マイ・エレメントの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『マイ・エレメント』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『マイ・エレメント』解説レビューの概要
①ピクサーとしては初めての○○のラブストーリー
②監督の前作は『アーロと少年』
③火、水、土、風の4元素が住んでいるエレメント・シティという街の話
④火の女の子と水の男の子と禁じられた恋の話
⑤個人的な、監督の両親の関係を描いている
⑥アメリカにやってきた韓国系移民の話が元になっている
⑦自分と同じルーツを持つ人と結婚をしなさい
⑧ニューヨークの移民達の社会のリアリズムを描く
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『マイ・エレメント』町山さんの評価とは
(石山蓮華)という事で、早速、今日ご紹介いただく映画は?
(町山智浩)はい。今日は『マイ・エレメント』というアニメ映画を紹介ちょっとさせてください。
(町山智浩)はい。今主題歌がかかってますけど、『マイ・エレメント』はもう日本で公開されてるみたいですね。
(石山蓮華)はい。先週の8月4日から公開中です。
(町山智浩)これ、いわゆるピクサーアニメというやつなんですけど、ピクサーっていうアニメ会社がありまして。『トイ・ストーリー』とかね、ずっと作ってるんですけど。うちの近所にあるんですよ。
(石山蓮華)えっ!そうなんですか。
(町山智浩)そうなんです。僕はバークレーという所に住んでるんですけど、エミリービルという・・僕前に住んでいた家がね、ピクサーの裏だったんです。
(アンジェリーナ1/3)すごい!
(石山蓮華)私、実は取材で1度ピクサー行った事がありまして。
(町山智浩)えっ!そうなんですか?
ピクサーの会社について
(石山蓮華)そうなんです。じゃぁ、町山さんのお宅のすぐそばにね、行ってたんですね。
(町山智浩)あそこ行ったんですか?エミリービルに。
(石山蓮華)はい。確かそのピクサーの本社に行って・・えっとあの恐竜の映画を・・えっと。。
(アンジェリーナ1/3)恐竜。『アーロと少年』?
(石山蓮華)あぁそれです!『アーロと少年』の取材で、行きました。
(町山智浩)はいは。すごく広い敷地じゃないですか。
(石山蓮華)広かったですね。
(アンジェリーナ1/3)ん〜行ってみたい!
(石山蓮華)本当に歩いても歩いても、色々な部屋だったり、そのスタジオがあったりとかして、1つの作品でも取材、色んな所で1日かけて、やりました。
(町山智浩)あれね昔ね、中にねサッカーできる所まであったんですけど。アニメーターの人達、運動が嫌いだから全然使わないんで、なくしちゃいましたね。
(アンジェリーナ1/3)あぁなるほど。(笑)
(石山蓮華)あぁ、そうなんですね。(笑)
(町山智浩)しょうがねぇなと思いましたけど。あの、中入りました?
(石山蓮華)入りました。はい。
(町山智浩)それぞれのアニメーターの人達が部屋のようなブースっていうのを持ってたでしょう?
(石山蓮華)なんか、そのおぼろげな記憶ですけど、小部屋がたくさんあって・・はい。というイメージがあります。
(町山智浩)もう中に住んじゃってるからあの人達。すごいいっぱい、オモチャとかいっぱい置いてあったでしょう?
(石山蓮華)なんか、そのこう、お話をする部屋とは別に、色々な所をフワッと見せて頂いたんですけど、そのブースごとに、なんか、人となりが見えるような感じは、はい。ありましたね。
アニメオタクの職場環境
(町山智浩)自分の砦にしちゃってるんですよね。オタクの人達なんでやっぱりね。アニメ会社なんでね。ピクサーは昔そういう人達をなんとか。まずね、恋愛させようとしたりとかしてね。しょっちゅうね、パーティーやったりしてね。結構苦労してましたけど、だいぶ良くなったのかな?昔は大変だったみたいですよ。
(石山蓮華)そうだったんですね。
(町山智浩)そのブースの中に引きこもっちゃう人とか出てきちゃったりしてね。
(石山蓮華)あーーなるほどなるほど。
(町山智浩)でもだいぶ、やっぱり人間的な部分での成長がないとなんないと言う事で、色んな所に連れ出したりとかね。その当時、僕が行ったのは『モンスターズ・インク』の時だったんですよ。すごい昔なんですけども。食べ物とかも、ほっとくとポテチとかしか食べないから。中にレストランがあって、それぞれの人達のために、こういった食べ物もあるんだって事を紹介していって、食生活までね、全部面倒を見てて大変だったんですけどその当時は。(笑)
(石山蓮華)すごいですね。。いたれりつくせり。
(町山智浩)大変だったと思いますね。で、行ったのは『アーロと少年』という映画ですよね?
(石山蓮華)はい。そうですそうです。
(町山智浩)それの監督の次の作品がこの『マイ・エレメント』なんですね。
(石山蓮華)そうなんですね!そっか!
ピーター・ソーン監督の前作は『アーロと少年』
(町山智浩)会いました?ピーター・ソーン監督。
(石山蓮華)なんか、ピーター・ソーン監督のお写真を見た時に、あれ?私この人知ってるなって思ったんですよ。
(町山智浩)会ってるでしょ?
(石山蓮華)お会いしてたんですよ。だから本当にうっかりだったんですけど、お会いしてました。
(町山智浩)会ってるでしょう?(笑)
(アンジェリーナ1/3)すごーい!羨ましい!
(町山智浩)ねぇ。韓国系のおじさんだったでしょう?
(石山蓮華)えぇえぇ。そうですね。こう・・ぷにゃん?とした感じの。
(町山智浩)そうですね、ぽっちゃり型のね。(笑)メガネかけて。
(石山蓮華)優しい感じの方でした。はい。
(町山智浩)その彼の次の作品なんですよ今回は。
(石山蓮華)えーそうだったんだぁ〜。
(アンジェリーナ1/3)わー気になる〜!
ピクサーとしては初めての大人のラブストーリー
(町山智浩)そっかそっか。会っているんですね監督にね。『マイ・エレメント』っていうのはね、ピクサーとしては初めての、大人のラブストーリーです。主人公は子供じゃないんですね。で、エレメントっていうのはね、元素という意味なんですけど、水素とか酸素とかそういう元素じゃなくて。もっと古代ギリシャの人達が信じてた4元素がありまして。昔の人はね、火と水と土と風が、物質の4元素だと思ってたんですよ。風っていうのはまぁ気体ですけどね。で、中国はね、これに加えて金属が加わって5元素が物質の元素だと思ってたんですけど。まぁそれは古代の話でね。どっちも間違ってましたけどね。で、これはその古代ギリシャの4元素である火、水、土、風の4元素が、住んでいるエレメント・シティという街の話なんですよ。
(石山蓮華)へぇ〜〜〜。
(町山智浩)で、主人公はエンバーという火の女の子で、その子が、ウェイドという水の男の子と恋をするという話なんですね。だから水と火の恋だから、まぁ正反対なんでありえないって事で。
(石山蓮華)真逆ですよね。
(町山智浩)真逆なんですよ。ロミオとジュリエットみたいな、禁じられた恋の話になってるんですね。
(石山蓮華)なるほどなるほど、はい。
火の女の子と水の男の子と禁じられた恋の話
(町山智浩)で、この火の人達は体が燃えてる訳ですけど常にね。で、水の人達は流体なんですよ。これはだから、昔はできなかったアニメーションなんですよね。
(石山蓮華)あ〜〜そっかそのキャラクターが、常に、形がその・・はっきり、アウトラインが決まってないって事ですね?
(町山智浩)そうなんです。変わり続けてるんですよ。
(石山蓮華)はーーすごいな。
(町山智浩)動き続けてるだけじゃなくて背景とかが透けて見えますんで。
(アンジェリーナ1/3)うわっ大変なアニメーションですね!
(町山智浩)アニメーションとしては、技術的に非常に大変なんですね。
(石山蓮華)へぇ〜大挑戦ですね。
昔は出来なかったグラフィックがすごい
(町山智浩)それで、その火の人がいると、その周りに火が写り込んでるんで、背景にも照明を当てなきゃなんないし、技術的にも大変なんですけども。だから、ずいぶん進んだんですよ。コンピューターグラフィックスも。始まった頃は本当にただおもちゃが動いてるようにしか見えなかったんでね、『トイ・ストーリー』の頃は。今どんどんどんどん新しいところに進んでるんですけども。で、この火のエンバーちゃんはお父さんとお母さんも火でね。で、コンビニをやってるんですね下町で。で、水の男の子のウェイドくんは、下町じゃなくて、山手の方の、超高層の高層マンションに住んでるんですね。
(石山蓮華)あの・・億・・マンションみたいな、億ションみたいな。
(町山智浩)そうですそうです。で、まぁあの生活もレベルが全然違うし、文化も全然違うんですけども。2人が出会って、好きになっちゃってという話なんですけども。これは実は、この『マイ・エレメント』っていう映画はものすごく個人的な、ピーター・ソーン監督自身のお父さんとお母さんとの関係を描いてるんですよ。
(石山蓮華)へ〜!
ピーター・ソーン監督自身のお父さんとお母さんとの関係を描いてる
(町山智浩)これ、ソーン監督、なんか言ってませんでした?彼の背景について、会った時。
(石山蓮華)いや、お会いした時はそこまで・・あくまでその作品のお話を中心に伺ったので、ご自身の話までは聞けてなかったと思います。
(町山智浩)そうですね。今回はとにかく、すごく彼の個人的な体験を押し出してて、彼のお父さんとお母さんは80年代にアメリカにやってきた韓国系移民なんですね。で、ニューヨークの下町のブルックリンという所で、本当にコンビニやってたんですよ。
(アンジェリーナ1/3)へ〜!重ねてるんですか、親御さんと。
1980年代、韓国人がアメリカに渡ってきた
(町山智浩)そうなんですよ。でね、80年代にね韓国の人がね、いっぱいアメリカに渡ってきたんですね。で、その時のビザはね、なんていうか投資ビザみたいなやつでね、アメリカでビジネスをやるためにお金を韓国から持って来たんだったらビザを出すっていう形だったんで。アメリカのその、非常に危険な所にある酒屋さんを韓国の人達が次々と買って経営をしたんですよ。犯罪が多い所でみんなやりたがらない所の酒屋を買って、それを24時間経営のコンビニエンスストアにしていって。で一生懸命お金を稼いで暮らしてったんですけど。そういう家だったんですね、このピーター・ソーン監督の家も。彼はなんというかですね。白人の女の人と恋しちゃったんです。で結婚したんですよ。で、この映画の中で、この『マイ・エレメント』の中で、このファイヤのエンバーちゃんに、おばあちゃんが死ぬ間際にですね、臨終の時にですね、火と結婚しなさいって言って死んでいくんですよ。
(石山蓮華)じゃぁ自分と同じルーツを持つ人と結婚してくださいって言われる。
自分と同じルーツを持つ人と結婚を
(町山智浩)そうなんですよ。それね、ピーター・ソーン監督がおばあちゃんに言われて。韓国人と結婚しなよって言われて、その事が元になってるそうですね。
(石山蓮華)すごいもう本当にもう私小説みたいな映画ですねある意味。
(町山智浩)そうなんですよね。だからね、ピクサーが他のアニメ会社とすごく違う所っていうのは、この間の『私ときどきレッサーパンダ』っていうねアニメがあったんですが、あれはトロント出身の中国系の娘さんと、お母さんとの関係だったんですけど、あれも監督さんの実体験なんですよ。
(アンジェリーナ1/3)そうなんだ!
(石山蓮華)へぇ〜〜おもしろいですね。
(町山智浩)そうなんです。本当の事なんです。思春期になって男の子に目覚めちゃって勉強しなくなっちゃった時の話を元にしてるんですね。監督さん自身が、女性監督なんで。で、今回は男と女をひっくり返してるんですけど、監督自身が男なんですけども女の子の話にしてるんですね。で、ピクサーがすごいのは制作費にそれこそ何十億円もかけてる訳ですけど、すごい個人的な話を元にしてるんですよね。
(石山蓮華)個人的・・。
(町山智浩)マーケティングして、一般の人達、子供達に受けるのは一体どういうものか計算して作りましたってのとは違うんですよ。私自身の語りたい事を語りますっていうのに、ものすごい資本を投じて作るっていうところがねピクサーのすごいところで。でね、それがわかって見るとね結構面白いのは、その水のウェイドくんが、彼女を好きになっちゃったから、エンバーちゃんを好きになっちゃったから、エンバーちゃんの両親に好かれようとして、エンバーちゃん家の家庭料理を食べるっていうシーンがあるんですよ。そうすると、火だから火を食べてんですね。
(石山蓮華)水が火を食べると。
(町山智浩)そう。水なのに、ウェイドくんは火を食べなきゃなんない訳ですよ。すると、体の中に火を放り込むと、まぁ蒸発してね気化してね、大変な事になっちゃうんですけど。
(石山蓮華)そうですよね。
(アンジェリーナ1/3)そうですよね。
(町山智浩)沸騰しちゃってね。
(石山蓮華)なくなっちゃいませんか?
(町山智浩)なくなっちゃったりもするんですけども。水蒸気だから、なんとなくまた水に戻るんですけども。それは、そのね、熱い食べ物っていうのを、英語ではHotって言いますよね。でも辛いもHotなんですよ。英語では。だからそのシーンっていうのは、韓国系の辛い食べ物を韓国料理に慣れてない人が食べるっていうシーンが元になってる訳ですよ。
(石山蓮華)あぁ〜〜なるほど!へぇ〜・・。
(町山智浩)だからすごく、まぁ水と火の話っていうとSFみたいな感じかなと思う人も多いと思うんですけども、すごくニューヨークの移民達の社会のねリアリズムみたいなものを描いてて。
(石山蓮華)なるほどぉ〜。
ニューヨークの移民達の社会のリアリズムを描く
(町山智浩)あとね、水の家の人達はね、やたらとその、なんて言うか・・なんていうんだろうなぁ、親密すぎるんですよ。それで、やたらと泣くんですね、感動して。
(アンジェリーナ1/3)涙もろいんだ。
(町山智浩)涙もろいんです。感情を表に出して、で、なんていうか、馴れ馴れしい感じ?
(石山蓮華)じゃぁすぐこうワーッてハグしてきたりとか、なんか、気付いたらずっと一緒にいるとか。
(町山智浩)あのね、アジア系の人がアメリカに住んで、僕ももう25年以上住んでますけど、まだ慣れないのはハグなんですよ。
(石山蓮華)あぁハグかぁ、ハグはなぁ〜・・。
(町山智浩)すごい慣れないんですよ。
(石山蓮華)えっ、町山さんは、こう、25年、アメリカで暮らしていて、ハグって・・できますか?
(町山智浩)自分からはできない。
(石山蓮華)あぁそうですか。25年いても?
(町山智浩)やっぱり慣れないですよ。特に、その夫婦間で会った時に、相手の奥さんが抱きしめてくると、やっぱり困るですよね。
(石山蓮華)そうかぁ。
(アンジェリーナ1/3)私でも、フィリピンとスペインの血が流れてるので、ハグは結構誰にでもできるかもしれないです。子供の頃からずっとそういう風に育ってきてるので。
(石山蓮華)へー〜!お母さんはもう、何かとハグを?
(アンジェリーナ1/3)もうハグ。ハグです。
(町山智浩)そうでしょう。フランスとかの人だと、キスしたりするよね?
(アンジェリーナ1/3)あぁそう、ほっぺとかに全然、チュッとしてきたりとか。
(町山智浩)ロシア系の人だと男同士でキスしますよ。だから全部違うから。で、やっぱりすごく慣れないんですけど。
(石山蓮華)ちょと、もぞもぞっとしますよね。
(町山智浩)そうそう。どうしようって感じでね。触っていいのかなと思う訳ですよ。人妻ですよ、相手。(笑)
(アンジェリーナ1/3)いやいや。(笑)でもまぁ、あくまでもまぁ挨拶ですけどね。でも戸惑う感じはありますね。
(町山智浩)そうなんですよ。で、やっぱりアジア系って東アジア系の人達は感情を表に出さない、出すべきじゃないと思ってる人が多いでしょう?
(石山蓮華)確かに。
(町山智浩)その辺の差とかもね、この『マイ・エレメント』の中では描いてるんですけど。これね、前にディズニーなんですけど、『ズートピア』っていうアニメがあって。
(石山蓮華)実は私、これも取材でディズニーに行きました。
(アンジェリーナ1/3)すごーい!
(町山智浩)あぁ本当に。すごいですね。あれはじゃぁ、ロサンゼルスの方に?
(石山蓮華)そうですそうです。でもなんかスタジオがちょっと改修中だったりとかしたタイミングだったと思うんですけど、はい。行きました。
ズートピアもアメリカそのものを描く
(町山智浩)あれは動物がいっぱい、色んな動物が住んでる街じゃないですか。でも、日本の人から見ると、それはただの動物アニメなんだけど、アメリカの人からすると、あの『ズートピア』っていうのはアメリカそのものなんですよね。色んな人種や民族が住んでいて、大きさも違うんだけど一緒に暮らしてるっていうね。リアリティーなんですよねあれがね。そのへんはすごくね、アメリカの人が見るのと、日本の人が見るのではかなり違う事なんですけどね。で、あとそのエンバーちゃんが、水の家族のところに、旦那というか、旦那になる人ってか、彼氏の家族のところに行った時に英語をしゃべると、あぁ英語に訛りないのねって言われるんですよ。
(石山蓮華)あぁ、それはやっぱり、本当に、なんだろう、リアルに、アジア人が英語圏で言われる事なんですね。
(町山智浩)言われるんですよ。あぁ英語しゃべれるんだとか言われたりするんですよね。だからね、そのへんはね、結構リアリズムなんですよ。
(石山蓮華)そうなんだ。でもディズニー・・。
(町山智浩)わからないで見てるとね、なんの話だろうこの『マイ・エレメント』って一体何?って思っちゃうんですけど。実はねすごくリアルな話なんですよね。でね、2人、その水と火でね、合わない人同士のね、恋愛っていう事で、うちのおふくろもね、父親は韓国人でね、母親は日本人だったんで、まぁ色々と葛藤があったと思うんですけど。そういう葛藤と、もう1つあって。このエンバーちゃんの抱えてる問題っていうのは、一人っ子なんですよ。
(石山蓮華)あっ!!!!えぇ・・。
(町山智浩)で、アジア系の子供に対する期待のかけ方?って、すごいんですよ。
アジア系の親の子供に対する期待
(石山蓮華)そうですよね。色々な映画とかを見てると、その1人の子供にかけられる親のプレッシャーが大変そうだなって思う事ありますよね。
(町山智浩)すっごいプレッシャーなんですよこれ。で、親孝行文化があるじゃないですか東アジアには。でもう、親のために何かしてあげなきゃとか、お父さんお母さん苦労してるんだからっていうね、ものすごいプレッシャーの中でこのエンバーちゃんは生きてるんですけど。それはね、それは大体アジア全般だな。もう、インドとかひどいですからね。
(石山蓮華)あ、インドもそうなんですか?
(アンジェリーナ1/3)あぁそうなんですね。
(町山智浩)インドはすごい。子供はもう、医者になるか弁護士になるか。もうすごいですよプレッシャーがね。
(石山蓮華)えっ、でも医者と弁護士って、そんなにたくさんたくさん増えられないですよね?
(町山智浩)増えれないから、アメリカの医者と弁護士はアジア系ばっかりですよだから。
(石山蓮華)そうなんだな。じゃぁそっちに来るんですね。アメリカの方に。
(町山智浩)まぁ韓国、中国、日本もね。子供に医者になるか弁護士になれって言いますけど。で、すごいプレッシャーを受けてるのがエンバーちゃんで。それとの戦いっていう問題もあって、それはピーター・ソーン監督はたぶんね。漫画やアニメが好きなんでそっちに行きたいって言った時にすごい親と色々あったんだと思いますよ。大体韓国系の人とか中国系の人達はそんなの許さないですからね。アメリカではね。
(石山蓮華)そうなんですね。
(町山智浩)せっかくアメリカに来たんだと。
(石山蓮華)そっか。ここで親世代が叶えられなかった事を子供に叶えてほしいっていう考えはありますもんね。
(町山智浩)そうなんですよ。そう。だからね、韓国の人達は最初は80年代にコンビニやって、それこそ24時間経営で家族でね、寝ないで苦労したんですけど、それはやっぱり子供をいい大学に入れる為だったんですよね。まぁ漫画とかアニメをやらせる為じゃなかったんで。結構プレッシャーが大きかったと思うんですよ監督。
(石山蓮華)じゃぁ自身の本当に葛藤とか人生がすごい詰まってるんですね。
(町山智浩)そうですね。はい。でね、1つこの映画の中でたぶんね、全然韓国系の人の話なんだという事がわからないとわからないのはね、このエンバーちゃん一家がね、土下座をするんです親子で。これね、韓国における土下座っていうのはあれは土下座じゃなくて、すごく・・クンジョルというね、最上級の挨拶なんですね。
(石山蓮華)そうなんですね。へー。
(町山智浩)感謝と尊敬を示す挨拶で。だから、1番よく使われるのは家を出る時に、独立する時に、お父さんお母さん今までお世話になりました!ってやるんですよ。ベターッと。
(石山蓮華)あっそうなんだ。
(町山智浩)だからK-POPのアイドルが、軍隊に兵役で入る時に、お父さんお母さんに挨拶する時にあのベターッていう土下座みたいなのをやるんで、結構日本のK-POPファンは見てると思いますよ、その姿を。
(石山蓮華)あぁ、そうなんですか。
(町山智浩)あれは本当に親子の間でするんで、それがわからないと、一体この火の家族は一体何やってんねんと人も多いと思うんですが。その辺はね、わかってみると結構いい話なんですよ。
(石山蓮華)そうですねー。
(町山智浩)で、韓国系の話で、アメリカ人の話ではあるんですけど、その親と子の関係とか、人を好きになったら民族とか何も関係ないっていうのは、どこにでも通じる事なんでね。もう是非ね、この『マイ・エレメント』を見て頂きたいなと思います。
(石山蓮華)いや、これは・・見ます!はい。
(アンジェリーナ1/3)聞いてからだとね、なお色々感じ取れそうですね。
(石山蓮華)そうですねー!本日は町山さんに公開中の映画、『マイ・エレメント』をご紹介頂きました。町山さんありがとうございました。
(アンジェリーナ1/3)ありがとうございました!
(町山智浩)どもでした!
後日談
■2023年8月15日放送のこねくとにて
(石山蓮華)さて、あの先週、町山さんにはピクサーの新作、『マイ・エレメント』をご紹介頂きまして。私も、でか美ちゃんも見てきました。
(でか美ちゃん)はい!見てきました〜!
(町山智浩)どうでした?
(石山蓮華)めちゃめちゃよくて。
(でか美ちゃん)よかった!
(石山蓮華)大人向けのピクサー映画でしたね。
(でか美ちゃん)もうウェイドぐらい泣きましたよ。本当に。水のウェイド君ぐらい。
(町山智浩)ドバーッって滝のように。(笑)
(石山蓮華)やっぱ本当に絵もきれいですし、物語としてもやっぱり今の、現在の話を描いてるなと思って、大変興味深く見ました。
(でか美ちゃん)その種族を超えて愛し合ってしまったと言うべきなのか、出会えてよかったなのかみたいな展開とかも、なんかすごくピクサーが伝えたいものをめちゃめちゃ感じましたね、水と火っていうね。
(町山智浩)まぁ絶対に、なんていうか一緒になれない水と火の男女がね、水の彼氏と火の女性が出会って、絶対に一緒になれないとわかってるんだけれども、好きになっちゃうじゃないですか。で、どうするんだろうって思うじゃないすか。子供できるのかなと思いませんでした?
(石山蓮華)そう、私もなんかね、ずっと考えてました、それ。見終わった後に。
(町山智浩)ねぇ。で、全然映画の中で子供ができるのかどうかってやんないんですけど。これ、たぶん水蒸気の子供なんだよね。(笑)
(石山蓮華)そっか!
(でか美ちゃん)そうだ!煙もいたわ!水蒸気もいたわ!
(町山智浩)雲がいたじゃないですか。
(石山蓮華)そういう事だ!
(町山智浩)水と火が合体すると。たぶんね。それで続編ができんのかなとか思ったりしましたね。
(でか美ちゃん)素敵だな〜。あと同時上映のも私は好きでした。
(石山蓮華)あぁよかったですね。『カールじいさんのデート』。
(町山智浩)『カールじいさん』の一作目がめちゃくちゃ冒頭が泣けるんですよね。
(石山蓮華)ほんとにもう。・・・すごくいいですよね。
(町山智浩)奥さんとね、出会って。奥さんとの恋愛がちゃんと描かれてて、奥さん亡くなっちゃうんですけど、『カールじいさん』の冒頭は本当にもうめちゃくちゃ号泣で。その後を覚えてないんですけど。(笑)
(石山蓮華)私がその『カールじいさんの空飛ぶ家』で覚えてるのは、犬がリスを見ると、「リス!」って言う。あそこをすごく覚えてます。
(町山智浩)えっ。
(でか美ちゃん)今回も言ってたね。リス!リス!
(町山智浩)あれそうだっけ?
(石山蓮華)リスを見つけるとか、リスいない時もリス!って言うんですよ。あれが犬っぽいなと思って好きですね。
(町山智浩)そういえばリスって日本っていないですよね道端とかでね。
(石山蓮華)あんまりいないですね。
(でか美ちゃん)そうだ、町山さんちの付近いるって言ってましたもんね。
(町山智浩)こっちはあれですよ。ロサンゼルスとかサンフランシスコって普通にリスがいるんですよ、そこらへんに。
(石山蓮華)なんか、地面を大きいリスがウロウロしてるイメージがあります。アメリカって。
(町山智浩)そうそうそう。ハイイロリスってやつですけどね。だから普通な感じでね。もうだんだん慣れましたけど最初はびっくりしましたよ。ロンドンとかもね、リスいるんですよそこらへんに。
(でか美ちゃん)へ〜!見つけたらワンちゃんぐらいはしゃいじゃうそうだなぁ。
(町山智浩)そう追っかけまわすんですよ猫とかね。あと、リス鳴き声って知ってます?
(でか美ちゃん)えっ。あんまイメージないな。
(石山蓮華)わからないですね。
(町山智浩)ギエーッ!っていうんですよ。
(でか美ちゃん)えええ、結構かわいくなかった。(笑)
(石山蓮華)全然かわいくなかったですねぇ。(笑)
(町山智浩)びっくりしましたけどね。はい。関係ない話でしたね。(笑)
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
①ピクサーとしては初めての大人のラブストーリー