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引用:IMDb.com

フューリーの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月26日更新
本当に田宮模型を作った世代の、男性だったら夢にまで見た本物のタイガー戦車が見れる映画、フューリーでしたね。はい。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/) 
で、デヴィッド・エアー監督の第二次世界大戦時代を描いた戦争ドラマ映画『フューリー』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。 

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。 

町山さん『フューリー』解説レビューの概要

①過去の戦争映画のはない本物のタイガー戦車が登場

②戦車兵になりきるために役者たちは○○○○をする!

③サザエさんにたとえると?
④良い戦争と悪い戦争
 
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。 

映画『フューリー』町山さんの評価とは

(赤江珠緒)
それでは映画評論家の町山智浩さん、アメリカ・カリフォルニア州バークレーのご自宅とお電話がつながっています。
もしもーし、町山さん?

(山里亮太)
もしもーし?

(町山智浩)
はい、もしもし町山です。
よろしくお願いします。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
よろしくお願いします。

(赤江珠緒)
今週はスペシャルウィークということで、町山さんぜひガツンと、素晴らしい映画をお願いいたします。

(町山智浩)
あ、そういえばこの間あの、赤江さんが先週「Batdance〜♪っていう歌ですよね?」って言って僕は「違います」って言ったんですけど、すいませんあれ映画では使われてないんですけど、昔流行ったんですよねプリンスの歌でね。

(赤江珠緒)
そうそうそう!

(町山智浩)
あっちですよね。

(赤江珠緒)
あっちですね。

(山里亮太)
いや・・(笑)

(町山智浩)
トミーズがやってた。

(赤江珠緒)
えぇ。だからあの、間違ってることは間違ってる。

(山里亮太)
いや、町山さん謝らなくていいですよ。

(町山智浩)
間違ってないですよ、いいですよ。
すいません僕があのー映画のことばっかり考えてるバカなんで。

(山里亮太)
違いますよ、町山さん。

(赤江珠緒)
あー良かった、町山さんにわかってもらえて。

(町山智浩)
すいませんでした。

(山里亮太)
違う、町山さん。あれはね赤江さんがシンプルに歌が下手だったんです(笑)

(赤江珠緒)
あはは(笑)

(町山智浩)
あはは(笑)
いや、僕よりマシですよ本当に。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
あはは(笑)

(町山智浩)
僕は本当、何を歌ってもわからないって言われますからね。

(山里亮太)
そうなんですか(笑)

(赤江珠緒)
あーそうですか。良かったぁ。

(町山智浩)
はい。

(山里亮太)
あら、じゃあお互い様ということでじゃあ。

(赤江珠緒)
ねぇ、「下には下が」っていうね、はい(笑)

(山里亮太)
何っすぐ上・・ふてぶてしい(笑)
すぐ下にしちゃったあの町山さんを。

(赤江珠緒)
あはは(笑)

(山里亮太)
いまから紹介してもらうんですよ。

引用:IMDb.com

町山さん、テンションが上がってる?

(赤江珠緒)
すいません、そうですよ。町山さん、お願いします。
なんか町山さん、テンションが上がっているって聞きましたけど?

(町山智浩)
はい。えーっと今日の話でいいですか?はい。
今日はですね、ブラッド・ピット制作・主演のですね、戦争映画『フューリー』を紹介します。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
えーこれ、フューリーっていうのはっていうのは英語で「怒り」とか「激怒」っていう意味なんですけど。
あのーそういう名前の戦車に乗るアメリカ兵たちの話なんですよ。

(赤江珠緒)
へぇ!

(山里亮太)
はい。

フューリーは英語で「怒り」や「激怒」

(町山智浩)
はい。で、これ第二次世界大戦が舞台なんですけど。
僕、この取材でイギリスに行ってきたんですよ、この間。

(赤江珠緒)
イギリス行くっておっしゃってましたね。はい。

(町山智浩)
そうそう。あれは実はね、イギリスのロンドンから車で3時間ぐらい行ったところにね、「ボービントン戦車博物館」っていうのがあるんですよ。

(赤江珠緒)
戦車博物館?はい。

(町山智浩)
そうそう。そこに行くためだったんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へー!

(町山智浩)
で、その戦車博物館っていうのはね、世界の戦車が300台収められているんですね。
で、そこね、世界最初の戦車の訓練とか実験をした場所なんですよ、もともと。

(山里亮太)
へぇー!

(赤江珠緒)
ふ〜ん!じゃあ実際に使われていたものが置いてある?

(町山智浩)
実際に使われたものです全て。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
はい。で、世界中で戦争が終わると戦車がいらなくなるじゃないですか。それを回収して集めてるんですよそこに。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇーー!!

フューリーの撮影地「ボービントン戦車博物館」

(町山智浩)
はい。で、あのーなんでフューリーっていう映画をそこで撮影したかっていうと、このへんからね、あの・・・僕の世代で「田宮模型」とかを作っていた人以外はだんだんついていけなくなると思いますが。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
えぇ。

(町山智浩)
ただ、ラジオをお聞きになっている方で、タクシーを運転されていたり、お仕事をされている方で40代、50代の男性だったらほとんど全員わかる話ですから。

(山里亮太)
はぁ!なるほど!

(赤江珠緒)
おぉー!

(町山智浩)
赤江さんとか山里さんはわからなくても、これ、世間にわかる話なのかな?とか心配しないでいいです。わかります!

(赤江珠緒)
あはは(笑)

(山里亮太)
了解です!

(町山智浩)
40代、50代の男性はこれから話すこと、全部わかりますから。大丈夫ですよ。

(赤江珠緒)
田宮模型さんがね。私も大丈夫ですよ。

引用:IMDb.com

戦争映画は、殆ど本物の戦車が出てくる事はなかった

(町山智浩)
あのね、第二次世界大戦の戦争映画っていうのはいままでずっとアメリカとかイギリスで作られていたんですけども。
あの、ソ連とかでも作られてきたんですが、ほとんど本物の、本当に使われた戦車が出てくることってほとんどなかったんですよ。

(山里亮太)
うん。

(赤江珠緒)
そりゃそうでしょうねぇ。

(町山智浩)
っていうのはどうしてか?っていうと、ドイツ軍の戦車が出てこないんですね。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
ナチス・ドイツっていうのは徹底的に殲滅されたんで、ほとんど撃破されたから残ってないわけですよ戦車。だから出てこないんですよ。
で、いままではナチス・ドイツの戦車っていうといちばん有名なのは「タイガー戦車」っていう戦車なんですね、重戦車なんですけど。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
えぇ。

(町山智浩)
80トンぐらいあるのかな?なんかそういうすごい戦車があるんですけども。それに関しては、1350台しか作られなかったんで、残ってないわけですよほとんど。
だから、偽物のアメリカ軍とかロシアの、ソ連の戦車を改造して、ドイツのタイガー戦車に見せかけてたんですね。いままでの戦争映画、すべて。

(赤江珠緒)
ふーん。

(山里亮太)
ほうほう!

フューリーは本物の戦車を

(町山智浩)
ところが今度、フューリーっていう映画では、もうそういうのはもう止めようよと。本物のタイガーを出そうよ、ということになって。
ボービントン戦車博物館が所有している「タイガーⅠ型重戦車」を本当に映画の中に出して走らせているんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!!

(赤江珠緒)
あ、でも、ちゃんと現存してたんですか?

(町山智浩)
現存していたんですよ。これはアフリカ戦線でイギリス軍が捕獲したものを大事に取っておいて、修理して走れるようにしたものなんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!!

(町山智浩)
70年以上前の戦車が現在も動くんですよ。
で、僕触ってきたんですよ。その現物に!

(山里亮太)
ほう、タイガーに。

(町山智浩)
もう涙出る感じでしたよ。もう全身にビリビリッと電気が走るような感じでしたよ、もう。

(山里亮太)
あっ!そう・・

(赤江珠緒)
あ、そんなものですか!

(山里亮太)
やっぱ、憧れてたんですか?

(町山智浩)
子どもの頃に何台も何台も作ったんですよ。

(山里亮太)
田宮模型で?

田宮模型

(町山智浩)
田宮模型で。まあ35分の1なんですけども。その後ね、えーサンパチとかですね、75分の1とか、いろんなの作りましたけど(笑)
とにかくね、1人で何台も何台も同じのを作るんですよ、だんだん上手くなってくるんですよ。作るたびにね。で、すごく「複合転輪」というですね、もうなにを言ってるかわからない人も多いと思いますけど(笑)キャタピラについている車輪がですね、ものすごく複雑なんですよ。タイガーっていうのは。で、それを作るのが大変だったりね。その縁をね「黒く塗れ」って書いてあるんですよ。

(山里亮太)
はいはい。

(赤江珠緒)
うんうん。

(町山智浩)
塗り方の指導で。で、なんでここ、タイヤの車輪の外側を黒く塗らなきゃいけないんだろう?って。鉄の車輪なんですけど、戦車だからね。
で、わからなかったんですけど、現物見てわかったんですけど、ゴムだったんですよ!

(赤江珠緒)
はぁー!いま、改めて現物を見てわかったこと。

(山里亮太)
あはは(笑)
町山さん、すごいテンション高い(笑)

(町山智浩)
そうそうそう。子どもの頃、わからなかったんですけど、はい。
っていうのを、実際に触ったりしてね。感動してきたんですけどもね。で、これやっぱり、ブラッド・ピットが制作をやっているんで、ブラッド・ピットっていうのはものすごいこだわる人なんで、実現したんだと思いますね。あのスティーブン・スピルバーグですら、『プライベート・ライアン』っていう映画ではタイガー戦車が出てくるんですけど、ソ連のT34戦車の改造なんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
この話はね、40代、50代の人はいまね、「うぅーっ!!」って言いながら聞いていると思うんですけど(笑)

(山里亮太)
もうタクシーの運転手さんとかは。
「本物のタイガーが見れるのか!?」と。

(赤江珠緒)
へぇー!そういうものなんだ。

引用:IMDb.com

タイガー戦車

(町山智浩)
そう。それが、敵の戦車なんですけどね。
タイガー戦車っていうのはものすごく強いんで、あのーアメリカ軍の戦車が5台・・シャーマン戦車っていうのがあるんですけど。5台でやっとタイガーⅠ型を倒せるぐらいだったんですよ。

(山里亮太)
へぇー!

(赤江珠緒)
えっ?そんなに戦闘能力が違ったんですか?

(町山智浩)
ものすごい、大砲の威力とか、決定的に違うんですね。88ミリ砲っていって、空を飛んでいる航空機を撃ち落とせる高射砲を戦車に向けて撃つんで。
弾が当たらなくても、この映画の中で出てくるんですけど、近くをその砲弾がすり抜けていくだけで首が吹っ飛ぶんですよ!

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!!

(町山智浩)
人の。当たってないのに。

(赤江珠緒)
当たってないのに?

(山里亮太)
衝撃波で?

(町山智浩)
衝撃波だと思うんですけど。そういうシーンがあるんですけど、この映画の中で。
まあ、それと戦うんでアメリカ軍側は、シャーマンっていうのは小さくて早い戦車で、安く作れるんですね。で、5万台作って1350台に対抗したんですよ。

(山里亮太)
えぇー!

(赤江珠緒)
ずいぶん数の力はすごいですよ。5万台って。

(町山智浩)
圧倒的な数の力だから、だから結局戦う時にこっち側は何台かはやられるっていうのを最初から前提として攻撃をかけるんですよ。

(赤江珠緒)
はぁー!

圧倒的な強さ

(町山智浩)
だからこれ、25人ぐらい・・1つの戦車に5人乗るんですね、シャーマン戦車っていうのは。
それで5台でタイガー1台に対抗するんで、25人のうち10人ぐらいは最初から死ぬ前提で攻撃させるんですよ。

(山里亮太)
うわぁー!

(赤江珠緒)
えー・・。

(町山智浩)
これ、芸人だったら大変ですよね?

(山里亮太)
いや、大変ですよ。そんな・・

(町山智浩)
25人芸人デビューさせるけども、10人ぐらいは食えなくて野垂れ死に、っていうのを前提としてデビューさせるみたいな話ですよね、これね。

(山里亮太)
あ、町山さん。
でもそれ、うちの会社、そうかも!(笑)

(町山智浩)
あっ、それ普通か(笑)

(赤江珠緒)
あはは(笑)

(山里亮太)
うちの会社、もっと過酷かも(笑)

(町山智浩)
「戦争か!それは」って思いますけど、はい(笑)
でね、その戦車博物館に行っていろいろ現物見たりですね、してきたんですけど。とにかくね、いままでの戦争映画で最もリアルにしようとしててですね。
あのー俳優さんでですね、シャイア・ラブーフっていう俳優さんがこの映画の中で戦車の砲手を演じてるんですね。大砲を撃つ人。その人は役に入れ込みすぎて、「顔に傷がない兵士なんているはずがない」と言って、ナイフで自分の顔を切っちゃったんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
ええっ!?

(赤江珠緒)
俳優さんなのに?

(町山智浩)
それぐらい。それで「歯が折れてたりしないとおかしい」って言って前歯を全部抜いちゃってるんですよ。

(山里亮太)
えぇー!?

(赤江珠緒)
うぅーっ!!

俳優陣の本気

(町山智浩)
ものすごいね、これね、俳優たちに会ったらね、異常なテンションでその戦車兵になりきってるんですね。
ブラッド・ピットをリーダーとする5人の戦車兵が。

(赤江珠緒)
えぇ・・・。
なんか歯を抜いた人はね、日本でもいましたけども。顔に傷をつけちゃって・・

(町山智浩)
松田優作さんは抜きましたね。

(赤江珠緒)
ねぇ、そうでしたよねぇ。

(町山智浩)
でも、前歯なんですけどね、この映画の中では。
でね、「どうしてそんなになっちゃったんですか?」って聞いたら、まずこの映画自体がですね、1945年4月のですね、要するにナチス・ドイツが5月に滅びるんですけども。
その1ヶ月前、終戦1ヶ月前にドイツ本土にアメリカ兵が入った時の1日を描いてるんですね。24時間の物語なんですよ。で、そこに行くまでにもう10ヶ月以上ヨーロッパを延々と戦ってきた戦車兵たちなんですよ。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
うんうん。

(町山智浩)
話が始まった時点で。
それを撮影初日で、その、要するに1年ぐらい戦ってきた戦車兵の雰囲気を出すの、いきなりだと無理だから、撮影に入る前に何週間も実際にホテルとかに泊まらないで、野宿をして。

(山里亮太)
えぇ!

(町山智浩)
戦車と一緒に暮らして、軍服を着たまま、ベッドに寝ないで生活させたんですよ。兵隊役の俳優たちを。

(山里亮太)
えぇーー!

引用:IMDb.com

撮影に入る前に戦車と野宿

(赤江珠緒)
うわぁー!そっかぁ。
そうしないとリアルさが出ないか、なるほど。

(町山智浩)
そう。まぁ、いきなりその戦闘1年目の兵士になれないから、何週間も要するにブラッド・ピットたちは一緒に生活してたんですよ、戦車と一緒に。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!

(町山智浩)
で、完全に兵士状態になりきってたんですね、だからおかしくなっていって。
それですごくおかしかったのは、これ監督がデビッド・エアーっていう監督で。この人、もともとロサンゼルスのストリートギャングとかに囲まれて育った、すごくタフな人で。
あと、海軍の経験者なんですね、デビッド・エアー監督は。

(山里亮太)
うん。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
で、ブラッド・ピットたちとか戦争を知らない若者たちに戦車兵をやらせるためにどうするか?
要するに戦車っていうのは、5人が全部機械仕掛けのように連携して動いてはじめて戦車っていうのは動くんですね。

(赤江珠緒)
あ、1台が?
1台の中に5人ぐらい入って。

(町山智浩)
1台が、はい。

(山里亮太)
いろんな役割があって。うん。

(町山智浩)
例えばマリオネットみたいなもの、手や顔や足をそれぞれの5人が動かしているようなものらしいんですよ、戦車って。

(赤江珠緒)
えぇ。

戦車の中

(町山智浩)
で、僕も乗ってみたんですけど。ものすごく狭いんですけどね。
それで体がみんなくっつく感じなんですよ。で、それで「1年以上暮らしてた感じっていうのを出すためには、本当に家族のようにならなきゃいけないんだ、君たちは」って言って。
で、監督がなにをしたかっていうと、ブラッド・ピットたち5人に殴り合いをさせたんですよ。

(赤江珠緒)
ほぅ。

(山里亮太)
んー?(笑)

(町山智浩)
で、毎回毎回、毎日のように殴り合いをさせ続けたらしいんですよ。

(山里亮太)
へぇー!

(町山智浩)
で、監督も「俺も一体にならなきゃな!」って、監督も一緒に殴り合いしてたらしいんですけど。
すごいんですよ。これ、ブラッド・ピットって『ファイトクラブ』っていう映画に出てましたよね?

(山里亮太)
はいはい。

(町山智浩)
で、「男は殴り合いをしなければ本当に自分が生きているかどうか実感できない」っていう映画だったんですけど。
これはその5人の男が家族になるために、5人の俳優が延々と本当に現場で殴り合いを続けたっていう、とんでもない撮影現場だったらしいんですよ。

(赤江珠緒)
あはは(笑)
過酷ですねー。

(山里亮太)
それは、映っているシーンじゃなくてですよね?

(町山智浩)
ぜんぜん映ってないですよ。あの、実際にリハーサルとか本番が始まる前に殴り合いをするんですって。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!

本番前に殴り合い

(町山智浩)
で、テンションを高めて行くらしいんですよ。で、この監督もどうかしてるんですけど。
だからその殴り合いをすることをずーっと何ヶ月も続けることで、俳優が異常な精神状態で。その、戦場での殺すか殺されるかっていうような暴力的な精神状態に俳優を追い込むんだ!とか言ってやってるんですよ。

(山里亮太)
へぇー!

(赤江珠緒)
はぁー!ま、理屈はわからんでもないですけど。

(町山智浩)
どういう現場なのか?と思いますけどね。

(赤江珠緒)
現場、恐ろしいですね。

(山里亮太)
ねぇ。それがでも、出てる感じでしたなんか、その感じが。だからこそ、みたいな。

(町山智浩)
だからね、本人たちもだんだんおかしくなっていったらしいんですけど。それで前歯を抜いたりしてたらしいんですね。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
そっかぁ。

(町山智浩)
で、これね、主人公はブラッド・ピットじゃないんですよ。

(山里亮太)
えっ?

引用:IMDb.com

主人公はブラッド・ピットではない

(町山智浩)
これはね、すごく、まぁまだ20才かそこらの男の子がですね、いきなり、戦争末期なんで兵隊がいなくなっているんで、アメリカ側も。戦場に送られるんですね。
で、6週間くらいの訓練でいきなり戦場に送られて、その、戦車兵のうちの機関銃を撃つ機関銃手がですね、死んでしまったんで。そのかわりに補充されるんですよその若い男の子が。ノーマンくんっていうのが。20才ぐらいで。ちなみに、童貞ですが、はい(笑)

(山里亮太)
これ、その情報、大事だったのかしら?

(赤江珠緒)
あはは(笑)

(町山智浩)
それでいきなり戦場に送られて戦闘が始まるんですけども。
あの、なんか森の中を自分たちの戦車が進んでいるところ、森の中を子どもたちが動いてるのが見えるんですよ。

(山里亮太)
はいはい。

(町山智浩)
で、「あっ、子どもたちだ」と思ったら、その子たちっていうのは対戦車擲弾砲っていうのを持っていてですね。パンツァーファウストっていうんですけども。
それでこちらの戦車を撃破しちゃうんですよ。

(山里亮太)
少年兵が?

(赤江珠緒)
えぇ。うん。

(町山智浩)
少年兵が。で、その頃ドイツ軍っていうのはほとんど崩壊してて、ドイツ国内にアメリカ軍が入っていったから、ドイツの国民全てを兵隊化してたんですね。

(山里亮太)
はぁー!

(赤江珠緒)
じゃあ最後のあがきみたいになっていたんですね。

一屋火の玉

(町山智浩)
そうなんですよ。だから日本がそれをやろうとして、沖縄だけで非常に犠牲になりましたけども、あれを本当にドイツはやったんですよ、一億火の玉っていうのを。
で、女の人や子どもや老人にまで、そのパンツァーファウストっていう対戦車擲弾を配ってですね。それでアメリカ軍を迎え撃てってやったんですよ。

(赤江珠緒)
うわぁ。

(町山智浩)
だから子どもだろうと女だろうと、全部自分を狙ってくるかもしれないわけですね、アメリカ軍にとっては。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
でもその男の子は、そのノーマン君は、いきなり平和なアメリカから来たばっかりだから、その子たちを見ても、何もできないわけですよ。
で、ブラッド・ピットが「お前が殺さなければ、俺たちが殺されるんだ!」ってやるんですよ。で、今度戦闘になると、撃たれた敵の兵隊たちが倒れているじゃないですか。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
そうすると、「あれを全部撃て!」って言うんですよ。「でも、倒れてますよ」って言うんだけど、「でも構わない。全部撃て!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)
えぇ。

(町山智浩)
で、どうしてかっていうと、倒れて瀕死だったり虫の息だったりする兵隊でも、自爆するかもしれないから近づけないんですよ。

(山里亮太)
はぁー!

(町山智浩)
だからもう倒れている兵隊とかケガしている兵隊、全部殺せってやるんですね。
で、「そんな酷いこと、できません」とか言ってると、「もうお前がいると俺たちは殺されてしまうから、お前に今人を殺させる!」って無理やり人を殺させるんですよ。
ブラッド・ピットが、そのノーマンくんに。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
うわぁ・・・。

強烈な映画、フューリー。

(町山智浩)
っていう、強烈な映画なんですね、これ。
で、このブラッド・ピットがやっている役は、あのー「戦争あだ名」っていうのがあって。戦場では本名で呼ばないらしいんですね。
で、ニックネームで「ウォーダディー」って呼ばれてるんですよ。

(山里亮太)
「ウォーダディー」?

(町山智浩)
「ウォーダディー」っていうのはね、戦争オヤジっていう意味ですね。

(山里亮太)
ほう!

(町山智浩)
で、ブラッド・ピットは戦争オヤジって言われてて。で、その下に、要するにサザエさんみたいに、おフネさんにあたるのはシャイア・ラブーフ扮する砲手でね。
その下に子どもがいてってなってるんですよ。その末っ子として、タラちゃんとして入れられるのが、そのノーマンくんなんですよ。

(山里亮太)
えっ?あはは(笑)

(赤江珠緒)
ものすごく平和なものに、あの町山さん、例えてますけども。

(町山智浩)
タラちゃんだから人を殺せないんですよ。「だしょー」とか言ってるから、役に立たないんですよ。

(山里亮太)
あはは(笑)
「イヤですぅ」って言って(笑)

(赤江珠緒)
もう一心同体だから、みんなで。

(町山智浩)
「ぱぷぅー!」とか言ってるから。
だからそれに人を殺させるところから始まるっていう、怖い怖い話なんですよね。

(山里亮太)
へぇ!その戦争のね残酷な面を・・

(赤江珠緒)
いやー・・・そのなんか、戦争の異常性みたいなのはね、

(山里亮太)
リアルに見せているんですもんね。

(赤江珠緒)
急に日常から来た人だとそうなりますよね。

引用:IMDb.com

男同士のぶつかり合い

(町山智浩)
そうなんですよ。たった6週間の訓練でいきなり行かされてますからね、タラちゃんみたいなのがね。大変なことになってるんですけど。
この監督たちのね、やっていることはすごく面白いんで。まず、僕らは戦車の中で家族だからっていうことで、殴り合いをさせるっていうけど、これはどう考えてもセックスの代わりなんでね(笑)

(山里亮太)
ほぅ!えっ?

(赤江珠緒)
えっ?

(町山智浩)
そうなんですよ。

(赤江珠緒)
えっ?どうなの?

(町山智浩)
そうでしょ?男同士で。

(山里亮太)
男同士のぶつかり合い。

(町山智浩)
裸で殴りあって、わかり合うんだ!みたいな。
タイマン張ったらダチやっていう世界ですよ。

(山里亮太)
懐かしの世界ですよ。日本古来の。

(赤江珠緒)
はぁー!

(町山智浩)
『Let’sダチ公』みたいな世界ですよ、古いですけどマンガのネタが。

(赤江珠緒)
うんうん。

(山里亮太)
あはは(笑)

(町山智浩)
で、そういうことをやってて、すごくね、まったく女っ気がない異常な世界なんですけど。
で、でもいきなりそのなんというか童貞でね、女の子も知らない男の子にいきなり人殺しをさせるんですから。すごい世界ですよ。

(赤江珠緒)
そうですね。
えっ、じゃあこの映画は町山さん、女性はほとんど出てこないんですか?

女性の出演シーンは一部

(町山智浩)
出てくるんです。ただ、すごい悲しいことになるんですけどね。はい。そのへんがね、すごく泣けるポイントの部分なんですけども。

(赤江珠緒)
あーそっかぁ。

(町山智浩)
で、「なんでこの映画を撮ろうとしたんですか?」とデビッド・エアー監督にインタビューしたら、あのー彼のおじいさん、2人いますよねおじいさんって。

(赤江珠緒)
はい、母方と父方。

(町山智浩)
2人とも第二次大戦で従軍してるらしいんですよ。

(赤江珠緒)
えぇ。

監督の祖父は第二次世界大戦に従軍していた

(町山智浩)
で、そのデビッド・エアー監督自身も海軍に入っていたんで。戦争のことを聞いたらしいんですね、おじいさんに。「第二次世界大戦どうでした?」と。そしたら「言いたくない」って言うらしいんですよ、おじいさん2人とも。でも、第二次世界大戦っていうのは、アメリカでは「グッドウォー(いい戦争)」って一般的には言われてるんですよ。
それはどうしてかって言うと、非常に悪いナチス・ドイツを倒したからということで。その後のベトナム戦争とかイラク戦争とかは「バッドウォー(悪い戦争)」って言われているんですね。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
要するに倫理的にも悪かったし、失敗したし。悪いこといっぱいしたしと。
だけど、その第一次世界大戦と第二次世界大戦は、世界を平和にするための戦争だったんだから、グッドウォーだっていう風に一般的には言われてるんですけども。
それなのにそのおじいさん、監督のおじいさんは2人とも自分がなにをしたかについては語らなかったらしいんですよ。

(山里亮太)
なるほど。

(赤江珠緒)
はぁ。

(町山智浩)
で、なんでだろうと思っていろいろ調べたらしいんですね。
で、いろいろ調べていったら、やっぱり酷いことをいっぱいしてるんですよ実際は。

(赤江珠緒)
そっか、だってさっきあったみたいに、少年だろうが女性だろうが老人だろうがっていう状態があったわけですよね。

(町山智浩)
そうなんですよ。だから自分たちがやられちゃうから。
もう、生きるか死ぬかだから、選択の余地がないんですね倫理的な。だってそこで躊躇してたら、その子どもは爆弾を持っているかもしれないですから。

(赤江珠緒)
うーん。

引用:IMDb.com

「いい戦争」なんてものはない

(町山智浩)
だから、言えないようなことはやっぱりしてきたんだと。で、それをすごい普通の、田舎町で暮らしていた人とかを戦争に連れだしてそういうことをさせたのが戦争なんだと。
だから「いい戦争」なんてものはないんだってことが言いたかったんですね監督は。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!・・・なるほど。

(町山智浩)
それはいままで、第二次世界大戦の映画っていうのは全て美化されて、全ていい戦争として英雄的なものとして描かれてきたんですけども。
今回は、もうぜんぜん違うんだと。

(赤江珠緒)
はぁー!
そういう監督のメッセージみたいなのは、アメリカ国内では伝わっていくんでしょうかね?

(町山智浩)
いやーでもみんな、ショックを受けているところもありますよね。

(赤江珠緒)
うーん。やっぱりグッドウォーっていうイメージが?

(町山智浩)
ちょっと今回は強烈なんで、かなり。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇ。

(町山智浩)
はい。ただやっぱり、戦車のシーンはすごいですよ。

(山里亮太)
そこはもう、本物のタイガーが!

(町山智浩)
これはすごいですよ。5台、4台でですね、タイガーⅠ型と戦うところは本当にもう。
要するに何台かは死ぬ気なんですよ、もう。何台かは犠牲にならないと勝てないんですよ。

(山里亮太)
はいはい。

(赤江珠緒)
そんなに差があったんですね。

(町山智浩)
これはすごい。こんな状況に置かれたらどうだろう?と思いますけどね。

(山里亮太)
そうだな。嫌だなぁ。

(赤江珠緒)
町山さん、中にも乗ったんですか?

(町山智浩)
はい。あ、中乗りましたよ。戦車、乗りましたよ。

(山里亮太)
感動しました?やっぱ。

町山さん、戦車に乗る

(町山智浩)
すごい狭いからやっぱりね、1発くらったら中に高熱のガスが噴き出してきてですね。
対戦車擲弾っていうのは。中に乗っている人、全部死んじゃうんですよ。

(山里亮太)
へぇー!

(赤江珠緒)
あぁ、そういうことなんだ。

(町山智浩)
だからもう棺桶なんですよ、鉄の。
だから、どうせ死ぬ時はみんな一緒だから、家族みたいにするしかないんですよね。

(山里亮太)
なるほど。

(赤江珠緒)
ふーん!

(町山智浩)
でね、やっぱりね、あのー・・この映画ポイントを言いますとですね、ブラッド・ピット脱ぎますから!

(赤江珠緒)
あ、それポイントですか?町山さん。

(山里亮太)
毎回ね、この裸のシーンを絶対・・・

ブラッド・ピット、脱ぎます!

(町山智浩)
ブラッド・ピット、僕より1つ下なだけなんですけどものすごい体ですよ。

(山里亮太)
もう鍛え上げている。

(赤江珠緒)
へぇ!

(町山智浩)
もうブリッブリでしたよ。もう。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
ブリッブリ?

(町山智浩)
ブリッブリでしたよ。すごいですよ、ブラッド・ピットは、裸。

(赤江珠緒)
そうですか。これ、大事な情報ということで。

(町山智浩)
びっくりしましたけどね。
がんばろう!と思いましたけどね。

(山里亮太)
(赤江珠緒)
あはは(笑)

(山里亮太)
ブラピみたいになろうと思ってるんすか?町山さん。

(町山智浩)
だって歳、変わんないんですけどね。すごいな、と思った。大したもんだなと思いました。

(山里亮太)
次、日本に来る時に町山さんがムッキムキになってたら笑っちゃう(笑)

(赤江珠緒)
ブリッブリになってください。

(町山智浩)
張り合ってもしょうがないけどね、はい。
ということでね、すごいんですけど。
まあ本当に田宮模型を作った世代の、男性だったら夢にまで見た本物のタイガー戦車が見れる映画、フューリーでしたね。はい。

(山里亮太)
動いているタイガーが見れる。

(赤江珠緒)
へぇ。いろんなポイントがありましたね。

(山里亮太)
そうね。だからもちろんリアルにこだわっているのもいいし、戦争の悲惨さっていう新しい見せ方をするっていうね。アメリカのね。

(赤江珠緒)
ですねぇ、はい。

(町山智浩)
あと、ブラピの裸とね。

(山里亮太)
そこ(笑)
毎回かならず1人裸を教えてもらうんだよな。

(赤江珠緒)
まぁまぁ、そこを楽しみにしている人もいるかもしれません。

(町山智浩)
本当のポイントですから、それは。はい。

(赤江珠緒)
そうですか。フューリー、ご紹介いただきました。

(山里亮太)
ブリンブリンよ!

(赤江珠緒)
日本では11月の28日公開予定だということです。
町山さん、今週もありがとうございました!

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)
どうもでした。

<書き起こし終わり>

○○に入る言葉のこたえ

②戦車兵になりきるために役者たちは殴り合いをする!
模型でつくった憧れの戦車の魅力を語る町山さんのトークが面白いので、是非聞いてみて下さい!

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