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引用:IMDb.com

6才のボクが、大人になるまで。の町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月14日更新
ボーイフッドの成功したのは、行き先を決めなかった事なんですよ。それは子どもが自分で決める事って事ですね。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、『6才のボクが、大人になるまで。』(BOYHOOD)(ボーイフッド)のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『6才のボクが、大人になるまで。』解説レビューの概要

①子役を変えず、12年間に渡りエラー・コルトレーンが6才からその18才まで演じた。
②高校生になった時にもらえるプレゼントは○○○○○○!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『6才のボクが、大人になるまで。』町山さんの評価とは


(町山智浩)
えっと今日はですね、たぶん今年の映画の中でベストに入ったりアカデミー賞にノミネートされるような名作、でした!『ボーイフッド』というタイトルの映画を紹介します!

(赤江珠緒)
はい!

(町山智浩)
ボーイフッドっていうのは、「少年時代」とか「少年である事」っていう意味ですけども、これはですね、2002年に6才で、まぁ小学校1年生だった男の子が、12年でどのように成長していくかを見ていく映画なんですね?で、舞台はテキサスなんですけども、主人公の男の子はですね、お父さんとお母さんが離婚した直後、で。お母さんに引き取られて、お姉ちゃんと一緒に暮らしてるんですけども、お母さんが突然ですね、「私、大学に入って勉強して、学校の先生になる!」って言い出す。っていうあたりから話が始まっていくんですよ。

(赤江珠緒)
へぇ〜。

(山里亮太)
これっ・・!?

(町山智浩)
はい。これね、6才の男の子が主役のメイソンくんっていうね、男の子を実際にその6才だったエラー・コルトレーン君っていう子が演じてるんですけども、それから12年間、普通だったら映画っていうのは、途中で役者が変わるじゃないですか?

(赤江珠緒)
うん。少年時代とか。ね?青年役とか。

(町山智浩)
そう。少年時代にまたちょっとおっきい男の子が演じて、それでまた高校ぐらいになるともう少し大きい子が演じてって役者が変わっていくじゃないですか?そうじゃなく、このエラー・コルトレーンっていう男の子はずーっと、6才からその18才まで演じていくんですよ、1人で。

(赤江珠緒)
へーー!!!

(町山智浩)
特殊メイクでやるんじゃなくて、実際に12年間撮影してるんです、この映画。

(赤江珠緒)
えっ!1本の作品が、12年!?

引用:IMDb.com

撮影期間、12年間

(町山智浩)
撮影期間が12年間なんですよ、このボーイフッドっていう映画は。

(山里亮太)
ドキュメンタリーとかっていう訳じゃ・・ないんですよね?

(町山智浩)
ドキュメンタリーじゃないんですよ!ちゃんとしたお芝居で、いわゆるドキュメンタリータッチの、なんていうか、8ミリで撮ったりとかビデオで撮ったりもしていなくて、ちゃんと35ミリフィルムできちっと撮ったドラマなんですけれども、12年撮影してるんですよ。

(赤江珠緒)
え、じゃあエラー君は、学校で「僕、主役で映画出るんだ!」って言っても、12年後まで作品は出なかったって事ですか?
 
(町山智浩)
そう。だからこの子は、普通だったら子役って最初に映画出ちゃって、みんなにチヤホヤされて、だんだん悪くなっちゃって、途中で泥棒したり麻薬やったり酒に溺れたり離婚したり子供産んだり一杯するじゃないですか?

(山里亮太)
それ誰かピンポイントで言ってるでしょそれ町山さん。(笑)

(町山智浩)
色んな駄目になる人いっぱいいるじゃないですか、子役で有名になると。この子はなかったんです、それが。

(山里亮太)
はーー!なるほど。

(町山智浩)
ずーっと映画に出続けてたんだけども、全く公開されないから12年間。

(赤江珠緒)
へーー!!

(町山智浩)
グレないで済んだんで、逆に撮影が上手くいってるんですよ。


(山里亮太)
っなるほど!!

(町山智浩)
これ途中でグレちゃったら映画撮影中止になっちゃったりしますからね?大変な事件を起こしたりしてね。そういう事なかったんです。有名にならなかったから彼は。エラー君は。はい。名前はエラーですけどエラーしなかったんですね?それはいいんですけども。

(赤江珠緒)
うまくかけなくていいです。(笑)

(町山智浩)
で、これね、撮影開始の段階では監督がリチャード・リンクレイターっていう監督なんですけれども、どういう話にするか全然決めてなくて。とにかく今までの映画っていうのは要するに役者が変わるじゃないですか、子供が。それが嫌だったから、「本当に子供がちゃんと歳取っていく映画を撮れないか」と。劇映画で。お父さん、お母さんも。って事で始めたんですね?

(赤江珠緒)
へぇ〜!!はい。

(町山智浩)
で、この人なんでそれを思いついたかっていうと、この人はこの前にですね、ビフォアシリーズっていう三部作を撮ってるんですよ。

(赤江珠緒)
あー!以前、町山さんにご紹介いただいたね?うん。

(山里亮太)
ご紹介頂きました、ね?

リチャード・リンクレイター監督は、以前も長期間かけた作品を撮影

(町山智浩)
はい。あれは『ビフォア・サンライズ』っていう映画が元々あってですね、それがまぁ大学生の2人、がですね、男と女がですね、フランスの女子大生とアメリカの大学生がですね、ウィーンで出会って、一晩ですね、恋をする話っていのがその『ビフォア・サンライズ』っていう映画だったんですね?それが1995年に彼が撮って。その後9年後に、その2人が9年後にどうしたかっていう映画を撮ってですね、それが『ビフォア・サンセット』なんですけど。その更に9年後に、2013年ですけども、その2人がどうなったか?っていう映画で、『ビフォア・ミッドナイト』っていう映画を撮った事があるんですよ、彼が。リチャード・リンクレイターが。

で、それはイーサン・ホークっていう俳優さんがですね、アメリカの学生を演じたんですけれども、この三部作は本当に、段々歳取っていって、最後はですね、2人が結婚して子供ができて、っていうところで、だんだん倦怠期になる所まで描いてるんですよ、18年間で。

(山里亮太)
はい。

(町山智浩)
最初はもう初々しい初恋の、なんていうか、もうロマンチックな映画だったのが、だんだん現実的になっていくんですね?18年間で。で、しかもその、シナリオに主役のイーサン・ホークとフランス側のヒロインを演じた、ジュリー・デルピーが、協力して。2人とも離婚を経験してるんですよ、その18年間に。それも中に入れて、人生の彼らの経験、リチャード・リンクレイター監督自身の経験も全部入れて、3人でシナリオを書いていったのがその三部作なんですね?で、それと同じ事を子供で出来ないかって考えたんですよ彼は。リンクレイターは。

(赤江珠緒)
へ〜〜。えぇえぇ。

(町山智浩)
で、まず出発点はリンクレイター自身がですね、監督自身が、子供の頃に、6才の時に両親が離婚して、お母さんが大学に入り直したんですね?30過ぎて。

(山里亮太)
へ〜〜。自分の、はい。

引用:IMDb.com

監督の実体験、6歳の時に両親が離婚した地点を出発点に

(町山智浩)
そこを出発点にしたんですよ。で、それをそのエラー君に演じさせて、お父さんをイーサン・ホークにして。イーサン・ホークもテキサス出身なんでね。で、お母さんをパトリシア・アークエットさんっていう女優さんで、この人は『トゥルー・ロマンス』でヒロインをやっていた人ですけども。

(赤江珠緒)
あ〜〜。はい。

(町山智浩)
その2人に演じさせて、そっから始めるんですね。話を。

(赤江珠緒)
エラー君がまた6才の頃、かわいい!ね!

(町山智浩)
すっごいかわいいんですよこの子!で、最初はお姉ちゃんがいてですね、お姉ちゃんがですね、監督の娘さんが演じてるんですけど、お姉ちゃんが結構いじめるんですね弟を。すると、「お姉ちゃんがぶった!」(高い声で)とか言ってるんですよ、最初は。それがね、最後の方になると、低い声になって声変わりして。

(山里亮太)
声変わり!そうか、1年毎にずっとやってるから!

(町山智浩)
そう。そうなんですよ。最初は「ママー!お姉ちゃんがぶった!」(高い声で)とか言って泣いてんですけど、最後の方になると、「お母さん、大丈夫かな?」(低い声で)って感じになるんですよ。

(赤江珠緒)
ね、髭面になってますね。

(町山智浩)
頼りになる男になってくんですよ。でね、この映画が面白いのは、夏休みしか撮影してないんですよ。12年間、毎年夏休みだけ撮影してるんですよ。

(赤江珠緒)
ちょっと『北の国から』みたいなねぇ。

北の国から

(町山智浩)
そーうなんですよ!!そうなんですよ!!要するに夏休みだから子供が休まない訳ですよ、学校をね?だから、なんて言うのかな、子役としての特権みたいな物は与えられないんですよ、この子達には。だから普通の子として成長していくのを撮ってるんですね?

(山里亮太)
なるほど〜・・!

(町山智浩)
で、話は毎回毎回夏休みに集まる度に俳優達全員集まって、俳優と監督が。で、この子はこの1年間でどうなっただろうか、これからどうなるだろうか?って事で話を作ってったらしいんですよ。

(山里亮太)
へ〜〜。

(町山智浩)
毎回。だから、これものすごくね、この撮影が始まった後にですね、イーサン・ホークが実際に離婚したりですね、子供を抱えて。で、このエラー君もですね、両親が離婚したりして、現実と映画がどんどん交じり合っていくんですね。

(赤江珠緒)
へーー!

(町山智浩)
で、彼らが体験した事をまた話の中に入れてくから、互いに相互作用でですね、現実と映画の非常に境目がなくなっていく所がちょっと怖いんですけども。で、まぁ色んな話があってですね、新しいお父さん、まぁ再婚するんですね、このお母さんがね。で、大学に通っている間に大学の先生、教授と結婚して。で結構お金持ちでですね、プール付きの家に住んで結構リッチになるんですよ、このお母さん。

(山里亮太)
ほう。

(町山智浩)
で、ところが・・っていうね、それは言えないですけど、とんでもない事態になったりするんですけどね。(笑)

(赤江珠緒)
へぇ〜!!

引用:IMDb.com

子供の普通の成長を描く、それなのに面白い

(町山智浩)
というね、まぁ普通にとんでもない話は起こらないんですけども、あの突拍子もない事は起こらないですけど、本当に子供がですね、育っていく間に体験してくような事をですね自然に話に入れて。しかも、それでも面白いっていう映画が、このボーイフッドなんですね?

(赤江珠緒)
ふーん!

(町山智浩)
でね、こういう映画って本当に作るの難しくて世界的にあんまり例がないんですよ。

(山里亮太)
はい。でしょうね・・。

(町山智浩)
でね、だからたぶん映画史にこれは残るだろうと思うんですけど、映画史に残っている最も有名なこの種類の映画っていうのはね、フランソワ・トリュフォーというですね、フランスの有名な映画監督が撮ったシリーズがあるんですよ。アントワーヌシリーズっていうのがあるんですね?これはトリュフォー監督が、1959年に、27才の時に初めて撮った映画が自分の子供時代の話なんですよ。

(赤江珠緒)
ふんふん。

(町山智浩)
で、『大人は判ってくれない』っていうタイトルの映画で、彼は27才ですけども、自分が、12才の頃に体験した事を元に話を作って、でジャン=ピエール・レオっていう俳優、というか子役ですね、子役に、自分とよく似たアントワーヌっていう少年を演じさせたんですね?それは1959年で。そこから20年間ですね、ずーっと撮り続けるんですよ、彼は。

(赤江珠緒)
20年も!

20年間かけて撮影した作品も

(町山智浩)
そのアントワーヌの成長を。で20年間に5本撮ってるんですよ。で、これが面白いのは、まず話の中にトリュフォー自身がその間に体験した事を盛り込んでいくんですよね?

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
だから自分自身の回想みたいな事にもなってるんですけども。それをどんどん成長していく、俳優のジャン=ピエール・レオが演じてくんですよ。だんだんこのジャン=ピエール・レオがトリュフォーそっくりになっていくんですよ、顔が。

(山里亮太)
えーー!!!

(町山智浩)
これは怖いですよね、映画って。(笑)

(山里亮太)
生き方で形成されていくんだ、顔とかが!

(町山智浩)
うーん。これは怖いなっていうのがね、アントワーヌシリーズっていう映画で。あとはですね、ドキュメンタリー映画でね、『セブンアップシリーズ』っていう。アップシリーズ(Up Series)っていうドキュメンタリーがあるんですよ。

(山里亮太)
はい!

(町山智浩)
これ日本ではあまり見られていないんですけども、これ、1964年から撮影が始まってて。これドキュメンタリーなんですけどもイギリスなんですね?で、イギリスの14人の子供。小学生。を、7年ごとに記録していくドキュメンタリーシリーズなんですよ。

(赤江珠緒)
14人も!?はい。

(町山智浩)
14人もいて。で、現在2012年に作られた『56 Up』。だから56才になるまでのやつが撮られてて、まだ撮り続けられるんですよ。

(赤江珠緒)
えーーっ!!

(町山智浩)
永遠に撮り続けられるんですよ、全員がいなくなるまで。(笑)すごいんですよ、もう8本作られてるんですよ。7年毎に。これすごい記録で、映画っていうよりは、もうなんて言うか、イギリスっていう国の、社会状況を記録する貴重な映画になってますね?

(赤江珠緒)
あ、そっかそっか、服装とか、そういう流行とかも、その時じゃないと撮れないっていうのもありますもんね!

(山里亮太)
文化とかね!
 
(町山智浩)
そうなんですよ。で、しかもイギリスっていうのは日本みたいに均一な社会じゃなくて階層社内なんですね。階級社会。だからものすごい金持ちの土地持ちと、すごい貧乏な労働者階級の間でものすごい貧富の差があるんですけども。この14人の子どもっていうのはバラバラなんですよ。階級が。で、お金持ちの子どももいれば、福祉にたよって暮らしている子どももいて。あと、イギリスにはイギリスが昔植民地にしていたアフリカとか外国の植民地の血が混じった、アフリカ系の子とかもいるわけですね。結構。移民で。その子達もいて。バラバラなんですけど、この子達がどうなっていくだろうか?っていうのは、実際は政府とか社会っていうのはその子達がどう育っていくか?って追っかけていかなきゃならないけど、実は一人ひとり追いかけてないじゃないですか。どの国も。絶対に。

(赤江珠緒)
そうですね。

引用:IMDb.com

14人のサンプルを追っかける

(町山智浩)
でも、これは14人のサンプルを追っかける事になってるんですよ。その人達がどうなるか?っていう。だから例えば上流階級の子はそのままいい大学に行って弁護士になったりするんですよ。この14人のうち。で、中産階級以下の労働者階級の女の子とかは、やっぱり18・19で子どもを産んじゃって。旦那もやっぱり学校を出てなくて、学歴もないから仕事もなくて、そのままどんどん貧乏になっていったりする子もいるんですよ。で、もう本当、福祉にたよって暮らしている子もいるんですね。どうしてそうなったか?っていうのは、このシリーズ。アップシリーズをずっと見ていくとわかるようになってるんですよ。この映画。

(赤江珠緒)
そうですよね。たしかに。

(町山智浩)
で、その貧乏な人はどうしようもないのか?って思うと、意外とそうでもなくてですね。もう成功して弁護士になる人も出てくるんですけども。貧乏から立ち上がって。いちばんすごいのはですね、ある1人の子がですね、もう本当にチャラチャラした子なんですよ。自由気ままに生きてるんですよ。28UPっていうので28才になった時に、彼はホームレスなんですよ。で、その次の7年後に撮った時も福祉で暮らしている、施設に入って暮らしているんですよ。もう35かなんかで。

(山里亮太)
35才で。

(町山智浩)
で、もうこいつぜんぜんダメじゃねーか?って思ったんですよ。シリーズ頭から見ていくと。したらその後、そういう貧しい人達のために組織化して。貧しい人達を。で、その人達を組織化してからですね、だんだん地方政治家になって。いま、政治家として成功してるんですよ。この人。35までホームレスだったのに!

(赤江・山里)
へー!

(町山智浩)
最終作品で、56UPって56才で政治家になってるんで、みんなびっくりっていう。

(赤江珠緒)
あ、そうですか。7年ってやっぱり変わっていったりするんですね。

(町山智浩)
変わるんですね。人間はね。これはね、いろんな事を考えさせるんですよ。貧しいところに生まれたら、どうしようもないのか?とかですね。そうじゃないんだ!とかですね。なぜ人は、どうして学校に行けないのか?うまく仕事ができないのか?とか。そうした事が14個のサンプルでよくわかるようになっていて。これ、すごいんで。これ作っている会社は現在、日本でもこれを撮影してるんですよ。

(山里亮太)
えっ?日本人のバージョンですか?

日本バージョンも?

(町山智浩)
日本人の子ども達をピックアップして撮影してるんですよ。イギリスの映画会社が。日本では知られてないですけど。これ、日本がやるべきなんですよね。これ、各国がやるべきなんですよ。生まれたところとか場所とか環境が違う子達が、どう育っていくかを記録する事で、社会をどうしたらいいか?っていう事を政府が考えられますよね。

(赤江珠緒)
たしかに、そのスパンで見るって事、なかなかないですよね。

(町山智浩)
ないんですよ。っていうのは、毎回政治家とか政党が変わってったりしていって、どんどん政治状況とか政策は変わっていくからなんですよ。縦軸で追っていかないからなんですよ。その時、その時なんですよ。政府のやり方っていうのは。だからこれは、政府をこえた機関がずーっと撮り続けるべきなんですよね。

(山里亮太)
それをでも、日本でもやっている。

(町山智浩)
日本でも一応イギリスの制作局が日本でも撮っているらしいですね。

(山里亮太)
へー!いつぐらいから?もう何才くらいになってるんですかね。その子達。

(町山智浩)
いや、撮り始めたんで、そんなにまだたってないです(笑)。

(山里亮太)
始めたばっかりなんだ。

(町山智浩)
はい。でもこれ、社会的に必要なんでやった方がいいと思うんですね。で、このボーイフッドの方に戻ると、ボーイフッドの方は普通の子を主役にした普通の子の生活っていうのを描きたいって言って始めたんですけど、やっぱり場所がテキサスだからちょっと違うんですよ。

(山里亮太)
ほう。

(町山智浩)
例えばイラク戦争になると、お父さんのイーサン・ホークはイラク戦争に反対なんで、『戦争反対!』とか言っているとテキサスの人達は『なに言ってるんだ、この非国民!』とか言って。周りの人に怒こられたりするんですよ。それとか、この男の子が中学生から高校生になる時に、おめでたい!っていって。おじいちゃんがプレゼントをくれるんですけど、プレゼントはショットガンなんですよ。

(山里亮太)
銃だ。

(町山智浩)
そう。これはリンクレイター自身がそうだったんですって。テキサスの子どもは銃が持てる年になると、みんな銃をもらうらしいんですよ。誕生日に。これはやっぱり銃社会。しょうがないですね。本当に。

(赤江珠緒)
子ども用の銃が売ってるんですもんね。

引用:IMDb.com

プレゼントはショットガン

(町山智浩)
そう。それで裏庭で子どもに銃を撃たせるんですよ。だからそういう社会なんで、これはどうしようもない。これはテキサスならではだなっていうところが出てくるんですけどもね。でね、この映画やっぱり奇跡的に上手くいってるんですね。さっき言ったように途中で子どもがグレちゃったり、やる気をなくしちゃったりしたら終わっちゃうし。病気したりしても、たぶん撮影は続かないんですね。

(赤江珠緒)
そうか。そうですね。

(町山智浩)
だからすごく偶然上手くいっていて。あと、やっぱりこれね、子どもが大きくなっていくのは当たり前なんですけども。これ、残酷なのはお母さんとお父さんも年をとっていくんですね。

(赤江珠緒)
あ、それはそうですね。

(町山智浩)
最初は30代はじめで若々しいんですよ。2人とも。パトリシア・アークエットなんて、その頃まだセクシー女優でイケてた年なんで。ところがそれが最終的には、最後は46・7になっていくんですね。するとやっぱりみんな、どってりとしちゃうんですね。

(赤江珠緒)
わー、じゃあ年月みたいなのも、すごく感じますね。

(町山智浩)
そう。首の、顎の下に肉がついたりとか。イーサン・ホークとか、顔シワシワになっちゃって、最後の方は。で、やっぱり白髪が入っていくんですね。で、こういうものっていうのはハリウッド女優とかハリウッド俳優の人は自分が年とった事を隠しているじゃないですか。いっぱいメイクしたり整形したりして。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
そうじゃなくて、1本の映画の中で見せられるから。結構残酷なんですよ。トム・クルーズ、すごい若い感じですけど、僕と年おんなじだけど。でも、やっぱりトップガンの頃と比べると年とってるんですけど。でも、比べないとわからないですよね。でも、これ1本の映画の中だから、すごくわかっちゃうんですよ。

(山里亮太)
撮っていれば如実にわかるわけですからね。

(町山智浩)
そう。残酷さがまたね、これはすごい。いろんな意味で実験的でもあるし、すごくしみじみとね、誰にでも感動できる映画でもあって。両方をいっぺんにやっているところがすごいなと思いましたね。

(赤江珠緒)
これはリアリティーありますね。

(町山智浩)
あと、これと同じ事をやろうとした日本の監督もいるんですよ。実際に。昔。あの北の国からの倉本聰さんがですね、脚本じゃなくて監督もやった事があるんですよ。昔。で、北の国からの蛍ちゃん。中嶋朋子さんを主演で、彼女が9才から14才に育つ間にずーっと映画を撮り続けてたんですよ。倉本聰監督が。

(赤江・山里)
へー。

(町山智浩)
これ、『時計』っていう映画でね。『時計 Adieu l’Hiver』っていう映画だったんですけども。これ、お父さんとお母さんがフィギュアスケーターで、中嶋さんをなんとか9才からですね、フィギュアスケーターにしようとする話をずっと。本当にフィギュアスケーターになる事を期待しながら撮影していた映画なんですよ。でも、失敗したんですよ。これは。

(山里亮太)
えっ?なんででしょう。

計画を練りすぎると失敗に

(町山智浩)
フィギュアスケーターになれないですよ、誰も。そう簡単に。期待しすぎたんですよ。監督が、中嶋さんに。だから非常に、出演者にとっても心に傷が残る結果になって映画が終わってるんですね。時計っていう映画は。

(赤江珠緒)
そんな本気でフィギュアスケーターに?

(町山智浩)
やろうとしたみたいですね。

(山里亮太)
最後、じゃあそういう悲しい結末で終わってるんですか?この時計っていう映画は。

(町山智浩)
結構重い結末で終わってるんですよ。この映画。で、このボーイフッドの成功したのは、行き先を決めなかった事なんですよ。それは子どもが自分で決める事って事ですね。

(山里亮太)
集まった時に話し合って、こういう風な考え方だったら、こういう風に今年はやっていこうと。

(町山智浩)
そう。それに従って監督が撮っていったんですよ。監督が決めていかなかったんですよ。だからこれ、どうなるかは主役の男の子が実際に選んだようになるんですけど。この映画の終わりは。だから、子どもが親の進路を決めちゃいけないんですよね。やっぱりね。

(赤江珠緒)
あ、親が子どものね。

(町山智浩)
親が子どもの、ですね。間違いでした(笑)。

(赤江珠緒)
いま、すごい大事なところで。町山さん。

(町山智浩)
すごい大事な事を言おうとしたのに、間違いました(笑)。そういうところも、シナリオが最初に決まってないという事で(笑)。

(赤江珠緒)
(笑)。そうそう。うちも決まってないですからね。

(町山智浩)
という映画がボーイフッドでした。はい。日本でもたぶん公開されると思いますけど。まだ決まってないです。公開日は。

(赤江珠緒)
ありがとうございます。今日は撮影に12年かけて少年の成長を描いた映画、ボーイフッド 少年時代というね、事でございますけども。ご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)
ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どうもでした。

(山里亮太)
ありしたーっ!

(町山智浩)
どもでした!

※書き起こし終わり


○○に入る言葉のこたえ

②高校生になった時にもらえるプレゼントはショットガン!!

でした!

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