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おんどりの鳴く前にの町山智浩さんの解説レビュー

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2025年02月18日更新
前半はほのぼのとして笑わせて、後半はもう胸が締め付けられるように追い詰められていくんですけど、最後に立ち上がります。立ち向かいます。(TBSラジオ「こねくと」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『おんどりの鳴く前に』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『おんどりの鳴く前に』解説レビューの概要

①ルーマニア映画
②ど田舎のおっさんの駐在さんの話
③ほのぼのしたフレンドリーな田舎町
④実はこの村ものすごく○○している
⑤駐在は、自分がよくしてもらっているから、起きた事に見てみぬふりをしている
⑥村長はルーマニアの腐敗した政治家をモデルにしている

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『おんどりの鳴く前に』町山さんの評価とは

(町山智浩)今日話す映画はねルーマニア映画ですね。これはね、今週金曜日から公開される『おんどりの鳴く前に』というルーマニア映画を紹介します。それもねちょっと繋がってくるところがあって今日。(トランプ就任の話)ちょっと話させてください。

これね、ルーマニアのど田舎の北の方のですね、モルドヴァという国があるんですがそっちの方に近いところのど田舎の駐在さんの話です。警察官で、おっさんなんですけど冴えないおっさんでですね本当に。で、イリエっていう名前なんですが、かみさんにも逃げられて1人者でですね。警察官なんだけどまともに制服も着ないでいつもヨレヨレの格好をしてて。で、ど田舎だから何も起こらないんですよ。だから何もしないでそれこそ増水した川に近付いた釣り客を追っ払うぐらいしか仕事がないと。

(でか美ちゃん)平和だ。

(町山智浩)だからのんびり暮らしてるんですけど。ただ、すごく平和で何も起こらない町というか、村でですね。だからいいところなんですよ結構。で村長さんは優しくてね、村長さんの奥さんと一緒にイリエ警察署長は・・署長って言っても1人しかいないんですが、家に呼んでくれてご飯を食べさせてくれて、あんたはうちの息子みたいなもんだよとか言ってかわいがってくれて。

(石山蓮華)優しい。

(町山智浩)優しいんですよ。で、その村の教会の司祭もね、非常に気さくな人でね。威張ってなくて。でイリエとかに優しくしてくれるんですけど。で、のんびりしたところで。最初、この映画、『おんどりの鳴く前に』という映画はコメディ。田舎コメディ。山田洋次監督のような。

(でか美ちゃん)あったかい感じ。

(石山蓮華)ねぇドタバタがあるんだかないんだか。

ほのぼのしたフレンドリーな田舎町

(町山智浩)松竹映画のような。だからほのぼのしたフレンドリーな田舎町として始まるんですけど。で、しかもこのイリエは何もやる気がなかったんですけど、この村長さんから果樹園をね、もらえる事んなるんですよ。で、さくらんぼとかね、あんずとかを育ててのんびり老後は暮らしていこうという事で、まぁ将来はまぁちょっと幸せかなと思ってたんですけど。その果物の木をよ〜く見るんですね。よ〜く見ると中から虫がいっぱい湧いてて腐ってるんですよ。

(石山蓮華)こわい。

(町山智浩)これは何か?っていうと実はその村の本当の事を意味しているんですね。象徴してるんですよ。実はこの村ものすごく腐敗してるんですよ。

(石山蓮華)は〜。

(町山智浩)で、ある1人の男性が斧で頭を割られて惨殺されるんですけど。それを調べていくうちに、どうもその殺された被害者の奥さんに村長が横恋慕して、性的な関係を迫って、でその旦那を殺したって事がわかってくるんですよ。

(石山蓮華)え、村長が。はぁ。

(町山智浩)でも村長の世話になってるんで、イリエ署長はね。何も言えないんですよ。明らかにわかってるんだけど何もできないんですね。

(でか美ちゃん)人殺してるぞって思うけどね。

(町山智浩)そうなんです。色々世話になってるし彼は果樹園をもらうっていう約束をしてるんですよね。

(石山蓮華)でも腐ってるんですよね?

実はこの村ものすごく腐敗している

(町山智浩)腐ってるんですけどね。で、そこにね若い警察官がやってくるんですよ。で、これは絶対におかしいと。この村は腐ってると。私はこれ追求しますと。言うんですけど、イリエは止めるんですよ。そんな事するなよと。波風立てるなよと。みんなずっとやってきたんだよと、これまで。お前が騒いだりするともうめちゃくちゃになっちゃうんだから、何もするなって言うんですよ。っていう話なんですよ。

(でか美ちゃん)急に不穏な。

(町山智浩)これは今、世界中で起こってる事ですよ。

(でか美ちゃん)そうですよ、確かに。なんか見て見ぬふりをするというか。

(町山智浩)見て見ぬふりをして、ずっと知らないふりをしてたんだけど、とうとうだんだん、それが明らかになってくと。でもそれでも知らないふりをし続ける。今起こってる事ですよ、フジテレビで起こってる事ですよ。全部同じですよ。自民党でも起こってるし、もうそこら中、日本の田舎のそれこそ兵庫県とかでも起こってる事で全部起こってる事ですよ。アメリカでも起こってる事ですよ。ジェフ・ベゾスっていうAmazonのね、ワシントンポストのCEOはね、明らかにわかってるし明らかに圧力をかけられてる訳ですけどトランプから。

それを全然報道しない訳ですよ。Amazonを経営するために。もう果樹園とAmazonは同じですよ。ジャングルだけどAmazonはね。もうみんな同じ。だって得って言うか、要するにみんな守りたいものがあって保身ですよね。大富豪でも田舎町の警察署長でもみんな同じですよ。

で、この映画ね、その監督のパウル・ネゴエスクさんっていう人にインタビューをしたんですよ僕。彼ブカレストにいるんですけど今すごいですね。Zoomでインタビューできるんですね。で、彼に色々聞いたら、この村長さんっていうのは実際のルーマニアの腐敗した政治家をモデルにしてるんだってハッキリ言ってました。

(でか美ちゃん)もうまさにだ。

パウル・ネゴエスク監督へのインタビュー

(町山智浩)顔もそっくりにしてると言ってました。だからルーマニアの人が見るとあいつそっくりだってなるらしいです。で、とにかくルーマニアはものすごい腐敗がひどくて。元々チャウシェスク大統領というですね独裁者がいたんですよルーマニアって。で、1989年に、これねテレビで放送されて世界中に衝撃を与えたんですが、演説をしてる最中に、演説に集まっていつも「チャウシェスク万歳!」ってやってた国民達が突然、「このクソッタレ!」って言い始めたんです。「お前は独裁者で人殺しだ!」ってみんな言い始めたんです。最初は1人だった人が2人、3人、4人とどんどん増えていって。そのうちに、もうそこにいた何千人っていうルーマニアの人達が一斉に、「お前降りろ!」っていう事になって。全員が叫んで。でとうとう軍隊も出て。軍隊の中の人達もチャウシェスクに逆らって、結局チャウシェスクを処刑しました。そういう事件があったんですけどご存じない?

(石山蓮華)いや、知りませんでした私は。

(町山智浩)昔コマネチさんっていう人がいたんですよ。

(石山蓮華)あ、新体操?あれ体操か。

(町山智浩)そうです。体操の選手で美少女だったんですけど、ルーマニアの選手で。彼女はこの独裁者一家に性的にボロボロにされたんですよ。そういうチャウ・シェスクっていう恐ろしい独裁者がいた国で、それを倒したんですが、ルーマニア人達は自分達で。でも基本的に体質が変わってないそうなんですよ。この監督のネゴエスクさんに聞いたら、この村長っていうのはちっちゃいチャウシェスクみたいなもんだって。こういうのがいっぱいいるんだってルーマニアには。この村長レベルから、大きい政治家まで。で、これね、もう1つ怖い要素があって。さっき言ったルーマニア正教の教会の司教さんがいるんですけど、最初いい人かと思ってたら、とんでもない殺人マシーンなんですよ。

(石山蓮華)怖いわ。でもなんか色々普遍的に繋がりますね。

(町山智浩)そうなんです。宗教がものすごく腐敗してて政治家とつるんでいるんですねルーマニアは。ただマシンガンを持って襲ってくるんで。

(でか美ちゃん)そこはすごい映画的というか。

(町山智浩)こんな聖職者いるんですかルーマニアって僕聞いたら、いやマシンガンは持ってないよと。でもね、このくらい悪い聖職者、宗教家がいっぱいいるんだって言ってました。で、マシンガンを持ってないのはなんでですか?って聞いたら、ルーマニアは銃の質が悪くて不発とか故障が多いからだっていうそういう理由でした。

(石山蓮華)物理的な理由で。

(でか美ちゃん)ねぇ。質さえ良ければ持ってんじゃないかくらいの。

(町山智浩)そうそうそう。暴発とかするから持ってないんだって言ってましたけど。じゃぁヤクザはいないんですかって。銃持って暴れたりする人いないんですかって聞いたら、ヤクザはね、剣を使うよって言ってましたよ。

(でか美ちゃん)剣・・!

(町山智浩)これやっぱりドラキュラの国なんでね、ルーマニアね。ネゴエスクさん言ってましたけど、ヤクザは剣を使うからってびっくりしましたけど。

本当の悪と戦う

で、この映画そうやって警察署長がどんなに不正を見ても知らないふりして見ないふりをしてずっとやってるんですが、彼がすごく大事にしてたものを失ってしまうんですよそれで。で、とうとう本当に警察官として目覚めて、本当の悪と戦わなければならないところに行く訳ですが。でもそれまではずっと見て見ぬふりをし続けてるんですね。自分の保身のために。でね、これね日本語タイトルの『おんどりの鳴く前に』というタイトルがね日本の映画会社がつけたんですけど実にうまいんですよ。これは聖書の引用です。

(石山蓮華)これ原題はどんな題だったんですか?

(町山智浩)原題はね、『善良な人々』っていう、あんまり掴みのないタイトルなんですけど。これね、新約聖書のマタイによる福音書の引用で、キリストがローマ兵に捕まって逮捕されて十字架にかけられるんですけど、その前に彼の1番弟子のペトロにですね、「あなたはおんどりの鳴く前に私を3回”知らない”と言うだろう」って予言するんですよ。おんどりが鳴く前にってのは要するに、夜が明ける前にっていう事ですね。で、実際にそのローマ兵が来てキリストを逮捕しようとした時に、ペテロは、いや私はこんな人知りませんって言って知らないふりをするんですよ。自分の師匠なのに。その事を言ってるんですねこのタイトルは。

だから自分の保身のために正義を執行できない、悪を見逃してしまう主人公の事を言ってるんですけど。でもね、ペトロって実在の人物なんですけど、この人はその後キリストが亡くなった後もずっと後悔してて。で、ローマに布教に行くんですよ。ところがローマではキリスト教徒のものすごい弾圧、迫害、虐殺が起こってて。やっぱり彼あんまり度胸のいい人じゃないんですね。ペトロっていうのは1番弟子なんですけど普通の人なんですよ。漁師さんでね元々。魚獲ってた人で別に宗教家じゃないんです。で、ローマで迫害されたんでローマを逃げ出しちゃうんですよ。そこにキリストの幻が現れたんです。そして、あれ、お師匠様、どこ行かれるんですか?とペテロが聞いたらキリストは、あなたがキリスト教徒達を見捨てて逃げるので、私がこれからローマに行って処刑されますってキリストが言うんですよ。で、ハッとペトロは気が付いて、自分でローマに駆け戻って、それで処刑されました。その事がね、この日本語タイトルには込められているので。素晴らしい日本語タイトルを映画会社はつけたんだなと思いました。

(石山蓮華)すごい印象的だし、意味合いも。

(でか美ちゃん)だしポスターがめちゃくちゃいいですね、メインビジュアルが。

(町山智浩)ははは。

(でか美ちゃん)このめちゃくちゃ手前におんどりがいて。

(石山蓮華)ピントのぼけたおんどりの後ろに・・。

(町山智浩)これポスターおんどりじゃないんですよ、めんどり。

(石山蓮華)あ、そうなんですかこれ。トサカか、あぁ。

(町山智浩)大きくない。色々ありますが。これね、前半はほのぼのとして笑わせて、後半はもう胸が締め付けられるように追い詰められていくんですけど、最後に立ち上がります。立ち向かいます。

(石山蓮華)いやこれは気になりますね。

(町山智浩)今現在世界中で起こってる事でみんながね、悪い事が起こってるのにみんな自分の身を守るために、もう本当に正義が行われない世界ですよ日本もアメリカもフジテレビもそれこそどこもみんなね。でもやっぱり命をかけて戦わなきゃなんない時があるんだっていう映画です。もう是非ご覧いただきたいと思います。

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

④実はこの村ものすごく腐敗している

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