異端者の家の町山智浩さんの解説レビュー
記事内に商品プロモーションを含む場合があります
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『異端者の家』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『異端者の家』解説レビューの概要
①主演はヒュー・グラント。80年代のスターで、好青年役でラブストーリーに多数出演
②『異端者の家』ではものすごく気持ち悪いじいさんを演じる
③『異端者の家』アメリカで大ヒット
④モルモン教の宣教師の若い女性2人を○○するストーリー
⑤モルモン教には厳しい戒律があると言われている
⑥モルモン教を○○
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
町山さん『異端者の家』評価とは
(町山智浩)今日はですね、すごいホラー映画で、『異端者の家』という映画をねちょっと紹介したいんですね。これはヒュー・グラントという人が主演なんですがポスターのこのおじさんなんですが。
(石山蓮華)真ん中の。
(町山智浩)この顔を見てどうですか?
(石山蓮華)ん〜怖そう。なんか、目がらんらんと光ってますね。
(でか美ちゃん)ね。なんか照明とか、写真の表情とかもちろんあるんですけど、怪しい人ってこういう目の輝き方してますよね。信用しちゃいけない感じする。
(町山智浩)怖いでしょう?この人実は、アントニオ・バンデラスと同じ80年代のスターだったんですけど。爽やかな好青年役でラブストーリーにいっぱい出てた人なんですよ。でアントニオ・バンデラスは昔、80年代にセクシースターだったけど、ダメなおっさん演じてましたが、『ベイビーガール』で。

ヒュー・グラントは爽やかな好青年だったのに、ものすごく気持ち悪いじいさんを演じてるんですよこの『異端者の家』で。
(でか美ちゃん)へぇ。新しい感じだ。
『異端者の家』ではものすごく気持ち悪いじいさんを演じる
(町山智浩)自分同じ世代なんでね、非常にどっちの映画も衝撃でしたよ。もうね、町山くんもおじいちゃんになりましたと思いましたよ。でね、この『異端者の家』はまぁ大ヒットしたんですがアメリカで。これはね、モルモン教の宣教師の若い女の子2人が、訪問するんですね各家庭を。で、ドアをノックして「モルモン教に興味ありませんか」と聞いて回るんですけど。この変な気持ち悪いおっさんのヒュー・グラントに家に入れられて監禁されてしまうって話なんですよ。
(石山蓮華)恐ろしい話ですね。
(町山智浩)これはね、あまりにもちょっと怖いんで実際にそういう事をやってるんでモルモン教は。危険だからこの映画はもう許せないという事でものすごく激しく批判してます。ただね、実際に映画を見ると、ちょっとモルモン教を批判してたりからかっているような内容じゃないんですね。もっと非常に深いね宗教とは何かっていう事を描いている映画でした。まず基本的にモルモン教というものについて説明しないとなんないんですが。これは正式名称じゃないんです。正式名称はですね、末日聖徒イエス・キリスト教会と言います。これはアメリカで始まったキリスト教の分派なんですけれども、モルモンというのは、その彼らが信じる聖書がありまして。モルモン書と言うんですが、それをまとめた人の名前がモルモンという名前なんで、外側からモルモン教と言われてるんですが、彼ら自身は自分達の事をモルモンとは呼びません。はい。
で、非常に厳しい戒律があるという風に言われていて、お酒とかコーヒーとか、お茶とかですねカフェイン入ってるものは飲まないとかね。あとよくからかわれるんですが、自分の体をいじったりしないような特殊な下着を着てるんですよ。で、非常に厳しいという風に言われてるんですれども。この18歳からね25歳ぐらいの間に、宣教師を経験するんですね。モルモン教の人達って。でこれ、主人公の女の子2人は、たぶん23、4なんですけど。2人でコロラドの住宅地を回ってモルモン教の宣教してるという話です。
モルモン教には厳しい戒律があると言われている
(町山智浩)で、ちょっと離れたところにある大きな家をトントントンってこうノックして、と思ったんですが、そこで暴風雨が来てですね、もうびしょびしょになっちゃうんですよ。で、ドアを開けたらこのヒュー・グラントおじさんが出てくるんですが、彼、笑顔は優しいんですよ。でね、もう寝ちゃうからうちに入りなって言うんですよ。ところが、モルモン教の宣教師はですね、非常に危険だからそういう時には入っちゃいけないっていう風に教えられてるんですよ、絶対に。
で、特に女性がいない家には入っちゃいけないって言われてるんですよ。ただ、あまりにも嵐がひどいから、もうびしょびしょだから入っちゃうんですね。で、奥さんいるって言うんでね。奥さんいるってから大丈夫だよって言われて。で入っちゃうんですが、入ったらですね、なんとそこはですねモルモン教を論破する親父の家だったんですね。
(でか美ちゃん)えぇ。
(石山蓮華)何故・・入れてしまった。。
(町山智浩)待ち構えてたんですよモルモン教の宣教師が来るのを。このヒュー・グラントは。
(でか美ちゃん)罠じゃないけど。。
モルモン教を論破
(町山智浩)でもう、いきなりね、モルモン教とかそういうの俺ものすごく勉強したんだ。こんなに擦り切れるほどモルモン書を読み込んだんだみたいな話になってきて。あぁ、そうなんですか。じゃぁ正しい宗教、神の教えを求めてるんですね?モルモン教の始まりの教祖のね、スミスさんもそうでしたよっていう風に言うと、そこが罠なんですよ。モルモン教というのはね、スミスさんという人がね。ジョセフ・スミスという人が始めたんですけどアメリカで。色んなキリスト教の教えを渡り歩いて勉強した結果、なぜかモルモン教というものを始めてしまうんですね自分で。
で、ここでそのジョセフ・スミスという人が問題になってモルモン教がアメリカで非常に迫害された理由というのがあって。その話をヒュー・グラントがするんですね。一夫多妻やってただろうって言うんですよ。君達が。そうすると、僕ね実はモルモン教の総本山の方に正式に取材に行って、モルモン教の教団の中に入った事あるんですけど。3日間徹底的に彼らの話を聞いて、質疑応答とかしてったんですが、1番問題なのは一夫多妻なんですよ。で、モルモン教が始まった頃は彼らは何十人ものですね奥さんを持ってたんですね。で、モルモン教側としてはそれは、そういう神の教えがあって、モルモン教の信徒を増やすために子供をたくさん作るために奥さんをたくさん持てという神のお告げがあったんだという風に正式には答えてるんですよ。でもある日、それが必要なくなったんで、る程度人数が増えたんで一夫多妻をやめたんだというのが正式な答えなんですけども。そういう答えをするとこのヒュー・グラントはですね、それは嘘だろうって言うんですよ。ジョセフ・スミスは、若いメイドに手をつけてそれを奥さんにバレたから、神のお告げがあったっていう言い訳をしただけだって言うんですよ。で、とにかくすごく知ってて、モルモン教について詳しくて。モルモン教を論破しようとするんですよ。この2人を。で、ところが彼はそれだけじゃなくて、モルモン教だけじゃなくてですね、すべての宗教を論破し始めるんですよ。さっきモルモン教っていうのはキリスト教を勉強した人が始めたって言ってるところから、じゃぁキリスト教のパクリなんだろうって言うんですよ。ところがなお前ら知ってるかと。お前らって言ってないんですねこのヒュー・グラントはね。君達は知ってるかね?っていう言い方なんですけど。キリスト教も所詮、ユダヤ教のパクリなんだよって言うんですよ。イスラム教もやっぱりそうなんだ。みんなユダヤ教のパクリなんだと。それはバーガーキングみたいなもんだなって言うんですよ。
(石山蓮華)フランチャイズ店って事ですか?
(町山智浩)そう。(笑)マクドナルドの真似をしてウェンディーズが出てきただろうみたいな話するんですよ。
(石山蓮華)わかるようなわからないような。
バーガーキングのぱくり
(町山智浩)そこがね、この映画の面白いとこで。なんの話をしてるんですか?とかいう話になってくるんですけど。ここでね、この映画の、その宣教師の役をやっている女性がいるんですが、ソフィー・サッチャーさんが歌った歌でね、この映画の主題歌をちょっと聞いてほしいんですが。『天国のドア』です。はい。
(町山智浩)これはこの間紹介した『名もなき者』のですねボブ・ディランが72年にヒットさせた、『天国のドア』のカバーなんですけど。

マジー・スターという人の2005年のヒット曲の『Fade Into You』というのをちょっとかけてもらえますか?
(でか美ちゃん)おや?おやおや?
(石山蓮華)聞いた事がある。
(町山智浩)これ殆ど同じ曲ですよね。
(でか美ちゃん)コード進行ほぼ一緒で、なんかメロディのニュアンスも結構近いかなぁて。
ぼーっと聞いてたらこれ『天国のドア』だなって思っちゃう。
(でか美ちゃん)思いそうだね。
(町山智浩)そうなんです。これはね、このマジー・スターが『Fade Into You』をヒットさせた時に、すでにボブ・ディランの72年の『天国のドア』のパクリじゃないかって言われたんですよ。で、この映画の中ではこの主題歌を、ソフィー・サッチャーが『天国のドア』をマジー・スターの『Fade Into You』のアレンジで歌うっていう事をやってるんですよ。
(でか美ちゃん)えー。
(石山蓮華)あれ、さっきの話とちょっと繋がりますかね。
(でか美ちゃん)バーガーキング的な。
(町山智浩)そうなんですよ。色んな歌っていうのはやっぱりみんな、なんていうか影響されてパクリだったり似てたりするんですよ。
(でか美ちゃん)リスペクト込みでというかね。
(町山智浩)込みでね。
(石山蓮華)それがカルチャーですもんね。
(町山智浩)そうそうそのとおりなんです。カルチャーってそういうもんなんですよ。で、パクリだなんだって言ってても、そこには確かにキリスト教はユダヤ教からできたかもしれないけども、だからパクリじゃねえかって言うのはちょっと違うんじゃないかって話なんですよ。ところがこのヒュー・グラントはマウントをかけてくる訳ですよそれで。あれはあれのパクリだ、あれはあれのパクリだって。ロックファンにはいっぱいいるんですよそういうやつが。俺はそういうやつです。(笑)僕自身を見た気持ちでしたよ。娘とかと曲を聞いてても、あぁこれはナントカのパクりじゃない?とかとか言うんですよ。
これ、ナントカのパクリじゃない?
(石山蓮華)私も親と音楽聞いてて、「これさ、俺の若い頃のこのバンドのさぁ」って言われて、ムッとした事があります。
(町山智浩)でしょ?もう本当に娘に嫌われるんですけど、娘が大好きで聞いてる曲とかを、あれ?これナントカのパクリじゃない?そっくりだよとか言うと、本当にもうすげー嫌な顔をするんですけど。このマウント親父なんですよ。ロックオタクとか映画オタクにいっぱいいるんですよ。あれ?ナントカのパクリじゃない?っていう。それを宗教でもやってくるんですよ、このヒュー・グラントは。
(石山蓮華)自分自身にももうなんかそういうきらいがあるので。
(町山智浩)僕なんて、この塊みたいなもんですから。(笑)これで仕事してますから。映画評論とかね。あれはナントカの影響だって。でもそれがいかにいやらしい事かというね。恐怖映画でしたよ。ホラーでしたよ。
(でか美ちゃん)知識があるからこそ読み取れる文脈とかもあるから、なんかね、そのマウントっていうニュアンスじゃなければそれはすごい素晴らしい事だと思うんですけど。バーガーキングみたいな事言われるとちょっと違うかもしれない。(笑)
(町山智浩)この男が一体なんでそんな事をしてるのかと。モルモン教の人とか、女性を論破して。自分の宗教を始めようとしてるんですよ。はっきり言うと、女の人を監禁して、一夫多妻みたいな事をしようとしてるんですよこのジジイは。
(石山蓮華)最悪だよ。
(でか美ちゃん)自分だってバーガーキングやん。
(町山智浩)地獄のような世界ですよこれ。これはすごかった!
(石山蓮華)どんな結末になるんでしょうか。
(でか美ちゃん)ね、なのにこんなに穏やかな、でも意味のある曲が流れるのか。
(町山智浩)だからどんな結末かって言えないですけど、本当の、要するに宗教って一体何のためにあるのか、というところに行くんですよ。本当に大事なものは宗教にとっては何なのか?人はなんで祈るのかと。深い映画でした。これはちょっとすごかったです。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
④モルモン教の宣教師の若い女性2人を監禁するストーリー
⑥モルモン教を論破