大いなる自由の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『大いなる自由』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『大いなる自由』解説レビューの概要
①6月はプライド月間
②プライド月間は、○○の人達の誇りを祝う
③1965年ドイツでハンスというゲイの男性が刑務所に入る
④当時、同性愛行為が○○だった
⑤ヴィクトールという男と刑務所で20年ぶりに再会
⑥刑務所内でもゲイは差別の対象
⑦くじけない強いハンスを見てヴィクトールは見直していく
⑧ハンスの手に入れた自由とは
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『大いなる自由』町山さんの評価とは
(町山智浩)今日はさらに人々を分断するような映画をちょっと紹介する事になります。
(石山蓮華)はい。お願いします。
(町山智浩)アメリカじゃないんですが、世界はですね、今6月はね、”プライド月間”なんですよ。
(石山蓮華)はい。
6月はプライド月間
(町山智浩)プライド月間というのは、あの元々アメリカで1960年代までゲイの人に対する警察の意味のない暴力とかずっと続いてて。つまりゲイバーがあるとゲイバーを警察が襲って、中にいるお客さんとかを殴ったりしてたんですよ昔は。
(でか美ちゃん)ひどいですね。
(町山智浩)ひどいんですけど。それで、69年に、ニューヨークのゲイバーでそれに怒ったお客さん達がですね、警官に石を投げて逮捕されるっていう事件がありまして。そこからその、それを記念してですね、ゲイの人達の誇りをですね、祝うプライド月間というものが始まっていくんですね。
(でか美ちゃん)そこから”プライド”が来てるんですね。
(町山智浩)そうです。プライドパレードというのをやって、その要は恥ずかしい事じゃないんだ、プライドを持てっていう事ですけども。元々、警察に対する戦いで始まってるんですけどね。で今は世界的にそのLGBTQの人達の権利を守るための、それを意識するための月間になってるんですが。で今日紹介する・・ちょっと2本時間があればしたいんですけど。
(でか美ちゃん)お願いします。
(町山智浩)というのはこれ、7月に2本連続して公開されるんでここでやっとかないと間に合わないんで。とりあえずね1本目は7月7日に公開される、これはドイツ・オーストリアの映画なんですけれども、『大いなる自由』という映画を紹介します。
〜音楽〜
(町山智浩)これシャンソンで。
(でか美ちゃん)ね、素敵な曲が流れてて。
(町山智浩)ドイツの映画でいきなりフランス語が流れましたが。(笑)
(石山蓮華)なんかこう、やわらか〜い。
(でか美ちゃん)聞き入っちゃった。(笑)
(町山智浩)これはね、ムジールっていうフランスのシャンソン歌手の人のね『L’amour l’amour l’amour』っていうね、”愛、愛、愛”っていうね、まぁすごいタイトルの曲なんですけど、これ1963年の曲なんですが、その頃の話なんですね。1965年ぐらいですね。のドイツで、ハンスというですねゲイの男性が刑務所に入るんですよ。実はその頃、ドイツでは同性愛行為をするとたとえ両者が成人男子で、ちゃんとした同意があったとしても犯罪になったんですよ。
(でか美ちゃん)なんか、つい最近なのにって感じしますよね。
(石山蓮華)本当ですよね。
1965年ドイツでハンスというゲイの男性が刑務所に入る
(町山智浩)はい。これね、ドイツだけじゃなくてイギリスとか他の国でもそうで、アメリカでもね、南部の方とか犯罪だったんですよ。本当に2人で普通に成人男子同士で一緒に暮らしてても、家の中に入ってきて逮捕してたりしてたんですよ警察が。
(でか美ちゃん)いやいや信じられないな。
(石山蓮華)ひどい。
(町山智浩)本当にひどい時代があって、でまぁこのハンスさんが入るんですけど刑務所に。するとそこにヴィクトールというですねごっつい男がいてですね。お前また来たのかよって言うんですよ。
(石山蓮華)いい声だ!
(でか美ちゃん)ねぇ。
(町山智浩)そういう感じなんですよ。ガタイのいい感じですね。で、実は2人は1945年に刑務所で1回会ってるんですよ。1945年というのは、ナチスドイツがね。連合軍に負けた年なんですけれども。このハンスは、その前にナチスによって逮捕されて強制収容所に入っていたんですよ。
(石山蓮華)えー。
ヴィクトールと刑務所で20年ぶりに再会
(町山智浩)これね、あまり知られてない事ではあるんですけど、ナチスドイツはユダヤ系の人を強制収容所に入れて虐殺してたんですけれども。それと一緒に、ゲイの人とか、精神や身体に障害のある人達とかも、一緒に強制収容所に入れてたんですよ。
(でか美ちゃん)えー!
(石山蓮華)そうだったんだぁ。
(町山智浩)元々、ドイツには刑法175条というですね男性同士の同性愛を禁止する法律があったんですけども。ナチスはそれを殺してしまうというね。で5000人ぐらいの同性愛の男性がナチス政権の間に殺されてると言われてますね。強制収容所で。で、ハンスはそれで入ってたんですけれども戦争が終わったからじゃぁ出れるのかと思ったら、その刑法175条は変わらなかったんですよドイツが負けた後も。
(石山蓮華)えーー。すご、明らかな人権侵害が。
(町山智浩)そうなんですけど。で、そのまんま強制収容所で、あぁ生き延びた!と思ったら、そのまま普通の刑務所に移されちゃうんですよ彼。
(でか美ちゃん)とんでもないな。
(町山智浩)ひどいんですけど。最初はねただね、その刑務所に入ってきて初めて会ったヴィクトールは、お前175条違反なんだってなって言うんですよ。お前な、俺に触るんじゃねえぞこのホモ野郎みたいな事を言うんですよ。
(石山蓮華)あー。
(町山智浩)で、お前らみたいな変態、俺は大嫌いなんだって言うんですよ、そのヴィクトールは。
(でか美ちゃん)ヴィクトールは差別する側だったのか。
刑務所内でもゲイは差別の対象
(町山智浩)そうそうそう。で、ハンスとヴィクトールは同じ狭い所に入れられちゃうんですけど、刑務所の檻の中にね。で最初はすごく、175条違反っていうと刑務所の中でものすごい虐待されるんですよ。
(石山蓮華)そうなんだ、その中でもさらに肩身が狭いんですね。
(町山智浩)で、囚人同士でもいじめるし、看守もいじめるし、めちゃくちゃにされてくんですけど。これすごく変なのは、実際は犯罪じゃないですよね彼らがした事は。
(でか美ちゃん)いや全く違いますよ。
(石山蓮華)全然。うんうん。
(町山智浩)そう。全く犯罪じゃないのに、罪がないのに実は刑務所の中で1番虐待されるんですよ。
(でか美ちゃん)いや〜、何がダメなんだっていう話ですからね。
(石山蓮華)何もダメじゃないですよ。
(町山智浩)そうなんですよ。で、最初ヴィクトールはすごく嫌がってるんですけども。このハンスがなかなか実は骨のある奴だって事が段々わかってくるんですよ。で、とにかく看守とかにめちゃくちゃ虐待されても絶対くじけないし、逆らい続けるんですよハンスは。だって悪い事してないんだから逆らうよね普通ね。
(石山蓮華)そうですよね。
(でか美ちゃん)正当な事を言ってるだけなんだけども、その状況だとそこまで自分を貫き通すのは、ちょっと難しかったりしますもんね。
同性愛者は両方とも刑務所に入れられてしまう
(町山智浩)ちょっと大変ですよね屈服しちゃいますよね、普通ね。でも彼はすごくね根性があって、しかもこれ男性同士で同性愛をしてると、両方とも刑務所に入れられるんですよ。
(でか美ちゃん)両方!まぁ片方もおかしいんですけど。
(町山智浩)で、自分と関係したために入った人がいる訳ですね刑務所に。そうすると、彼を助けてやろうっていう事で、いや僕が強制したんで、彼は無理やりやられたんだから、許してやってくれって言って、彼を刑務所から出してあげるんですよ。
(石山蓮華)お〜。
(町山智浩)で、その代わり自分は罪が重くなっちゃうんですよ。
(でか美ちゃん)恋人助けるために、恋人は異性愛者なんですみたいな事を言うって事ですよね、他人なんですみたいな。
(石山蓮華)そんな話・・。
くじけない強いハンスを見てヴィクトールは見直していく
(町山智浩)そうなんですよ。そういうね、くじけないし強いハンスを見てて、ヴィクトールは段々彼の事を見直していくんですね。でね、なんていうか、俺はそういうんじゃないよ、俺は同性愛じゃないんだけれどもっていちいち断るんですけどヴィクトールは。でも、だんだんだんだんこの2人の間に友情というか友情を超えたものが芽生えていくっていう話なんですよ。
(石山蓮華)う〜ん。じゃぁ差別意識を超えたところで、その新しい関係を結び始める。直すっていうか。
(町山智浩)そうなんですよ。で、さっき言ったみたいに一緒に刑務所に入ってる恋人がいる訳ですねハンスには。ただ別の所に入ってる訳ですけど、その彼のために暗号で書いた恋文を運んであげたりねそのヴィクトールが。そういう感じでハンスを助けるようになってくんですけれども、ただねこのヴィクトールの方は実は大変な問題があって。彼は実はこの45年に会って、65年にもう1回会うって、20年空いている訳ですよ間に。この人は20年刑務所に入ってる訳ですよ。
(でか美ちゃん)そうですね長い・・長い。
(町山智浩)ね。という事は何の罪を犯したかっていう事ですよね。
(でか美ちゃん)だいぶ重たい罪じゃないと、そんなにね、いない訳ですからね。
(町山智浩)普通はそうですよね。だから彼は出れない犯罪をしてる人で。
(でか美ちゃん)あー!
(石山蓮華)出られないんだ。
ヴィクトールの犯した罪
(町山智浩)で出られるような事があっても逆に彼は出ようとしないんですよ。
(石山蓮華)ええーっ!なぜ。
(町山智浩)すごい重い罪の罪悪感と、ずーっと入ってたから、怖くて刑務所から出られなくもなってるんですよ。
(でか美ちゃん)出ても社会復帰ができないだろうしとか。
(町山智浩)そう。20年入ってて。で刑務所の中の方が慣れちゃってて。っていうのがヴィクトールでっていう話なんですけど。そこでなんと1969年がやってくるんですよ。そうすると、今度はハンスの犯したっていう事になってる同性愛が、罪じゃなくなっちゃう訳ですよ。
(でか美ちゃん)ようやく。
(町山智浩)合法化されて。その犯罪自体、罪自体が存在しなくなっちゃうんですよ。したら今度ハンスは出れる訳ですよ。
(でか美ちゃん)そうですね。
(町山智浩)でもヴィクトールを置いていかなきゃなんないんですよ。
(でか美ちゃん)そうか、この友情とか親愛がね生まれてた中で。
愛情なのか友情なのか
(町山智浩)そうなんですよ。で、これがね、すごくいいなと思うのは、要するに男同士で仲良くしてると、すぐゲイなのか友情なのかとか言ったりするじゃないですか。愛情なのか、友情なのか。
(でか美ちゃん)そうやってね、茶化すような人もいるのか。
(町山智浩)そう。どっちかで分類しようとするじゃないですか。でもこの2人はね分類できないんですよ。友情なの愛情なのとかね。要するに、性愛としての同性愛なのかとか。
(でか美ちゃん)何か超えたものがあるっていう事ですよね?
(町山智浩)そうなんです。
(石山蓮華)全くこう別の理由の孤独を持って、大変な中でこう一緒にいたからこその、その関係性っていうのは何かありそうですね。
(町山智浩)そうなんですよ。だからすごくね、いい話になってて。これがね、なんというか、この『大いなる自由』っていうタイトルがね、非常に皮肉なタイトルでですね。ハンスは『大いなる自由』を得る事ができる訳ですよ。つまり1969年に同性愛が合法化されたから、彼は実際に刑務所から出て、しかもそこからは同性愛行為をしても犯罪じゃない訳ですから。今まで隠れてたのに、隠れなくてもよくなる訳ですね。で、ゲイバーとかもちゃんと合法的にオープンされるようになるんですよ。そこから。でも、それが本当の自由なのかなっていう話になってくんですよ。
(でか美ちゃん)そうですよね。
(町山智浩)で、彼は本当の自由を得る為に何をするかっていう映画なんですね。これ以上言うとあれアレなんですが。
(石山蓮華)わーーっ!もう、なんか、町山さんがどんどんどんどんこのあらすじをお話されるから。えっ!これっ!全部言っちゃうのかなあ!?。(笑)
(町山智浩)全部言っちゃうのかお前はって思いましたよね。(笑)いい加減にしろお前!公開日はまだ先だぞっていうね。(笑)いや、これはね、すごい、うわっ!と思いましたよ。
(でか美ちゃん)これは見ないと。
(石山蓮華)見たいな。
(町山智浩)これはすごいな!って思って。最初はね、要するに今もそのプライド月間だし、ドイツでこれだけ同性愛の人達が虐待されてたんだっていう事を告発するような映画なのかと思ったら、はるかにそれを超えてくとこに行くんですよね。
(でか美ちゃん)気になる見ないと。7月7日ですね日本での公開は。
(石山蓮華)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で公開。
(でか美ちゃん)あっ!これ最近オープンした所ですね。
(石山蓮華)そうですそうです。元々、渋谷TOEIがあった場所、あのビックカメラの上の所。あそこにあのBunkamuraが・・やってきた。
(町山智浩)あっ!あそこか!あそこに映ったんですか!あの角の所?
(石山蓮華)はい。宮益坂の下のところ。東京だとそこみたいです。7月7日か。
(町山智浩)子供の頃いつもあそこの映画館に行ってましたね。(笑)
(石山蓮華)あ〜そうですか、え、Bunkamuraにじゃなくて、あの東邦に?
(町山智浩)トーエイの方!角のTOEIね。(笑)
(石山蓮華)あっ、トーエイか。(笑)
(でか美ちゃん)じゃぁ町山さんの聖地でもある場所でちょっと。
(町山智浩)東映まんがまつりとかあそこで見てましたね。
(石山蓮華)えーーー東映漫画まつり!
(町山智浩)子供の頃ね。今、東映まんがまつりってないのか。
(石山蓮華)私が子供の頃は、かすかにその夏休み2本立てとかのイメージありましたけど。今はどうなんですかね〜?
(町山智浩)あそこで見ましたよ。
(でか美ちゃん)そちらで見に行ってみようと思いますけど。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②プライド月間は、ゲイの人達の誇りを祝う
④当時、同性愛行為が犯罪だった