)2000人!
(町山智浩)おーー!
(でか美ちゃん)いやでもね、日本のアニメ業界の話とかだけだと結構厳しいと聞きますから。ピンポーン!ちょうど240人。
(町山智浩)あ〜まぁそう考えますよね。1人ずつね、タッチを変えるっていうんでね。実際はね1000人だそうですよ。1000人に殆ど同時に発注して。だからね、期間は短いんですよ。製作期間は。
(でか美ちゃん)そうか。キュッと作れる訳ですもんね、みんなで一斉に。
(町山智浩)そう。全員にバーッとばらかして発注してる。ただそれをまとめるのは大変だと思った。(笑)
(石山蓮華)だって1つの作品に集合させるってなったら、1000人の中でも進捗様々ありそうじゃないですか。
(でか美ちゃん)ね。でもちろん修正もあるだろうしね。
(町山智浩)修正もあるだろうし。1つの画面に違うタッチのキャラクターと違うタッチの絵が紛れ込んでくるんで、すごい大変だろうと思いましたね。これは。
(石山蓮華)なんかアニメ映画とかを見に行くと、スタッフロールものすごく長いじゃないですか。
(町山智浩)長いですね。
スタッフロールもすごく長い
(石山蓮華)今回の『スパイダーバース』も長そうですね!
(町山智浩)長い!ものすごく長かった!(笑)日本の人もいっぱい参加してますよ。
(石山蓮華)あっ、そうなんですか。
(町山智浩)全世界の人にね、もうできる限りね、仕事を分けてるんで。日本の方もすごく参加してます。あと面白いのはインドのシーンとかはインド系の人がやったりとかして。それぞれの民族の人に任せたりするとこも面白いですね。
(石山蓮華)なんか映画の作り方としても、その世界をグルッと巻き込んでやるってなんか素晴らしいですね。今っぽいなとも思いますし。
(町山智浩)そうなんですよ。スパイダーマン自身に色んな人種の人がいるんですよ。主人公はプエルトリコとアフリカ系だし、そのインド系の人もいるでしょう。あとメキシコ系とアイルランド系の人が出てきたり、殆どあらゆる人種が出てきます。日本人ももちろんいますし。
(でか美ちゃん)なんか勇気をもらえるだろうな。自国でスパイダーマンが出たら。
(石山蓮華)なんか自分に近いスパイダーマンを探したくなりそうですね。
(町山智浩)そう。まさにそういう事なんですよ。全ての国の人達、全ての・・あとそう、ゲイの人も出てきます。あと車椅子の人もいます。車椅子のスパイダーマンもいます。
(でか美ちゃん)それが大集合するんだ今回。
(石山蓮華)わ〜車椅子で・・。
(町山智浩)だからどんな人でも自分を投影できるスパイダーマンがどっかにいるっていう。すごい世界ですよこれは。
(でか美ちゃん)ラジオパーソナリティーのスパイダーマンいるかな〜。
(町山智浩)いるんじゃないかな。(笑)
(石山蓮華)電線が好きなスパイダーマンもいるかな〜?
(町山智浩)いるかもしれないですね。(笑)妊娠してるお母さんのスパイダーマンも出てきましたよ、お腹大きくて。
(でか美ちゃん)奥が深いですね、スパイダーマンは本当に。
(町山智浩)何でもいるんですよ。すごいんですけど。あとすごいのはね、音楽がいいんですよ。さっきからずっとかかってる曲が『スパイダーマン』の今回の音楽なんですよ。
(でか美ちゃん)え。なんかおしゃれじゃないですか?
スパイダーマンの主題歌も良い
(町山智浩)もんのすごいおしゃれ!おしゃれなんですよ今回。さっきのアニメソングのようなものとは全然違う、今1番おしゃれな曲が使われてますね。メトロ・ブーミンという人がね作ってるんですけど、この人も若いんですよ。まだ29歳かなんかなんですけど。
(石山蓮華)わっ!同世代だ。
(町山智浩)もうすごいよ、この人。天才で。どの曲もね、なんかね、でもちょっと寂しいんですよ。美しくて切ない曲ばっかりなんですよ。ヒップホップですけど。実はこの話、結構楽しそうなんだけど、切ない話なんですよ。
(でか美ちゃん)やっぱスパイダーマンって使命っていう感じがしますもんね。背負わされる感があるというかね。
(町山智浩)そう。スパイダーマンって必ず、自分の両親だったり、お父さんやお母さんやおじさんや愛する恋人や誰か愛する人を失ってるんですよ。全員。
(石山蓮華)なんかそのシリーズ切ないイメージがありますね。
(町山智浩)そうなんです。それが運命なんすよ。スパイダーマンの。で、今回のポスターに書いてあるのは”運命をぶっ潰せ”ってなってますよね。
(でか美ちゃん)はいはい。書いてありました。
(町山智浩)主人公のマイルズがその運命に逆らう事で、240人のスパイダーマンを全部敵に回します。
(石山蓮華)え!
(でか美ちゃん)はー!大丈夫?
(石山蓮華)『ジョン・ウィック』みたいな事になってるって事ですか?
(町山智浩)『ジョン・ウィック』!そう。その、色んなスパイダーマンが出てくるんですけど、全員敵です!
(でか美ちゃん)でも確かに日本版のポスターの構図、不思議だなと思ったんですよ。どういう事だろうって。なるほどね!
(石山蓮華)スパイダーマンが1人こう色んなスパイダーマンに立ち向かって、飛んでいくようなポーズのポスターですね。
(町山智浩)スパイダーマンの掟に主人公が逆らってしまうんで、全スパイダーマン対主人公の戦いになってくんですよ。
(でか美ちゃん)うわぁ面白そう!
(町山智浩)めちゃくちゃ面白そうでしょう!
(石山蓮華)色んな世界の自分達と出会ったり戦ったりするってのは『エブエブ』っぽいなとは思ったんですけど。
(町山智浩)その通りですね。今、作られる映画なんだなと思いましたね。でね、これね本当にもうすぐ公開なんですけども、1作目を見てなくても大丈夫。今回は。これだけで大丈夫。ただ、もしスパイダーマンの世界に入りたいんだったら、実写版の『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』は見てほしいです。実写版も実はこの『スパイダーバース』の中に入ってくるんですよ。大変な物になってますので。
(でか美ちゃん)実写も入ってくるんだ、すごい!
(町山智浩)で、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』がそのさっき言ったスパイダーマンの使命についての物語なので、犠牲とかですね、ヒーローとは何かっていう物語で、それをある程度受けてる作品なんで今回は。是非それを見てもらうとわかりやすいかなと思います。という事で、はい。
(でか美ちゃん)ね。今週金曜日に公開ですからね。
(石山蓮華)これはちょっと・・。
(町山智浩)もう本当に子供から、本当に60歳の初代『スパイダーマン』世代、池上遼一世代まで楽しめる映画になってます!はい。
(石山蓮華)町山さん、ありがとうございました。
(でか美ちゃん)ありがとうございました!
(町山智浩)どうもでした。
(石山蓮華)以上、アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんのアメリカ流れ者でした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③今作は”スパイダーバース”いわゆるマルチバーストいわれる多元宇宙モノ。
⑤ここがすごい!キャラによって絵柄が違う
⑥今作はスパイダーマンが240人出ます!