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引用:IMDb.com

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月14日更新
すごく楽しい、楽しい映画なんですけども、見てると、歴史を知っているとすごく辛くなってくるんですよ。見ているうちに段々段々。すごく辛くなってくるんですよ。 僕にとってはすごく懐かしい懐かしい感じの映画なんですが、今の人たちが見ると、こんな夢のようなことがあったのかと。こんな楽しい時代があったのかと。という映画なので、是非ご覧になって頂きたいと思います。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、クエンティン・タランティーノ監督、ゴールデングローブ作品賞や、アカデミー助演男優賞を獲得した、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(Once Upon a Time in Hollywood)のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』解説レビューの概要

①1960年代は、結婚や就職に縛られずに若者が自由に生きるというカウンター・カルチャーという時代だった。
②1969年を描いたこの映画は、カウンター・カルチャーの最後の年。
③この映画は○○○○○事件を知っているのと知らないのとでは全く映画の意味が違ってくる。

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』町山さんの評価とは

(町山智浩)
はい。今日はですね、僕の大好きな映画監督クエンティン・タランティーノの新作、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をご紹介します!

〜音楽〜

(町山智浩)
なんだこれは?あ、はいはい。いまこれなんだろう?って思いましたけども。

(赤江珠緒)
うん、曲が流れてますね。

(町山智浩)
これはですね、1969年のハリウッドのAMラジオの音声でしたね今ね。はい。この『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という映画のタイトルは「昔々、ハリウッドで」という意味なんですが、この”昔々”っていうのは1969年を意味しています。で、1969年に売れなくなってしまった落ち目の俳優、レオナルド・ディカプリオと、その相棒で彼のスタントマンをやっているブラッド・ピット。

(赤江珠緒)
またかっこいいな、スタントマンも。

引用:IMDb.com

売れなくなった俳優×相棒のスタントマンの話

(町山智浩)
スタントマンかっこいいんですよ、めちゃくちゃ。(笑)で、この2人のコンビを描いたコメディみたいな映画なんですね、今回ね。はい。で、クエンティン・タランティーノという人はですね、とにかく映画オタクなんですよ。で、僕と年齢がひとつ違いぐらいなんですけども、はい。ブラピと同じ歳かな?タランティーノは、はい。で、1969年の頃に6歳ぐらいだったんですね。で、彼、実際にハリウッドの近くに暮らしてたんですよ、ロサンゼルスで。で、その時の子供の頃に見た大人達の楽しそうな世界みたいなものを映画にしようとしたのが今回の映画なんですね。

(赤江珠緒)
ふーん、うん。

(町山智浩)
だから日本でやるとしたら、例えばですけども。もう1960年代の六本木で、大原麗子さんとか加賀まりこさんとかがブイブイいわせてるような世界ですよ。そういう時代があったんですよ、みんなミニスカートでしたけども。

(山里亮太)
想像つかない!

(町山智浩)
いや、1969年っていうのはだから、山ちゃんも全然生まれてない訳でしょう?

(山里亮太)
僕は1977年ですから、まだ生まれてないですね。

(町山智浩)
えぇ、破片でもなんでもないですね、もう。存在しないわけですね。(笑)その頃僕はねぇ、6歳ぐらいだったんですけども。どういう時代かっていうと、サザエさんのフネさんまでミニスカートを履いているような時代でしたよ。

(赤江珠緒)
はー!そっかぁ!

(山里亮太)
浮かれきってるなかなか。(笑)

(町山智浩)
みんなミニスカートを履いていた時代なんですよ。

(赤江珠緒)
ツィッギーが入ってきてって感じですか?

ツィッギーの時代

(町山智浩)
ああ、そうですそうです。ツィッギーです。よく知っていますね。

(赤江珠緒)
うちの母親とかも確かにミニスカート履いていましたね、当時の写真を見ると。

(町山智浩)
でしょう?みんなミニスカート履いてたですよ。パンツ見えそうだったり、見えたりしていたんですよ、当時。

(山里亮太)
いーい時代!

(町山智浩)
見たくないような人もいたでしょうけどね。(笑)

(山里亮太)
フネさん的な人もいる訳ですもんね。(笑)

(町山智浩)
すごい時代ですよ、はい。要するに子供だったから、その頃はタランティーノは。6歳って言ったら。ねぇ。下から見ていたんだと思いますけどね、まあ、それはいいんですが。(笑)

(山里亮太)
それは関係ない話なんですね。(笑)

(町山智浩)
関係ない話なんですけども。(笑)まあその頃って本当に華やかに見えたんですよ、時代が。で、1969年っていうと、どういう時代だっていうイメージがありますか?

(赤江珠緒)
60年代?

(町山智浩)
69年ですよ。

(赤江珠緒)
69年?70年に入る頃かぁ。。

(山里亮太)
景気も良くて元気な頃じゃないですか?時代的にも。

(赤江珠緒)
学生運動が、とか言うのって何年ぐらいでしたっけ?

引用:IMDb.com

学生運動の時代

(町山智浩)
そう。学生運動の時代です。世界的に。だから「カウンター・カルチャー」っていうんですよね、この時代を。カウンター・カルチャーの”カウンター”っていうのは”対抗”とか”対決する”っていう意味ですけども。それまであった時代の価値観に対して、それまであった社会の価値観に対して、全部戦っていく時代だったんですよ。だからいちばん大きなスタイルとしてはですね、ヒッピーですね。

(赤江珠緒)
ああ、ヒッピー。

(町山智浩)
ヒッピーの時代です。ヒッピーというのは、何をしていた人だと思います?

(赤江珠緒)
ヒッピーの格好、ファッションとかはね、すぐにイメージできるんですけどね。

(山里亮太)
イメージとかはね。髪が長くて、柄物の服を着て、みたいな。

(赤江珠緒)
ちょっとパンタロンみたいなので・・

(町山智浩)
そうなんですよ。アレなんでああいう格好しているんだと思いますか? ヒッピーって。

(赤江珠緒)
なんだろう?自由を謳歌する・・

(山里亮太)
縛られたくないっていう。

(町山智浩)
そう。就職しないためなんですよ。髪を切るのは、就職をすることなんですよ、当時。

(赤江珠緒)
そうか!だから『いちご白書(をもう一度)』とかでも出てきますもんね。「就職が決まって髪を切ってきた時」って。

(町山智浩)
そうそうそう。その頃は、要するにカウンター・カルチャーっていうのはそれまでの社会の価値観に対決していく訳だから、学校を出て、会社に入って、世の中の歯車になっていくという事を拒否するのが、カウンター・カルチャーなんですよ。だからヒッピーは、1番重要なのは、ネクタイをしないという事なんですよ。

(山里亮太)
はーーなるほど。

カウンターカルチャー

(町山智浩)
その頃は、もう1960年代の始めっていうのは、みんな学校を出たら髪の毛を切ってどこかの会社に入って、ネクタイをして、働く。というのが1番まともな道だと思われていたんですけども、それを拒否することからその60年代の革命が始まっていったんですね。

(赤江珠緒)
うんうん。

(町山智浩)
で、もうひとつ、その時代を代表するものは”フリーラブ”という言葉なんですよ。これも聞いたことないですか?

(赤江珠緒)
聞いたこと、ありますね。

(町山智浩)
どういう意味だと思います?

(赤江珠緒)
えっ?それこそ本当に自由に、無節操に、、というイメージで、考えておりますが。。

(町山智浩)
エッチすることですよね?それまでは、結婚をする前は基本的に女の人っていうのはセックスしちゃいけなかったんですよ、日本もアメリカも。

(赤江珠緒)
貞操観念みたいなのがね、しっかりあって。

(町山智浩)
それが常識だったんですよ。だから「初夜」って言われていたんですよ。結婚式の夜にはじめて処女を失う。それが常識だったのを全部ひっくり返すと。結婚に縛られないで自由に恋愛やセックスをするという、新しい生き方みたいなのが出来たんですね、その当時。だから、そういうすごい転換期で若者文化が世の中をですね、ベビーブーマーっていう、ものすごい人口が多かったんですけど、その当時の若者は。それが社会全体を変えていたのが、まぁ世界中で同時に起こっていたんですけども、それがまあ、1960年代のカウンター・カルチャーという時代なんですよ。

(赤江珠緒)
うん。

引用:IMDb.com

カウンターカルチャーの時代の雰囲気で作られているのがこの映画

(町山智浩)
で、69年っていうのは実はその最後なんですよ。だから、まさかその時代が終わるとは思っていなかったんですよ、僕もタランティーノも。どんどん世の中が自由になっていくんだって思っていたんですよ。その雰囲気で作られているのがこの映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』なんですね。でもそう聞くと、なんてバカげた話だろうって思いません?夢なようなことを言ってるって思いませんか?

(山里亮太)
確かに、はい。

(町山智浩)
だから『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』っていうタイトルなんですよ。昔々、こんなことがあってね」っていうのは、おとぎ話の語り方ですよ。だから「君たちは信じられないかもしれないけど、昔、夢みたいな時代があったんだよ」っていう話なんですよ。でも実際にあった時代なんですけどね。

(赤江珠緒)
確かにそうですね、うん。

(町山智浩)
でこれ、映画のストーリーに戻りますと、ディカプリオが演じてるのは、昔ハリウッドで西部劇のドラマで人気者だったんだけれども、もうその番組はもう終わってしまって、今はテレビドラマにちょこちょこ出ては脇役で悪役をやったりしている、落ち目の俳優っていう役です。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
で、「イタリアに行ってマカロニ・ウエスタンにでも出れば?」とか誘われるんですね。その頃、ハリウッドで落ち目になった人はイタリアに行ってアクション映画とか西部劇に出て出稼ぎをするっていう時代だったんですよ。で、そういうことを言われて「俺は落ち目だって言われたよ!」ってボロボロ涙を流して泣く、泣き虫男がディカプリオなんですよ。で、それを、泣き虫のディカプリオの肩を抱いてやって「よしよし」って慰めるのがブラピなんですね。

(赤江珠緒)
はははっ!

(山里亮太) 
すごい豪華な・・!

当時のスタントマンは専属だった

(町山智浩)
すごい豪華なブロマンス映画なんですよ!すごい豪華ですよ!!で、このブラピがやっているスタントマンは、完全にディカプリオのスタントマンしかしない人なんですね。当時そういうコンビがいっぱいいたんですよ。背格好が近かったり、その相手の動きを完全に真似する事ができるから、見分けがつかなかったんですよ。影武者みたいな。

(赤江珠緒)
はぁぁ、じゃぁ専属だったんですね。

(町山智浩)
専属だったんです、はい。で、実際に昔、その当時に世界最高のアクションスターだったスティーブ・マックイーンっていう人がいたんですね。あの、『荒野の七人』とか『大脱走』とかに出てた人ですよ。『ブリット』とか。で、このスティーブ・マックイーンがいちばん有名なのは、『大脱走』という映画で、ドイツ軍の収容所から脱走したアメリカ軍の兵士であるスティーブ・マックイーンが、スイスへの国境線にあるバリケードをですね、盗んだオートバイでジャンプして飛び越えるっていうシーンなんですよ。

(赤江珠緒)
うんうん。

(町山智浩)
それをやったのは彼じゃないんですよ実際は。(笑)彼の相棒だったスタントマンのバド・イーキンスっていう人がやったんですね。で、その2人の関係っていうのはずーっと続いたんですよ。親友として。相棒として。その関係をこのディカプリオとブラピの2人のコンビが、再現しているんですね、この映画の中で。

(赤江珠緒)
なるほど。

(町山智浩)
はい。だからね、一心同体なの、2人。必ず。で、どんな事があっても、ブラピはディカプリオを裏切らないんですけど。この映画ね、またね、ブラピ、脱ぎますよ。

(赤江珠緒)
えっ?

(山里亮太)
あら!

引用:IMDb.com

ブラッド・ピット、脱ぎます!

(町山智浩)
もう56ですけどね、今年で。

(赤江珠緒)
えぇ、そうかブラピ。。そうか年齢的に。。

(山里亮太)
それ相応の体になっているのか、それともまだ?

(町山智浩)
そこに写真ないですか?ブラピの体?

(山里亮太)
ブラピの体が・・あっ、これかな!あったあった!おおおっ、バッキバキじゃないですかまだ!

(赤江珠緒)
わあ!

(町山智浩)
バキバキですよ!信じられないよねもう。

(赤江珠緒)
あれ?町山さんと同年代っていう事ですか?

(町山智浩)
同年代、1つ下ですけどね、ブラピの方が。これ、すごいよね?すごいです。で、その脱ぐシーンって全く意味がないんですよ。

(山里亮太)
んっ?

(赤江珠緒)
へへへへへ。(笑)

(町山智浩)
全く意味がないんですよ。サービスです。(笑)日本だと西島秀俊さんが時々やるやつですと。

(山里亮太)
確かに、今脱がなくても良かったっていう所で脱いでるし。(笑)

(町山智浩)
そう。もう完全にサービスなんで笑っちゃいましたけども。まあ、すごいんですよ。で、その2人がね、なんとかしてハリウッドで、仕事で、なんとかしてカムバックしようと頑張ってるんですね。で、その2人が、その彼が売れている時にディカプリオは豪邸をハリウッドに建てるんですけども、もうそのローンも払えない状態になっているんですよ。で、その隣の豪邸に、大スターが引っ越してくるんですね、新人スターなんですけども。それがね、シャロン・テートという女優さんなんですよ。

(赤江珠緒)
はい。

マーゴット・ロビー演じるシャロン・テート

(町山智浩)
その当時売り出して、急にばーって人気が上がってきた女優さんで、すごい美人なんですけども。で、これをマーゴット・ロビーっていう女優さんが演じています。この人はね、『スーサイド・スクワッド』に出ていた人ですね。極悪美少女の役で出てましたけど、ハーレイ・クインの役で。あとトーニャ・ハーディングの伝記映画で、ものすごく下衆いですね、トーニャ・ハーディングを演じていた人なんですよ。(『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』)

(赤江珠緒)
ふーん。

(町山智浩)
このマーゴット・ロビーさんって今まではなんというかね、ヤンキー系、スケバン系の役ばっかりやっていたんですけど、今回、シャロン・テートは本当に純粋無垢なお姫様みたいな人として出てきます。

(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
はい。だからまあ、これはおとぎ話ですからお姫様が必要なんですね。で、彼女はまさにその時代のヒッピーカルチャーとかフラワームーブメントって言われてて、みんなお花をですね、髪に飾っていたような時代があったんですよ、当時。ベトナム戦争中だったからなんですよ。戦争に対して、その戦争よりも花とか愛の方がいいでしょう?っていうことで、フラワームーブメントっていう反戦運動があったんですね。

(赤江珠緒)
はぁ、そうでしたか。

(町山智浩)
だから「ラブ&ピース」っていう言葉よく聞くでしょう?それはこの時代に生まれた言葉なんですよ。

(赤江珠緒)
そうだそうだ、ラブ&ピース、まさにね。

(町山智浩)
「戦争よりも愛と平和の方がいいじゃん」っていう運動なんですね。で、そのすごくほんわかした、ハッピーな、その当時の、はっきり言うと楽観主義的な物を表現しているのがそのシャロン・テートという女優さんなんですね。この映画の中では。本当に天使みたいなんですよ。

(赤江珠緒)
ふーん!

(町山智浩)
で、彼女はその、ロマン・ポランスキーという当時、ハリウッドに来たポーランド人のものすごい売れっ子の監督と結婚して、新婚夫婦として隣に引っ越してくるんですが、ディカプリオは話しかけることもできないんですよ。

(赤江珠緒)
もう落ちぶれちゃっているから?

(町山智浩)
そう、落ち目だからっていう事で怖気づいちゃって。ものすごく情けない男です、ディカプリオ。この映画の中で。セリフ入っていないしね。セリフ入っていないんですよ。大根なんですよ。

(山里亮太)
はーーっ。そうなんだ、そういう役なんだ。

引用:IMDb.com

ディカプリオ、情けない男

(町山智浩)
で、しかも酒に溺れてて、前の晩にちゃんとシナリオを読んでおけばいいのに読まないで寝ちゃったりしているダメな俳優なんですよ。

(山里亮太)
あーーダメダメだ。

(町山智浩)
ダメなんですよ。しかも、シナリオを読んでいる最中とかに、そのカウボーイの話とかを読んでいたりするとね、「彼はもう年老いて昔のような輝きはない」みたいな事を読むと、「俺みたいだぁ~」って泣き始めちゃうんですよ。(笑)

(赤江珠緒)
だいぶメソメソしてますね、へぇ〜。

(町山智浩)
そう、コメディですからね。でもね、感情をコントロールできないんだから、俳優とかやんない方がよかったと思うんですけども、この人は。(笑)まあ、そういう役をやっているのがディカプリオなだけで、ディカプリオができない訳じゃないんですけども。そういうね、なんだか噛み合うようで噛み合わない不思議なコメディになってるんですよ。で、これはね、タランティーノ曰く、「きっちりしたドラマにしようとはしていなくて、その当時の1969年のとある3日間をただ見せるという映画にしたかった」と言っているんですね。

(山里亮太)
とある3日間・・?

様々な登場人物。ブルース・リーも。

(町山智浩)
はい。だからね、話がね、直線的に何かに向かって進むという感じではないので、「この話はどこに行こうとしているの?」って観客がよくわからない所があるんですよ。エッセイのようなね、感じがするんですね。「1969年っていうのはこういう時代だったんだよ」っていう事でいろんな人が次々と出てくるんです。スティーブ・マックイーンも出てくるんですよこの映画の中に。

(町山智浩)
で1番びっくりするのはブルース・リーが出てくるんですね。

(赤江珠緒)
ええっ!

(町山智浩)
ブルース・リーは当時、ハリウッドにいたんですよ。彼はね、『グリーン・ホーネット』というテレビドラマシリーズでカトーという日本人の運転手の役を演じていたんですね、空手使いの。

(赤江珠緒)
へぇ〜〜っ!はい。

(町山智浩)
で、すごく人気が出たんですけども、番組がやっぱり終わっちゃって。そのあと仕事がなくて。やっぱりアジア人の仕事がなかったんですよ、当時、アメリカでは。だから、ハリウッドで格闘シーンの殺陣をつけてたんですよ、彼は。いわゆるアクション・コレオグラファーという仕事をしてたんで、ブルース・リーが出てくるんですね、この映画の中で。

(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
そっくりさんが演じてますけども、はい。で、彼はスタントマンみたいなものですからね、スタント・コーディネーターですから。スタントマンのブラピとぶつかっちゃうんですよ。

(山里亮太)
へー!ブラピとブルース・リーが戦うんだ。

引用:IMDb.com

ブラピVSブルース・リー

(町山智浩)
ブラピVSブルース・リーなんですよ。すごいですよ、このシーン。で、タランティーノはもちろんブルース・リーファンで、『キル・ビル』の中でブルース・リーの『死亡遊戯』に出てくる黄色いトラックスーツをユマ・サーマンに着せているぐらいブルース・リーファンなんですね。

(赤江珠緒)
うん、うん。

(町山智浩)
で、ブラピもブルース・リーファンで、『ファイト・クラブ』っていう映画の中ではブルース・リーの動きを完璧にコピーしているんですよ。だから2人のブルース・リーファンが、ブルース・リーと戦うという非常に異様な映画になっているんですけども。ただね、ブルース・リーの娘さんが遺族でいるんですけど、その方はこのシーンが嫌だって言っているんですよ。

(赤江珠緒)
えっ!そうなんですか?

(山里亮太)
なんでなんでしょう?

(町山智浩)
あのね、これは見てもらうとわかるんですけども、ブルース・リーあんまりいい人じゃないんですよ。

(赤江珠緒)
あ〜〜そうなの?そんなにファンの2人が描いて?

(町山智浩)
そう。ブルース・リーってね、ちょっといじめっ子だった所があるんですよね。これはご覧になるとね、「うん? ブルース・リーってこんな人なの?」っていうね、うーーんっていう難しい所でしたね。

(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
僕はね、ものすごいブルース・リーファンだから、タランティーノに会った時にちゃんと言いましたけど。「You offended my hero!」って言いましたけども。

(赤江珠緒)
うん、うん?

(町山智浩)
今のは『燃えよドラゴン』のセリフのパロディですが、まぁそれはいいんですけど。まぁタランティーノは「ブルース・リーは色々と調べるとこういう人だったんだよ」って言ってましたけどね、はい。


(山里亮太)
へー、そうなんだ。

(町山智浩)
まあそこはちょっと、ご覧になってからのお楽しみという所ですけども。ただね、こういう話、聞いてるとすごい楽しい映画のように聞こえるでしょう?実際に楽しいですけども。

(山里亮太)
はい。コメディですもんね?

(赤江珠緒)
60年代の空気が出ているっていうね。

(町山智浩)
そう。ハッピーでハッピーでね、ラブ&ピースな所でディカプリオとブラピのこの凸凹コンビが色々とやっては、やらかして失敗して怒られてっていうのがずっと続いて、そこにかわい子ちゃんの天使のようなシャロン・テートがね、ウキウキと。あぁ、この人はブルース・リーに、このひとはシャロン・テートは、格闘を教えてもらった人なんですよ。

(赤江珠緒)
えぇーっ。

(町山智浩)
はい。だからまぁ、すごく楽しい、楽しい映画なんですけども、見てると、歴史を知っているとすごく辛くなってくるんですよ。見ているうちに段々段々。すごく辛くなってくるんですよ。

(赤江珠緒)
なぜ?

楽しい映画なのに、歴史を知っているとすごく辛い。

(町山智浩)
というのはこの1969年の8月8日の夜にシャロン・テートは殺されているんですよ、実際は。

(赤江珠緒)
ええっ?それは実話ですか?

(町山智浩)
これはすごく有名な事件なんですけども、チャールズ・マンソンというカルト教団の教祖がいまして。彼に命令された、指導されたカルトの信徒達がですね、そのシャロン・テートの家に銃を持って押し入ってですね、そこにいたシャロン・テートとシャロン・テートの友達を皆殺しにしているんですよ。

(赤江珠緒)
ええっ?

引用:IMDb.com

シャロン・テート殺害事件

(町山智浩)
シャロン・テートさん、その時妊娠8ヶ月なんですよ。皆殺しにしたんですよ。それが大変なことになって、そのチャールズ・マンソンの信徒達っていうのはヒッピーみたいなものだったんで、「ヒッピーはラブ&ピースだって言われていたのに、違うじゃないか!」ということでヒッピームーブメント自体がそれで終わっちゃうんですよ。殆ど。

(赤江珠緒)
この、事件で?

(町山智浩)
この事件で。で、それまであったカウンター・カルチャーとか、ラブ&ピースというヒッピーの理想とか、そういった楽観主義的な物は一気にそこで滅びてしまうんですよ、歴史的には。ものすごいアメリカと全世界に衝撃を与えた事件なんですよ。僕も覚えてます、これあった時。子供だったから「なんてひどいことが起こったんだ!」ってものすごいショックでした。はい。で、それが近づいてくるんですよ、この映画の中で、段々、その瞬間が。

(山里亮太)
そうか、だから歴史を知っていると複雑な気持ちに・・。

(町山智浩)
そう。歴史を知らないでこれを見ていると、なんだか楽しそうにしているなって、全然緊迫感が出てこないんですけども。途中でそのブラピがヒッピーたちと接触するあたりで、彼らが誰だかを知っているとものすごい怖いんですよ。

(赤江珠緒)
そうですね。。

(町山智浩)
殺人集団なので。だからこれはね、そのチャールズ・マンソン事件を知っているのと知らないのとでは全く映画の意味が違ってきちゃうんですよ。ということで、これだけはネタバレとかそうじゃなくて、これを知っておかないとこの映画は意味がないんで、恐ろしいことが起こることを。

(赤江珠緒)
へぇぇぇ・・これはどういう結末を迎えるんだろう、この映画自体ね。

(町山智浩)
はい。それはね、もう、言えないんですけど。言えないんですけども、はい。まあ、本当にね、僕にとってはすごく懐かしい懐かしい感じの映画なんですが、今の人たちが見ると、こんな夢のようなことがあったのかと。こんな楽しい時代があったのかと。という映画なので、是非ご覧になって頂きたいと思います。

(赤江珠緒)
だから「ワンス・アポン・ア・タイム」ねー、なんですね。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、8月30日に日本では公開になります。町山さん、ありがとうございました!

(山里亮太)
ありしたーっ!

(町山智浩)
どもでした!

<書き起こし終わり>


○○に入る言葉のこたえ

③この映画はシャロン・テート殺害事件を知っているのと知らないのとでは全く映画の意味が違ってくる。

でした!

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