ベイビー・ドライバーの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、エドガー・ライト監督の画期的なミュージカルアクション映画「ベイビー・ドライバー」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん「ベイビー・ドライバー」解説レビューの概要
①「ベイビー」という名前の男の子が主人公のカーチェイス映画。
②ベイビーが聞いている音楽が背景で流れ続ける「ミュージカル」でもある。
③エドガー・ライト監督が追い求めた、音楽を取り入れた映画とは?
④カーチェイスやアクションをしたあとは○○○を書くべきだ!
⑤『アメリカン・ゴッズ』がモザイクだらけなのには譲れない理由がある。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ベイビー・ドライバー』町山さんの評価とは?
(町山智浩)
今日はですね『ベイビー・ドライバー』という映画です。はい。
(海保知里)
「赤ちゃん運転手」になりますね、直訳するとね。
はい。
(町山智浩)
はい。これね『B-A-B-Y』っていう曲なんですよ。
(海保知里)
はい。
(町山智浩)
えーこれはまぁ、まぁ、「ベイベ〜♪」
いいでしょう?これ。
(海保知里)
はい。
(町山智浩)
で、これ歌の中で「ベイビー」って言われるじゃないですか。女、あーあの好きな人に。
「ベイビー、ベイビー」って言いますよね?で、この映画の主人公は「ベイビー」っていう名前なんですよ。
(海保知里)
えぇー!名前がベイビー。
(山里亮太)
えっ、名前がベイビー?
主人公の名前がベイビー
(町山智浩)
はい。ベイビーっていう名前の男の子なんです。
これ写真があるんですけど、アンセル・エルゴートくんというね、アメリカでいまティーンの間で大人気のね、くそイケメン野郎ですけど。
(山里亮太)
くそイケメンですよこれは。
(海保知里)
ははは(笑)
くそが付いちゃいますねぇ。
(町山智浩)
彼がね、ベイビーなんですよ。はい。
で、えーこの人の仕事は、この兄ちゃんの仕事はゲッタウェイ・ドライバー。
(山里亮太)
ゲッタウェイ・ドライバー?
(海保知里)
なんですか?それ。
(町山智浩)
だから、「ベイビー・ドライバー」なんです。
ゲッタウェイ・ドライバーっていうのは、えー強盗とかの逃走車、運転手。
(山里亮太)
犯罪?
(町山智浩)
そう。銀行強盗とかをやった時に、車を銀行の前に停めておいて、それでーみんなが逃げた時に、その、それに乗せてパトカーを巻くかたち。
(山里亮太)
へぇーー!
(町山智浩)
それがゲッタウェイ・ドライバー。
(山里亮太)
そんな仕事が〜
(町山智浩)
「逃がし屋」というやつですけど。
(海保知里)
はい。えぇ。
主人公のベイビーは、ゲッタウェイ・ドライバー。逃がし屋。
(町山智浩)
あのーこういう職業の主人公の映画ってたくさんあるんですよ。結構。
もともと『ザ・ドライバー』という映画が1970年代にありまして、それはライアン・オニールがあのーその、ゲッタウェイ・ドライバーの役なんですけども。
あと、『ドライヴ』っていう映画があって、これはライアン・ゴズリングがゲッタウェイ・ドライバーの役なんですね。
で、実際にそういう職種があるんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇーー!
(町山智浩)
はい。で、そういう人たちに取材をして作った映画なんですね。はい。
で、これね、えー音楽がいまかかっているじゃないですか。で、これからずっと背景で聞こえている音楽はこの映画の中でずーっと、主人公のベイビーくんがずーっとそのまぁ、ヘッドホンで聞いている曲なんですよ。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
はい。で、彼いつも、その、昔あったiPodってありましたね?
(海保知里)
懐かしいですね。ははは(笑)
(町山智浩)
iPodに曲を入れて、いつも耳にこう入れて、そのまぁ歩いているんですけど。
彼は実はそのー、過去に交通事故であの聴覚に障害を持ってしまって、耳鳴りがするんで、いつもその耳鳴りが鬱陶しいから音楽をかけて癒やしているっていう設定になっているんですけども。この映画、その強盗の逃がし屋を主人公にした「カーチェイス映画」なんですね。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
で、えー、でもミュージカルなんですよ。
(山里亮太)
えっ?
(海保知里)
ミュージカル?
(町山智浩)
ミュージカル。
ずーっとこの彼が聞いている音楽が流れ続けるんです。
(山里亮太)
はぁ
(海保知里)
へぇ〜
ミュージカル×カーチェイス映画
(町山智浩)
で、その音楽に合わせて全ての人が、出てくる人他にもケビン・スペイシーさんね。『ハウス・オブ・カード』のあの、悪徳大統領とか、
(山里亮太)
はい、大統領。
(町山智浩)
ジェイミー・フォックス。アカデミー賞を獲っていますね、モハメド・アリの役で。
で、そういった人たちが、この彼が聞いてるその、主人公のベイビーくんが聞いている音楽に合わせて、ずっーと、音楽のビートに合わせて行動をするんですよ。
喋ったり。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇーー!!
(町山智浩)
これ、現場でずっと音楽を流し続けたらしいんです。はい。
(山里亮太)
へぇー!
(町山智浩)
いまかかっている曲がですね、えー『Harlem Shuffle』っていう非常に有名な曲なんですけれども。
1966年の、えーヒット曲です。はい。
この歌はハーレム・シャッフルっていう踊りの踊り方を歌詞で言っているんです。
(山里亮太)
(海保知里)
う〜ん!
(町山智浩)
「右の方に動いて、次は左だよ」とか。「お猿さんみたいにこうやってかいてみて」とかいうその、動きをね、踊り方を歌詞で説明しているんですけど、
この通りにこの主人公のベイビーくんが動きながら、その道を歩いてスタバかなんかに行ってコーヒーを買って、注文してコーヒーを持ってまたビルに戻るまでの3分間をこの曲に合わせて踊る、というシーンがあるんですよ。
(山里亮太)
あー!ミュージカルだ。
(町山智浩)
ミュージカルなってるんですよ。
これね、すごいのがね、これーちゃんとそのシーンの、そのコレオグラフをですね、プロのコレオグラファーに頼んでいて。
この映画全てのシーンがそのずーっとリズムを刻むような動きをしているという画期的な映画なんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇーー!!
ジャンルとしては、ミュージカルアクション
(町山智浩)
これジャンルとして、ミュージカルアクションっていう映画なんですね。
で、これね、あのーコレオグラフ、あのー振り付けをやった人はね、結構有名な人でね、ライアン・ハフィントンという人で、
この人、あのSiaの、歌で『Chandelier』ってあったでしょう?
(山里亮太)
かなりあの、PVがものすごい話題になって世界中でやってるんすよ。
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
金髪の、あのおかっぱの女の子がずっと踊っている歌で。
(山里亮太)
日本では土屋太鳳ちゃんが確かやったはずですね。
(海保知里)
あぁ〜!!わかったかも。
(町山智浩)
あの有名な「1・2・3・1・2・3、drink」っていうとこで、まぁすごく流行ったんですけど。
あのすごい踊りを振り付けた人が、この映画全編でその振り付けをやっているんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇーー!!
(町山智浩)
これすごいなと思ってね。
あのー、カーアクションでも車は、音楽に合わせてカーチェイスするんです。
(山里亮太)
へぇーー!!
(町山智浩)
ははは(笑)
(海保知里)
キュキュッキュ?じゃないですけどなんかこう・・
(山里亮太)
ドリフトの時の音が、なんかこう・・
(町山智浩)
そうそう。ドリフトするっていうか、まぁずっーと真っ直ぐ走っている車が、
そのまま180度、要するに前後真っ逆さまになったまま、そのーまぁバックでバーンッ!って飛ばしていくっていうところが、まぁバレエみたいな感じで、音楽に合わせて。
(山里亮太)
はぁ〜〜!!
(海保知里)
えぇーー!?すごーい!
音楽に合わせてカーチェイス!
(町山智浩)
で、しかも車がクラッシュするガンガン!っていうのも、ちゃんとそのリズムとかあのー音楽の中でのビート、アタックがあるじゃないですか。
ダン、ダン!って、そういうのに合わせてガシャン、ガシャン!とぶつかるんです。
(山里亮太)
えぇーー!?
気持ちいいなぁ!
(町山智浩)
すごいんですこれ。これね、大変だったんですよ。撮影とか。
(山里亮太)
ですよね〜。
(町山智浩)
もう何回も何回もリハーサルして。
それでさっき言ったコーヒーを買いに行く、っていうのも30回ぐらい繰り返したんです。
(山里亮太)
へぇーー!!
(海保知里)
うわぁ〜!
(町山智浩)
だからワンカットなんですよ。それ。
(海保知里)
いやぁ〜!
(山里亮太)
ああ、そうか。
(町山智浩)
すごいんですよ。これ、映画として事実的に本当にね、画期的な映画、ですね、はい。
で、またね、音楽がいいんですね。でー音楽が、まぁあの、さっきはソウルミュージックが流れていたんですけども。
その、ジャズからソウルからラテンから、ありとあらゆる音楽、ありとあらゆる時代の音楽が、まぁ使われているんですね。
で、これは『Tequila』っていう。
(山里亮太)
あっ!よく聞いたことあります!
(町山智浩)
で、ね、これに合わせて銃撃戦が行われるんですよ。
(山里亮太)
あーなんか、いやー格好よさそう、テンポよくて。
(海保知里)
へぇ〜〜。
(町山智浩)
で、「タッタタ、タタッ、タッタッ♪(ダンダン!)」っていう感じなんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
あぁーー!!
(町山智浩)
これ、すごいですよこれ。いまだかつて見たことないですね、はい。
あ、ここのところですね・・「タタタタ、タ・タ・タン、テキーラ」。
「テキーラ!」っていうんですけど(笑)
(海保知里)
ははは(笑)
(町山智浩)
この監督は、エドガー・ライトという人で、現在えっと43才か。
で、この人はずっとイギリスでですね、オタク映画をずっと作っていた人なんですね。
でー、最初に・・
(海保知里)
写真ですごくかっこいいんですけど。
エドガー・ライト監督はオタク映画をずっと作っていた人
(町山智浩)
あ、かわいいんですよ。童顔でね、ベイビーな感じなんですよ。
で、あのー『ショーン・オブ・ザ・デッド』っていう映画がまず日本で最初に紹介されたんですけど。
それ、あの、ゾンビ映画なんですが、あのーボンクラでどうしようもない兄ちゃんたちがゾンビと戦うっていう話なんですね。
(山里亮太)
はいはいはい。
(町山智浩)
ね、あの、いつまでたってもその友達と遊んでばっかりで結婚もしないで、っていう話だったんですけど。
その後『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』っていう、これはなんかアメリカの警官アクションに憧れたイギリスの田舎の警官が、
あのー退屈な駐在さんをやっているんだけども、だんだんすごいまぁ犯罪に巻き込まれていくというコメディーで。
で、その後は『ワールズ・エンド』っていう。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
酔っぱらいの、いつまでたっても子供みたいな男がね、
えーそのまま仕事もなくて、それで結局パブをたくさん回って、えー自殺をしようとするんだけども、宇宙の侵略者と戦うことになるという。
(海保知里)
あはは(笑)
(町山智浩)
言っていて何言っているかわからない感じがしますけど、そういう映画をずっと、サイモン・ペッグという人とずっと作り続けてきたのが、このエドガー・ライト監督なんですよ。
サイモン・ペッグっていう人はね、あのー『ミッション:インポッシブル』シリーズでー・・
(海保知里)
はい、で、出てきましたね。
(町山智浩)
トム・クルーズと愛人関係にある・・あのー。
(海保知里)
えー?愛人関係?
ははは(笑)
(町山智浩)
そう。髪の毛がちょっと薄い「このハゲ!」って言われるような人なんですけど。
(山里亮太)
女性?
(海保知里)
あの・・
(町山智浩)
いや、男ですけどね(笑)
はい。
(海保知里)
ははは(笑)
『宇宙人ポール』とかなんかね、ああいうなんかコメディー系とかによく出てる。
(町山智浩)
はいはい、そうです。
『宇宙人ポール』もエドガー・ライトが監督をするはずだったんですよ。
ただあのー『スコット・ピルグリム』っていう別の映画をやっていたんで、撮れなくなったんですけど。
でー、彼はずっとそういう感じでオタクの、あのー映画マニアとかそういった人たちの、まぁいつまでたっても大人になれない、まぁコメディーっていうのをやっていて。彼の映画はほとんど全作『映画秘宝まつり』で上映しているんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
あはは(笑)
(海保知里)
そうなんだぁ〜。
(山里亮太)
町山さんにご紹介いただいてる確か・・
(町山智浩)
僕がやっていた雑誌はまぁそういう人たちの集まりなんで。
そういう人たちのための映画だったんですけども。今回初めて結構、普通の人も見れる映画になっていますね。
(山里亮太)
あはは(笑)
エドガー・ライト監督の今までの映画
(町山智浩)
あの、いままでの映画はね、ネタが分からないと分からないっていうのをやり続けていたんですよ。パロディーばっかりで。
(山里亮太)
あぁー!
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
で、ただね、彼がやりたかったのは、あのーやっぱり音楽を使いたかったらしくて、
で、『ショーン・オブ・ザ・デッド』という映画の中でそのゾンビと戦うシーンで、結構あのー、もうこれ2004年だ。だからもう13年前か。
の、映画なんですけども。ジュークボックスをかけながらその戦うシーンなんですけども。
そこでQueenの、あの非常に有名なね、『Don’t Stop Me Now』っていう歌がある、「Don’t Stop Me, Don’t Stop Me♪」っていう歌があるんですけど。
あのー「止めてくれるな、おっかさん」みたいな歌詞なんですけど。
それをかけながら、それに合わせてゾンビをボコボコにするっていうシーンがあって・・
(山里亮太)
ほぉ!
(町山智浩)
えーそういうことを彼はやりたかったんですよ。音楽とアクションの一致っていうのをやりたくて。
それともうひとつ、カーチェイスをどうしてもやりたかったんですね。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
ただ、彼ずーっとイギリスだったんで、イギリスはカーチェイス映画作れないんですよ。
(海保知里)
えっ?
(山里亮太)
決まってるんですね?
(町山智浩)
田舎の方はできないことはないんですけど、ロンドンではできないんですよ。
ロンドンはカーチェイスができない街なんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!
ロンドンはカーチェイスができない街
(町山智浩)
スピードが出るような、道路がなくなっちゃったんですよ。
(山里亮太)
あ、なるほど・・
(町山智浩)
交差点が全部ぐるっと回るようになっているんですよ。ロンドンって。
(海保知里)
へぇー!
(山里亮太)
あ、CMとかで見たことあるな、たしかに。
(町山智浩)
そう。だから高速でもってカーチェイスすることができないんですよね。
(山里亮太)
はぇ〜!
(町山智浩)
で、彼はどうしてもそのーカーチェイス映画を作りたいから、アメリカで作るしかないということで。
で、その頃からずーっとカーチェイス映画の企画を練っていて、この『ベイビー・ドライバー』っていうのはだからもう1995年に最初に彼考えて。
そこからずーっと、アメリカでカーチェイス映画を作る、作る!って思ってとうとう作れた映画なんですね。
(山里亮太)
はー!!音楽を使うという夢を一緒に叶えて。
(町山智浩)
そうそうそう。音楽、音楽でカーチェイスをするっていうのは今まで、ほとんど1作ぐらいしかないんです。『ブルース・ブラザーズ』。
(山里亮太)
はぁ!
(町山智浩)
『ブルース・ブラザーズ』って1980年ぐらいの映画ですけど、あれでほら、パトカーと追っかけっこするところで、あのーオーティス・レディングの『お前を離さない』っていう曲の「ターターターター、タッタッタッターター♪」っていうのを流しながらカーチェイスするところがあって、あれぐらいなんですよ。
(山里亮太)
へぇーーー!!
(海保知里)
そうなんだぁ。
誰もやった事がない事を初めてやる
(町山智浩)
誰もやったことがない、ことを初めてやる。
ちなみにその、ミュージカルセックスっていうのはあるんですよ。
(山里亮太)
ミュージカルセックス?
(海保知里)
ちょっーと、待ってください?ははは(笑)
(町山智浩)
それはあるんですよ。
音楽に合わせてセックスするのはあるんですよ。
『ダーク・シャドウ』って、見ました?
(海保知里)
ダーク・シャドウズ?
(町山智浩)
ジョニー・デップの吸血鬼映画。
(山里亮太)
見てないです。
(海保知里)
それでそんなのしているんですか?
(町山智浩)
あれー、バリー・ホワイトのソウルに合わせてセックスする、っていうすごいシーンがあって。
俺、娘と見に行って大変でしたよ、あれ!
(山里亮太)
ははは(笑)
(海保知里)
お父さん、気まずいですねぇ〜。
(町山智浩)
これは気まずいなぁ〜!と思いながらゲラゲラ笑ってましたけど(笑)
(海保知里)
あー、笑ってたんですね。
ははは(笑)
(町山智浩)
カーチェイスはやっぱり難しいんですよね、ピッタリ合わせなきゃなんないから。
だからすごいドライバーがやってとうとう車を全部踊らせているんですよ。
(山里亮太)
へぇーー!!
(町山智浩)
で、あとはやっぱり難しかったのは、アメリカでもやっぱりお金がかかるんですよカーチェイスって。
どうしてかかるかっていうと、道路封鎖。
(山里亮太)
はー!
(海保知里)
止めるのに、お金がかかる?
道路封鎖は止めるのにお金がかかる
(町山智浩)
止めるのにお金がかかるんですよ、街を全部封鎖しちゃうから。
で、ロサンゼルスとかサンフランシスコはもうそれがどんどん額が上がってて、なかなかこう、えー撮影ができないんですね。
で、この映画はそのジョージア州のアトランタっていう街が全面協力して。で、実際にその全部、街の中でカーチェイスをやっているんですよ。
これすごく重要なのは、今、カーチェイスってアメリカでも撮りにくいから、CGになっちゃっているんですね。
(山里亮太)
ああ〜!
(海保知里)
そうなんですかぁ。
(町山智浩)
コンピューターグラフィックスになっちゃっているんですよ、結構。
でもそれは絶対にやりたくないと、本当に全部クラッシュさせたいんだっていうことでもって、ジョージアでやっているんですけど、あの、アトランタでね。
日本も前も話したけど、カーチェイスってほとんどできないんですよ、もう本当に。
(山里亮太)
うーん。
(町山智浩)
カーチェイスを撮りたかったら韓国に行くか、フィリピンに行くしかないんです。
(海保知里)
えぇー!
(町山智浩)
だから一見、日本のように見えて話の設定上は日本でのカーチェイスっていうことになっているけども、
大抵、韓国かフィリピンで撮っているんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
昔は石原慎太郎と、あのー石原裕次郎の石原兄弟が日本中でどんなに車を爆破させようが、ビルを壊そうが、全部ハンコを押していったから、あのOKだったんですけど。
(山里亮太)
ははは(笑)
たしかに『西部警察』の時とかに、国会に向けて戦車を走ってたりとか。
(町山智浩)
そう。国会に向けて戦車走ってましたよね。あれやりすぎたからね(笑)
(海保知里)
いやーははは(笑)
(町山智浩)
あれで大変なことがいろいろあったと思うんですよ。
あれとだから、渡兄弟ですよ。渡・渡瀬兄弟が、ねぇ、『マッドポリス』とねぇ、『西部警察』で。
日本中ほとんど破壊して・・ねぇ?
(山里亮太)
してましたねぇ。
(町山智浩)
あの頃、日本が終わると思ってましたからね僕は
(山里亮太)
(海保知里)
ははははは(笑)
昔の日本はカーチェイスできたが、今は韓国かフィリピン
(町山智浩)
もうこのまま日本は終わるんだろうと。
この石原兄弟と渡兄弟によって日本は徹底的に破壊され尽くすんだろうと、思っていたけど。
あれでやっぱりその後に厳しくなっていって、今はほとんどカーチェイスは日本は許可を出さないんで。
撮れないから、もうカーチェイスのアクションとかできる人もだんだん減っていくでしょうね。
(山里亮太)
うーん。
(海保知里)
へぇ〜!
(町山智浩)
今にね。これはもったいないですよ。
これ、ジョージアとか今あのーいろんな映画の、だから『ウォーキング・デッド』の撮影とかもそこでやっていて。
(山里亮太)
へぇー!
(町山智浩)
で、すごく街が盛り上がっているんですよ。
(海保知里)
あ、じゃあ、ある意味町おこしにもなりますよねぇ。
(町山智浩)
町おこしになるんですよ。町おこしになるから、いろんなところを破壊させてほしいですよね!?
(山里亮太)
(海保知里)
ははは(笑)
(町山智浩)
いろんな街がね、本当にもう過疎だからもう全部破壊していいです!っていうのをやってほしいですよね。
(山里亮太)
それぐらいね、映画にこう・・いや、絶対プラスになると思うんですけどね、それ。
(海保知里)
ねーですよねぇ。
ベイビー・ドライバーの終盤は、真面目な映画になっていく
(町山智浩)
そう、そうなんです。
だから、この映画はね、本当にいままでアメリカでもやりにくくなってきたようなところを全部突破していて、で、しかもミュージカルで。
で、しかもね、こういうことをやってゲッタウェイ・ドライバーの話で、ただパトカーをねぇ、こう巻いてラッキー!みたいな感じの映画かと思ったら、最後の方は結構真面目な映画になっていくんですよ。重い展開になっていって。
そのへんはね、エドガー・ライトが言っていたのは、そのまぁ、話したんですけど。
まぁその、ブルース・ウィリスがね。犯人をバーン!って殺して「やったぜ、ベイビー!」とか言って終わるのは、それはどう考えてもおかしいだろ?と。
本当は始末書ものだろう、と。
(山里亮太)
ほうほう。
(町山智浩)
でこの『ホット・ファズ』っていう映画で、警官がさんざんアクションをやった後、さんざん始末書を書くっていうシーンを入れているんですよ。
(山里亮太)
ほう!
(町山智浩)
始末書を書かなきゃならないはずで、『ダイ・ハード』とかは帰っちゃうじゃないですか。
(山里亮太)
ははは(笑)
(町山智浩)
犯人を殺して「バイビー!」みたいな感じで。ありえねぇだろ?って怒っていたんですよ。このエドガー・ライトは。
だからこれも、こういうアクションがあった後、ちゃんと主人公は払うべきものを支払うというところが、もう、非常に真面目な男ですね。
(山里亮太)
はぁー!そこもリアリティーが!
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
エドガー・ライトっていう人はね。
(海保知里)
描きたかったんですね。それも。
(町山智浩)
はい。で、もう本当にゲッタウェイ・ドライバーのことをいっぱい調べてですね。
僕もゲッタウェイ・ドライバーだったことがありますよ。
(山里亮太)
(海保知里)
ええっ!?
(山里亮太)
それって・・
(海保知里)
お仕事として?
(町山智浩)
僕あのーだから、反社会的な集団の、あのリーダーをやってたことがあって。
それであのー抗争している組織にカチコミをかけたんですよ。
(山里亮太)
うーん!
(町山智浩)
あのー僕のグループはその『映画秘宝』にいまして、あのー抗争する対立する組織は『キネマ旬報』っていうんですけど。
(山里亮太)
はははは(笑)びっくりしたー(笑)
(海保知里)
私これ、放送できるのかな?とか、もう、なんか大丈夫・・?
(町山智浩)
その時にやっぱり車を用意して、レンタカーを用意して、逃走するっていうことを考えたんですよ、襲撃をかけた後。
(海保知里)
ははは(笑)
(山里亮太)
ゲッタウェイ・ドライバーだ!
町山さんは過去にゲッタウェイ・ドライバーだった!
(町山智浩)
そう。で、その時にまず最初にやったのは、僕このベイビーと同じで、まずミックステープを作りましたね。
はい。この曲をかけてもらえますか?『ハワイ5-O』の主題曲を僕はわざわざテープで、あの用意してきて。
で、これをその逃走用に・・。これっ!
(海保知里)
はいはいはいはい(笑)
(町山智浩)
かっこいいでしょう!?
(海保知里)
は〜かっこいい!
(山里亮太)
かっこいいですよ(笑)
(町山智浩)
これで言ったんです、襲撃に。その対立組織に。
でも僕の仲間はみんなボンクラだから、誰も免許を持っていなかったんです。
(海保知里)
えぇ?
(町山智浩)
だから、僕はその襲撃の首謀者であるにもかかわらず、あのーゲッタウェイ・ドライバーでもある。
1人で両方をやっているっていうね(笑)
(山里亮太)
(海保知里)
あはは(笑)
(町山智浩)
情けなかったですね、はい。
「ボンクラ、免許ぐらい取れ!」って思いました。はい。
襲撃もできやしねえ(笑)
(山里亮太)
逆にボンクラに救われたんじゃないかな?ひょっとしたら。
(町山智浩)
ははは(笑)
そういうね。そういうことで『ベイビー・ドライバー』はもうすぐ公開ですね、日本でもね。
(山里亮太)
見たーい!これ!
(海保知里)
日本では8月19日公開ということで。
ね、あの、最後にひとつだけ私なんですけど『アメリカン・ゴッズ』をですね、見たんですけど。
はい。あの中で、もうモザイクだらけなんですよ。
(町山智浩)
あはははは(笑)
(山里亮太)
見たかったんですって。
(海保知里)
いや、それで、大事なそのなんか写真立てみたいときもモザイクになっていて、あれはいったい何なんだ?とか。
(町山智浩)
わからないんですよね。
(海保知里)
だから私はそれで言っていたんです、先週。
そういった部分をね、映さないのはもちろんそれ正しいんですけど、やっぱり内容的に映さなきゃいけないところもあると思うっていうこと。
(町山智浩)
ただね、あれを見るとね、打ちひしがれますから。
(山里亮太)
ははは(笑)
日本人男性みんな。
(町山智浩)
「俺はベイビーだぜ」って思いましたよ。本当に。
(山里亮太)
ははは(笑)
ゲッタウェイしちゃう。
(町山智浩)
ゲッタウェイしたくなりましたね。はい。
(海保知里)
はい、最後にすいませんでした。
ということで、今日はですね・・
(町山智浩)
アメリカン・ゴッズと思いましたよ(笑)
アメリカン・ゴッズ!!
(山里亮太)
(海保知里)
あはは(笑)
(海保知里)
8月19日に・・
(町山智浩)
ふた握りかよ!って、はい。
(海保知里)
公開される、エドガー・ライト監督最新作ですよ『ベイビー・ドライバー』についておうかがいしました。
<書き起こし終わり>
○○に入る言葉のこたえ
④カーチェイスやアクションをしたあとは始末書を書くべきだ!
挑戦的なアプローチの魅力をたっぷりと語る町山さんのユーモアあふれるトークが楽しいので是非聞いてみて下さい!