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凶悪のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2020年06月18日更新
実はエンターテイメント映画化としてはちょっとしづらい事件とも言えるんだけど、これをですね「凶悪」はどういうふうにしてるかというと、非常に大胆な3部構成にしていると。5億点ひく50点ぐらいなもんでございます。(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、白石和彌監督の実録犯罪ものの傑作「凶悪」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さん『凶悪』解説レビューの概要

①メールの量は普通、賛否のうち賛が7割。
②頻繁に登場する「○○」という口癖がツボに入った人も多い。
③日本のエンターテイメントの突破口となり得る実録犯罪もの。
④我々の暮らしの地続き空間にいる、現実の卑近な悪のあり方を描いている。
⑤人間的魅力を秘めたピエール瀧さん始め、絶妙なキャスティング。
⑥中盤主人公が出てこない大胆な3部構成。
⑦些細なところで納得できないところがあるものの、素晴らしい力量を持った監督による映画!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

映画、凶悪。宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)

「凶悪」。
笑いごと(笑)じゃないんですよ、実際にあった事件がベースですからね。
ベストセラーとなったノンフィクション小説「凶悪 -ある死刑囚の告発-」を原作に、ある死刑囚の告白を受け、さらなる凶悪事件の真相を追うジャーナリストの姿を描く。
主人公のジャーナリストを演じるのは山田孝之。
受刑者をピエール瀧。先生と呼ばれる冷血の男をリリー・フランキーが演じている。
監督は「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の白石和彌さん、ということでございます。

はい。ということで、ムービーウォッチメンあらためムービーぶっこメン。
街にいる”やから”・・リスナーの皆さん、”やから”からですね、もうこの映画ぶっこんできたぞーというね、方からのメールのぶっこみ、いただいております。
あざーす。もーしわけありぁーせんでした(笑)。
メールの量、自体は普通だそうですけどね。はい。
感想は、賛否でいうと、賛が7割ほど。

・後味最悪。

これ、あの多分貶してるアレじゃないですね。もう「後味さいあく~」っていう親指立ってるパターンじゃないでしょうか。

・感覚に訴えかけるメッセージが重かった。
・とにかくリリー・フランキーとピエール瀧がすごい。

などの意見が多かった。
ネガティブな意見としては、

・演出が単調
・役者はいいけど、キャラ設定が中途半端。

などなど、というね。
頻繁に登場する「ぶっこむ」という口癖がツボに入った人も多かったようです。
これはもう完全に作り手のね、皆さんの意図がハマった部分じゃないんですかね。

映画「巨悪」を鑑賞した一般の方の感想

はい。えーじゃあ、まずはちょっと代表的なところ、ぶっこましてもらいますよ。
いーっすか。ぶっこましてもらいますけど、いーっすか。
こんなこと言ってると長くなる一方だ。

ラジオネーム「タケ」さん。24歳。

まず、「凶悪」を見たことにより自分の中での今年の流行語は、あまちゃんの「じぇじぇじぇ」でもなく、半沢直樹の「倍返し!」でもなく、劇中でピエール瀧さん演じる須藤が何度も口にしている「ぶっこむ!」に決まりました。
それぐらい、このセリフは印象に残りました。
とにかくこの映画はピエール瀧さんの演技、というか顔力が素晴らしかったと思います。
拘置所の面会所で須藤が主人公の藤井に激昂するシーンがありますが、面会所のガラス越しにも殺意がビンビンに伝わってきて、鳥肌ものでしたよね。

はい。誰もが印象に残る場面じゃないでしょうかね。

作品の内容はズドンとどす黒いものが腹に溜まる私好みの内容でした。
作中で何度かあるぶっこむシーンでは、須藤と先生、先生こと木村は・・まあ要するに実行犯とちょっと操ってる側というかね、木村は・・全くと言っていいほど罪悪感を感じておらず、文字通り凶悪な存在として描かれています。
一方で藤井は正義感を・・主人公ね、記者さんですね・・追っていく藤井は正義感をむき出しにして、事件を闇に埋もれさせまいと奔走するわけですが、これが物語が進行するにつれ藤井は家庭をほぼ投げ出して仕事に没頭するようになり云云かんぬん。。

って、まぁこういう話の流れでございます。

私としては同じタイプの映画である「冷たい熱帯魚」、同じ日活のね、よりも、よりはっきりとメッセージを受け取ることができたように思います。
もちろん「冷たい熱帯魚」も好きな映画ですが・・と。

他にも焼却炉のシーンからのクリスマスパーティーのローストチキン。

あぁ、確かにその繋ぎありましたね。いじわる繋ぎね。

うわーっと、もはや笑うしかないような、文字通りの凶悪な演出が多く、とても楽しめました。

っていうね。
「タケ」さんからのぶっこみでございました。

映画「凶悪」批判的な意見

一方ね。「あぁ、イマイチだったよオラー」っていう人からのぶっこみ、ちょっとね、ぶっこましていただきましょう。
「カワカミ」さん。

監督・演出・脚本がひどすぎます。
何をどうしたらこういう作品が出来上がるのですか。
殺人の動機は保険金搾取と裏切りのけじめですが、画面では弱すぎて全く伝わってきません。
結果、描写だけは過激な、不快な映像の出来上がりです。
犯人像は狡猾の男、凶暴の男、それだけの記号、全部ぼやけています。

というね。
ということなんですかね。はいはいはい。
ということでございます。ということで、皆さんからのブッコミね。
私もね、ぶっこませていただきました。
もう、ぶっこみの使い方よくわかるとなっていますが。


はい。「凶悪」行ってみましょう!

「凶悪」宇多丸さんが鑑賞した解説

えぇと「凶悪」ね。
私、随分前からまずサンプルDVDをちょっとお借りしておりまして、それで拝見していたのと、もう新宿ピカデリーに見に行っておりました。
で、この手の作品がですねシネコンでかかって、結構ちゃんとお客も・・初週で8位とかですよね。
この内容でちゃんとお客も入ってるってことは非常に素晴らしい傾向なんじゃないでしょうか。

えぇと、ちょっと待って。本チャンのハスリング行く前に、先週の「クロニクル」の補足ね、ここでぶっこんでいい(笑)。
あのさ、ジョシュ・トランクさんのその前に評判取った短編、「Stabbing at Leia's 22nd Birthday」。
映像、僕まだ見てなくてっつったけど、YouTubeで普通に見れました、すいません。
すーません、ぶっこませていただきました。

本題、凶悪

はい。元に戻しますね。
「凶悪」ね、普通に入っていて、素晴らしいと。
前に「冷たい熱帯魚」ね、の評の中でも言いました。
同じく日活の実録犯罪もの。傑作ですよね。
「冷たい熱帯魚」評の時に言いましたけど、こういうエクストリームな表現とかこういうエンターテイメントに対する需要は、日本にちゃんとあるっていうか、今日本むしろ増えているってことがあるんじゃないかってことですね。
要はもうぬるたーい、その毒にも薬にもならないような作品に、日本の観客もさすがに飽き始めてるってことじゃねーのかな、とかね。

凶悪のポスターについて

で、なのでですね。
例えばポスターですよ、ポスターのアートワークで、みんな大好き山田孝之さんのただでさえおっかない顔の向こうに、もっとおっかないピエール瀧さんとリリー・フランキーさんが悪そうな顔でにやついている。
そして、実話ベースっぽくって、タイトル「凶悪」。
このポスター見ただけで、もうね安定なね、利く人は、これ間違いなく面白いでしょ。
それは別にミニシアター系の映画ファンじゃなくても、「これは普通じゃないものが見れんだろう」っていうのが、やっぱりもうちゃんとアンテナ利くようになってるよ、と。

実録犯罪、要するにバイオレンス表現

で、前に高橋ヨシキさん、この番組お招きして話しました。
表現の自主規制、ムード。ね日本にちょっと濃厚になってて、どうなんだって話しましたけど。
その中でも話題ちょっと出ましたけど、今やこういう、だから実録犯罪、要するにバイオレンス表現みたいものが、非常にこう自主規制もあってですね、なかなかこう世の中に出づらくなっている。
中ですね、実録犯罪ものであれば、それが内容的興行的に成功しているのであれば、それがすっかりなまってしまった日本のエンターテイメント業界の突破口となり得る・・可能性になり得るんじゃないかという、話しましたけど、まさにこの典型じゃないでしょうかね、この「凶悪」がそこそこ入ってるっていうのは。

「冷たい熱帯魚」「凶悪」「闇金ウシジマくん」

実際今日の特集で、まぁ例えば「GTA5」みたいな・・もちろんバジェットはもう絶対永久に戦えない。ビョーキですよ、300億円とかだから。
だけど、その扱っていることの、なんて言うかな世界中の「GTA5」をやってるような奴らがね、例えば日本の今のエンターテイメントの中で、「おっ、日本もなかなかやべえじゃん」っていうようなもんが、じゃあどんだけあんだろう、と考えた時に、例えばこれやっぱ実録犯罪ものみたいなものが一つの突破口たり得るんじゃないのかなと。
ね、「冷たい熱帯魚」とか「凶悪」であるとか、あるいは漫画で「闇金ウシジマくん」とか、そういうものが突破口になり得るんじゃないか。

「ぶっこむ!」

で、ですね。なので皆さん、今すぐ劇場にぶっこんでいただくという、もうそれがね。
「今すぐぶっこめよオラァ」っていう。。
「ぶっこめよオラァ」というのは、まぁ結論なんですけど。。
でね、こう何度も何度も言ってますよ、その「ぶっこむ」「ぶっこむ」。
「ぶっこむ」っていう表現をね、例えば「冷たい熱帯魚」というか、もともと「愛犬家殺人事件」でいうその関根元でいう「ボディは透明だ」要するに「死体がなかったらバレねぇんだ」という「ボディは透明だ」っていう・・アレ的な、要するにさ、なんていうの、明らかに一種のキャッチーな掴みのフレーズとしてね、この「ぶっこむ」ってのを、作り手が明らかにぶっこんできてるわけですよ。
連覇してぶっこんできてるわけですよ。
そこの一つとってみても、この作り手がその「凶悪」題材に対してすごく、僕は「的確なアプローチをしているな、分かってるなー」っていう感じがしますね。

凶悪の元の事件となっている「上申書殺人事件」

はい。元の事件いわゆる「上申書殺人事件」といわれるね、僕はあんまりよく知らなかったんですけど、今回この機会に、元々新潮45で報じられて、でまぁ警察を改めて動かすまでとなって、その経緯は今だと新潮文庫から出ている本で読めますよ。はい。
僕も読んで、これ不謹慎な言い方になりますが・・というか不謹慎な言い方になりますがってことを繰り返してると今日それだけで時間が埋まっちゃうんで、そういうのはもう飛ばしていこう。そんなことは百も承知で言ってますよ。はい。
不謹慎な言い方になりますが、まぁ無類に面白かったですよ。元のね取材のその話も。
で、要はですね、このお話の面白さっていうと語弊があるかもしんないけど、その怖さの部分はね、「愛犬家殺人事件」のその関根元ってさっき言いましたけど、彼ほどプロ化もしてないし、彼ほど要するになんというか周到じゃないし、彼みたいな異常なね、例えば死体に「ああいうことしました、こういうことしました」みたいなそこまで異常なとこまでいってないにしても、でもこの人の本質はやっぱ似てて、同一線上にあると僕は思っていて。。

卑近な欲望にしか動機がない

これあの「冷たい熱帯魚」の時に言ったことにも通じますけど、要は本当にものすごーく卑近な欲望にしか動機がないってことですよね。
つまりフィクションによく出てくるような一種超越的なカリスマを背負ったような最高キラー、ハンニバルとかとはもう全然違うわけですよ。
そうじゃなくて、もう深み的なことは一切欠いた薄っぺらい、安ーい、すなわち現実にいる、現実に我々の社会にいる悪のあり方ってのが垣間見れるという意味で興味深い、面白いし恐ろしいということですね。
平たくどういうことかってもっと言えば、徹底して損得でしか世界を見てないってことですね。
もう損得だけ。はい。
なのでその方が得だと、例えばバレなくて楽に金になるなら別に人を犠牲にしたりとか、「だって他人でしょ」とかまあまあ殺したりとか、「だってバレないでしょ、まあ比較的楽でしょ、で金になるんでしょ、得じゃん」で殺せるっていう・・そういう。
それで平気って、そういう感覚っていう。
そこに別に深遠な、なんか快楽殺人犯の内面とか過去とか、別にねえっていうことですね。はい。
それこそアンナ・ハーレントの言う通り「悪の真の姿ってのは凡庸だ」っていう、まさにその話をしてるわけですよ。

現実の悪

でね、つまりこの現実の悪っていうのは、我々のその日々の平穏な暮らし、この平穏に暮らしているこの世界と隔絶したところにあるもんじゃないよ、と。
ハンニバル・レクターじゃなくて、もう我々の暮らしのすぐ隣り、隣りっていうか完全に地続き空間、ドン・キホーテにあるよ、と(笑)。
悪はドン・キホーテに全然いるよっていう。コンビニやドン・キホーテにいるんだよと。
パチンコ屋やドン・キホーテや、コンビニにいる、レンタルビデオ屋に普通にいる。
そういうものだという・・平然とそこに存在するものだという話ですね。
こういう優れた実録犯罪ものはそれを改めて思い出させてくれるということだと思います。

あのーそういうなんていうか、卑近な悪をもうちょっと映画は描いてもいいんじゃないかというようなことをまあ言ってて、「冷たい熱帯魚」まさに。

ヨシキさんの脚本、園子温さんの描かれた詩。

ヨシキさんの脚本、園子温さんの描かれた詩。
えぇ、そうですね、色々あるけど、例えば最近だとウィリアム・フリードキンの「キラー・ジョー」。
「キラー・スナイパー」とか変な邦題ついていたけど、「キラー・ジョー」。
あれに出てくる「あなたもまさに卑近な悪」あり方描かれたと思います。
なのでですね、例えば超ーー凶悪な犯罪、超ーー残酷な犯罪に手を染めている人が、同時に自分の家族はちゃんと大事にしてたり・・だって損得だけだから。
むしろそういう人にとっては、損得ベースの人は、身内と他人の線引きっていうのはもう絶対的なもんだから、身内はもうだってそれほどってその「うちの何に何すんだ、家族に何すんだ」。で、「なんとかちゃん、かわいいねー」みたいなそういう人が、「だって身内じゃないから関係ないでしょ、殺したって、死んだって知らない、別に、なんで?傷つくの」みたいな。。
損得ペースの人はそういう考え方をむしろしやすいから、自分の家族だけはちゃんと大事にしてたり。
それこそ例えばです、例えばですよこれは、例えばものすごい残酷なことやってる人がディズニーランド行って「ミッキー!」って別にやるよね。ディズニーグッズ、サンリオグッズとかかわいいもの好きとか、そういうような志向持ってても何もおかしくないっていうこと。

森田芳光さんの監督「黒い家」

前に森田芳光さんの監督の「黒い家」っていうのね、映画化ありました、大竹しのぶさん主演。
あれを僕見てた時にすごく思った。あれは和製「悪魔のいけにえ」であり、同時に保険金殺人ものがちょっと通じるものがあるんだけど。
あれでその「黒い家」ね、踏み込んでいく場面で、暗闇の中でこうバイブが「ブー」ってこれ原作の小説にない描写で、つまり自分の損得とか卑近な快楽にしか興味がないっていうの、このバイブが動くところで表現してた。
「うわ、森田監督うまいアレンジするな」と思ったけど、同時に見ながら、でこの家がものすげーファンシーなグッズで溢れてたりとかねっていう・・ディズニーグッズだらけだったりしたら、もっと「あーああ」っていう感じするよね、とか思って見てたのをちょっと思い出したんですけど。

「凶悪」が「冷たい熱帯魚」以上に意識的に描き出そうとしている事

なのでですね、今回の「凶悪」の映画化は明らかにそういう卑近さであったりとか薄っぺらさ、安さ、現実の悪のあり方のそういう側面を、だからこそ恐ろしいという部分を、ある意味「冷たい熱帯魚」以上に意識的に描き出そうとしている。
僕はこの狙いが非常に的確だし、素晴らしいと思います。
「冷たい熱帯魚」は後半、園子温作品色がどんどん強くなっていって、でんでん演じる関根元思わせるその殺人者も、なんかちょっと背景がね、あるような感じで描かれて、それはそれでいいんだけどという。。
今回、よりその卑近さ、薄っぺらさってのがより強調された。

「ぶっこむ、ぶっこむ」

例えばですね、さっきから何度も言ってる「ぶっこむ、ぶっこむ」って劇中ピエール瀧さん演じるですね、非常に凶暴な人物が非常に印象的に連発するフレーズがあるわけですけど。
まぁ要は明らかに見終わった後ついつい観客も使っちゃうキャッチーなフレーズとして文字通りぶっこまれているわけですけど。。
これもね、この文脈からいうと単純に「ぶっ殺す」とか「暴力をふるう」っていう文脈では使われているんだけど、でも、それだけじゃないところが怖くて、要はそれらの「殺す」とか「暴力をふるう」とかいった手段を含めて、ニュアンスとしては「仕事を片付けちまおう」みたいな、「仕事をなんか、しちゃおうぜ」ぐらいのニュアンスで「ぶっこんじゃおうぜ」っていう、うん。
で、その、なら「仕事を片付ける」の中に「殺す」も「暴力も振るう」も選択肢に入ってるっていう雑さ(笑)。

だから、要は実際やってることの、その重さに対して意味合いが軽いっていう・・それが怖いんですよ。
だからこの「ぶっこむ」は非常にブラックユーモアとして効いてると同時に、やっぱり恐ろしいというね。
こういうとこ、だからバランスがもううまいとこついていくね。
これ、だってもちろん当然元の「凶悪」の原作本に「ぶっこむ」なんてフレーズは出てきませんから。
これは見事なもんじゃないでしょうかね。

映画というのはキャスティングが8割

で、まぁこれはもう見た人みんな言うと思いますけど、映画というのはですね、映画というのはキャスティングが8割だって、キャスティングで8割決まるっていうのは、「ハングオーバー!」シリーズでおなじみトッド・フィリップスさんの意見でございますが。。
まさにこの「凶悪」はこの、このキャスティングを思いつき、それを実現させた時点でもう勝ちですよね。
5億点ですよね、これ。
5億点出てるんですよ、既に出てる。

ピエール瀧さんの名演

何はさておき、やっぱり見た人全員が口を揃えるであろう、やっぱピエール瀧さんでしょうねー。
もうTBSラジオリスナーね、やっぱ「たまむすび」・・「キラキラ」から「たまむすび」の瀧さんってもう知ってるんでね。
どう?ね、またちょっと違う考えがあると思いますが、やっぱハマってますよね。
要は既に死刑判決を受けている凶悪犯でありながら、獄中からその別件の、実はまだ明かされてない余罪ってのを告白して、物語全体の発端となる人物、須藤という・・これ実際の、元になった人物は後藤という人なんです。
この後藤っていう人も写真見るとですね、実際のルックスは志賀勝とピンからトリオ宮史郎混ぜたような、ヤクザ以外はありえない(笑)ルックスをしているんですけど。。

底知れぬ人間的魅力

ここでやっぱピエールさんというキャスティングが絶妙だぁと思うのは、ピエールさんはさ、ガタイもでかいし顔もごついし、凄むと本気で怖いわけですよ。これは私は身をもって体験しておりますが。
凄むと本気で怖いんだけど、同時に本質的な部分でですね、これはリリーさんにも通じる部分、まさにそう通じる部分なんだけど、要は基本的な部分で底知れぬ人間的魅力があるっていうか、人間的磁力が半端ない人っていうかさ、だから、何をやろうと魅力がある人っていうかさ、わかります?
うーん。というバランスが元々ある人なので、それをパブリックイメージとしてもちょっとあるじゃないですかピエールさんは。
何かこう秘めた怖さはあるけど、でももう人間的磁力が半端じゃないみたいな、というパブリックイメージ込みで、文字通り体現しちゃってるわけです、この絶妙な感じを。

オープニング

なので、例えばオープニング。いきなりもう極悪非道の限りをね彼が尽くすところから始まって、「うわ、もうドン引きだ」ってところが始まって、でもそこもやっぱ瀧さんのガタイと魅力もあってですね、「うわ怖い」ってのがあって。。
でもそっから塀の中に入ったら一転しおらしくなっちゃって、なんかそのしおらしくなるところも、瀧さんの中の、なんかちゃんとしてる部分っていうか、社会にちゃんと順応してる部分ってのもあるから、納得だし、「あ、こういうふうになるのもわかるな」と思いきや。。
そっからまたあるポイントでまた一転して、さっきまですごい丁寧に敬語だったのに、1個カットがね、山田孝之さん演じる藤井という記者側にカットが変わってる間に、オフの声で「ふざけんじゃねーぞオラー」と、さっきまでの話と全く違う「ふざけんじゃねーぞオラー」とオフで聞こえて、パッと瀧さんにカットが戻るともう鬼の形相になってて。。
でしかもそこで、僕ここがいいなと思うんですよ、そこで全編に渡ってすごく和太鼓が効果的に使われてんだけど、そこで「ドーンッ、ドンドンドンドンドンドンドン」みたいな、「祭りだ祭りでぃ」みたいのが始まって、「うわぁ怖っ、やっぱこの人はやっぱ怖い人だった、騙されちゃダメだ、怖い人だった」みたいな。。

ピエール滝さんほど大人な常識人もいない

すごい、それもやっぱり同時に説得力があるし、そこからさらにまたショボーンと「いやこないだ、なんかみっともないとこ見せちゃって」みたいな・・どっちにも説得力がある。
この振れ幅全部に圧倒的な説得力があるっていうのは、やっぱ瀧さんの持つ、うーんパブリックイメージであり、人間的な懐というか広さの部分・・瀧さんの幅の部分というか。
で、これはラジオを聞いている方に、TBSラジオ聞いてらっしゃる方にはフォローの必要ないかもしれませんが、まぁ実際のところ瀧さんほど、皆さん口を揃えますけど、瀧さんほど大人な常識人もいないわけですよ。
すごく優しいし、子煩悩で。

で、例えば、今回もうこの役もね、俺これ「凶悪」見る前に瀧さんと一回仕事することがあって、「瀧さん、凶悪ったらすごそうじゃないですか、めちゃくちゃハマりそう・・怖いっすもんね、俺怖いもん」みたいなこと言ったら「いやいやちょっと」。「だって瀧さんの中にあるもんですもんね」ったら、「ねーよ」っつって。
で、それどころか、やっぱりいろいろ関係者もまだまだいらっしゃる中で、被害者のご家族もいらっしゃるし、その元の後藤って人もまだ生きている中でやるのは、「ちょっとなぁ、気悪いんだよなー」みたいな・・ようなことをおっしゃってた。
役そのものとか、あるいは途中で場面で出てきますけど、あの子供がいる隣りの部屋でファックしているという、そのシーンにも監督に「監督、これワンカットで撮る必要ありますか。子供横においてこれ撮る必要ないんじゃないですか」みたいな難色を示したっていうぐらい、常識人なわけじゃないですか。はい。っていうね。
だから、そういう人が演じているからこそさっき言ったように、例えば子供思いだったりもする魅力的な人物と地続きで平然と機能し得る悪っていうのが切実に怖いっていうんですね。

元の後藤、今回の須藤というキャラクター

あとやっぱりちゃんと人間的魅力を秘めてる。
特に後藤というか元の後藤という人、今回の須藤というキャラクターは、造形で強調されてる部分ね、今回の映画で須藤という部分で、強調されてる部分は、彼がキレるのはよく見てると「裏切られた」みたいなことを言ってる時なんですよ。
裏切られたって感じの時。
これって裏返せば、例えば人懐っこさであったりとか、要するに身内は絶対であるとかね、さびしがりやな部分であるとかそういう部分、だからお線香をあげたりするような部分っていうのと通じる。
で、実際僕の周りのですね、悪い人は結構僕の知人の悪い人は、こういうタイプが本当に多いです(笑)。
うん。だから、常に裏切られることってのを怖がっているみたいな人は、結構多いですよね。
はい。ということだと思います。

リリー・フランキーが演じる先生

一方ですね、まぁリリー・フランキーさん演じる先生ですね。
事の全部の首謀者である先生は、ちょっと女性的なニュアンス、リリーさんの持つ、なよっとしている部分というか、ちょっと女性的なニュアンスの部分がすごい活きてて。。
これは別冊映画秘宝「凶悪の世界映画事件史」というですね、本日のゲストの多田遠志もね、いっぱい書かれておりますが・・の中で、柳下毅一郎さんが考察されている通りですね、これ要するに作品のジャンルとしてはフィルム・ノワールっていうことになるわけですけど、フィルム・ノワールにおける、男だけどファム・ファタールの役割を担っているということで、だからリリーさんの女性的な部分が受けている・・すごく活きているというね。
で、実際のこの先生こと三上っていう人なんですけど、その人の写真見ると、もっとモサーっとした本当に普通に親戚にいそうなモサーいおっさんなんですよ、普通のおっさん。
なので、ここにリリーさんという色気のあるキャスティング、というアレンジを1個加えてきた。
このやっぱり映画ならではのアレンジはやっぱ効いてるなぁ、とふうに思いますね。はい。

リリー・フランキー×ピエール瀧

で、でね、実際にこれ実在のリリーさんと瀧さん、もうだって、この2人が、しかも2人実際仲良くてさ、2人が悪ノリしてたら並の人間じゃ誰も止められなさそうな感じするじゃないですか、既に。
リリーさんと瀧さんっていう、その誰にも止められなそうな、また別種の強さが、強度が生まれちゃうわけよ、この2人が組むと。
しかも悪ノリなんかしてると。きっとそうだろうなって感じするじゃん。
そこに自分が巻き込まれなんかしたら、もう俺は止められないし、自分が何かこの二人の標的なんかになった日にゃーって、何か分かるでしょ。
それが、すごくこの効果も作り手は分かった上で、このキャスティングすごく活かしているわけですよ。
うまいなあと思うわけですよ。

若手俳優最強の山田孝之

で、なおかつそれを受けるのが、みんな大好き山田孝之の、まあもう若手俳優最強の、当然目力と、あとやっぱ山田君の強みは汚れ感ですよね。
ちゃんと汚れられるっていうか、しかも端正なまま汚れ感が出せるっていうかね。はい。
表情なんか、そんなに大袈裟な表情を作ってるわけじゃないのに、それが表現できる。
このトライアングルができた時点でもう勝ちですよ、5億点出てますから、チーンですよね。はい。

五十嵐を演じる小林克也さん

他の細かいキャスティングも本当完璧で、例えばですね 須藤ピエール瀧さんの舎弟を演じる五十嵐という役、小林克也さんというね、若手の俳優さん演じてますけど。。
これねー、これ説明して分かるかな、ヒップホップシーンの若手、例えばもう解散しちゃったZeebraさん率いるUBGの若手とかにすげーいそうな、UBG若手とかにいてもおかしくねーぞって感じの、要は義理も固いしハンサムで、非常に忠誠が強いというような、だから悪い奴じゃ全くないんだけど、というような。
「いそうだー!界隈にいそうだ!」
とかね、ヒップホップシーンつながりでいうと、例えば五十嵐というね、アレにずっと凄まれ続けている須藤さんのム所仲間、けんちゃんっていうのがね、米村さん、米村遼太郎さん演じられている、調子ばっかいいんだけどつまんねえ嘘ついて下手打つ感じ。
「いる!いるー!」「よく似た人が!ヒップポップシーンとかすごくいるー!」みたいな感じで、そういういるいる感みたいなのも非常に素晴らしいですし。。

パーティーシーン的な高揚感を狙った演出

そして何より、これある意味作品全体のピエールさん以上のMVPかもしれない。
本作のクライマックスシーンの主役、被害者牛場さんというのを演じるジジ・ぶぅさんですね。
これは、要するに彼がついに殺害されてしまうという場面が、全体の中のテンション的にはマックスの場面なんですけど、実年齢よりはるかに上に見えるルックス、ホントは50代っていうね、であると。
あとリリーさん、瀧さん。リリーさんとも親しくて。。
で、元々もうちょっと若いし、親しくて、ジジ・ぶぅなら何やってもいいやぐらいの感じで・・というね。
で、あとなおかつですね、さっき言ったあの和太鼓、音楽使い含め完全に、要はですね、なんていうかここの演出はパーティーシーンなんですよね。
パーティーシーン的な高揚感を狙ったその演出であるとか、全てが合わさって初めて成立した、これジジ・ぶぅさんじゃなきゃ、なんかここまでは・・奇跡のシーンじゃないですか。
本当に老人が虐待を受けているようにしか見えないシーン。
しかもハイテンションっていうね。はい。

エンターテイメント映画としては構成しづらい事件を・・

いきなりちょっと白眉の場面、話しちゃいましたけど、僕はね、そこを頂点とする全体の構成とか演出も、僕すごくうまいというふうに思いました。
どういうことかというとですね、「冷たい熱帯魚」みたいに・・あの社本という主人公がいますよね、要するに直接当事者として巻き込まれていく主人公が、要するにジェットコースターというライド、乗り物になるような主人公がいないんですよ。
すべてはあくまで後から取材、想像した話だし、それを話している、あえて言えば主体である須藤自身もまた、はなから凶悪側の人間なので、要は一般的に感情移入できるライドの乗り物になるような主人公になり得ないわけですよ。

つまり、実はエンターテイメント映画化としてはちょっとしづらい事件とも言えるんだけど、これをですね「凶悪」はどういうふうにしてるかというと、非常に大胆な3部構成にしていると。
まず最初は、最初の第1部は要するに、もうこれが本当かどうかもわからない段階で取材を進めていくわけですから、ほぼ面会室での会話だけなんですね。
これはベテラン、今村努さんという方の、美術の面会室の再現度とかすごく、小菅の面会室もすごい、本当に再現のがすごいらしいですけど。
で、要は山田孝之さんと瀧さんの対話だけなんだけど、そこをまず瀧さんのね、さっき言った圧倒的にその説得力で、もう対話・・ガラス越しに対話しているだけなのに怖いという、瀧さん力、これも大きいんだけど。

凶悪は三部構成にしている

同時にですね、そこから取材を重ねるうちに山田孝之演じる記者の藤井というのがですね、主人公が事件の残り香いうか、取材を重ねてとっくに過ぎた7年前の話なのに、確かにそこでそれは行われたっていう実感をふっと感じる瞬間が不意に訪れるわけですよ。
で、例えばですね、例えば、一度埋めた死体をどうやらミニユンボで掘り起こして移したんじゃないかっていう疑念が、疑惑が立ち上がるその瞬間。
それまでは非常に抑制のきいたもう地味ーといってもいいような演出、カメラワークできたこの作品が、やおらグイーっとカメラが、グイーッとダイナミックにケレン味たっぷりに動き出して、その藤井の視線の向こうに誰かが操っているのかわかんない程度に遠いミニユンボを映し出す、その瞬間。
今まで抑えに抑えたところにグーッとカメラが動いて、フッてミニユンボが映ると、「うわっ怖い」。
それこそちょっと Jホラー的なっていうか、何か向こうに禍々しいものがいるっていう怖さがフッて出たりとか、ですかね。

面会室のシーン

でね、そういうふうに藤井が事件に対する確信を深めていくプロセス、要するにその深みにハマっていくプロセスと同時に、進行とシンクロしてですね、それまでは例えば面会室でしている会話が相互の、瀧さんと山田さん相互の切返しショットで、別個に映されていたその面会室の会話が。。
だんだん須藤がハマっていくのに対して、例えば瀧さんが話しているショットが実は仕切り板に映ったその藤井の顔がその滝さんの顔の近くに投影されるようになってくるわけですよ。
重なって、要するにだんだん同化していくような感じに見えていくっていうことですよね。
で、例えば、「別の事件話しましょうか」。で話してて、「あーこれ関係ねぇや」。
要するに別の殺人の告白して、アハハハハお互い笑っちゃう場面、アソコとか、もう完全に二人の顔が一致しちゃってる・・みたいなね。
これはですね、仕切り板にどんぐらい顔が映るかっていうのは、例えばラスト、先生と直接対面するシーンに至るまでかなり周到に計算されているなあ、というふうに思いました。

主人公が出ないシーン

そういうところから見てもすごく良くできてるし。
で2部からは一気にその話が実際過去に行って、そこから45分ほど、ここが大胆なところですけど、主人公が、藤井が全く出てこない。
ちょっとこれ冒険的な構成になっている。
これもですね、すごく実は効果を上げていると僕は思います。
まず過去に戻るポイントんとこが最高ですよね。
この映画の「FUー」ってとこじゃないですかね。
さびれたね、もう事務所を覗いてみると、そっからこう7年前の出来事が今まさにそこで行われているかのように、先生が最初の殺人を行っている。
しかもここの、先生リリーさんが最初にネクタイでこう人の首を絞めてんだけど、ちょっとリリーさんがですね、の演技がちょっと田中邦衛入ってるんですよね、「このう、金も返さねぇデー」って。
そうちょっと口がひょっとこのように曲がってて、「金も返さねぇデー」みたいな、田中邦衛入ってるわけですよ。
それが、要は明らかに人殺しそのものにはね、足滑らしたり明らかに慣れてないんだけど、同時にちょっとふざけてるみたいに見えるっていうバランスになってるんですよ。
怖いわ、リリーさん。ここで邦衛入れる?ここで邦衛入れるってのが怖い。

犯人たちのテンションが上っていく

で、お話のテンションは、要するにこのポイントから一気に高くなるわけですよね。はい。
どんどん、どんどん高くなっていく。
それはなんでかっていうと、犯人たち自身のテンションが上がってるからですよね。
「FU、やっちゃおうぜ、どんどん。儲かるしね。バンバンいいよね。ぶっこむっしょ」みたいな感じになってるからで、なので主人公がいなくても、もう話自体のテンションは全然持つし。。
と同時にですね。
あっそうそう、ちなみにですね、例えばずっと過去から話が進んで、バッと殺人シーンが、ふっと過去に、同時に見せるというあたりとか、さっきのユンボのシーンもそうですけど、ずーっと地味で丁寧な演出をしてるな、割と地味めな演出だなと思いきや、ここぞってところで派手な、ちょっとこうケレン味のある演出をポンってぶちこむ、ぶっこむ、そのバランスがやっぱ白石和彌監督なかなか相当な腕じゃないかな、というふうに思ったりしました。

主人公が再び登場するクロスポイント

で、ですね、主人公がずっと中盤は消えているわけですけど、主人公が再び登場する第3部とのクロスポイント、これがまた最高にスリリングで、時制が要するに現在にようやく追いついて、先生がずっといろいろ犯罪を重ねているんですけど、そこに要するに隠し撮りしている須藤が来て、ようやく話が追いつくわけですけど。。
これ、観客はどういうふうに感じるかというと、要はずっと先生一派側のテンション、視点で45分間、これカッコ付きで言いますけど、45分は我々は楽しんだわけですよね。
そのテンションが高い、犯罪の現場を楽しんだ、その我々がここでハッと、先生の内側の、外部の視点をまったく欠いた視点だったということが、ハッと外側から見られていることに気づく。外部の視点を改めて意識する。
ハッ。犯罪が露見する。ハーッ。恐ろしいことしてた。ハッて気付く。
と同時に、主人公藤井側の視点に感情移入すると、こちらもまた先生側から、向こう側にいる先生がカメラを隠し撮りしているこちらをふっと見る、その瞬間に・・まさに深淵から見返された瞬間、二重の意味で世界が一気に反転するんですよ、この瞬間に。
ハッ。お互いが見られてる、見られてる、うわーっ。っていう。
見事な構成じゃないですか。
これは要するに主人公が45分間いなかったというのが非常に効いている構成で、うまいなあというふうに思いますし。

世の中に明るみになっていく第三部

で、ここから先、事が明るみに、世の中に明るみになっていく第3部。
例えばですね、須藤、ピエールさん演じる須藤が「改心しましたよ」と。
でキリスト教に入って、俳句もたしなんでいてって、まさに「シークレット・サンシャイン」イ・チャンドンの名作中の名作「シークレット・サンシャイン」を彷彿とさせる問題提起があったりとか。。
あるいは九十九一さんね、いいですね、あの九十九一さん演じるあの悪徳福祉業者、これ元は不動産ブローカーだったのをこれに変えてるわけです。
これによって、やっぱりこの老齢化社会にある、なんていうのかな、しかもその福祉っていう仕事に就きながら人をグロス損得でしか見ないという凶悪のあり方みたいのになってて、これ非常に素晴らしいアレンジだと思うんだけど、その九十九一さんが要するに事の真相、大事な人物にある、不慮の事故にあるまでを、非常に計算の行き届いたワンカットですよ、長ーいショットで見せてからのボン。
見せるアレとかも非常に見事なもので、第3部もすごく面白いんだけど。

自らも闇に囚われていく

ただですね、僕特に初見で思ったのはですね、後半で要するに記者藤井がですね、要するに正義の意思からですね、この事件を追及して・・なんだけど、だんだんだんだん自らも闇に囚われていくみたいな、そういうような部分ですよ。
で、もちろんですね、これを要するにその指揮者側の闇みたいなことを描かないと、単純なヒーロー話にもなりかねないし、それはしたくない。
これもわかりますし、あるいはさっきも言いましたけど、老齢化社会になっていくと老人問題、まさにすべては地続き自分たち側、要するに正義の側にいるっていう、側と無関係じゃないよってを示すために彼の自分のうちでの事情の話、これをやったりするの、これも分かります。
意図は分かるんだけど、正直やっぱ第2部のテンションが圧倒的なので、正直いちいち話にブレーキがかかるなぁって感じはちょっと否めなかった。
で、例えばあと、最後に先生が要するに正義にとらわれるあまり、「殺したいと思ってるのはお前だろう」みたいなこと言ってね・・言うんだけど。。でも「それって先生たちと同じ凶悪にとらわれたって話じゃなくね?別に違くね、それは」っていう。
まぁ、いろいろちょっとあって、要はリリーさんの演技そのものはすごく迫力があったけど、なんか理屈そのものは僕はいまいち納得できず、ですね。という。

凶悪、点数をつけるなら5億点ひく50点

ちょっとそこまで真面目にならんでも、なんてことはちょっと思ったりもしましたが。
ただまぁ些細なことです。5億点ひく50点ぐらいなもんでございます。
白石和彌監督、そして脚本の高橋泉さん。
僕前作の「ロストパラダイス・イン・トーキョー」がどうしても見れず。。
あのノワールという点では共通する「人間昆虫記」という手塚治虫さん原作のテレビドラマシリーズの方は見ましたけど、間違いなく素晴らしい力量を持ってると思いましたし・・はい。ことだと思います。
はい。ということで劇場で、リアルタイムでぶっこんでください!


○○に入る言葉のこたえ

②頻繁に登場する「ぶっこむ」という口癖がツボに入った人も多い でした!
 

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