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引用:IMDb.com

ブラック・クランズマンの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月26日更新
1972年が舞台なので。世界中であらゆる人種の人がアフロヘアーにしていたブラック・パワーの時代の映画なんですけども。(youtubeより)

映画評論家の町山智浩さんが映画館にて(https://www.youtube.com/watch?v=D9V9i6cCS04)
スパイク・リー監督の映画『ブラック・クランズマン』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。 

町山さん『ブラック・クランズマン』解説レビューの概要

①「アメリカをもう一度グレートにする」というスローガンについて

②ブラックスプレイテーションの意味や作品

③『ブラック・パンサー』の影響で、女の人が◯◯◯◯◯◯をやるようになった
④事実とフィクションを混在させるユニークさ

⑤KKKとユダヤ人
⑥アカデミー賞に恵まれないスパイク・リー監督
⑦コロラドスプリングズが舞台になった理由

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。 

 映画『ブラック・クランズマン』町山さんの評価とは

(町山智浩)
佐藤蛾次郎みたいですね、はい。
でもなんかね、この帽子をかぶれって言われましてですね。
この帽子をかぶってこうやっていると、よくあのー競輪場とか競馬場でこういう(ペンで印をつける仕草)人に・・そういう風に見えるんですけど。
はい、すいません。

昔は僕が子供の頃ですね、小学生の頃は、日本でもアフロ流行ってましたね。
松鶴家千とせさんとかね、林家ペーさん、もういっぱいいましたね。子門真人さんとかですね。

あの、鶴瓶さんもそうでしたね。鶴瓶さんアフロで『きらきらアフロ』っていう番組やってたんですけど、全然どこがアフロだか全然わからないですけどね。
今はね、毛がなくてね。はい。

まぁそういう時代の話ですよ、1972年が舞台なので。
世界中であらゆる人種の人がアフロヘアーにしていたブラック・パワーの時代の映画なんですけども。

えーちょっとまず最初に感想とかをお聞きしたいんですけど、感想とか質問とかありましたら手を挙げていただいたら、マイクが行きますので。
どなたかいらっしゃいますか?

・・・

なんか観て、全部わかりました!?
全てを理解したんですか皆さん?(笑)

はい、どうぞ。
なんか思ったこととかないんですか?(笑)

引用:IMDb.com

ラストシーンについて

(男性1)
ラストシーンで、えーとKKKの集会があるんですけども、その時にある一人だけを写していて、それが誰なのか私には判らなかった。

(町山智浩)
KKKの火をやって・・?

(男性1)
火でこう、集会みたいにしているラストシーンで、一人だけこうアップにしていたんですけど。

(町山智浩)
(マスクを)被っているんですよね?

(男性1)
はい。で、目とその喉元だけが見えるじゃないですか。

(町山智浩)
はいはいはい。

(男性1)
それが誰なのかっていうのが判らなくて。

(町山智浩)
それはマスクをしているから、まぁちょっと判らないですけども(笑)
まぁあの、デビッドデュークなのかな?と思いますけどね。リーダーの、はい。

はい、どうぞ。
ちょっと前の方は僕が拾います。

トランプのモノマネ

(男性2)
町山さんあの、オープニングで『風と共に去りぬ』っていう『国民の創生』が流れたときに、
あのー・・

(町山智浩)
ちょっとすいません、もうちょっと大きい声で。
スイッチ入ってないのかな?

(男性2)
あ、あ。すいません。
アレック・ボールドウィンが起用されてましたけど、やっぱりあれは今、トランプのモノマネやっているっていうことで起用されているんでしょうか?

(町山智浩)
はいはい。そうです。
アレック・ボールドウィンが最初に白人至上主義者の学者のような役で出てくるんですけども。
彼を使ったのは、日本だとちょっと分からないですが、アメリカではテレビでですね「サタデーナイトライブ」という毎週土曜日にやっているお笑いバラエティ番組がありまして。
そこで毎週毎週、ドナルド・トランプの真似をしているのがアレック・ボールドウィンなんですよ。

で、彼が出てきてですね、最初に演説みたいなことをするところで、お客さんに向かって「アメリカはかつてグレートだったのに」と言っているんですけども。
字幕ではグレートにしてました?

(男性3)
グレート・・?あーちょっと。

(町山智浩)
あ、わからない?
あれは要するにトランプが「アメリカをもう一度グレートにする」っていうスローガンを打っているんで、それをちゃかしてて。
結局トランプが「アメリカをもう一度グレートにする」と言っているのは「アメリカをかつてのような白人至上の国に戻す」と言っているんですよ。
というのをまぁ、ちゃかしてるシーンですね、はい。

えーと他にどなたかいらっしゃいます?
なんか、「あれなんだったの?」みたいなのとか「僕はこうなんだけど」みたいなご意見とか、ありませんかね?
はい。

引用:IMDb.com

ブラックスプロイテーション

(女性1)
あの途中でいろいろ、あのーブラックスプロイテーション?でしたっけ。

(町山智浩)
ブラックスプロイテーションです。

(女性1)
の、映画のことがいろいろ出てきていたのでちょっと教えてもらいたいです。

(町山智浩)
はい。
途中で彼女と一緒に2人で歩きながらブラックスプロイテーションの映画について話しているっていうシーンがあるんですね。
これは1972年っていうのはそのブラックスプロイテーション映画の最盛期なんですよ。

ブラックスプロイテーション映画というのはその、ブラックパワーブームというのがあって、「黒人の人がかっこいいんだ」と、「最高なんだ」という、まぁ価値観みたいなものの大逆転があったので、それに合わせてですね、かっこ良い黒人のヒーローが悪い白人をやっつけるというだけのアクション映画が次々と作られた時期があります。

で、それの1作目が『黒いジャガー』という映画なんですね。
それは黒人の映画監督が作った映画で、それは本当に黒人の人たちによる黒人の映画だったんですけども、ゴードン・パークスが撮ったんですけども。

その後、白人の監督とか白人の製作者が「黒人を主役にすると白人も黒人もみんな観にくる」と。
要するに黒人がかっこいいということだから、ということでみんな観にいくから。じゃあ白人たちがお金儲けのために黒人の映画を作るという状況になるんですよ。
それを「ブラックスプロイテーション」と呼ぶようになったんです。だから「エクスプロイテーション」というのは「搾取」という意味なんです。「搾取」とか「金を搾り取る」とか「(金を)騙し取る」っていう意味なんで。黒人映画を商売のために作った映画をブラックスプロイテーションというんですね。

だから『黒いジャガー』は実際違うんですけど、黒人が作った映画なんで。えー、ただそういう映画が大量に作られて消えちゃうんですね。
消えた最大の理由は『燃えよドラゴン』が当たったからなんです。『燃えよドラゴン』にやられちゃった、全部消えちゃったんですよ。
『燃えよドラゴン』で、そのあとカンフー映画ブームがドカン!とくるんですよ。
特にアフリカ系の人や、アフリカ系の人たちのアクション映画を観てた観客層がごっそりカンフー映画に持っていかれるんで。で、消えちゃうんですね、はい。

『スーパーフライ』と『黒いジャガー』

で、中でもう一本『スーパーフライ』と『黒いジャガー』どっちがかっこいい?という風に言うんですけど。
『スーパーフライ』はゴードン・パークス監督の息子さんが撮ったブラックスプロイテーション映画っていうか黒人映画なんですけども。
スーパーフライというと、体が小さいんだけどパワフルの歌を歌う日本人のお姉ちゃんだと思っている人が多いと思うんですけども(笑)
あの人も正しいスーパーフライではあるんですが、スーパーフライっていうのはそっちの映画の主人公で、ヤクの売人なんですよ。
ヤクの売人なのになぜかヒーロー扱いされてて。

『黒いジャガー』は黒人の私立探偵の話なんですね。
それ両方ともニューヨークで撮られていて、その2つがその時の黒人映画のヒーローなんですね。

で、もう一つ『コフィー』っていう映画の話をして。『クレオパトラ・ジョーンズ』とどっちがいい?っていう風に話すんですけど。
『コフィー』っていうのは、パム・グリアという黒人の、まぁ巨乳女優さんがいましてですね。その人を主人公にしたシリーズがあるんですよ、それの一作目で。
クエンティン・タランティーノとかですね、あと、スパイク・リーもね、確か、パム・グリアで・・あのーあのへんの人たちは、夢精してたんですね。

(一同)
(笑)

(町山智浩)
すごいセクシーな女優さんで、白人・黒人を超えたものすごい人気だったんですよ、パム・グリアっていう人は。
ちなみにジョン・レノンは彼女をナンパして振られているんですね、はい。ジョン・レノンはおっぱいの大好きな人だったんですよ。マザコンですから、はい(笑)
えーと、そういうことはどうでもいいですね。

『クレオパトラ・ジョーンズ』っていうのは別のスーパーヒロインなんですけど、空手が得意だったんですよ。
空手ブームがそのへんから黒人映画ブームを消して行っちゃうんですね、はい。

引用:IMDb.com

『黒帯ドラゴン』

えーまぁ途中でその間のですね、黒人の空手ヒーローである『黒帯ドラゴン』っていう映画が作られたりして。
すごくその黒人ヒーロー映画っていうのは空手映画へ移行していく、ということがありました当時。
もうリアルタイムで僕は覚えていますけど、はい。

あのときに彼女が、ブラック・パワーに非常に傾倒している女子大生ということで出てくるんですが、彼女は実在しないキャラクターなんです。
この映画は実話なんですけども、彼女はモデルがいます。
アンジェラ・デイヴィスという『ブラック・パンサー』の女性指導者なんですね。

それでアフロヘアーを女の人がやるようになったのは、その『ブラック・パンサー』からなんですよ。
それまで女の人たちはアフリカ系の人たちでも、放っておいたら髪の毛がこんな(アフロヘアーを指して)になっちゃうというのを恥ずかしくて、いろいろな形で隠したり、それこそストレートパーマをかけたり、いろんな形でこういう風にならないようにしていたんです。

『ブラック・パンサー』

ところが、アンジェラ・デイヴィスさんと、あともう一人の女性がですね、『ブラック・パンサー』の人たちが黒人であること、そしてアフロヘアーになること、髪の毛がブワァーっと大きくなることはかっこいいんだと。これが私たちの美しさなんだということを提唱してそういう髪型にしましょう、とやってから、彼女たちが主張してからそれがファッションとして流行っていったと、いう流れがあります、はい。

で、途中で演説のシーンがあるんですけど、彼は『ブラック・パンサー』のリーダーなんですが、黒人は美しいんだと。
「黒人の肌も唇もそれは誇りに思うべきなんだ」と。いうところで、JB・・ジェームス・ブラウンの歌が流れるんですね。
で、『I'm black & I'm proud』っていう、黒人であることを誇りに思えと。

そこからあの「Black is beautiful」っていう言葉が出てきて。
「Black is beautiful」っていう言葉はその当時の大流行語になるんですよ。

黒人であることはそれで美しいことなんだと。で、ブラック・パワーというのはあのーこういうサインなんですね(右手で肘を曲げた状態でガッツポーズしながら)。
こういうことをみんなやっている・・これはブラック・パワーという意味なんですよその当時の。

引用:IMDb.com

ブラック・パワー

もう何も言わなくてもこうやることでブラック・パワーって言うんですけども。
ブラック・パワーの「パワー」っていうのはなにかっていうと「権力」みたいなものを意味します。
それは国家権力に対するその黒人の権力を主張するという運動になっていきます。

それをやり始めたのは『ブラック・パンサー』で、この映画の中で途中で演説のあった、まぁ人がリーダーをしていたグループなんですけど。
うちの近所、僕が住んでいるオークランドで始まるんですね。
で、もともとは警官による暴力、黒人に対する意味のない暴力に対して、自警団組織として始めて。
そのあとだんだん教育とかいろんな形で、福祉とかをやるようになっていた団体なんですけども。
それがまぁ『ブラック・パンサー』というグループで、そのうち警察に目をつけられてですね、まぁかなり流血沙汰になっていって潰れていったんですけども。

それが、その黒人のファッションセンスみたいなものがかっこいいんだっていうことで白人が真似し出して、日本人も真似しだしてですね。
それと同時にソウルミュージックの大ヒットがあって、全世界的なブラックブームというものが72年くらいに最高潮に達したんですね。

だからこの映画は実際にあった事件は78年にあったことなのに、それだとあまり面白くないから72年の一番ブラック・パワーとブラックムーブメントが盛り上がっていたときに時代設定を移しちゃえってことで、そっちに移してファッションとかもそういう感じになっているんですね、はい。

スパイク・リー監督「この映画は遊んでます」

だからかなりスパイク・リー監督はこの映画は遊んでます、はっきり言って。
ブラックスプレイテーション映画について話すときに、ワイプでもって絵に入るじゃないですか、それぞれの映画の。
もうそうすると映画なのかバラエティなのかよくわからないっていうことになっていますけど。

この映画、あるシーンではコメディみたいでしょ?というかはっきりとコメディみたいにして演出しているとこがあって。
そうかと思うとドキュメンタリーになっていたり。
一番最初で、アレック・ボールドウィンがね、こう話すところっていうのは、「一体なに?これ。ドラマとどういう関係があるの?」って思うじゃないですか。
そういう自由自在な編集をして、それぞれのシーンごとに全然違うタッチで、もうかなり遊んでる、まぁ言ってみれば自由奔放なスタイルの映画になっていますね。
特に後半に関しては今までのドラマと関係なく、現実にアメリカで起こっていることをぶつけて、というルールなしの映画だと思います、はい。

あとなんか、感想とか。
「えっ?」とか思うところとかってないですか?
僕はすごくあると思うんですけどこの映画。

まず変だと思わないですか?
KKKに対して警察が潜入捜査すると思いますか?アメリカの警察が。しないでしょ。
何か事件起こしてないんですよ、あの段階で。権利ないですよ。

この潜入捜査はおそらくはなかったでしょ、おそらくはなかったと思います。
彼がKKKに入ったことは多分あったんです。でも警察が特定の思想団体に潜入捜査をすることはその当時はあったと思いますか?

左翼じゃなくて右翼ですよ。ないでしょ恐らく。
最後に証拠は全部隠滅したっていうじゃないですか。なんの証拠もないんですよこの潜入捜査に関しては。非常に信憑性が薄いです、これに関しては。

引用:IMDb.com

最後の爆弾事件について

最後の爆弾事件、あれはないです。原作にも書かれていません。
原作では爆弾事件に関しての操作があって、それを止めたみたいなことは書いてありますけど、爆弾実際爆発してますからね、この映画の中で。
あれないんですよ。でも、スパイク・リーはこの映画、はっきり言って自由自在というか好き勝手なんで「やっちゃえ」っていう感じでやっているんですよ(笑)

で、今回アカデミー脚色賞の候補になっているんですね、はい。
それはもうあまりにも自由奔放で勝手気ままな脚本に対して、まぁなんていうかノミネートされているんだと思うんですけど。
事実ははっきり言って半分くらいですよこの映画。で、半分くらいは勝手なことなんですね。

で、例えば、驚くべき事実は、KKKのデービッド・デュークを彼が黒人である主人公が警備した。
これはないと思うじゃないですか、これは完全な事実なんです。
写真撮るじゃないですか、あれも実際はあるらしいです、はい。
だからあの部分は本当に事実。

で、意外なことにデービッド・デュークが直接電話に出たのも事実。
でも最後にデービッド・デュークに電話して「俺は本当に黒人だよ」って言ったのは、(実際は)言っていないんですよ。

(一同)
えぇ・・(笑)

(町山智浩)
そういうね、だからすごく面白い展開になっているんですよね、はい。

どこまでが事実で、どこまでが事実じゃないのか

で、どこまでが事実でどこまでが事実じゃないのかっていう部分に関しは、スパイク・リーは面白くなるようにしてますから。
面白い方向に話を作ってはいるんですね。

デービッド・デューク自身はだから、この最後の爆弾事件も含めて結局何も起こってないのに、こんな映画でっち上げじゃないかという反論はしています。
ただ一番の事実は、デービッド・デュークがKKKの最高司令者であった、指導者であったデービッド・デュークが、トランプ大統領が出てきた時に全面的に支持をして。
「トランプ大統領こそ我々の理想を実現する政治家だ」と言ったのは事実です。それは本当に事実なんです。

KKKに支持された人が今のアメリカの大統領なんですよ。
それが一番恐ろしい事実じゃないですか?ねぇ。
大変な事態になっているんですよ、アメリカってよく考えると。
っていうことが一番恐ろしいんで、爆弾が爆発したかどうかなんか、どうでもいいと思うんですけどね(笑)
はい。

あと何か「あれっ?」っと思ったところとかって、ありませんかね?

引用:IMDb.com

白人が、バカに描かれている?

これがあまりにも白人が、バカに描かれていると思いません?
完全なバカって言うか、もうほとんど言葉にできない放送禁止用語的なバカに描かれてるでしょ。
ねぇ、で「不公平だ」「ひどすぎる」とかいう風に思う人もいるんじゃないですか?

僕はかわいくていいなと思ったんですけど、あの白人だけどバカな兄ちゃんがね、ほんとにバカで。
ただあまりにもバカに描いているじゃないですか。

これはね、ブラックスプレイテーションっていう映画のスタイルなんですよ。
70年代のブラックスプレイテーションっていうのは、頭のいい黒人が頭の悪い白人をやっつける、っていうパターンがあったんですよ。
だからこの時代に設定を持って行ってそういう話にしてるんですね。

頭がいいか悪いかだったんですよ、ブラックスプレイテーションの1番のポイントは。

で、なぜそういうことをしなければならないのか。
喧嘩が強いとかそういうことじゃないんですよ、頭がいいか悪いかだったんですよ、ブラックスプレイテーションの1番のポイントは。

黒人が頭が良くて白人がバカ。それは、あまりにもそう今までのハリウッド映画で黒人がバカとして描かれていたことに対する反動なんですよ。
それはすごく大きいことなんですよ。

その、キング牧師が人権を勝ち取った1965年ぐらいまでのアメリカ映画における黒人っていうのはシドニー・ポワチエさんっていう俳優さんを除いて、ほとんどが「臆病者」として描かれていました、黒人は。

今考えると信じられなくないですか?
昔の黒人が出てくる映画、1950年代、40年代の黒人が出てくる映画見ているとびっくりしますよ。
黒人はすべて臆病者として描かれています。で、頭が悪い。

今考えると信じられない。黒人を「怖い」って思ってる人の方が多いでしょ。
「強いんじゃないか」「怖いんじゃないか」。

黒人が怖いものとして描かれた映画、昔はほとんどないんです。
臆病で気が弱くてずるくて。

引用:IMDb.com

『風と共に去りぬ』

で、一番典型的な例がこれででてきた『風と共に去りぬ』で出てくるあの女中の子なんですよね。
知ったかぶりして、メラニーが妊娠したから「私はお産婆さんやったことあります」とか言って、それで安心して、スカーレット・オハラは彼女と一緒に、まぁあの子供取り上げようとすると「実は何にもやったことありません」とか言って、超役立たずのバカで無責任な人として描かれてるんですよ。そのころの映画の黒人が。

ただ、バランスをとっているのはもう一人その、乳母の役の人が非常に頼りになる黒人のおばさんとして描かれてて、バランスをとっているとは言われているんですけれども。
実は気の弱い役として描かれる場合が非常に多いんですね。
で、そういったものに対して特に頭が悪いとして描かれるのは非常に大きな理由があります。

ジム・クロウというキャラクターがいるんですけれども。
それは、南北戦争の前にですね、白人の芸人さんたちが、顔を黒く塗ってジム・クロウというキャラクターを演じて、ステージで演じていたんですね。

それはすごくずるくて、ずるいんだけど臆病で実は間抜けっていうキャラクターなんですよ。
で、それがすごく人気になって、黒人のステレオタイプを作り上げちゃったんです。
白人が演じているんですよ実際は。白人が顔を黒く塗って。

南部では黒人に選挙権を与えなかった

で、それからその黒人は頭が悪いからっていうことで、南北戦争が終わった後、奴隷化をされた後も、南部では黒人に選挙権を与えなかったんです。
つまり彼らが、白人が勝手に作り上げた「黒人はバカ」というイメージを理由に黒人に選挙権を与えないという形になったんですね。
だからそういった法律をその黒人に対して選挙権を与えない法律を「ジム・クロウ法」というんですよ。

だからその、66年から・・65年に投票ができるようになったんですけれども。
投票法というものができましたアメリカでは。

で、投票権法というものができて、黒人が投票できるようだったんですけれども。
その時にだんだん、そのブラック・パワーというものが出てきて黒人の権利というものがこれが声高に言われるようになってきて。
72年のブラックムーブメントにおけるブラックスプレイテーションの映画においてポイントだったのは、「黒人の方が頭がいい」っていうことを訴える必要があったのは、それによって「黒人が頭が悪い」っていう風に言われることによって、選挙票を奪われたからなんです。だから反論しなければならなかったんですよ、っていう流れがあります。

だからこの映画も、頭がいいから彼らを騙したっていう話にしてるでしょ。
そういうことなんですよ実際は。

引用:IMDb.com

「なぜ喧嘩が強いか」よりも「頭がいいか」

「なぜ喧嘩が強いか」よりも「頭がいいか」が黒人にとって重要なのかはそこなんですよ実は。
それが実はアニメとかそういったものにも実は影響すごく与えているんですよ。

まぁ1番有名な話じゃ、バックス・バニーというキャラクターは人間を騙すうさぎですよね。ご存知ですよね?
あのーバックス・バニー・・ウサギを狩ろうとする白人のハンターがいてそれをウサギが騙していくっていう、あの手この手で。
それで「えーぃ!バイバーイ!」みたいな感じなんです。

あの、バックス・バニーっていうキャラクター、黒人なんです。
昔からある黒人の自己イメージは、ハンターを騙す賢いうさぎっていうイメージなんですよ。

でそれが、ブラックスプレイテーションに移って、この映画にもなっているんですね。
だからそういう流れがあるんですよ。それが、なかなか日本だとわかりにくいというところでもありますけどね、はい。

あとなんか、「これわかんなかったな」みたいなところって何かありますかね。
はいどうぞ!はい。

ユダヤ人のくだり

(女性2)
ちょっとあんまり、無知で申し訳ないんですけども。
黒人さんと白人さんの話に移行しがちですけど、ユダヤ人のくだりがちょっといまいちわからなくて。
あのーなんだっけ・・ダビデの星?とか。

KKKの中にもこのアダム・ドライバーが演じてた、フリップ・ジマーマン以外にも、
ユダヤ人がウソ発見機にかけられたりするじゃないですか。

なんかその、KKKの中にもユダヤ人がいて・・?

(町山智浩)
KKKの中には絶対にユダヤ人はいません。

(女性2)
あっいないんですか?

(町山智浩)
絶対にいません。絶対にいないんです。

(女性2)
なんか調べる方法とかあるんですか?

(町山智浩)
あはは(笑)
えっ!調べる方法?

(女性2)
すごいそれが、なんていうんですか。あのー・・。
ユダヤ人もそんなに嫌う、「ん?」っていうのを見てて思ってて。

引用:IMDb.com

KKKが出来た背景

(町山智浩)
KKKっていうのは1回滅んでいるんですよ。
KKKっていうのはまず最初に、さっき言ったジム・クロウ法ができる前の、南北戦争が終わった後、黒人は投票権をはっきりいって獲得します、直後は。
で、実際に選挙で黒人の議員とかも生まれます。

それを見て白人たちが「やばい」と。
なぜなら、南部は黒人の人口の方が白人に対して多いからです。
少数の白人の農場主たちが大量の黒人労働者を飼って使っていたという形があるので、人口比では白人は負けちゃうんですよ。
だから選挙権を黒人が取った場合には、乗っ取られちゃうと思ったんですね南部を。

で、実際に投票してみたら最初の時は黒人も投票したんで議員が生まれちゃうんですよ。
だから政治的に黒人に乗っ取られてしまう、という事態があったんで「黒人を投票に行かせない」という運動が起こります。
それがKKKです。

それを描いたのは、最初に出てきた『国民の創生』という1915年のグリフィス監督の映画で。
黒人がまず投票して、実際に議員が出るところが描かれています。

それを見た白人たちが恐れてKKKというものを結成して、黒人たちを脅かして。
具体的にはリンチをして。「投票にいくやつは殺すぞ」と言って、黒人を吊り下げたりして「見ろこれが投票に行こうとしている奴だ」と言って投票を妨害したんです。
KKKというのは投票妨害団だったんです、最初は。

で、ところがそのあと南部を監視していた北部の政治家たち、北軍が撤退しちゃうんですよ、そのあと。
まぁリンカーンが殺されたあと、副大統領が大統領になったんですが、彼が南部干渉しなくなったんですね、はい。

で、結局、南部の白人たちが政治的な実権を取り戻しちゃうんです、南部において。
そして、ジム・クロウ法と今呼ばれている、黒人の投票を妨害する法律を次々と各州で作ります。
例えば、おじいさんが投票していなかった者は投票できないとか。そうしたら黒人投票できないんですよ。

黒人に不利な法律を作り始める

あと変な、ものすごい試験があって。アメリカの歴史とか法律に関するテストを受けさせて。
で、そのテストには終わりがなくて。
投票上で投票するための登録に行くと、その窓口でそのテストをずっとし続けるんですよ。
で、間違えるまで続けるんです。

でこれあの、『グローリー』という映画でそのテストの模様が描かれています。
間違えるまで続けるから、全体に合格できないんです、黒人は。

そうやって投票権を奪うという、それを総称してジム・クロウ法というんですが、それが行われるんです。
だからKKKは必要なくなります。もうリンチしなくていいんですよ、黒人は投票できない法律ができちゃったから。で、KKKは消滅するんです。

ところがその1915年に、この映画に出てきた『国民の創生』という映画が作られて。
それは「KKKは素晴らしい」という内容なんですね。
白人のためにその黒人の投票を妨害した、KKKを讃える映画だったんです。

KKKはすでに存在しないんです、その時は。
ところがその映画を公開したあと大ブームになって、その映画に感化された人たちがKKKを結成します、実際に。
で、彼らがやったのは黒人に対する暴力ではなかったんです。

引用:IMDb.com

アメリカに大量に「新移民」と言われる人たちが入ってくる

ユダヤ人だったんです、敵は。
なぜならば、1900年くらいから1920年くらいにかけてアメリカに大量に「新移民」と言われる人たちが入っています。
彼らは、ユダヤ系、ロシア系、チェコ系、ポーランド系、イタリア系、アイルランド系、ギリシャ系です。
共通点は1つです、プロテスタントじゃないんです。

カトリックか、ギリシャ正教、ロシア正教、もしくはユダヤ教徒。
で、KKKがその時に、1915年再結成されたときの、彼らの1番の恐怖は黒人ではなかったんです。
非WASP、非プロテスタントの人口増加に対する恐怖だったんですよ。
だから敵はユダヤ人であり、カトリックであり、ギリシャ正教徒であったんです。

で、そのときのKKKは正式な政治的な政党として、議席まで取ります。
各州のかなりの議会の議席をKKKは獲得します。
で、非常に大きな反移民グループとして、政治的な権力を振るうようになります。

『国民の創生』

だから『国民の創生』っていう映画が非常に恐ろしいのと、ユダヤ人という問題が非常に大きく出てくるんです、はい。
「ダビデの星」というのは、ユダヤの紋章ですけどね、はい。
とにかく彼らが恐れたのは、まずKKKという組織の「クー・クラックス・クラン」というのの「クラン」というのは一体何かというと、これはややこしい話なんですけど、スコットランドの子息のことです、一族のことです。クランっていうのは。スコットランドの流れをくんでます。

スコットランドはプロテスタントに改宗したんで、その系列なんですよ実は。
南北戦争においても、スコットランド系の人たちが、かなり人種差別とかに関してはリーダーシップを取りました。
それはなぜかというと、南部の土地はほとんどが最初に入植したイギリス系の人によって支配されていたんですが、後から来たアイルランドから流れてきたアイリッシュ・スコッチとかスコッチ・アイリッシュと言われるアイルランドに住んでいたスコットランド人たちがアメリカに流れ込んでくるんですね。

その人たちは、アメリカにきた時に何をするかというと、土地がすでに支配されている訳です、農地が。
小作人になるしかないんですよ。小作人なるとそこには黒人奴隷がいるんですよ。
彼らの仕事は、奴隷を虐待することが仕事でした、スコットランド系の人たちは。

スコットランド系の人たち

だから、あの映画において監視人であったり、拷問者として南部の奴隷農場が描かれたときに、彼らを鞭打つ人たち、彼らを虐待する人たちはスコットランド系として描かれる場合が多いんですよ。それは後から来た移民なんで、土地が持てなかったから小作人になって、しかも彼ら自身が差別意識みたいなものを持っていなくても、その上にいる地主が黒人に対するその階級社会みたいに作って、中間にスコットランド系の人を置くから、自分たちは貧乏な鬱憤を国民に対してぶつけるという構造を作ったんですよ。

だからすごく、あの実は、映画の苗字とかそういったものを見ると、それがすぐわかるようになっています、はい。
そういう非常にその構造的なものがある中でやっていたのは、KKKだったりその人種差別だったりするんですね。

で、この映画で、描かれているのはコロラドスプリングスっていうところが舞台なんですけど、そこは実はすごく保守的なところなんです。
まぁ非常に保守的なところで、アメリカのファンダメンタリストと言われる福音派の総本山があるようなところなんですね、はい。
だから彼は実はほとんどたった一人の黒人警官だったりするんですね。

だから、そういう状況でKKKに対して潜入操作を警察がしたかって言うと、それはしていないだろうと僕は思う訳ですけども。
でもまぁ、それはフィクションなんでね。はい。

ブラックパワー

この主人公である彼は、途中で目覚めるわけですね、そのブラックパワーというものに。
そして、「何かやらなければならないことがある」ってことで潜入操作をしていくってなっていくんですけど。
あのとき上司の許可を取ったかというと取ってないでしょうね、やっぱり。そのへんは非常にあいまいなところではあるんですよ。

この辺をなぜいま作らなきゃならなかったかというと、やはりトランプということですよね。
で、ドナルド・トランプ自身が、実際に黒人を差別しているかどうかということをよりも、彼自身が、自分が政治的権力を得るために黒人を差別してる人たちの票を得ようとしたというのは事実なんですよね。
で、1番問題なのが、この映画の中で出てきた、KKKたちが集まって行なった、シャーロッツヴィルというバージニアの方の街で「ユナイト・ザ・ライト」というイベントを2017年に、アメリカの白人至上主義者の人たちがやったんですよ。

で、それは「南部の将軍の肖像を撤去する」と言っている市に対して、撤去させないぞということで、いうことで集会が開かれてそこにアメリカ中の右翼の人たちが集まって、白人至上主義者が集まって、ところがその地元の人たちは、白人も黒人もみんな関係なく、そんなやつら来るんじゃねー!ってことで、デモをやったわけですね。

そうしたらそこに、ネオナチの人の車が突っ込みまして、反対運動をやってた女性を轢き殺すという事件があったのは、これは映画の最後に描かれている部分です。
1番問題なのは、トランプがそれに対して「いやー、デモしてる方も悪いよ」って言ったんですね(笑)
これは出てきましたね、ビデオがね、はい。

トランプの発言について

悪くないですよね。
車で突っ込んだ方が悪いに決まってるんだろっていう。
もうそうレトリックで誤魔化すなよっていう、突っ込んだ方が悪いって決まってるんですよそれは。

で、何がなんでも白人至上主義者を糾弾しない、というトランプのやり方っていうものはこの映画の中で非常にもう叩かれている訳ですけども、はい。
ただこう、最後にね、プリンスの歌が流れるんですけども、あれはねレコードになってないやつなんですね。

あれは『Mary Don’t You Weep』という歌なんですけども、ゴスペルですね。
ゴスペルというのは黒人教会で、黒人たちが歌っている聖歌ですけども。
あのMaryっていうのは、普通だと聖母マリアなんですけども、そうではないMaryなんですね。
聖書には何人も実はMaryが出てくるんですよ。聖書って同じ名前の人がたくさん出てきてすごくややこしいんですけど。
あの、ユダなんでものも何人もいたりね、するんですけども。
それはね、エジプトでユダヤ人たちが奴隷になったときの歌なんですよ。

「Mary泣かないで」

「Mary泣かないで」っていう歌なんですけど。「いつかエジプトのファラオっていう王様たちの、彼らの軍勢はモーゼがやった、海を割って、海をまた元に戻すというので流されたんだから。また、正義がなされるときがくるわよ。」っていう歌なんですね。

で、その歌は実はアレサ・フランクリンっていうこの間亡くなられた歌手がずーっと歌ってきた歌なんですね。
それは、黒人たちがずっと苦難の中で苦しんでいる時にそれを慰める歌としてずっと歌われてきた歌です。
あの歌は、最後に流れてきた歌は。

「今は辛いかもしれないけど、いつか正義がなされるときが来るんだから泣かないで」っていう歌なんです。
それを最後に流すということで、非常にその、土地はさっき言ったみたいに利口な黒人とバカな白人ということでもう漫画みたいにして楽しく見せてたんですけれども。
まあ現実を突きつけてくるというところがね、それでまた最後にちょっと救いを与えるとかね、その辺のスパイク・リーのね、なんというかもう感情が上がったり下がったり、笑ったり泣いたりっていうね、怒ったりっていうね。まぁ、非常にその感情の起伏の激しい、スパイク・リーらしい映画だなと僕は思いました、はい。

アカデミー賞で6部門ノミネート

これアカデミー賞で6部門ノミネートされてて、これもすごいことですね、はい。
スパイク・リーは今まで、『マルコムX』とか大ヒット作だったにも関わらずノミネートされなくて、監督賞に。
それで『ドゥ・ザ・ライト・シング』という傑作映画でもノミネートされなくて、まぁハリウッドがやっぱり彼を受け入れなかったんですよ長い間。
やっとこの映画で追いついたという気がします。

今回実は、アカデミー賞って作品賞は8部門入っているんですけども、そのうちの3本がアフリカ系アメリカ人についての映画なんですよね。
1本はこの映画で、もう1本『ブラックパンサー』ですよね。これもブラックパンサー出てきますけど、はい。

で、それであと『グリーンブック』という映画があって、それはあのやっぱり差別が酷かった1960年代に、差別のひどかった南部に白人と黒人のコンビが旅をすると、いう話なんですよね。
それが、そのアカデミー作品賞で、その、まぁ8本中3本も入っているって時代が大きく変わったなと思います。

今回8本中の3本くらいが同世愛についての話

で、さらに今回8本中の3本くらいがその、同世愛についての話なんですよね。
『女王陛下のお気に入り』もレズビアンの話だし、『ボヘミアン・ラプソディがバイセクシャルのフレディ・マーキュリーの話だしね。
っていう形で、その今だったら1本入っただけで、「大変だ!アカデミー作品賞にゲイの話が入ったよ!大変だー!」とか言ってたのが、ついこの間ですよ。
だから『ブロークバック・マウンテン』のときですね、はい。
こんな映画が作品賞に!ゲイのカウボーイになって!みたいなね。
まぁすでにゲイのカウボーイの映画ってアカデミー作品賞、1969年に取ってるんですけどね。あの『真夜中のカーボーイ』で。
で、時代の逆行したんですよね、はい。

でも今はもうすごくね、そういう形で、もう本当にダイバーシティで、多様性のあるアカデミー作品賞なってるんで、
これは何本獲るか、非常に楽しみで。僕はスパイク・リーにあげたいですね。

スパイク・リーってね、アカデミー賞からずっと無視されてたんで、かわいそうだ、酷すぎるってことで功労賞みたいなのをもらってるんですよすでに。
だけどもう、監督賞は遅すぎるんですけど。ぜひこの映画で獲れればと思うんですが、あのーアルフォンソ・キュアロンっていう大物がいて、なかなか勝てないところなんですけど。
アカデミー賞、もうメキシコ人の今回、獲るとすると、合計7人、7年連続でメキシコ人が監督賞取り続けることになるんですね。キュアロンが獲ると。それもすごいことだと思います。
全く、反トランプ的な状況が映画界では続いているんだなと思いますね、はい。

えーあとなんかあれば。
あっはい。どうぞ。

コロラドスプリングズ

(男性4)
あの、1点だけあの、個人的に気がついたんですけれど、コロラドスプリングズっていう場所が、歴史の中で白人がシャイエンを殺した土地・・。

(町山智浩)
よくご存知ですね。

(男性4)
えぇ、でそれをちょっと気になって。
なんでここなのかな?

(町山智浩)
「ワシタ川の虐殺」ですよね?

(男性4)
で、あのー、要はここでは先ほどおっしゃっていたように、ジュイシュ(ユダヤ人)それからブラックと白人の3つが非常にこう、抗争するような状況を描いていますけど。
なんでそれで、コロラドスプリングズかなってずっと考えてたんですけど、やっぱりその白人がシャイアンを殺した場所で、そういうことをやるっていうところに裏の意味があるのかなと。

(町山智浩)
まぁ、実際にこの原作を書いた人がコロラドスプリングスの警察署に勤めていたということなんですけど、確かにその通りコロラドスプリングスでは金目当てで、そこに住んでいたシャイアン族の先住民の集落を、まぁ大虐殺をやってますね。あっ、違う、2回やってるんだ、あそこは。
コロラドスプリングスの方は『ソルジャー・ブルー』で描かれた方ですね。別の大虐殺です。「サンドクリークの大虐殺」ですそちらは、はい。

『ソルジャー・ブルー』っていう映画で描かれているのは、地元の民兵がコロラドで「金が出る」っていう理由で、女子供しかいなかった先住民の集落を襲って大虐殺をしたと。
『ソルジャー・ブルー』っていう映画になっていますけどね。

よくご存知ですね、はい(笑)
僕住んでました、その辺に。一応慰霊碑建ってますから。
まぁそういうアメリカ、歴史があるんですよ。

で、「ワシタ川の虐殺」っていう方は、カスター将軍がやった虐殺なんですね、はい。
えーちなみに『地獄の黙示録』のあのベトナム人の集落を襲撃するシーンっていうのはカスター将軍によるワシタ川の虐殺を、ヘリコプターでやっているんですけどね。
音楽をかけて突っ込んでたんですよ、カスター将軍って。

アメリカの歴史っていうのは血塗られた歴史ではあるんですけども、でもそれをエンターテインメントにしちゃうっていうところはやっぱアメリカのすごさだなと思います。
はい、っていうところで。

(司会)
はい、そろそろよろしいでしょうかね?
ありがとうございます。

<書き起こし終わり>


○○に入る言葉のこたえ

③『ブラック・パンサー』の影響で、女の人がアフロヘアーをやるようになった
アメリカの歴史とともに映画の各シーンを紐解きながら解説していく町山さんのトークが面白いので、是非聞いてみて下さい!
 

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