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落下の解剖学の町山智浩さんの解説レビュー

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2024年02月24日更新
このお母さんは本当に悪いお母さんなのか、お父さんが悪かったのか。それを子供が選ばされる訳ですよ。この映画の中では。これは、殺人事件の話にしてるけど実際は、親権争いの話ですよ。一種。(TBSラジオ「こねくと」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『落下の解剖学』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『落下の解剖学』解説レビューの概要

①冒頭の大音響の音楽も謎解きのヒント
②ある男性が彼の家の3階から落下して死亡する
③容疑者として妻が浮かび裁判にかけられる法廷ミステリー
④アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・編集賞の5部門にノミネート
⑤観客が物語の中に○○させられる作り
⑥コロナ渦の隔離生活をネタにした脚本
⑦結局本当の事実は誰にもわからない
⑧殺人事件の話にしてるけど実際は親権争いの話

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

町山さん『落下の解剖学』評価とは

(町山智浩)今日ご紹介する映画は、『落下の解剖学』という映画です。

(町山智浩)今流れてるスティールドラムの曲はね、この『落下の解剖学』という映画の頭のとこで大音響でかかるんですよ。でね、すっごくしつこくて、しかも音がすごくて会話が聞こえないので。ものすごくね頭に残っちゃうんですけど。これもね、この映画の1つの謎解きのヒントになってるんですよ。これ『落下の解剖学』というのはある男性が、彼の家の3階から落下して死亡するんですね。その時に、妻がもしかしたら突き落として殺したのかもしれないと。いう事で裁判にかけられるという法廷ミステリーです。で、これがですね。今のアカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・編集賞の5部門にノミネートされてます。

(石山蓮華)すごいですねー!

(町山智浩)で、おそらく脚本賞は取ると思います。

(でか美ちゃん)おー!

アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・編集賞の5部門にノミネート

(町山智浩)はい。カンヌ映画祭の方でも、パルムドールというグランプリにあたる賞を取ってます。で、アメリカでも大ヒット中という事なんですが。これフランスのアルプス地方、フレンチアルプスのところに3階建てのシャーレーがあって。そこに2人の作家が住んでて、それが夫婦なんですね。で、夫も作家で、奥さんも作家なんですけれども、そのうち夫の方は、まぁなんと言うかあんまり売れてなくて。で奥さんの方はベストセラー作家なんです。それは後からわかるんですけど。この映画、裁判の最初の段階では、この2人の情報が殆どないんですよ。で観客は、まさに裁判員とか陪審員になったみたいな形で、この2人の夫婦の関係を少しずつ知らされていって。一体この事件の真相は何なのか。夫は事故で落っこって死んだのか、自殺して飛び降りたのか、奥さんに突き落とされて殺されたのか。一体真相はどこだって事を観客は自分で考えなければならないという映画です。

(石山蓮華)なんか、観客がその、ある意味物語の中に参加させられるような作りになってるんですね。

観客が物語の中に参加させられる作り

(町山智浩)そうなんです。だから法廷で次々と色んな証拠とか証言が出てきて、初めて観客はその事を知ると。でその度に、この奥さん本当に殺人したのか、違うのかって事が揺らいでいくんですよ観客の中でも。で、1つ大きいポイントは、その現場に11歳の息子さんがいたんですね、この夫婦の。で、彼はそのお父さんが落ちた所にいたんですけれども、目撃者な訳ですけど、視覚に障害があって殆ど見えてなかったんです。

(でか美ちゃん)そっか。だからどういう経緯で落ちたのかはわからないのか。

(町山智浩)わからないんですよ。という。で、だんだん、この要するに奥さんに殺す動機があったのかという事で、夫婦関係はどうだったかが少しずつまぁ色んな証言とかで明らかになっていくんですね。で、この奥さんを演じる俳優さんが今すっごいアカデミー賞で注目されて。主演女優賞候補になってるんですけど、サンドラ・ヒュラーという女優さんで。この人は日本でもね、そこそこヒットした映画で『ありがとう、トニ・エルドマン』というドイツ映画でも主演をしていた人です。

映画「」のポスター

(石山蓮華)はいはい、はい。

(町山智浩)で今回はアカデミー賞で作品賞にノミネートされてるもう1本のドイツ映画でですね、『関心領域』という映画で。これはアウシュビッツの収容所で虐殺をやっていた将校の奥さんの役を彼女が演じてて。もうすごい今、注目されてる女優さんですね。この人ちなみにめちゃくちゃ歌も上手いんですけど。『ありがとう、トニ・エルドマン』では、あのホイットニー・ヒューストンの歌をですね、フルコーラス歌うというとんでもないシーンがありますよ。で、この映画のもう1つのポイントは、この奥さんはドイツ人で、旦那さんがフランス人で。で、互いの母国語をよく知らないので、夫婦では英語で話してます。で、息子には英語で話しかけてて息子は英語をしゃべるというね。それで息子はちょっと障害があるんで学校にあんまり行ってなくて。地元のフランス語もあんまりうまくないと。すごい国際的な映画になってるんですね。

で、こういう人が実はアメリカはすごく多くて。だからタイの人と、だからドイツの人が結婚してて、子供は英語で教育してて夫婦も英語でしゃべってるとか、そういう夫婦がいっぱい近所にいるんで。アメリカでヒットしたのはそこの部分もあるかなと思うんですけど。で、この映画ね。どういう事がわかっていくかというと、まずこの奥さんベストセラー作家なんですけれども。最初は、旦那さんの方が大学教授か何かで、奥さんはその教え子みたいな立場で上下関係があったんですね。

(石山蓮華)はいはい。

(町山智浩)ところが、旦那さんは学校を辞めなきゃなんなくなって。どうしてかっというと旦那は・・この映画全てがネタバレになるんで難しいんですが。

(石山蓮華)あらららら!

(町山智浩)子供が、息子さんが目が見えなくなったのは事故なんですけど、その責任は旦那さんにあるという事で、旦那さんは、仕事を辞めて息子の世話をするようになるんですよ。で、その間、小説が書けなくなるんですけど。その間に奥さんは、自分達の生活をそのまま小説にしたり、旦那のアイディアとかを小説にしてどんどん売れてっちゃうんですよ。

(でか美ちゃん)あぁ。それって。っていう感じですもんね。

(石山蓮華)ありそうな話ですね〜!

家族の生活を小説化

(町山智浩)そう。ありそうっていうか、俺の友達にこういう人がいっぱいで。(笑)同業夫婦がいっぱいいるのでね。(笑)漫画家さんとかさ、小説家とかタレントとかさ。脚本家とかいっぱいいるんで、同業夫婦が。同業夫婦やべえ!っていう問題で。(笑)

(でか美ちゃん)あとなんか、お子さんが大きくなってから、あれ嫌だったとかちょっと見たりしますもんね、作家の方の家庭があるとね。

(町山智浩)でまたさ、物書きで。自分の実生活を切り売りしてる人っていっぱいいるでしょう。

(石山蓮華)あぁー!ちょっと耳が痛い〜。。ラジオですぐしゃべっちゃう。(笑)

(でか美ちゃん)ねぇ。すぐしゃべっちゃう。

(町山智浩)でか美さんが言った、その大きくなったら嫌になるってその話でしょう?

(でか美ちゃん)はい、そうですそうです。

(町山智浩)日本でも問題になってますけど。一部の人が。そういう問題でもあるんですよ。色んな問題がここに含まれてて。この監督はね、ジュスティーヌ・トリエという女性なんですけれども。この映画の脚本、『落下の解剖学』の脚本は、旦那さんが同業で、映画監督で脚本家なんですよ。

(でか美ちゃん)へぇ!まさに。

(町山智浩)で、アルチュール・アラリという人で、この人と、この旦那とその2人で、あと子供達と、コロナでアパートに閉じ込められてたんですよ。で、だんだんなんか夫婦仲が険悪になるじゃないですか。なる人もいますね。

(石山蓮華)ありますね。

(町山智浩)で、その中で、じゃあこれをネタにしたらいいっていう事で書いたのがこの脚本なんですよ。

(石山蓮華)逆転。

コロナ渦の隔離生活をネタにした脚本

(でか美ちゃん)でも、これを書いちゃおうの中で、それを書く事で、何かトラブルになるみたいな部分も書いてるの偉いですね。全部書くんだ。

(町山智浩)すごいなと思いますよ。そう。だから半分リアルなんですよね。でね、これがまた面白いのはね。この2人とも変な映画ばっかり撮ってる監督なんですよ。この夫婦が。このアルチュール・アラリというね旦那さんの方はね。この前に撮った映画がですね『ONODA』という映画で。これあのフィリピンのルバング島で戦争が終わった後も30年間兵隊としてですね地元の人を殺したりしていた日本兵の小野田寛郎さんの話なんですよ。

(でか美ちゃん)あ〜。

映画「」のポスター

(石山蓮華)有名な人ですよね?

(町山智浩)そうなんですよ。すごい映画を撮ってる人で、旦那の方は。この奥さんのジュスティーヌ・トリエさんという人が、最初に非常に注目された監督デビュー作ありまして、2014年の映画ですが、『ソルフェリーノの戦い』という映画でこの人は注目されたんですが。その映画がですね。主人公のお母さん・・主人公がですね女性のテレビレポーターでインタビューしたりする人ですね、テレビのためにニュースでね。ところが、離婚の危機というか完全に別居してまして。子供2人、ちっちゃい子供が2人いるんですけども、夫がその子供の親権を要求してて揉めてるんですよ。夫がいつ娘達をさらうかわからないから、娘達から目を離せないんですね。ところが、大統領選挙になっちゃうんですね、フランスの。で、レポーターとしていかなきゃならないんで、でも夫はDVがあるみたいなんですよ。で娘をさらわれるって事でしょうがないから娘を連れて取材に出ちゃうんですよ。ところがその取材っていうのは実際に2012年の大統領選挙そのもので撮影してるんですよ。

映画「」のポスター

(石山蓮華)えーーー!

(でか美ちゃん)えーすご。

(町山智浩)すごいんですよ。で、もうごった返してる、大統領はその頃サルコジ大統領っていうまぁトランプさんみたいな人なんですね右翼の。それと、それに対して社会党のオランド候補が立ち向かった選挙だったんですけど、それぞれの応援事務所というか、選挙事務所の方に取材に行くんですね。それは本当にそうなんですよ。そこに子供を連れて行くんですよ。で、カメラを回してるんですよ。

(でか美ちゃん)すごい撮り方ですね、できるんだっていう。

(町山智浩)で、そこに娘を取り返そうとする夫も入ってるんですよ。

(石山蓮華)えー!じゃぁ、本当の、えっと政治家というかその、えっと選挙事務所にいる人が映画に巻き込まれるって形なんですか?

(町山智浩)出てる人、この人達以外はほとんど全部本人です。で、テレビのレポートだと思ってインタビューに答えてるんですよ。

(石山蓮華)あーそうですよね。

(でか美ちゃん)えーいいんだ、それって。

(石山蓮華)えーー面白い映画。

(町山智浩)それで一体何をやろうとしてるかっていうと、そのDV夫を、その当時の非常にまぁなんというかな、右翼的な政策を進めていたサルコジ大統領に重ねてるんですよ。その社会党の大統領候補との戦いをこの夫婦の戦いと重ねて描いてるんですよ。

(石山蓮華)へぇ面白そう!

(町山智浩)すごい変な事をやる人で、この人はその後の映画もですね、例えば今回の映画に繋がってくる部分なんかだと、『愛欲のセラピー』っていうコメディを作ってまして。

(石山蓮華)せ、え!コメディー?

(町山智浩)これはね、カウンセラーが、カウンセラーとして聞いた話をどんどん小説に書いちゃうっていう話なんですね。(笑)

(でか美ちゃん)最悪の話ですね、それだけはしないってねぇ。約束じゃんかみたいな。

(町山智浩)そう。でカウンセリングを受けた女優が追っかけてくる。(笑)で、その次に撮った映画は『ヴィクトリア』っていう映画なんですけど、それは殺人事件の法廷物で、それが唯一の目撃者が犬っていう話なんですよ。

(石山蓮華)いぬー!

映画「」のポスター

(でか美ちゃん)えぇ犬映画!

(町山智浩)そう。だからずっと変な部屋ばっかり撮ってる人で、ただ今までは殆どコメディっぽかったんですけど、今回はシリアスにやってんですね。で非常に評価されてて。犬の話だとね、この映画の中でその息子さんが持ってる犬がですね、映画の中で1回、毒を盛られて死にそうになるっていうシーンがあるんですよ。で、これどうやって撮影してるの?本当に犬になんか薬か何か与えて撮ってるの?って思ったら、完全な演技だそうですよね。

(石山蓮華)えーー!演技派の犬って事ですか?

(でか美ちゃん)演技派ワンちゃん。

(町山智浩)演技派の犬。だから彼にアカデミー賞をあげた方がいいんじゃないかっていう。彼かどうかわかんないけど、彼女かわかんないけど。(笑)

(でか美ちゃん)このメインビジュアルにもね、サラッと写ってるワンちゃんですよね?

(石山蓮華)ボーダーコリー犬ですね。

(町山智浩)このワンちゃんが、苦しむシーンで結構みんな、うわっ!ひどい!と思うかもしれませんけど、演技ですから。安心してください。履いてますからみたいな世界です。

(でか美ちゃん)大丈夫ですよって。でもそれ結構大事ですね。

(石山蓮華)安心して見られる〜。大事です。

(町山智浩)で、この『落下の解剖学』で1番ポイントなのは、結局本当の事実は誰にもわからない訳ですよ。裁判ってそうでしょう、誰かが犯人だって決めなきゃなんないけども、実際に事実を知ってる人は誰もいないんですよ。で、それを決めなきゃなんないんですよ。それを観客がやらされる訳ですね。決めるって事を。でも本当にこの場合に、そのお父さんを選ぶかお母さんを選ぶかっていう選択に立たされてるのは息子ですよね。で、このお母さんは本当に悪いお母さんなのか、お父さんが悪かったのか。それを子供が選ばされる訳ですよ。この映画の中では。これは、殺人事件の話にしてるけど実際は、親権争いの話ですよ。一種。

(石山蓮華)なるほど。

(町山智浩)それで今問題になってるのは自民党政権が共同親権を認めて、離婚した後も夫が子供に会えるようにしようっていう風な事で法案を進めようとしてますけども。一体それで守ろうとしてるのは夫の権利ですけど本当に守られなきゃいけない権利っていうのは一体何でしょう。

(石山蓮華)子供の権利ですよね。

(町山智浩)子供の権利なんですよ。その事を忘れてねーの?っていう事ですよね。そういう事まで問いかけてる、非常にいっぱいいっぱい、色んな細かい要素が現実に繋がってくるね映画でよくできたシナリオで、これは脚本賞を取るかなと思ってますね。『落下の解剖学』です。

(石山蓮華)見に行きましょう。という事で、今日は今週23日金曜日から公開になる『落下の解剖学』をご紹介いただきました。町山さんありがとうございました。

(でか美ちゃん)ありがとうございました。

(町山智浩)はい、どうもでした!

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

⑤観客が物語の中に参加させられる作り

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