バービーの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『バービー』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『バービー』解説レビューの概要
①バービーランドの話
②あらゆる職業をバービーがしている
③女性にもあらゆる可能性がある事を示すおもちゃ
④職業も人種も体型も色々なバービー人形
⑤ケンはバービーと一緒にいる以外なにもない人
⑥現実世界にバービーが飛び出していく
⑦バービーの制作会社、マテル社の重役は○ばかり
⑧バービーランドと現実世界のギャップ
⑨アイルランドは女性大統領を実現している国
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
町山さんの評価は?『バービー』解説
(町山智浩)でね、今日紹介するのは今、アメリカっていうかアイルランドで見てたんですけど、アイルランドで大大大ヒットしてたね、『バービー』という映画をご紹介します!
(でか美ちゃん)かわいいですね。
(石山蓮華)上がりますね。
(町山智浩)バービーって、持ってたり遊んだりしました?
(石山蓮華)私持ってました。背の高い金髪のバービーちゃん人形と、あとそのお家、ショッキングピンクの。なんか持ち運べるお家っていうのを持ってましたね。
(町山智浩)折り畳み式のやつね。
(石山蓮華)そうですそうです!
(でか美ちゃん)私は持ってこそいなかったですけど、やっぱり憧れはすごくありましたよ。バービー人形に対する。
(町山智浩)おぉ。なんかこう、アメリカンな感じでしょ、バービー人形っていうと。
(でか美ちゃん)そうですね。なんかオシャレな。オモチャの中でも、リカちゃんとかも好きだったけど、おしゃれな子が持ってるイメージだったから。
おしゃれな子が持ってるイメージのバービー人形
(町山智浩)あぁ。それね。庶民的でなくてね、ハイセンスでね。で、バービー人形の映画なんですね、これ『バービー』っていうのは。
(石山蓮華)映画になるとは思いませんでしたね。
(町山智浩)映画にするかそれって思いますけど。なんでも映画にするんでアメリカはね。オモチャだろうと遊園地のアトラクションだろうと全部映画にしちゃうんで。今回『バービー』やったらですね、アイルランド行ったらね、映画館の前をですね、若者たちがピンクの服着て、取り囲んでる状態になりましたよ。
(でか美ちゃん)へぇ〜!じゃぁドレスコードある訳ではないけど、そのノリが生まれてるんですね。
(町山智浩)そうなんです。男の子も結構来てたんですよ。
(石山蓮華)えぇ、そうなんですか。
(でか美ちゃん)えぇ、素敵!
男性も映画鑑賞に来ている
(町山智浩)20代前後のね、20歳ぐらいの男の子達が”バービー”って書いたピンクのシャツ着て来てるんですよ。男同士で。
(石山蓮華)楽しそうですね!
(でか美ちゃん)楽しそう!
(町山智浩)そう。でね、これ女性監督による映画での史上最大の興行収入を上げてますね。
(でか美ちゃん)ほー!すごい!
バービーランドの話
(町山智浩)すごい事になってますこれ。で、これねバービーランドの話なんですよ。バービー達が住む国があるんですね。で、そこではあらゆる職業をバービーがしてるんですよ。これね、バービーって最初1950年代に売り出した時はただのおしゃれをする着せ替え人形だったんですけども、その後アメリカで1960年代後半から、男女の雇用機会均等法ができてですね。女性が色んな仕事に進出していったので。それを反映してバービーにも色んな職業があるんですけど。例えばその・・日本でいうとリカちゃん人形みたいなものなんですけどバービーは。バービーは例えば人形だと普通、看護婦さんってのがありますよね、看護師さん。で、バービーは、お医者さんがあるんですよ。
(でか美ちゃん)あ〜なるほど。
(町山智浩)そこの差ですね。で、リカちゃん人形だとスチュワーデスさん、CAさんだったんですけども、バービーは飛行機のパイロットなんですよ。
(石山蓮華)じゃぁそのジェンダーのステレオタイプにとらわれず、色々な衣装があるって事なんですね。
(町山智浩)そうなんです。宇宙飛行士もあるしね。消防士さんとか、大統領のバービーもあります。
(石山蓮華)大統領〜!
(でか美ちゃん)なんか小さいうちからそうやって触れてたら、色んな刷り込みとかがなくなる気はする。ちゃんと。
(石山蓮華)うん。なんかなんにでもなれるんだなっていうのを身近なところから教えてくれますね。
女性にもあらゆる可能性がある事を示す
(町山智浩)そうそう。もう幼い女の子達に、女性にもあらゆる可能性があるんだって事を示すおもちゃになってるんですね、バービーは。だからそのバービーランドに行くと、主人公演じるのはマーゴット・ロビーさんという女優さんなんですけども、彼女はバービーっていう主人公なんですが、他の色んな職業やってる人もみんなバービーなんですよ。
(でか美ちゃん)あ〜、そっか。(笑)
(町山智浩)名前が同じなの。(笑)
(でか美ちゃん)主人公のバービーと主人公じゃないバービーがいっぱいいる状態、ははは。
(町山智浩)そう。それでね、キャスティングリストが最後に出るんですけど、役名が全員「バービー」なの。何だかわからない。(笑)
(石山蓮華)面白い!(笑)
(町山智浩)バービー、バービー、バービー、バービーって出てて、演じる役者さんが全部違うっていう、なんだこれって思いましたよ。(笑)
(石山蓮華)脚本とかどうやって書いてるんですかね。
監督・脚本グレタ・ガーウィグ
(町山智浩)これね、監督と脚本がグレタ・ガーウィグさんっていう、女優でもある人なんですけれども。で、旦那さんがノア・バームバックさんという人で、2人で映画を作ってるんですね。で、2人で脚本を書いてるんですけど、この夫婦はとんでもない夫婦ですよ!まず最初にガーウィグさんは、『フランシス・ハ』という映画の脚本と主演で出てきたんですね。
(石山蓮華)大好きです!この映画!
(町山智浩)えっ本当?
(石山蓮華)本当に大好きですぅ〜!もう人生の一生持っておきたい映画数本に入るくらい好きです。
(町山智浩)あぁ本当に。これガーウィグさんがいきなりニューヨークの地下鉄のホームで、いわゆる立ち小便をする所から始まるんですよね。(笑)
(でか美ちゃん)えーー!すごい衝撃的なスタート。
(町山智浩)危ないですよ。やっちゃダメですよ、電気流れるから。(笑)で、それを監督したのが旦那さんのノア・バームバックさんで。だからこの夫婦の『バービー』だから。これね、12歳以下の子供はなるべく見ない方がいいっていう、”PG13指定”だったんですねアメリカでは。で、どうしてかっていうと、セリフとかがとんでもなくて、バービーが「私にはヴァジャイナがないのよ」って。(笑)
(石山蓮華)確かに。(笑)ほんとだ。(笑)
バービーはPG13指定
(町山智浩)で、私のボーイフレンドのケンにもペニスはないしって言うんで。全体そういう内容なので、小学生はなるべく見ないでいいって事になってるんですけど。ただ映画館、子供いっぱいいましたよ。
(石山蓮華)あぁそうですか、まぁ確かにね。
(町山智浩)ママ!バービーの映画だから連れてって〜!とか言って、ちっちゃい子がたくさん来てるんですけど。まあ見てもたぶんセリフの内容はわかんないと思いますけどね。
(でか美ちゃん)親御さんがちょっと気まずいというぐらいで。(笑)
(町山智浩)そうそう。わっ、マズいなこれと思ったと思いますけど。あとね、そのねバービーランドはね、色んな職業をバービーがやってるだけじゃなくて、バービーにも色んな体型の女性がいるんですよ。で、バービーって最初、いわゆる八頭身のモデル体型で痩せて出てきたじゃないですか。スラッと。で、それがすごく批判されて、女性のステレオタイプ化とか、あと拒食症に繋がると。バービーみたいになりたいって言って痩せちゃう子とかが出てくるから。今、バービーは色んな体型があるんですよアメリカでは。
(でか美ちゃん)いいですね。そうやって、ちょっとずつ子供の心を思ってるなって。職業にしても体型にしても。
(石山蓮華)うん、なんか人種も色々なんですよね?
職業も人種も体型も色々なバービー
(町山智浩)人種も色々なんですよ。最初は白人だけのものとして出てきたんですけれども、まぁアメリカは黒人もいればラテン系の人もいるしアジア系の人もいるんで、今は全部バービーあるんですね、全ての人種の。
(でか美ちゃん)この前のスパイダーマンに近いような感じがしますね。
(町山智浩)あぁそうです。近いですね。需要があるからそうなったんですよ、お客さんがいるからね。だって黒人のお客さんに売れないと困るから。バービーも黒人のやつを売り出すというような感じでね。だからすごい一種、女性が支配する完璧な世界がバービーランドなんですね。
(石山蓮華)なるほど、はい。
(町山智浩で、その世界で男は何してるのかっていう話なんですよ。で、男は全員ケンっていう名前なんです。で、ケンという相手役のおもちゃがあるんですね、バービー人形の。で、彼はねイケメンっていう以外の、何も持っていない人なんですね。
(でか美ちゃん)そうなんだ。でも確かにケンって知ってるけど、ケンが何をしてる人か知らないですもんね。
(石山蓮華)なんか見た目がいいっていう。
(町山智浩)そう。見た目がよくて、バービーのボーイフレンドっていう以外の何も持っていない男がケンなんですよ。これ演じるのはねライアン・ゴズリングさんで。体がすごいんですよムキムキで。42歳ですよ?(笑)
(石山蓮華)えっ!42歳。手元に写真ありますけど、シックスパックパキパキですね!
(でか美ちゃん)っていうかケンそっくり!びっくりした。
ケンを演じるライアン・ゴズリング
(町山智浩)ねえ。2人の子持ちなんですけどね、このお父さんね。42でケンやってるんですよ。すごい世界なんですけど。で、まぁそういう女性が支配する素晴らしいバービーランドで、主人公のバービー。ね、色んなバービーがいるので、マーゴット・ロビー扮するバービーは楽しく暮らしてるんですが、ある日突然ですね、その生活に不安を覚え始めるんですよ。これでいいんだろうかと。私にも老いとか死が来るんじゃないかって事を考え出しちゃうんですよ。人形のくせに。それだけじゃなくてね、太ももの裏側にセルライトが出ちゃうんですよ。
(でか美ちゃん)人形なのに。
(石山蓮華)太ももをギュッとつまむと出てくる脂肪のボコボコの事ですね?
(町山智浩)ね。人形なのに。プラスチックの人形なのに。で、これはどうしたのかしらって思って、それを色々と原因を探ると、どうも人間界の方で、現実界の方で何かが起こってるみたいだと。で、その原因を探るために現実世界にバービーが飛び出していくっていう話なんですよ。
(石山蓮華)へー!
現実世界にバービーが飛び出していく
(町山智浩)ケンもね、なぜかついてくんですけど。(笑)
(でか美ちゃん)来てくれんだ、ケンは。
(町山智浩)そう。ケンはね、バービーと一緒にいる以外、何もない人なので。
(でか美ちゃん)そっか。だからついて来てくれるんですね。
ケンはバービーと一緒にいる以外なにもない人
(町山智浩)ついてくるんですよ。で、現実世界に入ると、なんと驚くのはバービーランドのようじゃないんですね。アメリカの大統領は女性がなった事ないし、アメリカの企業は女性の進出がかなり進んではいるんですけど、重役にはなかなか女性はなれないんですね、アメリカでは。で、女性パイロットもそれほど多くはないし、あれ?なに、現実世界っていうのは女性が支配してないのってびっくりしちゃうんですね。
(石山蓮華)なるほどなるほど。
(町山智浩)で、特にこのバービーを作ってるマテル社の本社に行くんですけど、2人は。マテル社の、要するにバービーを作ってるにも関わらずマテル社の重役は男ばっかりなんですよ。
(石山蓮華)あれって思いますね。
(でか美ちゃん)ねえ。
バービーの制作会社、マテル社の重役は男ばかり
(町山智浩)ねえ。日本の政治家とか企業とかで、女性の社会進出をサポートしますとか言ってるやつらがおっさんばっかりっていうのと同じですよ。
(石山蓮華)本当にびっくりしますよね!
(でか美ちゃん)あの集合写真ギャグみたいですよね!申し訳ないけどあれっ!みたいな。
(石山蓮華)ですよね。あれれ?みんなおじさんだ〜っていうね。
(町山智浩)ねぇ。政治家がそう言うんだったら、その政治家たちの半分は女性じゃなきゃおかしいわけですよね。自分達の地位は全然渡さないくせに、うちの会社はね、うちの国は女性に進出してほしいと思ってるんですとか言って。だったら、半分は女性にしろっていう事ですよね。
(石山蓮華)まずそこからっていう事ですよね。
バービーランドと現実世界のギャップ
(町山智浩)まずそこからなんですけど、絶対自分たちの地位は渡さないんですよ男は。で、男が支配してる訳ですけど、それを見てバービーは、えっ!って思うんですが、ケンは、すげえな!と思っちゃうんですよ。
(石山蓮華)じゃあ!そのバービーランドと現実の世界で男女の役割が本当にこう反転するんですね。
(町山智浩)そうなんです。だからバービーランドは夢の世界だったって事を知って。それでケンの方は、すげぇやっぱり俺は男だ!今まで自分が何者かわからなくてとても不安だったけれども、男がこの世界を支配すればいいんだって思って。バービーランドに帰って反乱を起こしちゃうんですよ。
(でか美ちゃん)お〜ケンがついに意思を持って。
(町山智浩)ケンが意思を持って。
(でか美ちゃん)自我が芽生える。なかったのに。
(町山智浩)そう。なかったのにね。それで、バービーの方は、自分がどうして老いとか死を考えるようになったのかっていう理由を探っていくと、そのマテル社で、バービーが大好きで大好きで子供の頃からね。マテル社に入った女性がいて、その女性と会うんですよ。もう中年で娘もいるんですけど。で、娘さんの方は最近の子なんで、バービーなんてだせぇみたいねね。バービーとか、あれって女性差別的だし。あれでもまだ女性差別的だって批判されてるんですアメリカでは。あと消費主義的だしってね。おしゃれして色んな服をとっかえひっかえするからですね。で、その娘さんはティーンなんで、バービーとかね、すごく反フェミニズムで良くないと思うのとかって言って、遊ばないんですよバービーでは。その娘は。ただお母さんの方は、バービーは素晴らしいのよ、私はバービーを素晴らしくしようとして一生懸命マテル社の中で頑張ってるのよっていうお母さんなんですよ。でも、彼女は重役にはなれないんです!
(でか美ちゃん)そっか。ガラスの天井っていうやつ。
(町山智浩)そう。ガラスの天井ですよ。これすごいのはマテル社が制作してる映画なんですよ?
(でか美ちゃん)や〜立派だな〜って思っちゃうな〜。すごいな!
(石山蓮華)自己批判も含めてなんですね。えーー!それは見たいな〜!
(町山智浩)これすごいですよ。だって最初にマテル社の”マテル”っていうマークがグルグル回って出てきますからね。
(石山蓮華)へぇ〜〜!
マテル社公認の映画化
(町山智浩)この内容でね、よく映画化を許したなっていう。すごいものになってますよ。
(でか美ちゃん)『サンクチュアリ』は協力してもらえなかったのにってちょっと思っちゃいますね。(笑)
(町山智浩)ねぇ。サンクチュアリの相撲協会は協力しないんですけど。マテル社は太っ腹なのかなんなのかっていうね。すごいですよ。でもコメディ。聞いてわかるように完全にコメディですから、みんなケラケラ笑ってるんですけど。でね、面白いのはね。ケンがね、今まで知らなかった男の夢ってやつを果たしてやるぜって言うんですよ。で、何やるかっていうと、ギターで弾き語りをしてバービーに歌を聞かせるっていうのをやるんですよ。
(石山蓮華)かわいらしいですね。
(町山智浩)かわいいんですけど、そのケンはたくさんいるんですよ。その世界は全部ケンなんですね。
(でか美ちゃん)あぁそっかそっか、男性はケンだから。
(町山智浩)1万人ぐらいケンがいるんですけど。ケンの夢っていうのはギターでラブソングを歌って、バービーに聞かせるっていう事をやりたいって言ってみんなでやるんですけど。バービーみんなね、はいはいっていう顔で聞くんですよそれを。あのね、ギターを弾いて聞かせるっていうのは男がやりたい事であって、女性がしてもらいたい事じゃなかったっていう。(笑)
(石山蓮華)わーーそっかーー。ひとりよがりなプレイですね。
(町山智浩)そう。もうあるあるでね、もう死ぬほど笑いましたよそのシーン。(笑)うわっ恥ずかしい〜!みたいなね。
(石山蓮華)すごい!町山さん、Zoom越しに顔が赤くなってらっしゃいますね。(笑)
(でか美ちゃん)でもなんか、バービーランドは理想の、女性中心で女性が活躍してる世界だけど現実は違くて。でも、何だろうな、ケンがギターで歌いたがったりとか。現実と色んなものがないまぜな感じが面白そうですね。
(町山智浩)結構ね、人形の話なのにあるある感があるというね。でね、これはアイルランドでものすごくお客さんが入ってるんですけど。アイルランドって、女性大統領を実現してる国なんですよね。
(でか美ちゃん)あぁそうだ。
アイルランドは女性大統領を実現している国
(町山智浩)1990年にメアリー・ロビンソンさんが女性大統領になって、それまでアイルランドでは人工中絶も避妊も禁止、離婚も禁止、特に女性からの離婚が禁止。で、未婚で妊娠すると子供をさらわれて売られちゃうというひどい世界だったんですけども、それを全部そのロビンソン大統領は全部正しくして。離婚とか避妊とかを合法にして、人工中絶も合法にして、同性愛も禁止だったのにそれも合法にしただけじゃなくて、同性婚もヨーロッパで最初に実現してるんですよ。
(石山蓮華)先進的ですね。
(町山智浩)だから、バービーの世界は現実じゃないってなってるんですけど、この映画では、アメリカだから。でもアイルランドでは実際にそれを実現して女性大統領が世の中を改革して改善したんで。だからアイルランドの人達は違う気持ちで、俺達はバービーランドに住んでるんだと思いながら見てたんじゃないかなと思いますけど。だから日本はもっともっと遅れてる訳ですけどね。
(でか美ちゃん)そうですよね。それこそケンみたいな役割の女性がいたりしますからね。今だにね。
(石山蓮華)そうなんですよね。
(町山智浩)そうなんですよ。
(石山蓮華)だからもしかしたら、国内の見た女性っていうのはケン側に何かシンパシーを感じる所も、もしかしたらあるかもしれませんね。
(町山智浩)かもしれないですね。彼女としてのねアイデンティティーしかないみたいなとこにね、思い込まされてたりしますからね。でもこの映画はね、そういう感じでバービー人形の映画?バカじゃねぇのと思う人も多いかもしれないんですけども、とんでもない革命的な映画になってますんで、是非ご覧ください!
(石山蓮華)はい。これはもう絶対見に行きましょう!今日は8月11日に公開される映画、『バービー』をご紹介頂きました。町山さん、ありがとうございました!
(町山智浩)どうもでした。
後日談
■2023年8月15日放送のこねくとにて
(石山蓮華)7月25日に町山さんにご紹介頂いた、映画『バービー』。こちらも早速、私もでか美ちゃんも見てきました!
(でか美ちゃん)見てきました!
(町山智浩)あ〜どうでした?
(でか美ちゃん)今日はちょっとね、その感想戦、多めに話そうっていう風に町山さんおっしゃってくださったんで。嬉しい。
(石山蓮華)町山さんが、映画の感想を私達に聞きたいって言ってくれるんだっていうのが、めっちゃまず嬉しくて。
(でか美ちゃん)嬉しい嬉しい。
(町山智浩)『バービー』はだって、女性の感想聞きたいですよ。
(でか美ちゃん)確かに。作品見るとそう思った。
(石山蓮華)なんか本当に私自身、始まってから、ずっと結構もう笑ったり泣いたり、色んなこう気持ちが止まらなく、まぁ〜本当に最高の映画だなと思って、Tシャツも買って帰りました。
(でか美ちゃん)”バービーランド”って書いてあるTシャツ。
(石山蓮華)買いまして。で、その映画の最後のセリフっていうのが、結構そのメッセージもしっかり強いし、印象的なものだったんですけど、私はあのセリフに完璧に感化されて、自分の卵巣のMRIの画像を、全面にプリントし、後ろに最後のセリフを1行ポンッと書いたオリジナルTシャツを発注しました。
(でか美ちゃん)ええっ!私もほしいそれ。あ、でも自分の卵巣の方がいいか。まぁそんなこだわりがあるかどうかは別として。
(石山蓮華)でも全然、なんかその、あげるよ。(笑)
(町山智浩)すげぇ!
(でか美ちゃん)なんかね、感化のされ方独特〜。(笑)でもいいねファッションにするって。
(石山蓮華)それぐらいやっぱり、そのメッセージ性っていうのをポップに表現してくれるから、自分でもまず気付いた所から行動してみたいって。動いてみようって、思える、本当いい映画でしたね。
(でか美ちゃん)ね!
(町山智浩)僕はね、そんな反応とは思わなかったんですけど。(笑)
(でか美ちゃん)まさかTシャツを作るとはってね。
(町山智浩)びっくりしたんですけど。(笑)僕はね、すっごく見ててね、これどうしようかって思いましたよ。
(でか美ちゃん)それはなんか、ギクッ!みたいな事なんですか?
(町山智浩)そうそうそう。だからケンっていう男性達がいて、バービーランドには。まぁケンしかいないんですけど、ケンがたくさんいるんですが。彼らが革命を起こしちゃって、それまで女性が支配していたバービーランドを乗っ取って、まぁ政権を取っちゃうじゃないですか。それで今度はバービー達がさらにケンから、バービーランドを取り戻す為に、ケン達を罠にはめようとする時に、彼女達が、男を罠にはめるのは実は簡単よっつって。「『ゴッドファーザー』私見た事ないんで、解説してくれない?」って言うところあったじゃないですか。
(石山蓮華)ありましたね。
(町山智浩)するともう、超嬉しそうにケン達が、「『ゴッドファーザー』っていう映画はね、フランシス・フォード・コッポラとね、ロバート・エヴァンスがね」とか言い始めるんですけど。
(でか美ちゃん)見た事ないの?って言いながらね。(笑)
(石山蓮華)そうそう、あっ!あの名作を〜?って。(笑)
(町山智浩)すげぇ解説する時に、もう超嬉しそうだし、で、あそこでとにかく男達っていうのは、何かを説明させたり解説させたり、教えてって言うと超喜ぶのよって。
(でか美ちゃん)教えたがりみたいなね。
(町山智浩)教えたがり屋ね。で、ケンがズラッと揃って、もう何百人ものケンが一斉に、教えます!って言うんですよね。(笑)俺、それ仕事だからと思いましたけどね。(笑)
(石山蓮華)はははは!いや、私もその映画を見てる時に、あ、町山さんこのシーンどうやって見てるんだろう!って。(笑)
(でか美ちゃん)私も思った。(笑)
(町山智浩)もう本当にどうしようと思って。
(でか美ちゃん)町山さんの場合はね、もうご職業というか。プライベート文化うんちく語りたがり男性の話だから。ケンの場合は。町山さんは職業ですから。(笑)
(町山智浩)一応職業だけど。でもあの映画『バービー』の中では、その男の教えたがりっていうのは、一種の男の欲望として描いてるじゃないですか。
(でか美ちゃん)そうですね、うん。
(町山智浩)で、それをすごい快感として描いてて。あれを、いわゆるマンスプレイニング(mansplaining)っていうんですよね英語だとね。男は教えたがりだからっていうね。で、あの時、バービー達は、それを聞いてる表情というのが、「はいはい」って顔で聞いてるじゃないですか。
(でか美ちゃん)聞いてあげてる顔なんですよね。
(町山智浩)そうそう!その状況でさ、なんていうの?接待してる訳じゃない、女の人達は。でも、それに誰も気が付いてないんだよね男達は。
(でか美ちゃん)ね。だから私も見た感想としては、ちょっとやっぱ今日、番組で色んなお話してるんで、やっぱりこう映画の公式Twitterの事とかは私もすごく色々思うところはありつつ、どの国も企業の中の人のアカウントって炎上しがちなんだなっていう、そのあるあるっぽい部分もあるのかなとかも思いつつ、やっぱり作品を見て、”あの件”でこの映画を見ないっていう風なストッパーがかかってるんだとしたら、本当にもったいないと思いました。是非見てほしいし、なんかもはや、あのTwitterの1件とか、ああいうものをなんか冷笑的に見たりとか、その戦争みたいなものをああいう視点で面白がっちゃうみたいなのって、それこそ。もちろん男性だけの責任じゃないという前提はありつつ、いわゆる男社会の成れの果てだと思ったんですよ。あのムーブメント自体が。なんか不謹慎なことを面白がってみる。俺は強いぞみたいな。だから、『バービー』自体がそういうもの全体をすごく皮肉たっぷりに描いてて、かつ、別に説教臭くない作品だったから。めっちゃ見てほしいと思いましたね。面白かったし。私が1番、まぁ男女って分けてもアレなんだけど、象徴的だなって思ったのが、バービー達がバービーランドで、「ガールズナイトよ!ケンバイバイ!ケン帰って」みたいな感じで、女達だけでね、毎夜毎夜パーティーしてるんですけど、ガールズナイトはガールズナイトなんですよ。でも、ケン達がケンダムって。「男の国だ!」ってやった時に、ボーイズナイトには女の接待が必要だったんですよね。ボーイズナイトには女も参加してるんですよ。でも、そのお酒を出したりとか、マッサージしてあげるわよっていう。男だけの世界ではないんですよね、ボーイズナイトは。
(石山蓮華)発言権がない女が発生するのがボーイズナイトなんですかね。
(でか美ちゃん)そうそう。でガールズナイトは、まぁ良くない点を挙げるとすれば、ボーイズを排除しているっていう部分があって。それがすごい男女の差があるなって思って。なんかこう、その作品としてグレタ・ガーウィグさんは、女性のそういう、その女は男性をちょっと排除しすぎてしまうみたいな部分も描いてるし、男の人はどういう場面でも女性の手助けを必要としてしまう部分も描いてて、どの角度も皮肉にポップに描いててすごいなと思いました。面白かったです本当に。
(町山智浩)うんうん。だから基本的に全部ギャグにしてるから、全然押し付けがましくないのと。あと僕すごいなと思ったのは、ケン同士を戦わせるじゃないですか。嫉妬させて。バービーね。それで男同士が戦い始めるんだけど、戦ってる様子が戦争になるんですけど、遊んでるようにも見えるでしょう?
(でか美ちゃん)そうですね。人形のごっこのね。
(町山智浩)そうそう。で、スポーツをしてるようにも見えるし、お祭りみたいにも見えるの、要するに騎馬戦みたいな事をして。
(石山蓮華)神輿を担いで。
(でか美ちゃん)盛り上がっているように見えちゃうって。
(町山智浩)そう。でもね、実際、人類史的にはね、戦争もね祭りもスポーツも同じものなんですよ。発生源が。スポーツっていうのは一種の戦争のシミュレーションだったり、お祭りって結構ほら、男同士がそれこそ喧嘩祭りっていうのがあったりして。で神輿同士で戦わせたりとかね。実際に人が死んだりするのもあるんですけど。世界中みんなそうで。だからあれ全部、実は祭り、戦争、スポーツっていうのは同じものなんだっていうことを一瞬で描いちゃってるんで。っていうとまたマンスプレイニングになるんで、解説ができない!(笑)
(でか美ちゃん)いやでも、もちろんでも、その知らない、知りたい事を聞きに来てる時は本当にありがたいですよ。それは男女関係ないですからね。
(石山蓮華)解説とマンスプレイニングって非常に近しいところにあると思うんですけど、でも今回やっぱり私達が町山さんのお話を伺いたいし町山さんの話好きだし、だから、これからも解説はお願いします!
(でか美ちゃん)そうですよ!怖がらないで!町山さん怖がらないで!
(町山智浩)こうやって許してもらっているのもバービーの罠かと思うじゃないですか。(笑)
(でか美ちゃん)だから本当、堂々巡りになっちゃいますよね。これも言わせてるのかな?って。そういう町山さんみたいに、俺大丈夫か?って思える人は大丈夫って言ったらちょっとザックリしすぎかもしれないけど。
(町山智浩)いや、この間だってね、本当に『ゴッドファーザー』をカミさんに見せて解説したばっかりだったから。(笑)
(でか美ちゃん)はははははは!
(町山智浩)うわっ!やってんじゃん!っていうね。(笑)ヤバ!って思ったですけどね。
(石山蓮華)でもなんか『バービー』がすごくいいなと私が思ったのは、やっぱり女性の物語であり、そのケンっていう男性の物語でもあるんですけど、描いている事が”男社会”って字幕版ではなってたけど、その家父長制によって、個人というものがそれぞれの性格とか、ファッションとか、嗜好とかじゃなく、”こうあるべき”にとらわれてしまうという事から解放していこうっていう所が、やっぱりこれは女だけの映画でもないし、男だけの映画でもなくて、みんなの映画だっていうのがめちゃくちゃ面白い、自分を取り戻す物語だなっと思って。
(町山智浩)そうですね。途中でバービーの事が子供の頃から好きだったお母さんが出てきて、マテル社で働いてるんですけど。彼女は大人になってみたら全然バービーみたいに宇宙飛行士にもなれないし大統領にもなれないし、お医者さんにもパイロットにもなれないっていって自分がすごく惨めな気持ちになってきたっていう話をしますよね?で、彼女は突然そこから演説に入っていくんですけど。
(でか美ちゃん)あれがいいですよね。
(町山智浩)ね。女って生きるのが大変で、ちょっと太ると太ったねって言われて、痩せると痩せすぎだって言われる。リーダーシップを取れって言われるから一生懸命やると、威張るな、女のくせと言われると。もうどこへも行けないけれども一生懸命それでやってる。例えば女だったら母にならなきゃって言われるから、一生懸命お母さんとして頑張ると、子供の事ばっかりかまってて。子育てを仕事に持ち込むなとか言われたりする。どこにも行けない!っていう話をするじゃないですか。で、実はそのバービーっていう人形は宇宙飛行士とか色んな可能性を・・ファッションデザイナーとか色んな職業があるんだけども、その非常に普通に女性が生きていくっていう事を救ってくれないんじゃないかっていう。これバービーのお金で作ってる映画なのに、バービーの問題点を指摘するっていうすごい事になってますよこの映画。
(でか美ちゃん)すごかった。マテル社の懐の深さって言ったらアレなのかもしれないけど、でも開き直ってもらっても困るんだよって思うし。
(石山蓮華)そうですよね。あとこのバービーを作ってるマテル社のCEO役のウィル・フェレルが出てきて!嬉しかった!
(でか美ちゃん)本当に面白かったのが、急いでエレベーター乗ってバービーを追いかけなきゃいけないとかそういう場面でもエレベーターを開けて!ボタンは僕が押したい!」とか「ここのあれが通れない!」とか、なんかそのあれがね。
(石山蓮華)会社員あるあるみたいな。(笑)
(でか美ちゃん)会社員あるあるも本当にそれもポップに描いてて。
(町山智浩)ねぇ。重役が11人いて全部男でってなってるんですけど、本当はマテル社の重役は11人中、5人は女性なんですよ。
(でか美ちゃん)うん、そうなんですね。
(町山智浩)ただね、マテル社っていう会社名にも問題があって。マテル(Mattel)って2つの名前を合体させたものなんですね。それは、バービーを作ったルース・ハンドラーさんの旦那さんと、もう1人のマトソンさんっていう人の名前を合体させて、マット+エルでマテルっていう名前なんですけども、実は、マテルを作る最初のアイディアを出したバービーの創作者のルース・ハンドラーさんの名前はマテル社の名前に入ってないんですよ。
(石山蓮華)お〜女性不在なんですね。
(町山智浩)そう。彼女が本当は作ったのに。でやっぱりそういう問題とかもね全部描いてて。私がマテルを作ったのよって言うじゃないですか。でも名前は残ってないんですよ。ルースさん。色んな問題をね結構マテルの内部事情とかも全部、あの脱税したとかそういう事まで言っちゃってて。(笑)普通そんなのチェック入るでしょうだって。これ関係ねぇだろ脱税とか。全部言っちゃうっていうね。すごい映画ですよ。
(でか美ちゃん)もう色んな角度から面白かったですね、本当に。
(石山蓮華)そして先日の町山さんの『バービー』の解説は、各種ポッドキャストでも配信されていますので、是非予習としてもご活用頂ければと思います。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑦バービーの制作会社、マテル社の重役は男ばかり