コンパニオンの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『コンパニオン』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『コンパニオン』解説レビューの概要
①男女の恋愛についてのホラー映画
②アイリスとジョシュがスーパーで一目惚れして恋に落ちる
③2人は森の中にある友達の別荘へ行く
④そこで惨劇が起き血まみれの世界になり、別荘から抜け出そうとするが・・
⑤ポスターのアイリスの目がおかしいのは、○○○○だから
⑥運命の出会いもプログラミングされていた事がわかり・・
⑦愛とは何かを問いかける物語※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
町山さん『コンパニオン』の評価とは
(町山智浩)で、今日の映画もホラーで笑える映画でですね、しかもそのすごくきつい、まぁ『サブスタンス』と同じ男女の不均衡についての映画なんですが。

これがですねもうすぐAmazonプライムとか色んなとこで配信が始まるんですけれど、28日からか。来週水曜日からでいいんですね。配信が始まる映画『コンパニオン』を紹介します。音楽をお願いします。
〜音楽〜
(町山智浩)独特のね歌声なんですけど。これを歌ってるのはこの主演女優のソフィー・サッチャーさんなんですよ。この女優さんは『異端者の家』の主役のモルモン教の伝道師をやってた女の子ですね。
(石山蓮華)このショートカットヘアの方の方。
(町山智浩)そうです黒髪の方。
(でか美ちゃん)メガネじゃない方の。
(町山智浩)メガネじゃない方の人ですね。で、彼女は『異端者の家』でも主題歌を歌ってたんですけどね。

こちらでも主題歌を歌ってるんですけど。でね、この歌すごくなんていうか、まぁ・・悲しいような、楽しいようなね、不思議な音楽なんですけども。この映画はですね、男女の恋愛についてのホラー映画なんですよ。
(でか美ちゃん)おぉ。恋愛ホラー。
男女の恋愛についてのホラー映画
(町山智浩)そうです。本当にね、ロマンチックコメディみたいな始まり方をします。前半10分ぐらいはロマコメのようです。このソフィー・サッチャー演じるアイリスというヒロインがですね、愛するボーイフレンドのジョシュ君と出会って。まぁスーパーでですね出会って一目惚れして恋に落ちてと。いう事を思い出して2人でデートに行くというところから始まって、で『コンパニオン』という文字が非常に美しいピンク色の文字で流れてくるんですよ。わぁロマコメ!と。それでこの音楽ですからね。思うんですけど、この音楽にね、そっくりの音楽があってですね、別の映画なんですけども。ちょっとその音楽をお願いします。『ローズマリーの赤ちゃん』の主題歌をお願いします。

〜音楽〜
(でか美ちゃん)でも確かになんかちょっとテイストが違うだけで。
(石山蓮華)でもこのハミング、歌の感じは似てる。
(でか美ちゃん)ね。メロディラインもね。
(町山智浩)そっくりですね。
(でか美ちゃん)確かに。
(石山蓮華)似てますね。
(でか美ちゃん)コード進行が近いものを感じる。
(町山智浩)2つとも主演女優さんが歌ってて、非常になんというか不安な感じでハミングを歌ってるんですけども、この『ローズマリーの赤ちゃん』という映画は映画史上に残るホラー映画でこれ。1968年なんですけども。ミア・ファロー扮する若妻が妊娠するんですが、それが悪魔の赤ちゃんだったっていう話なんですよ。
(でか美ちゃん)そんな・・!
(町山智浩)はい。で、これは旦那が悪魔に自分の奥さんと赤ん坊を売り渡して成功しようとするっていう話なんですよ。それでこの奥さん、その『ローズマリーの赤ちゃん』、主役はローズマリーなんですけど、ローズマリーは単に赤ちゃんを産む道具として使われていってしまうっていう話なんですよ。
(でか美ちゃん)あぁ。。
『ローズマリーの赤ちゃん』を模倣している
(町山智浩)で怖い話なんですけど、この主題歌をこの『コンパニオン』が模倣しているのには意味があるんですよ。テーマが非常によく似てるんですね。で、この2人はですね、恋に落ちたそのジョシュとアイリスは、車に乗ってデートというか友達の別荘に行くんですよ。豪邸で。で、すごい豪邸が森の中にあって、そこに入ると他にも2組のカップルがいて、その豪邸の持ち主のロシア人の大金持ちとその愛人ががそこにいて、もう1つ男性同士のカップルがいて、ただ人里離れたとこで、そこで惨劇が起こるんですね。血まみれの世界になってって、この辺からホラーになってきます。で、このヒロインのアイリスはその人里離れた別荘から抜け出さなければならなくなるんですけど。ていう話なんですが、これね、ポスターを見るとこのアイリスの目がおかしいでしょう?
(石山蓮華)白目向いてますか?
(でか美ちゃん)ねぇ。掟ポルシェさんくらいキレイな白目むいてらしてる。
(町山智浩)でしょ。(笑)掟ポルシェ状態になってるじゃないですか、完全に白目で。(笑)これは途中でアイリスが逃げてる間に気づくんですが、彼女は実はロボットだったんですよ。で、スイッチを切られて白目になってるんです。
ポスターのアイリスの目がおかしいのは、ロボットだから
(でか美ちゃん)オン・オフなのか。
(町山智浩)そうなんです。で、この映画はですね、彼女は実はジョッシュの元に通販で買われて届けられた恋人ロボットだった事がわかります。
(石山蓮華)あれ、なんか最近もね、ロボットを通販で犬が飼う映画ありましたね。
(町山智浩)『ロボット・ドリームズ』ですね。

(でか美ちゃん)『ロボット・ドリームズ』最悪版って事ですか。
(町山智浩)最悪版ですよ。(笑)これそっくりなシーンあるんですよ。(笑)
(でか美ちゃん)『ロボット・ドリームズ』私、ここ近年で1番泣いた映画でこんな似てて最悪版が・・!
(町山智浩)ね。みんな本当に泣いたって言うんですけど、この映画は、要するに最初の思い出があるじゃないですか。彼と出会ったっていう。それも実はプログラミングされてた偽の記憶だった事がわかってくるんですね。で、この『ロボット・ドリームズ』もそうなんですけど、彼女達はロボットだから、自分を買ってくれた人を愛するようにプログラミングされてるだけなんですけど、自分自身はそれは愛としか考えられないんですよ。感じられないんですよ。で、プロミングラミングされたんだよって言われても、でも完全にプログラミングされてるから、その人を愛すことを止められないんですよ。っていう話で、愛とは何か?っていう話になってるんですよこれ。で、前に紹介した話でですね、『We Live in Time この時を生きて』というこれから公開される映画の、脚本家が書いてた舞台劇がありまして。それがその人間の脳がすべてプログラミングされてる訳ですけど人間の脳もね。だから愛っていうのは一体何なのか?脳のただのね、化学反応とかデータ処理に過ぎなんじゃないかっていう話をその人が舞台化してたんですけど。それと同じで、これはロボットの話を通して、愛とは何かを問いかける物語になってるんですよ。
これはロボットの話を通して、愛とは何かを問いかける物語になってる
(石山蓮華)でもホラーなんですよね。
(町山智浩)でもホラーなんですよ。
(でか美ちゃん)私この作品実は町山さんとドミューンの配信でご一緒した時も町山さんが紹介してくれて、その時は日本で見る術が今んとこないけどって話で。
(町山智浩)なかったんですよ。
(でか美ちゃん)アマプラで公開があるので楽しみなんですけど、その時私夫婦で出させてもらってて、サツマカワと。夫婦で出てる時に町山さんが言った言葉が忘れられなくて。愛とは何かって話なんですよ!・・洗脳かもしれませんからね!?って言ってこう、お互いなんとなくこうドキッとするみたいな。プログラミングってまさにそういう事ですもんね。
(町山智浩)そういう事なんですよ。これね、監督で脚本の人がね、男性なんですけど。まぁ彼の恋人。それは男性か女性かまだ彼は言ってないんですけども、その恋愛の中で、途中でものすごいその人に執着してしまって。でも、本当に愛してるのかどうかはふと考えたら分からなくなったって言ってるんですよ。
(石山蓮華)愛と執着ってわかんないですよね。
(町山智浩)わかんないんですよ。で、プログラミングされてただけじゃなくて、この映画の中でこのソフィー・サッチャー扮するアイリスさんが着てる服がすごいかわいいんですよ。なんていうか今の人が絶対着ない服なんですね。
(でか美ちゃん)ちょっとレトロな感じの。
(町山智浩)レトロなんですよ。
(石山蓮華)すごい丈の短いスカートと、レトロなバンダナみたいな。
(でか美ちゃん)1番ベタなバービー人形みたいな。
(町山智浩)そんな感じなんですけど。このヘアバンドとかは、一体何かっていうと、これは1960年代にフランスでですね、ヌーベルバーグという映画が流行った時があって。それはジャン=リュック・ゴダールとか、フランソワ・トリュフォーとかが撮ってた、なんというか、おしゃれでアバンギャルドで。すごくポップでカラフルな映画だったんですよ。で、その時にブリジット・バルドーとか、その時の女優さんが着てた服なんですね、この彼女が着てるのは。で、彼女はロボットですから。これを着てるのは誰の趣味で着てるのか?って事ですよ。
誰の趣味でこの服を着ているのか
(石山蓮華)うわ、ちょっと気持ち悪くなってきましたね。
(町山智浩)気持ち悪いんですよ。これ男が着せてんですよ、自分の好きな服を。
(でか美ちゃん)本当に着せかえ人形だ。
(町山智浩)そうなんですよ。で、彼女はこの彼、ジョシュという自分の持ち主である人の完全に趣味通りの女性として生きてるんですよ。でも、女の人と男の人で、男の趣味にどうしても女の人が合わせるっていうような不均衡性ってないですか?
(石山蓮華)なんかその、権力関係がイコールじゃない時に、どうしても自分で意識するかどうかってわからないんですけど相手の状況を受け入れざるを得ない部分ていうのは私のこれまでの経験を思い出してもある部分がありますね。
(でか美ちゃん)なんかその、染まるのが好きみたいな子がその時のパートナーに染まっていくのは微笑ましく見ていられるんですけど、明らかにそうじゃないのに、なんか最近やたらピチパツの服着てない?みたいな。なんか今セクシー系が好きな男性と付き合ってて、本当はパーカーとか好きなのに、ちょっと無理してんな〜っていう友達とかやっぱね、1人や2人じゃなくいましたよ。
(石山蓮華)俺と会う時にスニーカーやめてみたいなね。
(町山智浩)そうそうそう。
(でか美ちゃん)逆もあるだろうしね。
(町山智浩)食べ物とかねあとね。料理とかね。それは彼が喜ぶからって事でやってる訳で別に支配されている訳じゃないんですけど。この映画では、本当かなそれはっていう問いかけなんですよ。それ、マインドコントロールされてるんじゃないの?自分からされちゃってるんじゃないの?っていう事を問いかけてるんですね。これはね、そこから彼女がね脱出する事は殆ど不可能に近いんですよ。
(石山蓮華)プログラミングされてるんですもんね。ロボットとして。
(町山智浩)そうなんです。逃げられないんです。彼女は。どうやって逃げられるかって話なんですよ。
(石山蓮華)ホラーですね。
(でか美ちゃん)しかも森の・・ちょっと忘れかけてたけど森の中なんですもんね。
(石山蓮華)プログラミングされてるんですもんね。ロボットとして。
(町山智浩)そう。人里離れてるんです。脱出できないんですよ。
(でか美ちゃん)色んな条件が。
(町山智浩)色んな条件が。というね、これはすごいサスペンスであってホラーであってね。非常に深いね男女関係の物語でもあってね。それでもう1つは、彼女が自分を探す話でもあるんですよ。自分とは何かっていう事ですよね。で、ここでね。この映画の中でねかかるね、グー・グー・ドールズの『Iris』という曲をちょっとかけてもらえますか?
(でか美ちゃん)まさにアイリス。
(町山智浩)この歌ね、1995、6年にものすごい流行ったんですよ。で、これはこの映画のヒロインのアイリスというのはこの曲のアイリスから取ってるんですけどね。この曲は実は別の映画の主題歌なんです。
(でか美ちゃん)を、わざわざこっちにも使ってる。
(町山智浩)使ってるんですけど、その映画は『シティ・オブ・エンジェル』という映画で、なんとニコラス・ケイジが天使の役を演じるというですね、明らかなミスキャストの映画なんですけど。(笑)

(石山蓮華)ちょっと今びっくりしちゃいました。(笑)
(町山智浩)どこが天使やんっていうね。(笑)ただね、それはメグ・ライアンがヒロインなんですね。天使と恋に落ちる女性として。で、『サブスタンス』でトイレで手を洗わないまま、なんか触った手でエビつかんで食べてた親父がいたじゃないですか。
(でか美ちゃん)ずっと1番最悪だったアイツね。
(町山智浩)あの最悪の親父ね。あれはデニス・クエイドという俳優さんで、彼とそのメグ・ライアンの間に生まれたジャック・クエイドさんという人がこの『コンパニオン』の主役なんですよ。
(でか美ちゃん)ロボットを買う主人公。へぇ。
(町山智浩)そう。あんちゃんなんですけど。
(でか美ちゃん)じゃぁなんかすごい、皮肉な曲のかけ方ですね。
(町山智浩)そうなんですわざとこれ使ってるんですよ。しかもこの曲を通販で買ったアイリスが届くとこで流してるんですよ。
(石山蓮華)この『シティ・オブ・エンジェル』は、日本版のポスターだと、かつて地上に存在した事のないピュアな恋って書いてあります。
(町山智浩)はははは。(笑)そうなんですけど、これなんと名作の『ベルリン・天使の詩』をハリウッドでリメイクして、本当にただのロマンチック映画にしちゃったっていう映画なんですけどね。で、これねすごい皮肉な事をやってて、これは映画マニアだと、ここでこの曲かっていう。これお母さんの映画の曲じゃんっていう事でやってるんですけど、そこからアイリスっていう名前を取ってたりとか、ものすごくね、色んな小技の効いた映画なんでね、この『コンパニオン』っていうのは。でね、しかもゲーム感覚なんですよ。要するに完全にプログラミングされてコントロールを掴まれてしまっているこのアイリスが、一体どうやって抜け出すのかって事ですよ。
(石山蓮華)脱出ゲームみたいな感じなんですかね。
(町山智浩)そうです。
(でか美ちゃん)でも条件としては不可能ですもんね。完全な支配下にある訳だから。
一体どうやって抜け出すのか
(町山智浩)不可能なんです。でも、この手があったか!っていう技を次々と出していくんですけど。そういう面白さもあってね、これ傑作ですよ。
見たいな。あとこのジャック・クエイドさんがいわゆる二世俳優のカルマを背負って作品に出てるのがなんか立派ですね。お母さんの映画の主題歌こんな感じで使われも出るという。
(町山智浩)『サブスタンス』のデミ・ムーアが若くなった人いたじゃないですか。若い頃のデミ・ムーアを演じる人ね。あの人はデミ・ムーアの親友の娘さんで、デミ・ムーアの娘さんの友達なんですよ。もう、色々複雑になってね、困ったもんだと思いますけど。
(石山蓮華)人生を背負って映画に出てるんですね。
(町山智浩)そうなんですよ。そういうのも含めてあの面白いので。最近はね、そういうの調べてもらうとね、キャスティングの裏側とか見ると面白いと思います。という事でね、この本当にね深い映画なんだけれども、表面的には超エンターテイメントで、しかも笑えます。
(石山蓮華)はい。これは必見です。今日は来週28日水曜日にAmazonプライムビデオで配信される映画、『コンパニオン』をご紹介頂きました。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑤ポスターのアイリスの目がおかしいのは、ロボットだから