アヌジャの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『アヌジャ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『アヌジャ』解説レビューの概要
①netflix配信中のインド映画
②9歳の女の子、アヌジャちゃんがお姉ちゃんとインドで暮らしている
③アヌジャちゃんは○○で休みなく働かされている
④アヌジャちゃんの数学の才能を見いだされ救いの手が差し伸べられたが
⑤姉の事を思い悩んで・・
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『アヌジャ』町山さんの評価とは
(町山智浩)もう1本紹介する映画は、これはね日本でももう既に見れます。Netflixで配信されてる映画で、『アヌジャ』っていうタイトルのインド映画なんですけど。これはね短編なんですよ。23分しかないかな?短編部門なんですね。アカデミー短編部門にノミネートされてます。
『アヌジャ』っていうタイトルは女の子の名前です。9歳の女の子でアヌジャちゃんがお姉ちゃんと一緒に暮らしてるんですがインドで。彼女は朝から晩まで縫製工場で服を作ってるんですよずっと。ミシンいじって。でね、孤児なんですね。お父さんもお母さんもいなくて。で、どれぐらい働いてるかっていうとね、どれぐらいの利益を上げるのかを工場長がね、彼女に計算させるっていうシーンがあるんですよ。そうすると、まず1日14時間労働でしょうって。それで週に7日間労働だからって計算するんですけど、そりゃあり得ないだろうって。
9歳の女の子、アヌジャちゃんがお姉ちゃんとインドで暮らしている
(石山蓮華)え、1日・・?
(町山智浩)1日14時間労働で週に7日間。
(石山蓮華)えぇっ!?14時間労働で休みなし?子供が。。
(町山智浩)休みはね1日に食事とトイレで15分だけある。
(石山蓮華)えーー!
(でか美ちゃん)え、15・・であとは睡眠して出勤してっていうだけの時間なんですね。
(町山智浩)それだけなんです。で、ひどいと思ったらやめればいいじゃないかと。でもお前ら孤児なんだから行くとこなんかないし、元々子供なんだから雇ってくれないだろ。だから法律に完全に違反した、労働基準法とかも完全に無視したこの現場で働くしかお前ら達には生きる道はないんだって言うんですよ、その工場長が。
アヌジャちゃんは孤児で休みなく働かされている
(でか美ちゃん)居場所がそこしかないと、そうさせちゃうのか。
(町山智浩)そうなんですよ。ずっと服作ってるんですけど、でも世界中こういう工場が山ほどあるんだ。そういう所でみんな子供達が作ってんだ。
(でか美ちゃん)こんなに安い訳ないだろうっていう通販がめちゃくちゃある訳じゃないですか、海外ファストファッションとか。
(町山智浩)めちゃくちゃある。中国製とかね。
(でか美ちゃん)なるべくここは使わないとか私も決めてますけど・・。世界中にあるんだよなぁ。
(町山智浩)世界中にあるんですよ。で、中国とかね結構労働者が頑張って労働条件をどんどん良くしていってるんですけど、そうするとまたインドとかひどいところに回しちゃうんで、作る場所をね。で、まぁファストファッションの地獄みたいなところが描かれるんですけど。そこにあるおじさんが来るんですね。で、この子は数学の天才だと思う。勉強させたいと。アヌジャちゃんを。ある学校があって、そこに行くと寄宿学校で暮らせるし寝るとこもあるし食べる物もあるし、学校にも行けると。というチャンスを与えたいって言うおじさんが現れるんですけど、ただそこに入っちゃうと、アヌジャちゃんは助かるけど、お姉ちゃんが置いてかれちゃうんですよ。
(石山蓮華)2人は連れていけないんですか。
アヌジャちゃんの数学の才能を見いだされ救いの手が差し伸べられたが
(町山智浩)えー、これねお姉ちゃんは、アヌジャちゃんだけでも行ってって言うんですけど、アヌジャちゃんは悩んでっていう話なんですね。で、この映画はね実はストリートチルドレン、孤児の子達に勉強をさせてあげて、住む所と食べ物を与えるというNGOがこの映画に参加していて、これに出ている子達も実際にそのストリートチルドレンでその団体に救われた子達なんですよ。そのNGOはね、Salaam Baalak Trustという名前なんですけども、でこれもまたね、これがアカデミー賞を取ると非常に大きなメッセージだと、思うのは、というかなんですけども、このSalaam Baalak TrustというNGOを支援してるのは、アメリカのUSAID。アメリカ国際開発庁っていうとこなんです。で、アメリカ国際開発庁は全世界のそういった貧困層の子供達に教育を与えたり、住むとこを与えたり、疫病ですね、病気ね。薬とか医療とかそういうものを与えたり、そういう事をして世界中で活躍してる組織がUSAIDというとこなんですね。これが今、解体される、閉鎖されそうなんですよ。
(石山蓮華)これも、どういう・・ねぇ。
(町山智浩)これがまぁ本当にひどいんですけど、イーロン・マスクというね、テスラを作ったおっさんがね。おっさんが。何の権利もないのに。アメリカ政府効率化省というものをでっち上げてですね、法的にはもうほとんど全く何の権限もないのに、まず最初にUSAIDという所を潰そうとしたんですよ。で、これによって世界中の貧困に苦しんでる子供達が食料を与えられなくなる可能性があるんです。で、これがねまた酷いのは、この海外援助ってアメリカ連邦全ての支出の中のたった1%でしかないんです。
(石山蓮華)1%のそこですごい救われている人命がたくさんいるのに。
(町山智浩)はい。それを潰そうとしてるんです。
(石山蓮華)それは無駄を切るとかっていう話じゃないですよね。
(町山智浩)違います!違います。イーロン・マスクはUSAIDからスターリンクという通信端末をウクライナに提供する事でですね、何百万ドルかの資金援助を受けているんですが、その時同時にイーロン・マスクはプーチンと連絡を取っていたので、情報を流していた可能性があるんですよ。それでUSAIDは監査局というところがプーチンとウクライナとの間にいたイーロン・マスクを監査してたんですが、USAIDが閉鎖されたんでその監査が止まりました。
(石山蓮華)じゃぁ自分の首を守るために・・。
(町山智浩)自分の疑惑をごまかすためにUSAIDそのものを潰そうとしてるんですよ。
(石山蓮華)えー。
(町山智浩)その監査官も解任されました。
(でか美ちゃん)でも、なんか、より際立つけどなって思いますけどね。
(町山智浩)そう。モロじゃんって思いますけど。まぁでもこれはひどいです。USAIDっていうのは、今ちょこっと説明しますと、元々ソ連が世界中にね貧しい人達に支援をして、武器を持たせて共産革命を起こさせようとしてたんですね。1960年代に。実際に世界中でそうなりました。アジア、アフリカ、中南米で。要するに貧困の人達がすごく多い地域は、政府を倒せと言われて銃を持たされたら倒しに行きますよね。
だから、それに対して戦争という形で戦ってもダメだってケネディ大統領は思ったんですよ。そうじゃなくて、その貧困層を救った方がいいよと。そしたら彼らは、共産主義にならないし、ソ連の味方にならないし、アメリカの味方になるだろうと。要するに軍隊というものは、ハードパワー。固い力なんですけど、それに対してソフトパワー、柔らかい力でアメリカの仲間を増やしていって、ソ連を追い詰めていこうという事で作られたのがUSAIDなんですよ。
で、ソ連がなくなった後もロシアとか中国に対して、アジア、アフリカ、そういった所が、中南米が、中国・ロシア側に入らないようにという事で支援をし続けてたんです。貧しい人達に。それが今ストップしたからものすごい中国とロシアが喜んで大はしゃぎでそういうとこに入りこんでいるんですよ。
(でか美ちゃん)なんかすごい、世界の話なのに、人々の話なのに、なんかごく1部の人達だけで、なんか楽しそうにしてますよね。
(石山蓮華)金持ってるからって何してもいい訳じゃないんだぞっていうのを本当に思いますね。
(町山智浩)ないんですよ。ただ止められないんすよ、トランプなんかは選挙で落とす事もできますけど、イーロン止められないんだよね今のとこ。大変な事態が今起こってます。これに関しては日本はすごく、プーチンのプロパガンダに騙されちゃった人達がテレビでしゃべったりしてるんで本当に問題なんですが。NHKさんとかはね、必死に戦ってますけど、そういうデマとね。デマの方が強いんだ、今の日本は。世界中は。もう大変な世の中で、このアヌジャちゃん、ちょっとかわいいから見てほしいんですけど。これがUSAIDがやってる事なんでね。こういう子達を助けてるんで、変なデマに踊らされないでちゃんとこういうのを見ておいてほしいなと思います。
(石山蓮華)『アヌジャ』はnetflixで配信中です。えぇ改めまして今日はアカデミー賞ノミネート作品を3本、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』『Porcelain War(原題)』そしてnetflixで配信中の『アヌジャ』をご紹介頂きました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)どうもでした。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③アヌジャちゃんは孤児で休みなく働かされている